《題:から物語   中》 【ラベル】SMITH-LESOUËF/JAP/3 (2)/1517 F. ■【Iヵ、1ヵ】 【表見返し】【ラベル】SMITH-LESOUËF/JAP 3 2 【挿絵 横書き】交趾国 交趾国又は安 南と名付く 其国もとこれ 漢の馬援か 兵の末孫也 国人親子一所に 住せす妻をむかふに媒をもちひす男子は盗賊を わさとす女子ははなはた淫乱なり古城の王其 少子をつかはして中国の妻をよみ道をおこなふ 国人是にそむく漢の中国これをおさむ交州の刺 史をたつ後漢のとき又そむく馬援これをしつむ 五代のすゑにあたつて節度使呉昌文初て ひそかに王の号をたつる其後みな王の名を称 す欽より西南のかた舟をもつてわたる事 一日にしていたるへし 【挿絵】黒蒙国 此国城池有家 つくりあり国人 田をつくりて なりはひとす 天気常に熱 して人の身焼 かことく也人皆 五色のにしきをはかまとせり応天府より行事一年 【挿絵】婆登国 林邑の東に 有西のかた 迷笏国に ちかく南の方 訶陵国に かゝれり稲を うゆる月こと に一たひしゆくす文字あり貝葉にかくもし死 すれは金銀をもつて四肢をつらぬきて後に 婆律膏およひ沉檀龍脳をくわへて薪木 をつみてこれを火葬すとなり 【挿絵】無腹国 此国海の東南に あり国人男女共 にみなはらなし 【挿絵】聶耳国 此国無腹国の東に 有国人身はとらの 紋ありて耳なか き事ひさをすき たりゆく時はその 耳をさゝけてゆく といふなり 【挿絵】三身国 此国鑿歯国の 東にあり其人 かしらひとつに して身は三つ あり 【挿絵】蜒三蛮国 此国人船をもつて 家とすきわめて まつし冬にいたるに も身に一衣なし 魚を取て食と す妻子共に船に のりゆくさきに とゝまるなり 【挿絵】木蘭皮国 此国大食国の 西に大海有海 の西に国有其 数かきりなし其 中に木蘭皮 国まては人みな いたるへし昔 陀盤の地より船をいたして西に行事百日に して一つの小船をみる舟のうちに数百人のりて 酒さかなもろ〳〵のうつはもの有其国の生する 所麦一粒のたけ三寸爪の大さめくり四五尺也 柘榴一顆おもさ五斤桃は二斤菜のたけ三四 尺井をほる事ふかさ百丈にして水あり羊のたかさ 三四尺春は腹をさきてあふらをとる事数十斤 二たひ其疵をぬふてよく又よみかへらしむこれ ぬふ所の糸にくすりをぬるといふ 【挿絵】賓童龍 此国もと占城 国の貴人国の あるしとなれ り道ゆく時は さうにのり馬 にのるつきし たかふ者数百 人皆手ことに盾をもてりあかきかさをさすそ の従者木の葉に食をもり椰子酒と米酒と をもつてみち〳〵たてまつるある人のいわく仏書 にいへる王舎城はすなはちこの地なり今目 連舎利弗の塚ありと云 【挿絵】骨利国 此国回鶻の北 大海の辺に 有名馬をい たしあきなふ 其国昼なかく 夜はみしかし 日くれて後天の 色くろし羊を煮て熟する時夜明て日いつると云 【挿絵】頓遜国 此国昔梁の 武帝の時み つき物をたて まつる其国海 島の上にあり其 国人まさに死 すれは親族こと〳〵く歌舞して野にをくる鳥有 其かたちあひるのことし数万とひきたる親族み なかたはらに立よる其鳥死人の肉を食しつ くすすなはち其ほねを火葬してかへるこれを 鳥葬と名つくなり 【挿絵】狗骨国 此国人皆人の 身にして犬の かしらなり身 になかき毛有 て又衣を着す ものいふこと葉 犬のほゆるか ことし其つまは皆人にしてよく漢語に通す 貂鼠皮を衣とし犬人と夫婦として穴にすめ りむかし中国の人其国にいたる犬人の妻 