【右丁】   藤原(ふぢはらの)基俊(もととし) 契りおきし  させも   か露(つゆ) あわ  を  れ   命(いのち)  ことし  にて    の   秋(あき)もいぬめり 【左丁】    七十五番 此心はある僧のもととしをたのみてならのゆ いまへのかうし【維摩会の講師=奈良の山階寺(興福寺)で陰暦十月十日から藤原鎌足の忌日である十六日まで行われた、維摩経を講ずる法会の講師。講師を勤めることは僧綱(そうごう)となるための重要な関門となった。】をのぞみけるにもれければもととし【基俊】 いかゞとほうせうじどの【法性寺殿=藤原忠通】へうらみ申されければ しめじがはら【標茅原=なほ頼め 標茅が原 の させも草・・】とこたへらる是は只たの めの哥のこゝろ也又此秋ももれければもと としさせもがつゆをいのちはか なきよにまたことしも もれたりとうらみ申 たるなりさせもとは さしもくさのこと也 【画面左側】 一陽斎  豊国【國】画