【右丁】   俊恵法師(しゆんゑほうし) 夜もすから  もの思(おも)ふ ころは  明やら    て 閨(ねや)【原文の振り仮名は「ひま」となっている。】のひま  さへつれな   かりけり 【左丁】   八十四番 此心はもの思ふころは夜もねられすせめて 夜のはやくあけよとおもふにそれさへまた あやふくにながくおぼへつねにははやく戸し よふ【「やう」とあるところ。】じ【障子】のすきましろ〴〵【夜が次第に明けてゆくさまを表わす語。しらじら。】とみへて夜のあくる そのすきまさへわれにはつれなくてけ ふにかぎりてまだしろ〴〵とあけやらぬ となりまことにもの思ひのせつなる 心あきらかなりねやのひま   とは戸しやうじの      すきまのことなり 【画面右側】 一陽斎   豊国【國】画