【表題】 萬歳楽 【本文】 得意場(とくいば)も御|満足(まんぞく)とはお家(いへ)も潰(つぶ)れすましんますイヤそうどう なりける裏店の軒(のき)ぶちゆへる柱(はしら)には幼子(おさなご)を夢中(むちう)でおぶつて あねへの方の手をひいてイヤ新玉(あらたま)のやうなる泪(なみだ)をこほして 夜中に野宿のひだるさしるとにうめんかつぎ賣諸(うりしよ)人の たべたる大焼場|一統(いつとう)の柱(はしら)はびしりとおれ二|階(かい)の階子(はしこ)は 迯(にげ)るに難渋(なんじう)三|座(さ)の櫓(やくら)は損亡(そんほう)今年四文も絶ぬはしわん ぼう五ヶ所の御小屋は御仁心(ごにんじん)六本の卒塔(そと)婆は即死の追善 貸屋に貸夜具難義は灰燼(くわいじん)八方に響(ひゞ)くははや半鐘 九輪(くりん)の曲(まが)るは不|思義(しぎ)の根源滅法(こんげんめつほう)騒(さわ)ぎは女郎客〽ワツト つふてにけられたがコンが大きな散財(さんざい)〽ヤレ万(ま)歳楽〽さつ ても是から子供等も新造なんぞもぞろりやどつと迯る 立りやどつとまいる〽チゴハ旦那(たんな)さんも薄着(うすき)ならおかみ さんもうす着(ぎ)お釜の前の三助なんざアまつ裸(はだか)でかなてこや 鶴(つる)ツぱしをおんがらかいてあつちこつちかつぽちりれば 小難屋のすみからおさんどんがでつかいけつをむくりや イヤむつくり〳〵はいだして〽見舞に来たおかゆなんどてゝの 椀(わん)に五六ぱいもかつくらつてひよつくり〳〵参る騒動起(そうどうおこ)した 鯰(なまづ)なんぞはふんじばつて鹿島(かしま)へ参る是からはつゞひて 能(よ)ひ事斗参るお夢なんざア朝から晩迠引切なしに まゐるあつちからもこつちからも小判や小|粒(つぶ)か参る 廓千軒金八万両の御受納