雪月花美都の詠 上 【右丁】 ほんのりと  いもがはだんの   雪間より かほりゆかしき おすら紅梅 【下句読みは?】 【左丁】 /巫山(ふさん)の/神女夢(しんによゆめ)に/来(きた)つて/㐮王(ぜうわう)の/蕩郎(じんばり)に /犯(おか)させ、/粂(くめ)の/仙人古郷(せんにんこきやう)に/飛行(ひぎやう)して/物洗(ものあら)ふ/女(め) の/脛(はぎ)の/白(しろ)きを/見(み)て/通(つう)をうしなふ。/実(げ)に/朝(あした)には/雲(くも)と なり/暮(ゆふべ)には/雨(あめ)となる/朝々暮々(てう〳〵ぼ〴〵)にまよへるは、 /生(しやう)あるもゝのならひにて/神仙(しんせん)すら/猶斯(なほかく)の/如(ごと)し まして/況(いはん)や/人輪(じんりん)に、おいてをやした/一物(いちもつ)を /気(き)ざした/開(ぼゝ)を/見(み)るからは/夫(それ)といはねど/心(こゝろ)には、 いとこのもしき/顏(かほ)つき/夜(よ)に、/肛門(おかま)をれに/好人(すきびと)も /妄想(もうぞう)がちな/初心者(しよしんもの)あるひはくめの/挊好(せんずりずき)も、/此(この) /色書(いろぶみ)をひらき給ひて/悪(わる)ひ/所(ところ)も/御贔屓(ひいき)めに アゝいゝ〳〵トいつまでも/幾世(いくよ)かはらぬ/御評判(ごひやうばん) /大玉茎(おほでれつく)の/大当(おほあた)りを/書肆(しよし)もろともに    /庶幾(こひねがふ)ことしかり               淫水亭述印 「けふはうちのひとは いちにちかへるこつちやア ないからゆつくりと あそんでいきな 「そうとはしらすもし 今にもやと ろくかかへつ てきやア しめへかと おもつて▼▲ ▼▲ かつりちめへて やつたから今のいち ばんはさつぱりあぢが しれなかつたばんまて かへらねへときいたら またこんなになつたから すぐに入なをしと しやう 「けふは おめへにかしきり にするから いくらでもすき にしな /花桂詠(はなかつらながめ)の/銀世界(ぎんせかい)   /隅田川(すみだがわ)の/雪(ゆき)の/詠(ながめ) /雪(ゆき)は/鵞毛(がもう)に/似(に)て/飛(とん)で/散乱(さんらん)す/人(ひと)は/靏裝(くわくしやう)を/着(き)て/立(たつ)て/徘徊(はいかい)すト /簑笠(みのかさ)の/懐手風流逸三昧(ふところでふうりういつさんまい)の/土手(どて)の/雪(ゆき)見もはじめの/内(うち)こそ/興(けう)も /深(ふか)けれ/瓢(ひさご)の/酒(さけ)も/空(むな)しく/明(あき)て/次第(しだい)に/寒(さむ)さを/覚(おぼ)ゆる/頃(ころ)は/深々(しん〳〵)たる /寒気肌(かんきはだへ)を/通(とほ)し/句(く)も/歌(うた)も/出(いで)ばこそ/酒(さけ)さめ/興尽(けうつき)てあたら/佳景風(かけいふう) /流(りう)の/眺望(てうもう)も/今(いま)は/更(さら)に/目(め)もとまらず/此寒凌(このさむさしのぎ)には/温(あたゝか)き/物(もの)もがなト /俄(にはか)に/酒売家(さけうるいへ)のみ/尋(たづぬ)るもおかし/夫(それ)を/思(おも)へば/初(はじめ)より/家根舟(やねぶね)の/置巨燵(おきごたつ) 【右丁】 /酌人(おしやく)を/一枚打込(いちまいぶちこん)で/其身(そのみ)は /布団(ふとん)にすつぽりまとはれ /梅香和(うめがわ)から/入(いれ)たきどりの /肴(さかな)あつ/燗(がん)でひつかけ ながらのいちや/附(つき)いざ さらば/芸者(げいしや)もころぶ/所(ところ) までと/隅田川上(うはて)へのぼるが /上分別(じやうふんべつ)はるかにまさりし                 〔雪ノ一〕 【左丁】 /雪見(ゆきみ)なるべし/舟(ふね)の /内(うち)には/爪弾(つめびき)にて/一中(いつちう) /節(ぶし)のうまい/所(ところ)を ひとくさりづゝ/吉(よし) /原八景(わらはつけい)は/爰(こゝ)の/所(ところ)が いゝのわん/久(きう)は/爰(こゝ)が/能(いゝ) のト/小声(こゞゑ)でうたひて /誰のは/爰(こゝ)をかういふ 【右丁】 /節(ふし)にもつていくのあの/人(ひと)のは/爰(こゝ)をこうかたるのと/節付(ふしづけ)の/論判(ろつぱん)に/酒事(さけごと) も/余処(よそ)になりおつなはづみでいつの/間(ま)にか/咄(はな)し/合(あひ)が/出来(でき)たと見へて /舟頭(せんどう)に/渡(わたり)が/出(で)るト/粋(すい)を/通(とほ)して/揚(あが)り/場(ば)でもない/所(ところ)へ/舟(ふね)とつけて/岸(きし)の /杭瀬(くひぜ)へちよともやひ/木(き)の/根(ね)に/取付舟頭(とりつきせんどう)は/雪埋土手(ゆきつむどて)へよぢのぼり /木母寺(もくぼじ)の/門前(もんぜん)なる/酒屋(さかや)をさして/吞(のみ)に/行跡(ゆくあと)は/舟中(せんちう)さしむかひ「/舟頭(せんどう) がなんとか/思(おも)やァしまいかねへ「てめへも/野暮(やぼ)をいふもんだぜ/舟(ふね)の/出合(であひ) にわたりを/出(だ)しやアすぐはづすといふ/手続(てつゞき)は/元禄以来極(げんろくいらいきま)りの /定法(じやうほう)だからなんの/遠慮(えんりよ)が/入(い)るものか「それだがあんまり/正直に/幕(まく)を             〔雪ノ二〕 /切過(きりすぎ)るから/間(ま)がわるいやうだからさ「なぞといつて/今更(いまさら)おつうのがれやう と/思(おも)つてもそうはさせねへ「ヲヤきついこつたよだれものがれやうとは申ま せんよぢれつてへどうでもしておくんなさいよト/男(をとこ)の/首筋(くびすじ)へかぢりついて/口(くち)ト /口(くち)チウ〳〵〳〵〳〵/男(をとこ)はすぐに/手を/延(のば)してくぢりかゝれば/玉門(ぎよくもん)は/最前(さいぜん)より/程(ほど) よくうるほひてある何んばいどうもたまらず/指二本(ゆびにほん)ぐつと/入(いれ)てぐり〳〵ト くぢり/廻(まは)せば/女(をんな)は/目(め)をとぢひたひに/八(はち)の/字鼻息(じはないき)フン〳〵いひながら/男(をとこ) の/股(また)へ/手(て)を/入(い)れて/一物(いちもつ)をじつとにぎり「エゝモこんなにしているくせにはやく どうかおしなねへト/其(その)まゝそこへ/寢(ね)てかゝれば/男(をとこ)は/上(うへ)へのりかゝりもへ 【右丁】 たつ/如(ごと)き/緋縮緬(ひぢりめん)の/二布(ゆもじ)をぐつと まくりあぐれば/肌(はだ)は/今降(いまふ)る/雪(ゆき)より /清(きよ)く/玉門(ぎよくもん)ふつくりとしてまんぢう の/如(ごと)くひたひにうつくしい/毛(け)がふつ さりとはへている/様躰(やうだい)どうもたま らず/是(これ)にていよ〳〵/一物(いちもつ)は/木(き)よりもかた