《割書:狂伝和尚|廓中法話》九替十年色地獄 全 九替十年色地獄 完 《割書:狂伝和尚(きやうでんおしやう)|廓中法語(くわくちうほうご)》九替十年色地獄自序(くがいじうねんいろぢごくしじよ) 諺(ことわざ)に北洲(ほくしう)の千歳(せんねん)も。 限(かぎ)り有(あり)といへるに。などてかく。 苦界(くがい)十年の限(かぎ)りなき事よ。九年 面壁(めんへき)の。 達(だる)しうと。 いへども。 年(ねん)ン一( ̄ツ)しのわる長(なが)き事を知(し)るべからず。 突出(つきだ)し より年明(ねんあけ)まで。 憂(うき)年月(としつき)の隙(ひま)行(ゆ)く駒下駄(こまげた)。無理(むり)な 驤(はるび)【※】もとかねばならず。いやな風(かぜ)にもなびかにやならぬ。 柳(やなぎ)の髪(かみ)にさす笄(こうがい)は。八 本( ̄ン)九 本( ̄ン)の浄土(しやうど)とも見 ゆれど。 旦(あした)にはたちまち損料(そんりやう)物の蔵にいたるときくならく。 誠(まこと)に㮈楽(ならく)【奈落】の責(せめ)なるべし。なんとマアそうじやねへかへ 寛政しん亥【?】の春   山東京伝 述 【※はるび=腹帯。字はこれではないかもしれないが、空欄ではルビをふれないため似た文字をあてた】 こゝに安( ̄ン)本( ̄ン)山三東寺 狂伝(きやうでん) おしやうといふのうらく【和尚といふ能楽】 ほうしはなの下のこんりうの【法師、鼻の下の建立の】 ため百日かあいだいろだんき【ため百日が間色談義】 をときけれはうわきでやいくん【を説きけれは浮気出会い群】 じゆしてちやうもんする【衆して聴聞する】 「きやうでん和尚しかつへらしく せきばらひしていわく これはいつれもごきどく にこさんけいなされた それつら〳〵おもんみれは むかしよりゆうりを【昔より遊里を】 こくらくと見たて大門口は【極楽と見立て大門口は】 とう門とし太夫の【(極楽の人間界に開いている)東門とし太夫の】 あけや入( ̄リ)はさん ぞんの御らい【三尊の御来】 かう大じんの【迎、大尽の】 ふところは わうこんの【黄金の】 はだへ【はだえ=肌】 などゝ たとゆれ とも それはきやくの【それは客の】 りやうけんにて【了見にて】 女郎の心には 中〳〵こくらくの【なかなか極楽の】 せつちんくらひ【雪隠くらひ】 てもなく【でも無く】 くがい十年の【苦界十年の】【九替十年とかかっている】 かしやくの【呵責の】 せめはちこくの【責めは地獄の】 しやううつして【「しょう」は「性」或は「象」か。正体、本性、姿、有様の意。うつして】 ごさるかゝる【ござる。かゝる】 くるしき 女郎の みの うへを しりなから みあかりを【身上がりを】 させ引て あそふをつう【遊ぶを通】 しやと思ふしゆじやう【じゃと思ふ、衆生】 そうはとらのかはのふん【僧は虎の皮のふん】 どしをしめぬはかりのおに【どしを締めぬばかりの鬼】 じやとかくほんぶがつうに【じゃ。とかく凡夫が通に】 なりたかるかおいらん上人の【なりたがるが、花魁(親鸞にかける)上人の】 おしへはたゞ一心いつかうになむやぼ【教へはたゞ一心一向に南無野暮】 だふつ〳〵と申せとの事てごさる【陀仏〳〵と申せとの事でござる】 これからいろぢこくのありさまを【これから色地獄の有り様を】 ときましやうみな【説きましょう。皆】 ゆるりつとちやう【ゆるりっと聴聞】 もんさつしやれや 【台詞、右ページより】 「狂伝おしやう はなの下の こんりうて こさるこめの せにを【銭を?】 上られ ませう 「おやぢの おだんぎと ちかつて おもしろひ 自笑(じせう)か【自笑が】【八文字屋自笑】 きんたんき【禁短気】【禁談義にかかっている】 このかたの せつほう【説法】 じや 「アヽありがたふ ごせへす なむやぼたふつ 〳〵〳〵 此いろちこくへおちるものゝはじめを たづぬるに身をすてるやぶさへ しらぬびんぼう人の娘にて しはゐてもするとをり【芝居でもする通り】 ゑてはおやはらからの【得ては親同胞の】 ためにしつみし【ために沈みし】 こひのふちにんじん【恋の淵。