寂蓮法師(しやくれんほうし) 村雨(むらさめ)の【邨雨の】 露(つゆ)もまた ひぬ槙(まき)の 葉に きり たち のほる あきの夕暮(ゆふくれ) 八十六番 此心はうち見たるてい深山居住の所をよく 心に思ひしめて見るべし槙は深山に有物 なりあきの夕べにむらさめの打そゝぎてさ らさらとまきのはのしめりたるをりふし もきりのたちのぼるさまをよく〳〵おもふべし まことにおもしろくもさびしくも又あはれに も心ふかき歌也又此外にも此法師のうたに  さひしさはそのいろとしも   なかりけりまき立    山の秋のゆふ暮とよみたる               あり 香蝶楼 豊国画 【印】 【印】 【印】佐野喜