【表紙 題箋】 ひともと菊《割書:中》 【題箋下の丸いラベル 手書き】 JAP 96 【表紙右下の資料整理番号】 SMITH-LESOUEF JAP 96-2 【右丁 表紙裏(見返し) 文字無し】 【左丁】 くはんはくとのその外かた〳〵たかひ にめと〳〵と見あわせてこれは我ら こそなかされん事なれひやうゑの介 とのはいろはてさしのきてこそおは せしにこれはをの〳〵申させ給へと ひとくちになりて申させ給へとも よくきゝ入させ給ひたる事なれは りんけんあせのことく【綸言汗の如く=天子のことばは、一度発せられたら取り消されることはないの意】にてかなはす くはんはく殿久しくありてひやう ゑのすけとのにかたり給ふいか成つみ 【右丁】 のむくひそやなかされ給ふへきせんし すてにくたされあすのたつのとき にみやこを出させたまひてさつまの かたへとさたまりぬかゝる時は我身 の関白とある事よとてたちたまふ かたへのくきやうてん上人たちこゝに たゝすみかしこにたちあゝあはれ 事やしんのゑ【白居易の「琵琶行」に詠まれた「潯陽江」のことか】のほとりにて月日を をくりけんためしも今こそおもひし られたりとなみたをなかしたまひ 【左丁】 けりひやうゑのすけ殿と申ははりま の三位のまゝ子なりけれはおほえにて なけれともしいかくはんけん【詩歌管弦】のみちにも くらからすかたゑの人〳〵この人をこそ 人もたのみつれ花の本月のまへいかはかり さひしかるへきとてをの〳〵袖をぬら しけるとりわけなかつかさのさんみの 中将と申人ことに名残をしみてしゆて むのまへにてたかひになこりの袖を ひきちかへ【交差させる】なくよりほかの事そなき 【右丁】 三位の給ふやうは御身も七さい我も 七才のとしをなし日てんしやうして そのゝちはたかひにあさからすおもひ まいらせうち【内裏】へまいりたる時もひやうゑ のすけまいり給わすときく時は久しく おもひてたちまたおはすると聞時はくる まをとはしなとしてありしに今 のわかれこそおもひもより候はすとて なきたまふひやうゑのすけ殿のたまふ やうわれちゝはゝにをくれ【先立たれ】まいらせし 【左丁】 時やかてしゆつけしておやのこせ【後世】をも とふらひ我身もたすからはやと廻る しにいもうと壱人候かわれをたより とたのむにより御みやつかへ申て今は すこさぬ物ゆへにかゝるうきめを見候はん 事こそ候へとかきくときこよいはえ物かた り申度候へともみてう【みちょう(御帳)=貴人を敬って、その御座所のとばり又は帳台をいう語】へまいりさいこの いとまこひし候はんとて立給へは中将た もとをひかへかくなん   おもひきやかけならへはる冬のよの 【右丁】   雲井の月にわかるへしとは かやうにあそはしけれはひやう ゑのすけとの返事かくなん   わかるゝやもろともにみし有明の   雲井のかけをたえぬものとは とうちなかめたかひになく〳〵出て比【ころ】は 霜月十五夜の事成にゆきいとふかく ふりつもり空行月はくまもなし ふく風ひややかに身にしみて今はかり こそと爰かしこにめくりありきて 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 くもうへのすまひもゝしきや大宮人の なかいりかふりをならへし人〳〵のなこり も今さらかなしくてまたいつかわと おもふにもなみたのひまはなかりけ りさてきやうこくの大納言のひめ君 ししうのないしと申ておはしける ひころひやうゑのすけかよわせ給ひ ける今一となひしにゆきてさいこの いとまこひせんとおほしめしなひし のつほねえおはしてつま戸をほと〳〵と 【左丁】 たゝきないしこれにおはしますかさい このいとま申さんとてまいりたりとの 給へはないしはたゝ今うへよりおりて けれともれいのいそ〳〵した心にて見に