其人をにけかへらしむ犬人これををふ時 帯十余筋をおとす犬ひとこれをくわへて穴に 帰り此内にのかれ帰りぬと云応天府より行事 二年二月にいたる 【挿絵】長人国 此国の人たけ 三四丈なり昔 明州の商人 海を渡るとき 霧ふかく風あ らくして舟 のむかふかたをわきまへすやう〳〵霧はれ風やみて後 ひとつの島につくふねよりあかりて薪木をとらんと するにたちまちにひとりの長人をみる其行こと 飛かことしあき人おとろきおそれてにけまとひ ふねにかへる長人この人をおふて海にか けいる船人強弩の大弓をはなつにのかるゝ 事をえたり 【挿絵】蒲甘国 犬理国【三才図会では「大理国」】より五 程にして其国 にいたる黒水と 淤泥河とをへ たてゝしかも難 所なるをもつて 西蕃の諸国通 路なし其国の王は金銀の冠をいたゝき金銀をもつて 家をかさりちりはめ錫をもつて瓦をつくりてふくと云なり 【挿絵】婆羅遮 此国人男女共に いぬのかしらをい たゝき猿の面 をかけ日夜まひ あそふなり 【挿絵】五渓蛮 此国人父母死す る時は鼓を打 歌をうたひ親 属酒宴して 舞あそふ山に ほふふりて其子 三年の内塩を くらはす 【挿絵】哈密国 此国西蕃の内 に有火州の東 なり国の風俗 は回々国と たつたん国に 同し 【挿絵】撒馬兒罕 此国哈刺国の 東に有もと是 西蕃の内也山川 の景物すこふる 中国に同しあき なふ物は皆国中 の銭をもちゆ となり 【挿絵】孝臆国 此国のめくり三 千余里平沙【「沙」は三才図会「州」】 の内にすめり 木をもつて柵か きをつくる柵 のうちめくり 十余里其内 に人家二千余あり気候常にあたゝかにして草木 冬もしほます国人皆長なかく大鼻にしてま なこあをくかみ黄なり其おもて血のことくつね にかみをゆふことなし五こくゆたかに金鉄おほく 麻布を衣とす商敗のあきないものなし道 行時は男女ともに其おやをつるゝ孝道の 国なり馬羊をやしなふをわさとせり 【挿絵】繳濮国 此国永昌郡の 南の方一千五 百里にあり 国人みな尾有 座せんとする 時は先地をほ ほ【「ほ」衍字ヵ】りて穴を作 其尾おきてのちにさすもしあやまりて其尾 をうちおる時はすなはち死すとなり 【挿絵】的刺普刺 此国皆城池家井 あり田をつくる 又明珠をいたす 其玉光りあり又 もろ〳〵の宝石 おほし応天府 より行事二年 一ヶ月にしていたる 【挿絵】三首国 此国人むかし夏 后の時に有一 身にして三つ のかしらあり 【挿絵】真臘国 此国広州より船 をいたして北風 十日にして此国 にいたるへし天 気さらにさむ き事なし 妻をめとるに は男まつ女の 家にゆくとなり国人もし女子を生すれは九才の時 に僧をよひて経をよましめ其女子の身より 血をいたし其ひたいに点すしからされは国 人めとらすもし人の妻他人と通すれは其 おとこ大によろこひていはく我妻かたちうつ くし此故に人のために愛せらるゝとてさ らにとかむることなしもし盗人あれはその 手足をきる火印をもつて其かほにしるし をつくると也国人のとかををかせは金を出して あかなふ金なけれは身をうるとなり 【挿絵】道明国 此国の人身に衣を 着せすもし人の 衣を直せるをみ ては則是をわら ふ国に塩とくろ かねなし竹を以 て弓矢につくり 鳥をいて食とす 【挿絵】七番国 此国山をたかへ し田をつくる駝 牛をいたして あきなふなり 【挿絵】猴孫国 此国一には抹刊刺 国と云若他国より 此国をとらんとす れは数万の猿有 てふせきかへえす応 天府より行事 三年にしていたる となり 【挿絵】勿斯里国 