くいきりたちおやけきつたる へのこをかゝへ/開(ぼゝ)に/見(み)とれて                〔雪ノ三〕 【左丁】 うつゝなきを「エゝモさむいよ どうしたトいふのだねへ「ヲツト /承知待(しやうちまち)給へトやがて/陰茎(へのこ) をすつぽりのぞませ/見(み) ながらぬつト/一(ひ)ト/押(おし)おせ ば/其美敷玉門(そのうつくしきぎょくもん)へ/古(こ) /木(ぼく)にひとしき/大陰茎(おゝまら) がぬる〳〵〳〵ト/半分(はんぶん) 【右丁】 ばかりすべりこんだる/心地(こゝち)よさ そのまゝ/上(うへ)から/抱付(だきつい)て ぬきさしはげしく するうちに/玉門(ぎょくもん)の/中(なか) いちめんにぬる〳〵うるほひ /根(ね)まですつぽりはいりし /気持何(きもちなん)にたとへん ものもなし/女(をんな)も/始終(しじう)            〔雪ノ四〕 【左丁】 /鼻息(はないき)あらく/下(した)から /抱付(だきつき)もち/上(あげ)〳〵「エゝ もういつそアゝどうも フン〳〵〳〵ト/大(おゝ)よがり/男(をとこ) は/爰(こゝ)ぞと/大陰茎(おゝまら) に/一倍精(いちばいせい)をはり こんですかり〳〵 ずつぽずぼずぼり 【右丁】 ずぼりトつきたて〳〵/上下左右(じやうげさいう)まんべんなう/陰茎(へのこ)のあたまで こねまはせば/女(をんな)は/今(いま)はこらへかね「ハア〳〵〳〵ト/身(み)をそらし/開(ぼゝ)を/指上(さしあ) げしやくり/上無性(あげむしやう)に/気(き)をやる/喜悦(よがり)の/淫水湯(いんすい湯)ほどにたぎりて どつくどくぬら〳〵ぬる〳〵ながれ/出(だ)し/雪(ゆき)の/寒(さむ)さもおぼへぬばかり /逆上(のぼせ)あがつてのたうち/廻(まは)りスウ〳〵フウ〳〵ハア〳〵ト/何処(どこ)へ/遠慮(えんりょ)も なきよがりこと/問(と)ふ/人(ひと)はあらねども/舟(ふな)べりたゝく/水(みづ)の/音浪(おとなみ)に/浮(うき) /寢(ね)の/鷗(かもめ)のみ/浦山(うらやま)しとや思(おも)ふらん/男(をとこ)もへのこをしごかれてこらへ かねたるよがりなき/淫水(いんすい)へのこに/突(つゝ)かけ/来(きた)りすでに/気(き)のいく/息(いき)づかひ             〔雪ノ五〕 【左丁】 へのこの/胴中張出(どうなかはりいだ)し/厂首(かりくび)ひらき/一(いち)めんにびくり〳〵ト/脉(みやく)を/打(うつ) ひゞきが/女(をんな)の/身(み)にこたへともにフウ〳〵ハア〳〵ト/力(ちから)のかぎりにしがみ つき/毛際(けぎわ)と/毛(け)ぎはをすりつけ〳〵/双方一度(そうほういちど)にドク〳〵〳〵ぬら 〳〵〳〵〳〵どつくどく《割書:ハアゝゝゝフウゝゝゝゝ|スウ〳〵〳〵〳〵ハア〳〵〳〵》ト /互(たがひ)に/抱〆(だきしめ)かすなく/出(だ)し/出(だ)されたる よがり/水(みづ)そのまゝ/口(くち)を/吸合(すいあい)て/見(み)れば/見(み)るほどうつくしき/女(をんな)の/顏(かほ)にあく /色(いろ)なくなえきらぬ/内又(うちまた)きざし/開(ぼゝ)の/中(なか)にておえかへれば/抜(ぬか)ずふかずのむしかへし /又(また)そろ〳〵と/抜差(ぬきさし)するにはじめに/増(まさ)るへのこの/勢(いきほ)ひ/女(をんな)もおとらぬ/好者(すきもの)な