も出たまはすひやうゑのすけまちかね てさりともうちにてきゝたまひ候は む物をしんせきたへたるなみの上に たゝよひまたみやこへかへらん事も かたけれ今ひとめ見もみえすまいら せんとてこそまいりて候へかしさらは 【右丁】 かへる成とてうらみ給ふこゑにおとろき こはいかにとおもひ今内より出やすみ さふらふとて出給ふもみちかさねのこ うちきしとろ【しどろ=乱れたさま】にひきかけていそき たち出たまへはひやうゑのすけの給ふ やうへも此事うちにて聞しめし候 はんか今まてえ出なきこそうらみ入 て候へかしいとはせ給ふともこよひは かりこそ雲の上にあとをとゝめ候はん すれともまん〳〵とあるくかひにし 【左丁】 つみ我はたすかるへし共おほえす君 はゆゝしきくもの上にふるまひたまひ てめつらしき事にもあわせたまひさ こそとたにもおほしめし出たまはゝ この世のちきりこそうすくとも後世は ひとつはちすのゑんとなりまいらせん とて御なをしかほにおしあて給へは ないしは何事もしらせ給はす大かいの なみのうへとはいか成事にかとのたまひ 候へは兵衛のすけ申給ふやうきゝ給ひて 【右丁】 しけれは是程に成事なれは我身の 事はとてもかくても候へたゝ御身のた めいたはしく候へははしめて人にしられ しとて立給ふなひしはたもとをひか えてなき給ふひやうゑのすけもなみ たにむせひ    けるかくて     有へき事      ならねはなく〳〵        出たまふ 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 なひしなみたとともにをくり給ふ すかた見えすなりけれはたゝうちふし なきたまふ扨兵衛のすけくるまにのり 三条えおはしましてつま戸をたゝ きこんの少将をめして宮いらせ給ひ たるかととひ給へはたゝ今入せたま給ひ候と 申すさらは申したまへおもわさる外 のせんしをかうむりみやこをまかり出 さつまの国にこそなかされまいらせ候へ 御心しつかに御いとまこひ申候はんとて 【左丁】 まいり候へと申給へはこんの少将何ゆへそや とてなく〳〵参りて申けれは宮さわか せ給ひて火をしろくかきたてゝきち やうあけさせ給ひてこれこん〳〵と仰ら れけれはひやうゑのすけなをしかき つくろひなく〳〵参り給ふひめ君は きゝもあへすふしまろひしのふけ しきもなくなき給ふ宮いかに おもひもよらぬ事かないか成事そと てたつねありけれはうけたまはわりて 【左丁】 申たまふやう身にすこしたるあや まりは候はね共四位の少将やみうちに せられしそれも身にとりてすこしも とり侍らすおやにて候もの草のかけ にて見らん事あはれにていろう事 も候はすさりなから我身こそあや まり候はねとももしそのゆへにても 候やらんと申たまへは思ひさそ有るらん さためてさんみかさんけんにてこそ かく有らんかなわさらんまても申す 【左丁】 へき事なれとも御そんしのことく三 位よく申たらんにはいかに申ともよ もかなはしいかにゆいかいなく思ひ給ふ 覧さりなからなかされ人もめしかへし といふ事あれは心つよくおわせよと 仰けれはひやうえ【「ゑ」とあるところ】の介かたしけなく おほせ下されけるかなわれちゝはゝにおく れし時やかてもしゆつけつかまつり たく候へれともいもうとの我より外 にたのむかた候はねは打すて奉らん 【右丁】 事もふひんさによしなき御宮 つかひ仕りかゝるうきめを見候事わか 身の事はさてをきぬたゝいもう との思ひいたはしくてみちもいそかれ 候いぬとなく〳〵申給ひてしかるへ き御事にこそ御なさけをもかけ させ給ひ候へ頼むかたなくて候はんす れはかまへて〳〵ふひんにおほし めして御覧せさせ給はてたのみ 入まいらせ候いつくまても有かたく思ひ 【左丁】 まいらせ候はんとの給へは宮きよい【御衣】の御袖を ぬらし御なみたをおさへさせ給ふやゝ久 