此国白達国に属 す国人七八十歳 まて雨をみさる ものあり大なる 江ありて其み なもとをしらす 大水田をひたす 水のうちより神人いてゝ石の上に座す国人是を礼し て年の吉凶をとふに神人わらふ時は吉なりうれ へ有時はわさはひ有国人山の上に廟をたてゝ 是をまつる廟の上に大鏡あり他国より其国 にわさわひせんとする時はかゝみにうつりてみ ゆるといふなり 【挿絵】焉耆国 此国の風俗正 月元日二日八日 は婆摩遮の まつり三月十五 日は遊林の祭 五月五日は弥勒 下生の日七月 七日は先祖のまつり十月十日には国王より首領 の臣をいたし両部【「両部」三才図会は「両朋」】の兵をわかち甲冑をきせて 石をうち杖をもつてたゝかふ《割書:今いふ印地|なるへし》たかひ に死するをまちてとゝむとなり 【挿絵】瑞国【正瑞国】 此国人ひつしを やしなひ田を つくる人家多 し 【挿絵】龜茲国 此国牛馬のたゝ かふをもつてた はふれとし七日 のうちにせうふを 見てその年の牛馬の吉 凶を見ると     いふ 【挿絵】丁霊国【釘靈國】 此国海内にあり国 人ひさより下に毛 を生して足は 馬のことしよくはし るにみつからその 足に鞭うつ一日に 三百里を行応天 府より行事二年に いたる 【挿絵】野人国 此国山林多し人皆 木のはをくらふ国 人たつたん【韃靼】国と たゝかふにまけす となり 【挿絵】蔵国 此国城池人家有 国のうちに大成 柳の木多し応 天府より行事一 年三ヶ月にし ていたる 【挿絵】黙伽臘国 此国城池人家有 国主有人是に したかふ大海より 珊瑚樹をいたす 国人くろかねのあみ ををろしさんこ をとるといへる 此国のこと成へし 【挿絵】奇肱国 此国人よく飛 車を作りて風 にしたかひて遠 ゆく昔慇【殷】の 湯王の時奇 肱国の人く るまにのり て西風によつて豫州にきたる湯王其車を やふりて国民にみせしめすそのゝち十年を へて東風吹とき奇肱の人またくるまを つくりてかへる其国玄玉門の西一万里にあり 【挿絵】無䏿国 此国人腹の うちに腸な し土を食 として穴に すむ男女し するもの皆 土にうつむ そのこゝろくちすして百年の後又化して人 となる其肺の蔵くちすして百二十年に 又化して人となる其肝の蔵くちすして 八十年に人となる其国三蛮国に同し              となり 【挿絵】大食勿斯離 此国秋の露 をうけて日に さらすに雨と なるあちはひ まことに甘露 なり山の上 に天正樹有 木のみ栗のことし蒲芦と名つく国人とり て食す次のとし又生するを麻茶といふ 三年にして生するを没石寺といふ又桃 柘榴くるみ等あり木蘭皮国とおなし くゆたかなり 【挿絵】木直夷国 此国獦獠国の西にあり鹿の角をもつてうつ わものとし国人死する時はくゝめてこれを火 葬にすその人いろくろき事うるしのことし 冬にいたれは沙のうちにとゝまりてそのかし らをいたすとなり 【挿絵】一臂国 此国人一目一孔一 手一足半躰 にしてあひなら ひてゆく西海 の北にあり 【挿絵】乾陀国 此国昔尸毘王の 庫火のため にやかれてこかれた る米今にあり人 一粒を食する時 は身ををふるまて やまひなしとなり 【挿絵】長毛國 応天府よりゆく事二年十ヶ月にして いたる国人みな其身に長毛あり城池人 家田畠あり其国人はなはた短少なり 晋の永嘉四年中国にきたれり 【挿絵】昆吾国 此国よりからかねをいたすかたなにつくるに玉 をきる事泥よりもやすし其国塹をかさ ねて浮屠をつくる屍をおさめまつりて哭す るを孝行とす 【後見返し】 【裏表紙】