るにやほつこりしつゝ/下(した)からも/持上(もちあげ)ながら「いつそおたつしやだねへ「ちと/達者(たつしや) 【右丁】 /過(すぎ)て/気(き)に入らずか「ヲヤいつ/気(き)に入(い)らないト申ましたへエゝにくらしい「てめへは にくらしくつてもおらアかあいくつてこてへられねへ「エゝモウなんとでも いゝなじれつてへよトしがみつきそんな/事(こと)よりもつと/身(み)にしみてソレそこの/所(ところ)をさ アゝそうだよもつとよ〳〵アゝゝもう〳〵〳〵フン〳〵〳〵〳〵エゝどうせうのう「どうでもてめへ の/勝手(かつて)にしやな「フン〳〵〳〵〳〵アレ/平気(へいき)でさにくらしいくいつくと「エゝいてへばかをするなへ トいゝさまへのこを/奧(おく)ふかくぐつと/突込(つゝこみ)たまぎらせ/其(その)まゝずぼりと/抜(ぬき)あげてはづるゝ ばかりの/高(たか)ごしにすかり〳〵トおこなふ/折(をり)しも/渡(わた)りの/祝義(しうぎ)でひつかけた/簑(みの)に /目深(まふか)な/竹(たけ)の/子笠案山子(こがさかゝし)と/見(み)まがふ/舟頭(せんどう)が/一(いつ)ぱい/機嫌(きげん)の/土手(どて)つたひもどりかゝ       〔雪ノ六〕   【左丁】 りて/降(ふり)しきる/吹雪(ふぶき)も/侭(まま)の/川(かは)ちどりあし/間(ま)の/雪(ゆき)をふるひ/捨舟(すてふね)にひらりととび うつれど/中(なか)の/二人(ふたり)は/能最中程(いゝさいちゅうほど)を/計(はか)らひ/舟頭(せんどう)が/帰(かへ)り/来(きた)るに/心(こゝろ)もつかず/取組合(とつくみあひ) てスウ〳〵フウ〳〵ハア〳〵ハア〳〵いゝ〳〵〳〵エゝもういつそいきつゞけだよ「おれも/四五(しご)ばん/気(き) をやつたがどうした/事(こと)かおれがへのこが/木(き)のやうにかたくなつてちつともなへねへ もうこうなつちやア/大丈夫(だいじやうぶ)だおれも/日頃(ひごろ)の/念(ねん)がとゞひた/今日(けふ)といふけふはなんで もてめへの/淫水(いんすい)をありつたけけへぼりをしにやアならねへ「わつちもこういふ/訳(わけ) になつたからにはあくまでおまはんに/堪能(たんのう)させなくちやア/気(き)がすまねへよ/其(その) かわりには/外(ほか)に/性(しやう)わるはならないからそうおもひよ「/人(ひと)の/事(こと)よりてめへが/性(しやう)わるを  しねへようにしや「じれつてへ/是(これ)ほと/内幕(うちまく)を/見(み)せてもまだうたがふのかのう サア/是(これ)でもかへ〳〵ト/足(あし)をからんで/引〆(ひきしめ)〳〵/跡(あと)はたがひに/鼻息(はないき)ばかり《割書:スン〳〵スン〳〵|スウ〳〵〳〵〳〵》ソレ /又(また)いくよハア〳〵〳〵アゝいゝ〳〵ト/大(おゝ)よがり/最前(さいぜん)より/舟頭(せんどう)は/耳(みゝ)をすまして/気(き)をもだ つかせ/突張(つゝぱり)かへるへのこをにぎりこらへかねたる/五人組折(ごにんぐみをり)から/同(おな)じ/雪見舟上手(ゆきみぶねうはて) へ/棹(さほ)さすせんどう/仲間(なかま)「/舩六(せんろく)はやいななんとよく/降(ふ)る/雪(ゆき)ぢやアねへかてめへ そこになにをしているト/声(こゑ)かけられてびつくりふりむき「さればよあん まりひどく/積(つも)ツたから「どうした「/今(いま)かいて/居(い)る/所(ところ)だ 雪のながめ終          〔雪ノ七〕