しくありて後しかるへきえんにても こそあるらんみそめしよりをろかな らすおもひ奉り候たゝあのえ事は心 やすく候へさりとも命あらはなとかわ扨 もはつへき我世の中にあらんかきりは しめちか原とたのみたまへ今のわか れこそかなしけれとせんしなりけ れはひやうゑのすけあら〳〵かたしけ 【右丁】 なの御事やとそ申されける扨あけゝ れはけんひいし物ともむかひにきた り候はんつれは御帰り候はんと申給へは 宮けに出んまてもそひたてまつら はやとおもへともかた〳〵人きゝわろ く候申ゆるす事あらはいそき人をは かはすへしたゝゆめとこそおほゆ れさりなからひめきみいたく御なけ き候やなかされ人もかならすめしかへし【呼び戻す】 といふ事有をの〳〵いのちおしみ給へ 【左丁】 と仰ありて御かへりあるひやうゑのす けとの我七さいの年よりてんしやうに候 へとも宮の御なさけにひかれまいらせ てかたしけなくおもひまいらせ候是こそ さいこの御みやつかひのはてにて候へとて ちうもんまて御をくりにまいり給ふ 宮御くるまのうちよりにしのかたを 御覧しけれはあり明の月山のは ちかく成けれはかくなん   かけはなれ山のはちかく成ぬとも 【右丁】   めくりてあはんありあけのつき ひやうゑのすけこれをうけたまはりて   月かけは今こそかきり山のはに   入なはいつかめくりあふへき と申たまふ宮すそまて御とも申 たく候へとも     あけなはむかひの物とも      きたり候はんつれは       御いとま申候とてとゝ        まりたまひぬ 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 にしのたいに入せ給へはひめきみもこれ をさいことやおほしけんきちやうたかく あけさせておはしけれは兵衛の介ひめ きみのかたをつく〳〵と御覧しける ひめきみはもみちかさねの七つきぬ にくれなひのこうちきめしらうたき【弱弱しくいじらしい】 御さまにてなきかなしみ給ふみるに なみたもとゝまらすひやうゑのすけ のたまふやう宮の御けしき今は をろかならす見えさせ給へともいか 【左丁】 成御心かわりなともわたらせたまはゝ やかてさまをかへさせ給ひちゝはゝの こせ【後世】をもとひ給へわれも今はたのむか たも候はす又わかなけれはとてたれ にもおろかにし給ふな我をさへうし なふ人〳〵なれはましてひめきみ なんとうしなひ申さん事いとやすか るへしあひかまへてみな〳〵御そはを はなれすうちそひ給へ姫君ゆへに さのみ物をおもふこそかなしけれとの 【右丁】 給ふさるほとに御むかいの物共まいりて せんみやうをよみあくるまつひやうゑの すけ一かたならすつみふかし一にはとか なき少将をうしなはんとする事二には てんしやうにてやみうちをしてさし の五せつをやふる事かた〳〵いてあ さからすそのゆゑにさつまかたきか いか島へとよみあくるあとなき【根拠が無い】事な れともりんけんあせのことく【綸言汗の如く=天子の言葉は、一度発せられたら取り消されることは無いの意】なれは ちからおよはす色の衣をきせまいら 【左丁】 せくるまのすたれをさかさまにかけたる をやりくるまよせに入てそをきたり けるひやうゑのすけなをしぬき色を き給ふとてかくなん   いつのまにはないろころもぬきかへて   ふちのころもに身をやつす哉 かやうになく〳〵の給ひてかふりさかさ まにはさみてすてに出させ給へはなを 御名残をしみてひめきみのかたを御 覧してこれ御らんせよやしやうをも 【右丁】 かへすしてかはりぬる事よかまひて〳〵 後世たすけさせ給へくにゝ御かんまても【意味不明】 いのちなからふへくもおほえすいかさまみち にていかにもならんと思ひ候とてなく 〳〵出給ふひめきみきちやうより出 て兵衛の介のたもとにとりつき給ひ て我をはたれにあつけて行給ふそ や今はちゝはゝもをはしまさす君 より外にたのむかたもなき身を ふりすてゝをき給ひなは我身は何と 【左丁】 成へきとこゑもをしますなき給ふ御 ありさまかむかひの物ともさすか岩き【岩木=感情のないものに譬えている】に あらねはみななみたをそなかしける 兵衛のすけ御覧してこれはいかに みくるしや人もこそみれとてひめきみ のとりつき給ふ御そてをひきちきり 御くるまにめしけれは御ともの物とも はひきいつる姫君したひてなき給ふ 御声かとのほとりまてきこゆれは御く るまもすゝめやりたまはすたつの時と 【右丁】 は申せともたかひのわかれかなしむ程 にひつじはかりに都を出その日のとり の時はかりに山さきにつかせ給ふそれ より御ふねにめさるへきよし申さ るゝほとにその夜都の人〳〵の御かた へ御ふみともあそはしけるひやう ふきやうの宮の御文いもうとの姫きみ 又はなひしの御文中つかさのさんみ 中将かた〳〵の御ふみともあそはして すいしんのつきみねと申をめしをのれは 【左丁】 これより   みやこへのほり    このふみとも     たしかにまいら      せかた〳〵の返事       をとりていそき        おいつくへしと         仰られけれはうけ          たまはりて 【右丁 絵画 文字無し】 【左丁】 のほるほとに程なくみやこにつきにけ り扨もそのよ宮は三条へゐらせ給ひ て御らんしけれはこゝかしこになく 声のみしていつしかさひしくひめ 君もなきふさせ給ふみや仰あるやうは あさましやこはいかにをの〳〵今は いのちをおしみてあんおん【安穏】にていま 一と見もし見えもせんと神ほとけ にもねんしたまひてひとへになき やうになき給ふいまはしさよせんし 【右丁】 成いかにもこれにてはあしかりなんとお ほゆるさりとも今一たひひやうゑの すけみやこへかへり給はさるへきかすへ たのもしくおもひ給へとせんし 成所へつきみねまいりて御ふみと申 けれはむねうちさわきいそきみ給へ はくときかきたまへる事いはんかたなし 返事いそきたまはり候へおいつき申 はんと申けれはかたしけなくも御な みたをおさへて御返事あり又つき 【左丁】 みねなひしのつほねへ参りけりおり ふしなひしのつほねにひやうぶのじ しうなひしをとふらい給ひけりよそに ておもひさふらふさへかなしきにいかに なけかせ給ふらんとの給へは大かいのなみの 上になかきわかれしまいらせ候とて いとまこひし給ひしより何のとかとも しらねとも見ん事かたくおもふとて なき給ふにつきみね文を奉るいそき とりて御覧つれはうわかきにせきと 【右丁】 のゐん【せきとのゐん(関戸院) 注】よりとかき給へりされはいつくへ おはしたるそやとて声もをします なき給ふなみたをおさへて文をよくみ たまへはすてにまん〳〵たるなみのうへに たゝよひ身はうき物となりはてゝこそ 候へきみは九重の雲井にすみ給へは よもかすならぬ身は御心にもかゝらし さりなからこせ【後世】をたすけ給へとてかく なん   きみおもふなみたのうみにしつみなは   こんよ【来ん世=来世】のあまと成てかへらん とあそはしけるふみかほにあてゝう ちふしうらめしの文の書やうにこれを かたみにみせ奉れとてかみをきらんと し給ふをひやうふのつほね取つきか やうにては後の御ちきりをはいかゝし 給ふへきそとてすゝりかみを取いたし はや〳〵返事あそはし給へと有 けれはなく〳〵筆をそめいかにや雲の 上のふるまひとうけ給り候はつかしさ 【京都府南西部、大山崎町にあっ離宮跡。山城国と摂津国との国境にあたり、関所が置かれていた。】 