人参の】 のみかわりに此いろぢ こくへおちる事にて うられて行ときは 四鳥(してう)のわかれに ひとしくたとへて いはゝしでのたび【言はば死出の旅】 いきわかれの 門出にてそのみに ぜげんのつら【女衒の面】 つきもほんだにゆうた【つきも本多に結うた】 おにと思はれむかい の四ツ手かごはひのくるまの【四手駕籠(死出とかかる)】 やうにみへ ますじやに よつてびんぼう な事 を火の車と 申( ̄ス)はこのゐん ゑんでごさる 【左ページ】 かの川柳和尚の うたに 「こう〳〵にうられ ふこうにうけ出され とはむへなるかな〳〵 アゝなむやぼだ ふつ〳〵 「ふたりがなみ だのおちる おとぽた〳〵 〳〵〳〵 ぽたり 〳〵 【駕籠かきの台詞、右ページから左ページ下へ】 「コレおむすあんまり なきやんななみ だて かごが ふやける 「さきぼう しつかりか上るぞ 「二人のし うき づかいさつしやんな おつゝけ きん と し た おいらんになると 今のくらしでは まもりふくろ にももたれぬ やうなよき ふとんをきて ねる ぞや さてかのおにのやうなぜげんに いざなはれいろぢこくのあるじ ないしやうのていしゆ大王のまへゝ 出れはまづじやうッぱりの かゞみといふにうつしはなすじか とをるかとをらぬかみのしなへが よいかわるひかをみさだめよびだし つけまわし中三へやもちまはり【中三、部屋持ち等は遊女の階級】 とそれ〳〵のつみをきはめる かゞみなりぢごくのさたも かほしだいなり又そはに おかみさんといふがつきそひ ゐるおにの女ほうにはきじん といへどゑてはこのおかみさんと いふやつていしゆ大王より むねきなものにてつねに わがひざもとに ひるねかむはなと いふ二人の ものをつけ おきたれ【おき、誰】 さんはこの ころぢいろが できたの だれさんは よくきやく じんを ふるのと二かい【二階】 中の事を みだしかぎ 出しして いつ付口を これは いつでも こしもとの やくなり 「此かゞみを じやうッぱりの かゝみとなつくる ゆゑんはとかく 女郎はしやうッ ぱりなこんじやうで なけれはよき おいらんに なられぬゆへに かくなつくと なり 「もしおかみさんへうわきのさんは 此ころいせやのきやく人にほれて すつぱたかになんなんすつたと おはりしゆがはなしましたよと ひるねかむはなおはむきにいろ〳〵な事をしやべる 「ていしゆ 大王女郎の きやくに あがるをいち〳〵 くろがねの かんばん いたにつける 此ほうこう 人はおや はんを 通して め へり やし た わつ ちら は ふみ玉【?】 なざァ つかつた事は ござりやせん マアむなくらの 五両も かして おくんな せへしな 【左ページ挿し絵内説明】 じやうッぱりの鏡(かゞみ)【浄玻璃と強情っ張りがかかる】 昼寝(ひるね) かむ鼻(はな) きめうてうらいそれよりはさいのかはらの【帰命頂礼それよりは賽の河原の】 ことくにて今はかふろのなかま入り【如くにて今は禿(かむろ)の仲間入り】 じやけんな女郎につかはれてからだ 中はあざとなりまた竹村の あきぢうはこいちぢうつんではちゝこひし【空き重箱、一重積んでは父恋し】 二ぢうつんてははゝこひし又は【二重積んでは母恋し又は】 用たすそのひまにあき ざしきへあつまりてきしやご【きしゃご=食用の小さな巻き貝、おはじきにして遊ぶ】 はしきやいしなごにすこしは うきをわするれど たちまち やりてが【遣り手=遊女と客を取り持ち遊女を管理する女、遣り手婆】 みつけだし しかり ちら すぞ あはれ なり なむ やぼ だん ぶつ なむやぼた 「此所のかき大しやうを しんぞうぼさつと 申奉り かたてに かなほうを