KOBE-00947 書名 旅行用心集 刊 1冊 所蔵者 神戸大学附属図書館社会科学系図書館 文庫名 住田文庫 請求記号 住田-5A-235 神戸大学書誌ID 2002231359 撮影 凸版印刷株式会社 令和元年11月 国文学研究資料館 【参照資料:国会図書館デジタルコレクション>日本衛生文庫>第5輯>旅行用心集 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/935572/108】 ●模範解答付きコレクションは、国会図書館が公開する翻刻本を参照資料として、自分で答え合わせをしながら翻刻を進めることができるコレクションです。 ●参照する翻刻本では、かなを漢字にしたり、濁点や句読点を付加するなど、読みやすさのために原書と異なる表記をしている場合があります。入力にあたっては、「みんなで翻刻」ガイドラインの規則に従い、原書の表記を優先し、見たままに翻刻して下さい。 ●参照する翻刻本と原書の間で、版の違いなどにより文章や構成が相違する場合があります。この場合も原書の状況を優先して翻刻して下さい。 旅行用心集 全 自序 夫(それ)人々 家業(かきやう)の暇(いとま)に伊勢参宮(いせさんぐう)に旅立(たびたち)する とて其(その)用意(ようい)をなし道連(みちつれ)等 約束(やくそく)しいつ 何日(いつか)は吉日と定(さだめ)爰(ここ)彼(かしこ)より餞別物抔(せんべつものなと)到来(とうらい) し家内(かない)も其(その)支度(したく)とり〳〵に心も浮立計(うきたつはかり) いさきよきものはなし殊(こと)に首進(かといて)の日は親(しん) 族(ぞく)朋友(ほうゆう)の徒(ともから)其(その)所(ところ)の町はつれまて送行(おくりゆき) 酒宴(しゆえん)を催(もよう)し旅中(りよちう)の心得にもと思ふことを 面々 親切(しんせつ)に心付る類(たぐひ)は各(おの〳〵)皆(みな)実意(じつい)にて脇眼(わきめ) 【欄外横書き】文化七年庚午秋開彫 旅行用心集 全 自序 夫(それ)人々 家業(かきやう)の暇(いとま)に伊勢参宮(いせさんぐう)に旅立(たびたち)する とて其(その)用意(ようい)をなし道連(みちつれ)等 約束(やくそく)しいつ 何日(いつか)は吉日と定(さだめ)爰(ここ)彼(かしこ)より餞別物抔(せんべつものなと)到来(とうらい) し家内(かない)も其(その)支度(したく)とり〳〵に心も浮立計(うきたつはかり) いさきよきものはなし殊(こと)に首進(かといて)の日は親(しん) 族(ぞく)朋友(ほうゆう)の徒(ともから)其(その)所(ところ)の町はつれまて送行(おくりゆき) 酒宴(しゆえん)を催(もよう)し旅中(りよちう)の心得にもと思ふことを 面々 親切(しんせつ)に心付る類(たぐひ)は各(おの〳〵)皆(みな)実意(じつい)にて脇眼(わきめ) よりも羨敷(うらやましき)もの也其外 勤務(きんむ)【左ルビ「つとめ」】渡世(とせい)の事にて 年毎(としこと)に四方(しほう)の国々へ旅立するは老若(らうにやく)ともに 気(き)のはりありて是程(これほと)いさましき物はなし 東国(たうこく)の人は伊勢(いせ)より大和(やまと)京大坂四国 九州(きうしう) 迄も名所旧跡(めいしよきうせき)神社仏閣(じんしやぶつかく)を見回(みめぐ)り西国(さいこく)の 人は伊勢より江戸 鹿島(かしま)香取(かとり)日光奥州 松島(まつしま)象潟(きさかた)信州(しんしう)善光寺(ぜんかうじ)迄も拝(おが)み回(めぐ)らんことを 願ふなりされば家内 息災(そくさい)にて家業(かきやう)繁栄(はんえい)の 徒(と)主人(しゆじん)は勿論(もちろん)家来 眷属(はんぞく)に至(いたる)迄伊勢参 宮の願(ねかひ)は成就(じやうじゆ)する事のならわしは我 神国(しんこく)の有かたきことならずや抑(そも〳〵)士農工商(しのふこうしやう) の徒(と)日々其家業を正直にして専(もつは)ら勤(つとめ) 怠(をこた)らされば一日として乏(とほし)きことなく生涯(せうがい) 安穏(あんのん)に暮(くら)し楽(たのし)む事 偏(ひとへ)に神仏(しんぶつ)の教(おしへ)を 守(まもる)の感応(かんをふ)なるべし然とも其中(そのなか)に富貴(ふうき) の人にても生得(せうとく)病身(ひやうしん)にて心にのみやたけに 思ふとも自(みつか)ら旅行し珍敷(めつらしき)勝景(けしき)を見て 山坂(やまさか)を歩行(あゆみ)大山(たいさん)霊場(れいじやう)に登(のぼ)ることあたはず 偶(たま〳〵)駕籠(かご)にて旅行すれとも病身にては いかなる金銀財宝(きんぎんざいほう)にあかしするとも貧者(ひんじや) の壮健(すこやか)なる楽(たのし)みに及ふことあたわざるは 無念(むねん)ならずやしかるに富貴(ふうき)の人は更也(さらなり) 貧賤(ひんせん)にても其(その)身(み)壮健(すこやか)にして参宮旅 行すること此上なき幸(さいわ)ひなりといふべし 扨(さて)旅行する人 発足(ほつそく)の日より嗜(たしな)むべきは 譬(たとへ)家来(けらい)ある人なりとも股引(もゝひき)草鞋(わらじ)等迄も 自(みつか)ら着(ちやく)し朝夕(てふせき)の喰事等も心に叶ぬ ことを堪忍(かんにん)して喰ふことを面々の能(よき)修行(しゆきやう)成と 知へしされば泊々(とまり〳〵)土地(とち)処(ところ)の風俗(ふうぞく)によつて けしからぬ塩梅(あんはい)の違(ちがひ)あるものなり此□の事 を兼而(かねて)心得 居(をら)ねば大に了簡(りやうけん)違(ちが)ふものなり 或は風雨(ふうう)に逢(あふ)日もあり又は泊(とまり)の都合(つがふ)にて 早朝(さうてふ)より霧(きり)の深(ふか)きに山をこへ夜(よる)は夜具(やぐ) の薄(うす)きを纏(まと)ひ或は道連(みちつれ)仲間(なかま)に不和(ふわ)を 生(せう)じ或は足痛(そくつう)の人ありて道(みち)に後(おく)れ又は 偏地(へんち)の寒暖(かんだん)によつて持病(じひやう)起(おこ)りて難義(なんぎ)に 