【右丁】 よよく〳〵後にはお覚しめしあはせ 給ひ候へ世にあらんにこそとかくも申さ むとてかくなん   もろともにそこのみくつと成やとて   なみたのうみに我もしつみぬ かやうに斗あそはし打ふし給へはひ やうふのつほねこれを取てつきみねに たひけり扨かた〳〵の返事とりて つきみねはよるひるいそきくたりけれは はりまのあかしにておひつきまいら 【左丁】 せけりひやうゑのすけ殿御返事とも 御覧してなつかしき事かきりなし かなしく恋しくおほしめしあかし くらしくたり給ふ程にいなのみなとに つき給ふすさきのかたを御覧しけれ は白きとりのはしのあかきがとひ つれてゆきけれはあらうつくしの鳥 やあれは何とりそととひ給へはかんと り【「かじとり(舵取り)の変化した語】申やうみやことりと申せは 【右丁 絵画 文字無し】 【左丁】 あらおもしろのとりのなやなりひらの 中将みちの国えなかされけるにすみ 田川を渡るとていさこととはんみやこ とりとなかめ給ひ候事今さらお もひ出られて   都とり恋しきかたのなにあれと   わかふる里のことつてもなし なみたにうかみかせにしたかひゆく程 にさつまかたにそつき給ふ人〳〵これを あはれみてきかひかしまへはやらさりける 【右丁】 九こく【九州】にちかくいゑをさるへき【然るべき】やうにこ しらへてをきたてまつりけるいその 春風すこくふききくもならはぬなみ のをとすさき【洲崎=洲が崎となって水中に突き出ている所】にちとりとひわたる有 さまいとおもしろくてみやこの人〳〵に 此ありさまをみせまほしくそおほし ける扨もみやこにはいもうとの姫きみ おもひしつみておはしける宮とかくな くさめ給ふ扨も又はりまの三位思ふ やうにして今はひめきみうしなはん 【左丁】 事をそおもひけるむすめそつのつほ ねをひきつれてにしのたいやゆきけり 心のうちにてをそろしけれたいの人〳〵あ らおそろしや又何事かとむねうちさは き給へりもつきの五つきぬにおしの折 物ひきかけていつくしさいはんかたもな しこれにおもひつき給ひなはさためて 宮すそにたちなんといそかわし【忙はし】く心 に思ひはりまの三位申やうまことやらん ひやうへ【「ゑ」とあるところ】のすけとのなかされ給へるも我ゝ 【右丁】 ともかしわさのやうにおもひ給ふよし うけたまはり候ほとにはつかしさにい ましてまいりさふらわす扨も此かたこ そあれて候へはいつくへもみくるしから さる所へゐらせ給へ宮なとのかよはせ給 ふ成になつめんけにもてなし参ら するなとゝおほしめしなんひんなさよ こくしゆりしてまいらせんことさらけふ は日よく候へはやかて〳〵と申けれはみな 〳〵むねのうちさわきけりこんの少将申 【左丁】 やうたゝ今はあまり〳〵あはたゝ敷候へは まつしはらく御のへ候へ宮にも申まい らせてしつかにこそと申けれはみやに はあれにて申給へちかきほとにて候へは とて心あわせたるくるまよせてひめ君 をひきたてゝくるまにのせまいらせける 人〳〵あら〳〵とはかりにてひめきみと なく〳〵御ともしくるまにのりいつく ゑゆくらんとなき給ふに四条あたりなる 所のかたほりとのさしきのあさましけ 【右丁】 成所なり人〳〵これはさておはします へき所かと心うくて   わかかたの    人あらは     こそみやの御      かたへも此よし       申へきをしこめ        られてかとには人を         おきてまな【ママ】ら          せけり 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 さても宮は此事夢にもしらせ給はて その夜入せ給ひてこんの少将とめされ けれとも人もなしいか成事そと思はし めしかうしをあけて御覧しけれは あきにけり入て御らんしけれとも 人もなしはや〳〵さとらせ給ひていか にときわあやしき事のあるなり 火ともして    まいれと       ありけれは 【左丁 裏表紙の裏(見返し) 文字無し】 【裏表紙 文字無し】