もちたゝせ給ふ これはかふろの わるひ事を みだして おいらんへかなぼうを ひかんとの御せい ぐわんなり 「又かたてには 玉子やきの 四角をふた ちやわんに 入てもち給ふ これ女郎の まことといふ みせかけなり 「又此しんそう ぼさつもあん まりきやくを ふるときは やりてが大 こくはしらへ ゆはへつけ しんそう ぼさつきやく しろこん りうとぞ しかりける 【台詞、右ページより】 「今用をしてくるから おれもしんに 入てくだせへ 「おらは きさまは いやだいのふ しげみ どん なにやら あたりな ものか ほん とうに あ たつ たは それよりだん〳〵 せいじんして ひつこみ かぶろとなり ほどなく ばからしう ざんすの川と いふにいたり 此川にて 水あげをされて みせへ出るそれを いやがるときは やりてばゞァ つらのかはを はぐ 「此川をわたれは それ〳〵の きりやうにて 中三にも へやもちにも しんさうにも なるなり 「わつ ちやァ みづ あげは いやで ざんす ほうい 〳〵 やりて一名 しぶいかほの ばゝァ おめへの つらの かは も とん だ あつい かはた ぞ おしい もの だ きん ちやく に ぬつ て もら はふ 【立て看板】 ざん す の 川 しよくわいなぞ にはさしき いろ〳〵 うまさふ なものか 出ても みたば かりで くふ事 ならず アゝそんじよ それをくつ たらさぞうまからふ たれそれをたへたら おいしからふと 思へとも まん ざらめ のまへに ありなから くわれぬ ゆへげびぞう な女郎なぞ にはくいもの からひが もへるやう にみゆる なり又 きやく も みへ ほう くひたくつても くわすたがいに にらみ つけて いる これ かき た くの【?】 くるし み なり 「そうで おす ぞくに とうもろこし なぞが よう すよ 「もし おいらん ちよつと みゝを おだし なんし 竹村の 上あん も まん ざらで ない ねへ 「ナニ わつちらは やつはりねぎ まがおい しひ よ 「りてふちつとなんぞ くわつせへ マアぬし くわつ し おいらァ まだ はらが よし さ 作者曰 「くいもの からは ひが もへる きやくは きが もめ る だ らう 「ちと なんそ めし 上り まし ちくしやう とうの【畜生道の】 くるしみは ふりそで しんそうの みのうへに ありさし きではきやく【座敷では客】 にみへとこの【に見え床の】 内へはいつて みると馬の やうなきやく たび〳〵 ある事也 これらにも しんほう して あはねはならず そのくるしみ ふでにのへかたし【筆に述べ難し】 「又ことはら れるか 馬〳〵 しひ 「あのきやく人□きりは あるのだしんぼう し な せへ 「ばからしひ ざしき では 人のやうだが とこの内ては 馬だものを とうして あわれるものか またいけづなひしんそうなぞは やりてがもらつたぶらへ【?】小がたな はりをたてゝせめる づるひきの女郎を かしやくするゆへ これをづるきの 山といふ【づる引きと剣(つるぎ)がかかる】 「あんまりだ かう せずは きく まひ 「これから ともべやへ にけこまふ 「まちなんし ながしへ ゆびのわを おとしんした とつてきて から せめら れん しやうと しんぞう へいき なり 中でもとうらくな 女郎はいろとさけと くらいものに しんしやうを いれあけもの日の みあがり八重【?】