及ふこともありされとも我々か内にて薬療(やくりやう)の 手当(てあて)するやうなることはならず長旅(ちやうりよ)の艱難(かんなん)千(せん) 辛(しん)万苦(ばんく)いふへからず依(よつて)_レ之(これに)旅(たび)は若輩(ちやくはひ)の能(よき)修(しゆ) 行(きやう)成(なり)といひ又 諺(ことわざ)にも可(へき)_レ愛(あひす)子(こ)には旅(たび)をさすべ しとかや実(げ)に貴賤(きせん)共に旅行せぬ人は件(くだん)の 艱難(かんなん)をしらずして唯(たゝ)旅(たび)は楽(たのしみ)遊山(ゆさん)の為(ため)にする 様(やう)に心得 居(をる)故(ゆえ)人情(にんじやう)に疎(うとく)人(ひと)に対(たい)して気随(きずい)多く 陰(かげ)にて人に笑指(わらひゆび)さゝるゝこと多かるへし既(すて)に 大名(たいめう)公家(かうげ)の貴(たつとき)御方(おんかた)といへども譬(たとへ)強(つよき)風雨(ふうう)成共(なりとも) 河留(かわとめ)の外(ほか)は定式(じやうしき)の御泊迄御出有こと見て知べし 況(いはん)や平人(へいにん)の旅行に我侭(わかまゝ)すべけんや於_レ是世上の人 其(その) 艱難(かんなん)を凌(しのき)忍(しのん)で人情(にんじやう)に通し人の上をよく 思ひやらば人に能人(よきひと)と呼(よば)れ立身出世(りつしんしゆせ)もして 子孫繁栄(しそんはんゑい)ならんこと現然也(げんぜんなり)故(ゆえ)に可(へき)_レ愛(あひす)子(こ)には旅 をさすべしとは其(その)教(おしへ)をいふなるべしされば余 若(わか)きより旅行を好(この)んで四方(しほう)の国々へ杖(つえ)曳(ひき)し を知る友人(ゆうじん)の春秋(はるあき)旅立する毎(ごと)に其(その)枝折(しをり) とも成へきふしを乞(こひ)ける度々(たひ〳〵)是彼(これかれ)認(したゝ)め遣し けるが近比(ちかごろ)は年老(としをひ)て其(その)つと〳〵に筆取(ふてとる)も物うく 又 其(その)求(もとめ)に応(をほ)ぜんもほひなく是迄(これまて)人々に認(したゝ)め 遣(つかわ)したるを集(あつめ)其上(そのうへ)に又旅の助(たす)けに成べき くさ〳〵を思ひ出るに任(まかせ)て書つゝり小冊と なし其(その)攻(せめ)を防(ふせか)む為(ため)に人のすゝむるに従(したが)ひ 梓(あづさ)にちりはめて旅行用心集(りよかうようじんしう)とは名(な) つくることしかり 文化庚午六月 八隅芦庵   惣目 一 東海道(たうかいだう)勝景(せうけい)里数(りすう)  一 木曽路(きそぢ)勝景(せうけい)里数(りすう) 一 五岳(こがく)真形之図(しんきやうのづ)  一 道中(たうちう)用心(ようじん)六十一ケ条(でふ) 一 水替(みつかわり)用心之事(ようしんのこと)  一 寒国(かんこく)旅行(りよかう)心得之事(こころえのこと) 一 寒国(かんこく)旅具(りよぐ)并(ならびに)図式(つしき)  一 寒国(かんこく)ナテツキ之事(のこと) 一 山中(さんちう)狐(きつね)狸(たぬき)猪(しゝ)狼(おゝかみ)防方之事(ふせきかたのこと)  一 船中(せんちう)用心(ようじん)四ケ条(でふ) 一 船(ふね)に酔(ゑひ)たる時(とき)の方(ほう)  一 駕籠(かご)に酔(よわ)ざる方(ほう) 一 落馬(らくば)したる時(とき)の方(ほう)  一 毒虫(どくむし)を避方(さくるほう) 一 道中(たうちう)泊(とまり)にて蚤(のみ)を避方(さくるほう)  一 道中(たうちう)草臥(くたびれ)を直方(なをすほう)并(ならひ) ̄ニ妙薬(めうやく) 一 湯気(ゆけ)にあかりたる時(とき)の方(ほう)  一 道中(たうちう)所持(しよじ)すべき薬之事(くすりのこと) 一 道中(たうちう)所持(しよじ)すべき品(しな)の事(こと)  一 道中(たうちう)日記(につき)したゝめ方之事(かたのこと) 一 日(ひ)の出入之事(でいりのこと)  一 一年(いちねん)昼夜(ちうや)長短之事(ちやうたんのこと) 一 月(つき)の出入之事(でいりのこと)  一 潮(しほ)の盈虚之事(みちひのこと) 一 日和見様(ひよりみやう)并(ならひ) ̄ニ古歌(こか)諺(ことわさ)  一 旅行(りよかう)教訓之歌(きやうくんのうた)二十一首 一 旅立(たひたち)の歌(うた)  一 白沢之図(はくたくのづ) 一 大日本国(だいにつほんこく)正真(せいしん)縮図(しゆくづ)  一 諸国(しよこく)温泉(おんせん)二百九十二 ケ所(かしよ) 一 諸国(しよこく)御関所(おんせきしよ)  一 西国(さいこく)秩父(ちゝぶ)坂東(はんたう)観音(くわんおん)霊場(れいち) 一 諸国(しよこく)道中附(たうちうつけ)   ○東海道○木曽路○佐屋廻り○本坂越   ○秋葉鳳来寺〇名古やヨリ中仙道○宮ヨリ越前道〇加賀信州道   ○伊勢参宮道○伊勢ヨリ大和廻り○伊勢ヨリ田丸越○大津ヨリ大坂道○伏見ヨリ大坂ヘ下船○大坂ヨリ紀州道   ○江島鎌倉道○大山参詣道○江戸ヨリ甲州道○大坂ヨリ長崎道○同長崎ヘ船路○小倉ヨリ薩摩道   ○江戸ヨリ房総道○甲州ヨリ富士山道〇江戸ヨリ日光道○水戸海道○江戸ヨリ鹿島香取銚子道   ○白河ヨリ会津道○会津ヨリ越後道○米沢ヨリ庄内道○乗折ヨリ秋田道〇秋田ヨリ津軽道○外国之里数 春燕五十三駅 秋鴻七十二程 【上段】 東海道 日本橋二リ 品川二リ半 河崎二リ半 かな川一リ九丁 程谷二リ九丁 戸塚一リ三十丁 藤沢三リ半 平塚二十六丁 大磯四リ 小田原四リ八丁 箱根三リ廿八丁 三島一リ半 沼津一リ半 原 三リ六丁 吉原二リ三十丁 蒲原一リ 由井二リ十二丁 興津一リ三丁 江尻二リ廿七丁 府中判一リ半 まりこ二リ 岡部一リ廿九丁 藤枝二リ八丁 島田一リ 金合一リ廿九丁 日坂一リ廿九丁 掛川二リ十六丁 袋井一リ半 見付四リ八丁 【下段】 木曽路 京 三リ 大津三リ半六丁 草津一リ半 守山三リ半 武佐二リ半 愛知川二リ八丁 高宮一リ半 島井本一リ六丁 番馬三十丁 醒井一リ半 柏原一リ 