【表題】 かけ合 あふむ石 【凡例】 ●白屋権八 ばんじやくいん ■鹿嶋や長兵衛 【本文】 ■とわれてなんのなに 神(かみ)となのるやうな神号(しんこう) てもム【ござ】り升【ませ?】ぬしかし社(やしろ)は東(あづま)路(ぢ)に気(き)も 浮(うき)たつた銚(てう)子(し)の鼻(はな)江(ゑ)戸(ど)でうはさの 常陸(ひたち)帯(おひ)盤石院(ばんじやくいん)の長兵衛といふ 唯一(ゆいち)の社(やしろ)さ●スリヤ神国(しんこく)にて隠(かく)れなき鯰(なまつ) おさへた磐石(ばんじやく)の■アヽもし〳〵そふいわれ ちやアめんほくねへがわしは此間(このあいた)いつものとふり仲間の手合の 寄(より)合(あい)に出雲(いづも)へ立(たつ)たもきのふけふるすに震(ふるつ)た大鯰(おほなまづ)ほんの事だが是(これ)迄(まで)は お江戸に地震(ぢしん)のないやうにとねた間も石はゆるめませぬ神前(しんぜん) ならはどのやうにも手強(てづよ)ひ神詫もいゝましやうがほんの途中(とちう)で すねツかぎり江戸の鼻(はな)迄(まで)帰(かへつ)たおかげにやア気がつよい よはひ鯰(なまづ)は除(よけ)てとふし強(つよ)ひやつ ならむかふづら此(この)以後(いご)に大鯰(なまづ)が 出(で)て左右(さゆう)の髭(ひげ)をふつてきても びくともさせる事じやアごぜへ ませぬおよばずなから要(かなめ)のいし づへ家根(やね)の瓦(かわら)はおちてわれ 破れた家(いへ)はまだ 野宿(のじゆく)よしわら 五町を火事(くはじ)でやけ 江戸の鯰(なまづ)と口〴〵に なまづのなかの鯰(なまづ) 一疋(いつひき)いつでもまいりに ござりませ神前(しんぜん)浄(きよめ)て まつて居(い)ます