かり のそんりやうが つもり〳〵てつまら なくなりこふくや【呉服屋】 こまものやそん【小間物屋、損】 りやうやきのじや【料屋、喜の字屋】 までにかしやく【まで呵責】 せられかんの うちても【寒の内でも】 すつはだかで いるこれを はつかんぢごく【八寒地獄】 と いふ 「へいきも ほどのある ものだ ほんのへいき の引たをしだ おごるへいき ひさし からずとは おめへの こつた 「なにさ これても からたじうを かほだと 思へはへいきさ おまんまの かわりに 風くすり をたべれば かぜも ひきん せん 「みなんす通り わつちとした おびばかりだから りやうけんが ならざァ くびでも もつて いきなんし ばか らしひ 小まものや 「わたし がほんの すいぎう【水牛】 ておまへに かしたが べつ か う【鼈甲】 かた が つき ませ ぬ ぞう げそん【象牙】 なこつ ちやァ らちやァ あく めへ 【かんざしなどの原料名をならべてツケ取り立ての口上にする洒落。】 きのじや 「だん〳〵か した せにのかづのこ【数の子】 なつけの【菜漬け】 しやうゆのからひ事を【醤油の辛い事】 いつてもそつちの まゝには【まま(飯)】 ざぜんま【座禅豆】 ごまめ【鱓】 口まめ その いゝわけも ひたしもの【浸し物】 もふあさつけの【浅漬け】 事はおけ二日と またれぬふた ちやわん ふしめを みぬうち はらつた 〳〵 【食べ物の名前を並べてツケ取り立ての口上にする洒落。】 此いろぢごく にてはしや ばでまだ かたびら をきる じぶん八月 数日に白むくの かさねぎを させるざんしよの つよひじぶんは そのあつさ こたへられず そのくめんの くるしさ たとへんに ものなし べつして かねのまち がつた 女郎なぞは そのうへにこびん からひがでる いわゆる しやうねつ ぢごくの【焦熱地獄】 くるしみ これなり あせ つらゝの ごとくに ながれる ほんとうのぢごくては うそをついたものは ゑんまわうみづから したをぬき給ふ 此いろぢごく にてはこつち からうそを ついてむかふの したのやうな ものをぬきたがる しかしこれもぬか るゝほうよりぬく ほうがくるしみ なりこれを 抜舌(はつぜつ)ぢごくといふ 「此したを三まひ おくんなんし ても此うちを ちや屋へつけ金が 一分にかへしのつかひものゝ たばこばこが二しゆと一( ̄ツ)ほんよ のり入とみづ引で二十四文よ さし引くと 二両二分なにがしと なりんす 「今どきの きやくしゆは したをこまひ つかひなんす からいゝのさ とこ ばな□ 舌を三 まひ ぬかれは アゝ いた【?】 事 〳〵 てへ 〳〵 くる し ひ こつ ちやァ ねへ ためになるきやくはらをたつてよその女郎に なじみさきの女郎がほりものをしたと きけばこつちでもやりてやばんとう 女郎ら立合にてゆびをきらせる たがいにしんけんしやうぶの きやくあらそひこれしゆら だうのくげんなり【修羅道の苦患なり】 「ゆびをきる所の ゑにひとりで きつてゐるは あんまり うそで おすねへ 「てうしのしりで【銚子の尻で】 ぶつも久しい ほうだよ 「ついてに このちで でき合の きしやうを【起請を】 二三まひ かいて おきい しやう 「ばけのと さん一きれ もりに しても ばの あるやふに きり なん し 「ち こめ や ぎん はゝは きて ゐん すかへ 月のさはりと なるときは人 なみにすへふろへも はいられず さふひ【寒ひ】 じぶんも ぎやう ずいを つかふ その ゆをわかして したはたらきに 一分つゝもやらねば ならずつがうの わるいときなぞは みをきらるゝ 思ひなりこれぞ ちのいけのくるしみと いつ川べし【?】 「下はたらきのおにくち 小言をいふ 「いゝかげんにして あがんなせへ わつちらがくめの【久米と汲めがかかる】 仙人てみたがいゝ じやうふだんめを【?】 まわしやす 「モシちよつと みゝをおだし なんし 「はんに又松やの きやくつらが きんすとさ いや□ の□ むけんぢこくといふはこのいろぢごくに うつてつけたるぢごくにてそのかみ 梅がへより此ぢごくはしまりいしにもせよ 金にもせよといふたことばののこりて 女郎のみふんさうをうに【身分相応に】いしにもかぎらず 金にもよらずてうづ はちをくめんして かつてしだいに つく事なり 「さきのよは ゑい〳〵ゆきの ゆうべのよたかと なりこのよはあさ めしがひるに なるともだんなへ だんなおかみさん ましのかわで【?】 