今須一リ 関ケ原一リ半 垂井一リ十三丁 赤坂二リ八丁 み江寺一リ六丁 合渡一リ半 加納四リ八丁 鵜沼二リ 太田二リ 伏見一リ五丁 御たけ三リ 細久手一リ三十丁 大久手三リ半 大井二リ半 中津一リ五丁 落合一リ五丁 馬込二リ 妻籠一リ半 みとの二リ半 野尻一リ三十丁 原三リ九丁 上ケ松二リ半 福島一リ半 宮ノ越二リ 薮原一リ半 ならゐ一リ半 【里数は割書で表記されていますが、文字数削減のため省略しています】 【上段】 浜松二リ三十丁 舞坂海上一リ 荒井一リ廿六丁 白す加一リ半十六丁 二川一リ半 吉田二リ半四丁 御油十六丁 赤坂二リ九丁 藤川一リ半 岡崎三リ三十丁 池鯉鮒二リ三十丁 鳴海一リ半 宮 海上七リ 桑名三リ八丁 四日市二リ廿七丁 石葉師ニ十七丁 庄野二リ 亀山一リ半 関 一リ半 坂下二リ半 土山二リ半十一丁 水口三リ十二丁 石部二リ半七丁 草津三リ半六丁 大津三リ 京都 凡行程 合百廿 四里半 十五丁 【下段】 贄川二リ 本山三十丁 洗馬一リ三十丁 塩尻三リ 下諏訪五リ八丁 和田二リ 長久保一リ半 芦田一リ八丁 望月三十二丁 八はた廿七丁 塩なた一リ半 岩村田一リ七丁 小田井一リ十丁 追分一リ三丁 沓掛一リ五丁 軽井沢二リ半八丁 坂本ニリ半 松井田一リ三十丁 安中三十丁 板鼻一リ三十丁 高崎一リ十九丁 倉ケ野一リ半 新町二リ 本庄二リ廿九丁 深谷二リ二十丁 熊谷四リ八丁 鴻の巣一リ三十丁 桶川三十丁 上尾二リ八丁 大宮一リ十一丁 浦和一リ半 わらび二リ八丁 板橋二リ 江戸日本橋 凡行程 合百三 十五里 十一丁 【里数は割書で表記されていますが、文字数削減のため省略しています】 【上段】 五岳真形図 東岳泰山 北岳恒山   中岳嵩山 西岳華山 南岳衡山 【中段】 抱朴子云凡修道之士棲 隠山谷須得五岳真形図  佩之則魑魁精怪莫能近 之昔漢武元年七夕西王 母降於承華之殿進蟠桃 命仙女董双成許飛㻴等 奏雲傲度歌曲而為武帝 寿又以錦嚢書巻示之則 此図也故知五岳為万地 之尊其形天真則世人渡 江航海随身帯之可却風 濤之倹所居浄処香花供 養必降禎祥歴有奇験可 不敬哉 【下段】 五岳(ゴカク)ヲタツ トムヿハ書ノ 舜典(シユンテン)ニ始リ 和漢(ワカン)コレヲ 尊信(ソンシン)スルヿ ヒサシ世(ヨ)ノ人(ヒト) 山坂(ヤマサカ)河海(カカイ)ヲ ワ夕ルニ此図(コノツ) ヲ帯(ヲフ)レハ風 波ノ倹難(ケンナン)ナ ク且(カツ)寿福ヲ 祈(イノル)ニ其(ソノ)奇験(シルシ) アルヿ本文 ニテシルベキ ナリ 旅行用心集   道中用心六十一ケ条 一 初(はじめ)て旅立(たびたち)の日は足(あし)を別而(へつして)静(しつか)に踏立(ふみたて)草鞋(わらじ)の加(か)  減(けん)等(とう)を能(よく)試(こゝろみ)其(その)二三日が間(あひだ)は所々にて度々(たひ〳〵)休(やすみ)足(あし)  の痛(いたま)ぬやうにすべし出立(しゆつたち)の当坐(とうさ)には人々心は  やりておもはず休(やすみ)もせず荒(あら)く踏立(ふみたつ)るものなり  足(あし)を痛(いたむ)れば始終(しぢう)の難義(なんぎ)になることなり兎角(とかく)  はじめは足(あし)を大切(たいせつ)にするを肝要(かんよう)とす 一 道中(たうちう)所持(しよじ)すべき物(もの)懐中物(くわいちうもの)の外(ほか)成丈(なりたけ)事(こと)少(すくな)に  すへし品数(しなかつ)多(おほ)ければ失念物等(しつねんものとう)有て却而(かへつて)煩(わつら)  はしきものなり 一 駅舎(はたこや)へ到着(たうちやく)して第(だい)一に其地(そのち)の東西南北(とうざいなんほく)の方(ほう)  角(かく)を聞定(きゝさため)次(つき)に家作(やつくり)雪隠(せつゐん)裏表(うらおもて)の口々(くち〳〵)等を見覚(みおほへ)  置(おく)事(こと)古(ふるき)教(おしへ)なり近火(きんくわ)或(あるひ)は盗賊(とうぞく)又は相宿(あひやと)に喧嘩(けんくわ)  等(とう)ある時(とき)のためなり 一 道中(たうちう)初てする輩(ともから)馬駕籠(むまかこ)人足(にんそく)の用あらば宵(よひ)の  中(うち)に亭主(ていしゅ)にあひて頼むべし相たひにては途中(とちう)  にてこまる事あり帳面(ちやうめん)ある人は着(ちやく)したる時宿  のものへ渡(わた)し頼むへし扨(さて)明朝(めうてふ)何時(なんとき)出立(しゆつたち)と宵(よひ)  より宿へ申付 其(その)刻限(こくげん)に応(おほ)じ其間(そのま)にあふ程(ほと)に  自(みつから)起(おき)若(もし)宿屋(やとや)不(おき)_レ起(ざる)時(とき)は宿(やと)を起(おこ)し膳(ぜん)の用意(ようゐ)  する迄(まて)に支度(したく)をいたし草鞋(わらじ)をはく計(はかり)に  して膳(ぜん)に向ふべしさなければ人馬(にんば)の用意も  自然(しぜん)と等閑(なをざり)になりて手間取(てまとり)都合(つかう)あしき  なり旅(たび)にては貴賎(きぜん)ともに此(この)法(ほう)を守(まも)らされば  手廻(てまは)し悪(あし)しと知(しる)へし 一 朝(あさ)はせわしき故(ゆえ)持(もち)たるもの取落(とりおとす)ものなれは宵(よひ)に  よく取しらべ用(よう)不用(ふよう)の心組(こゝろくみ)をして風呂敷(ふろしき)に包(つゝみ)  取ちらさぬよふに心懸(こゝろがく)べし足袋(たひ)は床(とこ)の中(うち)にて  はくほとに手廻しせされば朝おそく成なり  朝のおそきは一日のをくれとなる也 一 旅宿(たびやと)は定宿(じやうやと)は勿論(もちろん)其(その)道筋(みちすじ)初而(はじめて)にて不案(ふあん)  内(ない)ならば成丈(なりたけ)家作(かさく)のよき賑(にきや)かなる泊屋(とまりや)へ泊(とま)る  へし少々(せう〳〵)価(あたひ)高直(かうじき)にてもそれたけの益(ゑき)有(ある)也 一 旅行(りよかう)は兎角(とかく)暑寒(しよかん)をよく凌(しのぐ)べきなり就(なかん)_レ 中(づく)夏(なつ)  