おす ねへ 「わつちやァ ちつと ねがひの すじが ちがふ 金なら たつた 六十か 七十りやう しゆうながらしろもの ならふしきのよぎに いたじめの三( ̄ツ)ふとん しきぞめのそばまで つけてほしひナア 「中にもふりそでの しんぞうなぞはてうづ ばちやひしやくのくめんも できかねれど 心ざす所はやつはり むけんのかねちやわんを てうづはちになぞらへ かんざしをひしやくに たとへてむけんの はしたぜにを つくもあり 「わたくしはぜになら たつた二( ̄タ)すじか 三すじ キの字やへ おまんまの おかづを とりにやる ほどのぜにがほしひナア 「二八十六でぶつかけ一( ̄ツ) 二九の十八てあまさけ三ばい 四五の二十でだんごか四くし 【無間の鐘は歌舞伎『ひらかな盛衰記』に出てくる伝説で、ある仙人が不動明王に捧げるため鐘を作り山の上の松の木にかけたが、これを七回つけば末長く長者になれると聞き、極悪な長者が欲に駆られてついたところ三度の食事がみな蛭になり大変な苦しみの末に死んだとされる。「女房の朝寝と無間の鐘は朝のごはんが蛭)昼)になる」と歌われた。歌舞伎では遊女の梅ヶ枝が恋人の鎧を質屋から出すためにお金が必要になり、無間の鐘の伝説を思いだし、手水鉢を鐘に見立ててつくと三百両降ってくる。】 かゝるいろぢごくのくるし き事をごくらく 通土(つうど)の一( ̄ツ)寸さきは やみだによらいと申 大じんぼとけふびんに おぼしめし ていしゆ大王に さう だん し て しま【?】 わう ごんを おゝく出しみうけ してごくらくつうどへ すくひとり給ふぞ あらありがたやおたうとや いもとやおぢや いとこはとこふた おやは申におよばず たちまちじやうぶつ うたがいなくうかみ上ると いふ事はこんな事から はじ まり ける 女郎 ごうの はかりに かゝる 「よい とりが かゝつたと よく しん まん〳〵 たるおにのやうな ものあつ まり かの三うらやの ためしを引ごうの はかりに かけていれは 女郎のからだより みうけきんの ほうが おもひゆへ これにて さうだん きまる 「此おいらんも ものまへなぞには おしがおもかつ たがからだは べらぼうに かるひぞ 「てい しゆ 大わう けん ぶつ する 「おいらんは おしあわせだ かくてみうけのだんかう きはまれはあす からみせを引やんすやつ さもつさの いさくさなく吉日を えらみつゝかのいつすん さきはやみだによらい 御らいくわうまし〳〵 ごくらくつうどへ引とり 給ふくがい十年の くるしみ一じ に めつしきやくの うてなに いざなはれ くわたく をいづる よつでかご のりのみち をぞいそ ぎ 行 「によらいこくうに そう花を ふらせ二てう つゞみの げいしや天人 おんがく する 御しんのほど ありかたふ おす こつちも あり がたや 〳〵 ふところ から さす ごくわうはみな かねのひかりなり やみだもぜにとは 此事〳〵 かふ して いては どうも ひき にくい かくのごとくにくがい十年があいだいろ ぢごくのせめをふびんにおもはば ふられてもはらたつべからずもてゝも はまるべからずよけいの金あらば くるしみをもすくふべしよいほど〳〵に あそひてたるをしりはやく丘隅(きうぐう)にとゞまるべし つうのつうとすべきはつねのつうにあらず 此ことはりをしらばかのなむやぼだぶつも いらぬほどにつうともいわれず やぼともいわれずたゞ 無名(むめい)だ〳〵と となへ さつ しやれ まず こんにちの せつほうは これまでに いたさう ヂヤン〳〵〳〵 〳〵〳〵〳〵 「アゝ百日の せつほうも への一としだ【「屁のごとし」または「屁の一文字」か】 京伝戯作 清長画