を心付へし先(それ)暑中(しよちう)は人々の脾胃(ひゐ)ゆるみて  食物(しよくもつ)を消化(せうくわ)しがたし因而(よつて)しらぬ魚(うを)鳥(とり)貝類(かいるい)  筍(たけのこ)菌(きのこ)瓜(うり)西瓜(すいくわ)餅(もち)強飯(こはめし)の類(るい)多(おほ)く喰(くら)ふべから  ず夏(なつ)は食傷(しよくしやう)より寉乱(くわくらん)等 発(はつ)し難義(なんき)に  及ふことあり春(はる)秋(あき)冬(ふゆ)は夏(なつ)に準(しゆん)じ知べし  清輔 ゆくまゝに 花の梢と なりにけり  よそに  見くつる  峰の  しら雲 一 空腹(くうふく)なるとて道中(だうちう)にて飽食(ほうしよく)すべからず尤(もつとも)  取(とり)いそぎ喰ふへからず静(しつか)にくふべし至極(しごく)空(くう)  腹(ふく)になれば心(しん)疲(つかれ)て居(をる)故(ゆえ)飽食(ほうしよく)すれば忽(たちま)ちに  気(き)を塞(ふさき)又は急病(きうしやう)等を発(はつす)る事あり心得べし 一 空腹に酒飲へからず食後に呑べし尤 暑寒(しよかん)  ともにあたゝめてのむへし 一 道中にて焼酎(しやうちう)を漫(みだり)に飲(のむ)べからず中(あた)る人まゝ  あり上製(しやうせい)【左ルビ「よきもの」】のものあらば少々呑へし尤(もつとも)夏(なつ)のうち  霖雨(なかあめ)又は湿気(しつき)多(おほ)き土地(とち)なとにては焼酎(しやうちう)并 ̄ニ泡盛(あわもり)  酒(しゆ)等少々 飲(のめ)ば湿毒(しつどく)をはらふもの也然れ共 秋(あき)冬(ふゆ)  は呑べからす 一 空腹(くうふく)に風呂(ふろ)へ入(いる)へからず食後(しよくご)にても暫(しはら)く腹気(ふくき)  を和(くわ)して入べし去(さり)なから多勢(たせい)にて跡(あと)の差(さし)  支(つかい)になりて空腹にてもいらねばならぬ時は先(まづ)  足(あし)を度々(たび〳〵)湯(ゆ)にてぬらし其後(そのご)風呂(ふろ)に入べし  長湯(なかゆ)すべからず空腹には別而(へつして)湯(ゆ)げにあかる  ものなり心得有べし 一 相宿(あひやと)にて風呂(ふろ)へ入には宿(やと)の案内(あんない)次第(しだい)其上(そのうへ)  にて入事なれとも宿屋(やとや)取込(とりこみ)客人(きやくじん)の前後(ぜんご)を  取違(とりちかひ)等 有(ある)時(とき)はむつかし出来(でき)るものなれは  相客(あひきやく)の様子(やうす)を見受(みうけ)もし其(その)中(うち)に貴人(きにん)等あら  ば先(それ)を先(さき)へいれべし是等(これら)も前後(ぜんご)の争(あらそ)ひ  より物(もの)いひ出来(でき)るものなり旅(たび)は物事(ものごと)を扣勝(ひかいかち)  にすれば身の益(ゑき)有こと多し 一 殊(こと)の外(ほか)草臥(くたびれ)たる時(とき)至極(しごく)熱(あつき)居風呂(すへふろ)へ常(つね)よりも  久(ひさ)しく入ば草臥(くたびれ)直(なほ)る也 其(その)節(せつ)は顔(かほ)を度々(たび〳〵)洗(あら)ふ  べからず顔(かほ)を度々あらへば逆上(きやくじやう)するものなり 一 一通(ひととほり)の旅(たび)にて格別(かくべつ)に急(いそ)くことなくば夜道(よみち)決(けつ)  而(して)すべからず都而(すべて)旅(たひ)は九日路(こゝのかぢ)の所(ところ)ならば十日に  て行かんとすればいそきて夜道(よみち)等するよりも猶益  多きこと有ものなり又 河越(かわこし)等の都合あしき折は  其(その)斟酌(しんしやく)あるべし 一 道中(たうちう)は色慾(しきよく)を別而(べつして)慎(つゝし)むべし売女(はいしよ)は湿毒(しつどく)あ  り暑中(しよちう)は尤(もつとも)感(かん)【左ルビ「うつり」】じ易(やす)し怖(おそ)るべきことなり又  夜具(やく)にて湿(しつ)を受(うく)るものなれば香気(かうき)のものを  懐中(くわいちう)して其 湿邪(しつぢや)を避(さく)べし 一 夏(なつ)の道中(だうちう)は折々(をり〳〵)渇(かわき)て水を飲(のむ)とも清水(せいすい)をゑらみ  飲(のむ)べし古(ふるき)池(いけ)又は山水(やまみつ)にてもよく澄(すみ)流(なかれ)ざる  谷水(たにみつ)等 漫(みだり)湯に呑(のむ)べからず必(かなら)ず毒(どく)あるものなり尤  五苓散(ごれいさん)の類(るひ)を懐中(くわいちう)して水をのむべし 夏(なつ)の原野(のはら)に生る毒(どく) 草(そう)毒虫(どくむし)数(かず)多ければ 挙(あけ)て尽(つく)すべからず 就中 蝮(まむし)斑猫(はんめう)の大 毒なることは皆人の 知ところ也其外諸 虫の中 無毒虫(とくなきむし)にて も折に触(ふれ)て毒ある ものにあふ時は蛇(しや) 蠍(かつ)にもをとらぬもの ありよつて蚋(ぶと)蚊(か)虻(あぶ) 蜂(はち)蟻(あり)蛅蟖(けむし)蜘蛛(くも) 蛭(ひる)の類(たぐ)ひに至る迄 用心すへきことなり 温熱(うんねつ)の地は暑湿(しよしつ) 別而甚しく毒草 異虫も多き故旅 人つかれて山野(さんや)に 休むとも是等の心 得あるへきことなり 毒虫(とくむし)にさゝれたる 妙薬等は末(すへ)のくす りの所にあり 【以下図の説明】 唐斑猫(からのはんみやう)  色微黄 和斑猫(わのはんみやう)  色るり也 蜥蜴(せきてき)和名とかけ  《割書:石竜子|山竜子》同物 烏蛇(うしや) からす  へひ 蝮(ふく)はみ又 反鼻蛇(はんひしや)  まむし 色黒黄なり種類多し 大毒あり  又は山椒(さんせう)胡椒(こせう)の類(るい)はかならず懐中(くわゐちう)すべし  山中(さんちう)の気(き)をさけ湿(しつ)をさるものなりくわしくは  末(すゑ)の薬(くすり)の条にあり 一 夏(なつ)は旅人(りよじん)疲果(つかれはて)て道路(たうろ)に休(やすみ)或は草むらに  伏(ふし)眠(ねむる)人(ひと)あれども決而(けつして)せぬ事也 夏(なつ)の野原(のはら)に  は毒虫(どくむし)多(おほ)し譬(たとひ)毒(どく)なき虫にても毒あるものに  寄(より)触(ふれ)たる後(ご)に人をさせば其(その)毒(どく)気甚敷もの  なり且(かつ)古き宮寺(みやてら)の茂(しけ)りたる林(はやし)又は山中の巌(がん)  崛(くつ)等へそこつに入或は水辺(すいへん)湿地(しつち)等 涼(すゞし)きとて  長休息(なかきうそく)すべからず件(くたん)のやうなる処には毒湿(どくしつ)  きはめて有ものなり懼(をそる)へし 一 食後(しよくご)に道(みち)を必ず急(いそき)歩行(ほかう)すべからず又 馬駕(むまか)  籠(ご)に乗(のる)とても急速(きうそく)にすべからず若(もし)ころび又は  落馬(らくば)等をしても飯(めし)の喰立(くひたて)には腹内(ふくない)和さゞる  ゆえに気(き)を塞(ふさく)ことあり心得べし 一 大小便(たいしやうべん)のつまりたるをこらへて馬駕(むまかこ)に決而(けつして)乗(のる)  べからず落馬等せば心(しん)を突(つき)頓死(とんし)する事あり 一 人馬(にんば)の先触(さきぶれ)出(いだ)すならば出立(しゆつたち)の日より二三日  已前(いぜん)に出すへし左なけれは途中(とちう)にて一緒(いつしよ)に  なりて其せんなきものなり 一 武士(ぶし)荷(に)は勿論(もちろん)商人(あきひと)荷(に)にても宿々(しゆく〳〵)問屋場(とひやば)へ着(つき)  先(まつ)宿役(しゆくやく)へ相応(そうおほ)に会釈(ゑしやく)をいたし其上にて  駄賃帳(だちんちやう)を出(いだ)し人馬の員数(ゐんづ)を申 先(それ)より  問屋へ到着(とうちやく)の荷物(にもつ)の順(じゆん)を見定(みさため)しとやかに  申(もうし)談(だんず)へし又問屋場は混雑(こんざつ)の場所(ばしよ)故(ゆえ)紛失物(ふんしつもの)  又は他人(たにん)へ対(たひ)しそこつなきやうに見計(みはからふ)べし 一 武士は勿論 平人(へいにん)にても大切(たいせつ)なる主用(しゆよう)にて  旅行(りよかう)する人(ひと)道中(たうちう)にて馬方(むまかた)人足(にんそく)等 不束(ふつゝか)なる  ことありとも用捨(ようしや)有(ある)べきこと也 尤(もつとも)勤務(きんむ)にかゝわる  筋(すじ)ならば格別(かくへつ)其余(そのよ)の事ならは堪忍(かんにん)専(せん)一と  心得べし道中(たうちう)にて手間取(てまとり)ては主用(しゆよう)を以(もつ)て  旅行するせんなしとしるべし 一 途中(とちう)にて馬(むま)人足(にんそく)共に荷替(にかい)といふことをする也  是(これ)は旅人(りよじん)の方(かた)にては無益(むやく)に手間取(てまとる)事(こと)故(ゆえ)甚(はなは)た  迷惑(めいわく)なるものなれども旅人 了簡(りやうけん)してやらねば  ならぬものなり先故(それゆえ)馬子(むまかた)急(いそき)て荷物(にもつ)を附替(つけかへる)  折(おり)えて小附(こづけ)等 取落(とりおとす)事(こと)まゝあり此折は貫(くわん)ざし  銭(ぜに)小附(こづけ)の数(かづ)を改(あらた)め自身(じしん)心付手伝ふべし 一 明荷(あけに)葛籠(つゝら)の中(なか)へ衣類(いるひ)紙包(かみつゝみ)等 入(いる)るならば油(あぶら)  紙(かみ)にて二重(ふたへ)に包(つゝみ)うちへしめりのいらぬやうに荷(に)  造(つくる)べし河越(かわこし)の節(せつ)明荷(あけに)の合口(あひくち)より水(みつ)入(いる)も  のなり明荷に限(かぎら)す両掛(りやうかけ)等も水のいらぬやうに  用心すべし惣而(そうして)川越(かわこし)の場所(ばしよ)にては濡物(ぬれもの)紛失(ふんしつ)  物(もの)心付べきなり附たり明荷両懸は江戸にては  伝通院前駿河屋にて製(せい)する所尤宜敷也 一 旅先(たびさき)にてしらぬ川かちこし決而(けつして)すへからず  又 出水(しゆつすい)にて橋(はし)を流(なが)しかちこし船渡(ふなわだ)し等に  成事ありか様の場所は宿役(しゆくやく)へ懸合(かけあふ)べし  自分(じふん)相対(あひたい)にすべからす諸事(しよじ)宿役へ懸合置は  何事に有ても能ものなり     為重 村雨の晴間にこへよ 雲ゐ坂みかさの山は ほとちかくとも 一 川越(かわこし)ある場所(ばしよ)女子(によし)を連立事(つれたつこと)ある時は其(その)用(よう)  意(ゐ)有(ある)べし婦人(ふじん)は男子(おとこ)と違(ちが)ひうちばなる  もの故(ゆえ)に川端(かわばた)に望(のそ)んで大河(だいが)の水勢(みつせい)に怖(おそ)れ  其上(そのうへ)川越人足(かわこしにんそく)の乱雑(らんざつ)なるに驚(おとろ)き逆上(ぎやくじやう)して  血(ち)の道(みち)おこり難義(なんき)する人まゝあり依之(これによつて)川越(かわこし)  ある場所は前(ぜん)日より其(その)混雑(こんざつ)なる次第(したい)をとくと  云聞(いひきかせ)連中(れんぢう)の者(もの)前後(ぜんご)してもけつして驚(おどろ)かざる  やうに兼而(かねて)心付(こゝろつけ)置(おく)べしか様の場所には宿  役等有而 少(すこし)も気遣(きづかひ)なきことなれとも女子(によし)は  おとろきやすきものなれは川越にも限(かきら)ず水  辺(へん)舟渡(ふなわた)し山坂(やまさか)等 都而(すべて)嶮岨(けんそ)なる所は前かとゟ  云聞置(いひきかせおく)事(こと)肝要(かんよう)なり 一 川越(かわこし)又は船渡(ふなわた)しの場所(ばしよ)にては面々(めん〳〵)懐中物(くわゐちうもの)を  心付其上乗へし且(かつ)駕籠(かご)のうちへ釣置(つりおき)たるもの  落(おつ)ることあり水中(すいちう)へものを落(おと)したるは得(え)かた  きものなり 一 渡場(わたしば)にて乗合舟(のりあひふね)に馬(むま)を乗(のする)事(こと)あり其折(そのをり)は  馬を先(さき)へ乗(のせ)人(ひと)は後(あと)より乗べし人先くのれば  馬物を見て乗かねて驚(おとろ)きさわぐゆえ乗合に  怪我(けが)等あるもの也 尤(もつとも)老人(らうじん)女子(によし)の輩(ともがら)は馬を入(いる)る  舟には決而(けつして)乗(のる)へからず 一 近道(ちかみち)なりとて舟路(ふなぢ)を行(ゆく)こと心得あることなり  要用(ようよふ)にていそかねばならぬ道中ならは成丈(なるたけ)  陸地(りくち)を通るべしゆるき道中なれは船路  を行 足(あし)をやすめ思の外に追風(おいて)よくて益(ゑき)ある  事も有とも若(もし)違変(いへん)ある時は後悔(かうくわひ)先(さき)にたゝ  ずと知へし船中(せんちう)の用心は別(へつ)に末(すへ)にあり 一 出水(しゆつすい)の河(かわ)は譬(たと)へ小川にても軽(かろん)じ容易(ようい)に渡る  へからず出水(てみつ)は格別(かくへつ)水勢(みつせい)強(つよき)上(うへ)に種々(さま〳〵)のもの流(なか)れ  来(く)る故(ゆえ)に怪我(けが)あるものなり又 山(やま)近(ちか)き国(くに)にある  川(かわ)は常(つね)は渇水(かつすい)して小(ちいさ)く見ゆれども雪解(ゆきとけ)又は  夏日(かじつ)山奥(やまいり)に夕立(ゆふたち)等あれば俄(にはか)に河水(かわみつ)増(まさ)り忽(たちまち)に  川(かわ)はゞもけしからず広(ひろ)ぐなる故 本橋(ほんばし)は懸(かけ)られ  ぬなり因而(よつて)冬(ふゆ)のうち計(はか)り用る為(ため)に仮橋(かりばし)を  かけわたす故に毎年(まいねん)出水(てみつ)に流るゝ也 則(すなわ)ち東海道  の酒匂川(さかわかわ)奥海道(おくかいだう)の白沢(しらさは)。大田原(おほだはら)なとの川(かわ)の如きもの也  別而(へつして)山国(やまくに)には右様(みきやう)の川(かわ)々多し件(くだん)のやうなる出(で)  水(みづ)の折はかちわたりは勿論(もちろん)水中(すいちう)に見ゆる仮橋(かりはし)  を決而(けつして)渡るへからず出水にて橋杭(はしぐひ)抜上(ぬけあが)り暫(しばらく)  浮(うき)上りある橋(はし)を渡りて流(なか)されたる人あり 一 霖雨(ながあめ)降(ふり)つゞきたるあかりに山(やま)欠(かけ)落(おつ)ること所々に  まゝあること也か様の折は山岸(やまきし)の大巌石(たいがんせき)等 有(ある)下(した)  の泊屋(とまりや)又は川岸(かわきし)に望(のそみ)たる家居(いゑゐ)等に泊るべからず  兼而心得 斟酌(しんしやく)有べき事なり 一道中にて人馬の賃銭(ちんぜん)并 宿銭(はたせん)等 連中(れんちう)にて  も其(その)度々(たび〳〵)面々(めん〳〵)の手前(てまへ)より出すべし若折に  より銭の有合なき人は当坐(とうさ)に取替(とりかへ)置(おく)共(とも)  其日(そのひ)の泊々(とまり〳〵)にて算用(さんよう)すべし長(なかき)道中(たうちう)にては  日記帳(につきちやう)にしるし置ても末々(すへ〳〵)に至(いたり)てはわかり  難(かた)きものなり因而(よつて)等閑(なをざり)にせぬことなり 一道中にて或は両三日又は五七日 道連(みちつれ)に なり  其人(そのひと)信実(しんじつ)に見るとても同宿し或は食物(しよくもつ)并(ならび)  に薬(くすり)等 互(たかひ)にとりやり決而(けつして)すべからず 一 途中(とちう)にて馬なき人 駄荷(だに)ある人に道連(みちつれ)に  なり譬(たとへ)知(しる)人にても風呂敷包(ふろしきつゝみ)等 其(その)馬に頼むべ  からずは若(もし)途中(とちう)にて急(きう)に入用ありても他人(たにん)  の馬に頼るは其間にあわぬものなり皆人道  中へ出ては我身(わかみ)独(ひとり)を堅固(けんご)に構(かまへ)人に持れぬやう  にするをき専一とすべし 一 道連(みちつえ)はたか〳〵五六人に限(かき)るべし大勢連(おほぜいつれ)は悪(あし)  し人々 了簡(りやうけん)種々(さま〳〵)なるものゆえ長(なかき)道中にて  多勢(たせい)の中には必(かなら)ず不和(ふわ)の出来(てきる)もの也 一道連(みちつれ)にすまじきものは大酒(たいしゆ)の人并 ̄ニ癖(くせ)ある上戸(しやうご)  顛癇病(てんかんやみ)喘臭病(ぜんそくやみ)或はつよき持病(ぢひやう)ある人 是等(これら)は  いつ何時 其(その)疾(やまひ)発(おこる)まじきといふことなければ勘弁(かんへん)  あるべき事なり 一道中 路金(ろきん)を所持(しよし)するには胴財布(だうさいふ)に入貯(たくわ)ふべ  し日々の入用は懐中(くわゐちう)へ小出(こだし)をいたし遣ふべし  尤 小出(こだし)する時は夜分(やぶん)にても人の目にかゝらぬ  やう心懸(こゝろかく)る事 肝要(かんよう)なり 都にはまた  青葉   ふく  見しか   とも  もみち散   しく  しら川の   せき   頼政 一 泊々(とまり〳〵)にて刀(かたな)脇差(わきさし)は自分(じぶん)寐(ね)る床(とこ)の下(した) ̄え入おく  へし鎗(やり)長刀(なきなた)等も床(とこ)の奥(おく)へおくべし 一道中 火(ひ)の用心(ようじん)随分(ずいぶん)大切(たいせつ)に心付(こゝろつけ)村中(むらうち)は勿論(もちろん)譬(たとひ)  野中(のなか)にても煙草(たばこ)の吹(ふき)から麁末(そまつ)に捨(すつ)べからず  休々(やすみ〳〵)又 乗合舟(のりあひふね)等たはこの火に衣類(いるひ)包物(つゝみもの)等 焼(やく)こと  あり念入(ねんいる)べきことなり 一 春(はる)の中(うち)処々(ところ〳〵)野山(のやま)を態々(わざ〳〵)焼(やく)ことあり此(この)野火(のひ)風(ふう)  烈(れづ)にはけしからず手広(てびろ)になるもの也 如(かくの)_レ此(ことき)ところを  通りかゝりたる折は道の前後(ぜんご)を考(かんがへ)べし本道(ほんだう)にて  も火にまかるゝことあり野火もあなとるべからず 一 道端(みちはた)の家 居(ゐ)又は畑(はた)の中などに梨(なし)柿(かき)柚(ゆつ)蜜柑(みかん)  都而(すべて)菓(くたもの)類見事に作り有もの戯(たわむ)れにも手出(てだ)  しせぬ事なり又 村(むら)中にて五穀(ごこく)は勿論(もちろん)場(には)  中に干置物(ほしおくもの)等 仮初(かりそめ)にも踏(ふむ)べからず他国(たこく)にて  物いひ等ありては是非(ぜひ)の論(ろん)立(たち)がたしと知へし 一山中或は野道(のみち)などにて若(わかき)女(おんな)草刈(くさかり)童(わらへ)又は女 連(つれ)  の物 参(まい)り等に行あひて一通りの問答(とひこたへ)は格別(かくべつ)  無用の咄(はなし)或は田舎詞(いなかことば)なと漫(みだ)りに笑(わらひ)なぶる  べからず聊(いさゝか)の事よりむつかし出来(てき)るものなり  勘弁(かんへん)あるべし 一 間(あひ)の宿(しゆく)又は横筋(よこすじ)なとにてあしき旅宿(とまりや)へ泊り  あたるは心持悪敷ものなり然とも不自由(ふじゆう)を口(こう)  外(くわひ)に出さす却而(かへつて)やわらかに物いひ荷物(にもつ)戸(と)〆り  等用心する事 道中(だうちう)にての秘事(ひじ)なり 一 皆(みな)人(ひと)他国(たこく)へ出れば物いひ風 俗(ぞく)いろ〳〵に替(かわり)て  已(おのれ)が国言葉(くにことば)に違(たが)ふ故に聞馴(きゝなれ)見なれぬ中(うち)は  おかしと思ふなれど又 先(さき)の人も此方(このほう)をおかし  と思ふは必然(ひつぜん)なりしかるを心得ちかひして  他国(たこく)の風 俗(ぞく)ものいひ等笑なふること誤(あやまり)としるべ  し人の詞を笑(わらひ)嘲(あさけ)ること口論(こうろん)となるもの也 一 道(だう)中にて謡(うたひ)小(こ)うた浄瑠璃(じやうるり)等口すさみて  行(ゆく)を此方より附(つけ)うたふへからず是(これ)も口論(こうろん)の  端(はし)なりとしるべし 一道中にて立寄(たちより)見間敷(みましき)ものは喧嘩(けんくわ)口論(こうろん)博奕(ばくゑき)碁(ご)  将棊(しやうぎ)村踊(むらおとり)村角力(むらすまふ)変死人(へんしにん)殺生場(せつせうば)惣而(そうして)人立(ひとたち)多所  等見計ひあるべし 一 商(あきな)ひ筋(すし)ならて外用(ほかよう)又は湯治先(たうじさき)物参(ものまいり)或は河留(かわとめ)  等にて長 逗留(どうりう)する折(をり)塗炭(とたん)は勿論(もちろん)かけの碁将棊  決而(けつして)すべからず且(かつ)自分(じふん)の知たる商ひにても  手出(てたし)せぬことなり利慾(りよく)より事(こと)起(おこ)り災(わさは)ひを  生(せう)じ大に手間取ものなり慎(つゝし)むべきなり 一 湯治場(たうじば)は硫黄(いわう)の気(き)多(おほき)故(ゆへ)大小の身(み)并 ̄ニ拵(こしらへ)等まても  錆(さび)るものなり其(その)用心有べし尤湯場にもより  さ様になき所もあれと多くはさびるものなり湯(たう)  治(じ)仕方(しかた)温泉(おんせん)の地名(ちめい)は末にくわし 一 主用(しゆよう)或は要用(やうよう)にて初て旅行(りよかう)する人 僅(はづか)の所にて  も回道(まはりみち)をして名所(めいしよ)旧跡(きうせき)等 尋(たつぬ)べからす且(かつ)しらぬ  近道(ちかみち)近 舟路(ふなぢ)等必すべからず 一 旅宿(りよしゆく)にて出火(しゆつくわ)ありて若(もし)近火(きんくわ)ならば早速(さつそく)立  したくいたし身(み)の廻りの大切(たいせつ)なる物を持(もち)除(のき)  其上にて風すじを見計ひ荷物等あらは取出  へし尤家来ある輩(ともから)は挑灯(てふちん)を付 持(もち)除(のき)もの等  差図(さしづ)いたし紛失物(ふんしつもの)等なきやう心付へし  右様(みきやう)の節(せつ)は宿(やと)をたよりにせぬ事なり 一 旅(たび)は相宿(あひやと)は有勝(なりかち)なるものなれとも手前(てまい)を能  用心(ようしん)すれば何事(なにこと)有(ある)ものにあらず第(だい)一に戸(と)じま  りを心付又 宵(よひ)より相客(あひきやく)の様子(やうす)を窺(うかゞ)ひ知べし  若(もし)酒乱(しゆらん)狂気(きやうき)等の人ある時は早速(さつそく)其用意すべし  相宿にて異変(ゐへん)有しこと其(その)例(れい)すくなからず 一相宿の中にて大 酒宴(さかもり)はじまり若(もし)深更迄(よふけまて)も  止(やま)ぬ様子(やうす)ならば此方(このほう)の連中(れんちう)にて酒宴(さかもり)のすむ  まてかはる〳〵一人つゝ不(ね)_レ寐(つ)に居(をる)べし長酒(ながさか)もりも  むつかしの出来(てき)るものなりも 一 馬(むま)は驚(おとろ)き勝(かち)なるもの故(ゆえ)若(もし)おとろきはね出(だす)時(とき)あは  てゝ飛下(とびをる)べからす荷物(にもつ)に取附居(とりつきをり)もし荷物(にもつ)曲(まが)り  地(ち)に付(つく)比(ころ)を見合(みあわせ)下(をり)べしうろたへ飛下(とひをる)れはかな  らず怪我(けが)するものなり 一三四月 比(ころ)道中(だうちう)にて田舎馬(いなかむま)に乗(のる)時は乗下(のりをり)に  別而(へつして)心付べし田舎馬は日々 不(つか)_レ使(わず)休(やす)めおきて  偶(たま〳〵)つかふ故(ゆえ)春(はる)気(け)によつて駆出(かけいた)すなり心得て  乗へきなり 一 夏(なつ)道中(だうちう)にて馬に乗ならは心得あるへし馬に  虻(あぶ)取付故に時々はねるなり又乗人も夏は眠気(ねむけ)  付てあぶなし因而(よつて)山坂(やまさか)河端(かわばた)等 別而(へつして)心付べし  老人(ろうじん)小児(しやうに)は夏(なつ)は心得有べきことなり 一道中にて相客(あひきやく)の中(うち)など薬種(やくしゆ)妙薬(めうやく)等の下(げ)  直(ぢき)なるものをすゝむるとも堅(かたく)断(ことわり)て求(もと)むべからず  若(もし)途中(とちう)にて入用あらば其所の薬種屋(やくしゆや)にて調(とゝの)  へべし 一 飛脚(ひきやく)并 ̄ニ荷才料(にざいりやう)勤(つとむ)る人(ひと)軽重(けいぢう)有といへとも容易(ようい)  ならざる役(やく)なりと知るへし書状(しよしやう)は金銀(きんぎん)より  も重(おも)きことにて万一(まんいち)取落(とりおと)し紛失(ふんしつ)等 有時(あるとき)は  主人(しゆじん)の要用(ようよう)を欠(かく)のみならず大事(たいじ)を人に  もらすことなれば心得あるへきことなり 一道中ざしの大小(たいしやう)は軽(かろ)く短(みちか)きを差へし都而(すべて)長(なか)  刀(かたな)長脇差(なかわきざし)又は目立(めたち)たる拵(こしらへ)等 異風(いふう)の衣類(いるい)道具(とうぐ)  用ゆへからずおとなしき体(てい)なれは難(なん)なし 一 召連(めしつれ)候 小者(こもの)并 雇人(やといびと)等は出立前(しゆつたちまへ)に宿(やと)を呼(よび)よせ若(もし)  道中(どうちう)にて病死(ひやうし)等之 節(せつ)は可(しかる)_レ然(べき)やうに取置(とりおき)候やう  一札(いつさつ)を取置へし万一(まんいち)途中(とちう)にて病死(ひやうし)の節(せつ)は 雪ふれはみな高からぬ 山もなしいつれのこしの しらねなるらむ  師時  泊屋(とまりや)并 ̄ニ医者(いしや)よりも一札を貰(もら)ひ取置べき也  附(つけ)たり一人旅又は回国(くわいこく)する輩(ともがら)は寺証文(てらせうもん)懐中(くわいちう)有(ある)  べきなり万事(ばんじ)道中 念(ねん)入(いれ)る人(ひと)には異変(いへん)なきも  のなりと知へし 一道中にて日蝕(につそく)あらは少々 休(やす)み見合蝕すんて  歩行すべし月そくも同様なり 一道中にて神社仏閣(じんしやふつかく)は勿論(もちろん)橋々(はし〳〵)立木(たちき)又は大石(おほいし)等へ  楽書(らくかき)并 ̄ニ張札(はりふた)等 決而(けつして)すべからず  右六十一ケ条の外 廉立(かとたち)たる事は此末に別(べつ)箇条(かてふ)  にくわし    水替用心之事 一 皆(みな)人(ひと)他国(たこく)へ出れば五七日の中(うち)水替(みづかはり)とて或は腹(ふく)  合(あい)あしく或は逆上(のぼせ)或は両便(りやうべん)不通(ふつう)或は発斑(ほつはん)小(しやう)  瘡(そう)等 持病(じひやう)の外(ほか)なるものを憂(うりやう)ることあり何国(いづく)  にても一 天地(てんち)の中(うち)なれは同し天地の気(き)を呼(こ)  吸(きう)することなれば水(みづ)の替りたるとてさのみ煩(わづら)ふ  べきはづはなけれどもさにあらず其(その)国々(くに〳〵)の風土(ふと)  により湯水(ゆみづ)にも限(かぎ)らず寒暖(かんだん)気候(きかう)人気(じんき)食物(しよくもつ)  に至(いたる)迄(まで)こと〳〵く異同(いとう)厚薄(かうはく)挙(あけ)て算(かそへ)がたし  譬(たとへ)ば山川(やまかわ)の魚(うを)を野池(やち)へ放(はな)す時はしばらくが  間(あひだ)煩(わづら)ふが如し今(いま)人々(ひと〳〵)も其(その)国(くに)所(ところ)の気候(きかう)に  一月と二月と居馴染(ゐなじま)ぬ間(うち)は必(かなら)ず煩(わづら)ふ道理(だうり)  なり其中(そのうち)用心(ようしん)あるべきことなり既(すで)に関東(くわんとう)の  時侯(じかう)と京大坂は別(かわる)也 先(それ)より西国(さいこく)九州(きうしう)に至(いたれ)ば又  別也 北国(ほつこく)越後(ゑちご)奥 州(しう)辺(へん)に至而(いたつて)は又 抜群(はつくん)の相(さう)  違(い)なり其(その)余(よ)の海浜(かいひん)島々(しま〳〵)等に及んては其(その)名(な)  其(その)形状(かたち)等の相違(さうい)するを以(もつ)て推(おし)はかるべし  因而(よつて)暖国(だんこく)の人は寒国(かんこく)へ行けば寒気(かんき)に中(あた)り  寒国より暖国へ行ては中ること稀(まれ)也 古昔(むかし)八丈  の人大勢(おほせい)江戸(えと)へ来(きた)り居(ゐ)て痘瘡(ほうそう)麻疹(はしか)の流行(はやり)  にあひ夥敷(おひたゝしく)死(し)したることあり是等(これら)全(まつた)く土地(とち)に相(さう)  応(おほ)せざる故(ゆえ)なるべし於(こゝに)_レ是(おいて)遠国(ゑんごく)勤務(きんむ)【左ルビ「つとめ」】湯治(たうじ)旅(りよ)  行(かう)の輩(ともから)発足(のつそく)の日より半(はん)月も立ざる間(うち)は飲(いん)【左ルビ「のみ」】  食(しよく)【左ルビ「くひ」】起居(ききよ)【左ルビ「おきふし」】等のことを大切(たいせつ)にすべし道中(だうちう)嗜(たしな)みて  よきほとの薬(くすり)は末にくわしくあり   寒国旅行心得之事 一 奥羽(をうう)北越(ほくゑつ)の旅行(りよかう)には朝飯(あさめし)をしたゝむるよりし  て用心あり寒国(かんこく)は九月の末より日々 雪(ゆき)ふり  十月 夷講(ゑひすかう)比(ころ)より降(ふる)雪は日々地上につもりて  山上(さんしやう)曠野(かうや)の道路(だうろ)を埋(うづ)み且(かつ)寒国(かんこく)の雪は多(おほ)く  粉雪(こゆき)にてふらぬ日にても風に吹立(ふきたて)られて雪吹(ふゞき)  の如し況(いはん)や降(ふる)日には忽(たちまち)に一二尺つもるは暫時(ざんじ)  のこと也 依(これに)_レ之(よつて)道路(だうろ)人跡(じんせき)の目(め)あて更(さら)になし  公用(かうよう)の人(ひと)は雪踏人足(ゆきふみにんそく)を召(めし)て先々(さき〴〵)を案内(あんない)さ  すれども唯(たゝ)の旅人(りよじん)はそれもならず道(みち)問ふへき  人も稀(まれ)なり終(つい)に道(みち)を見うしなひて本道(ほんだう)に  出(いづ)ることあたはずして迷(まよ)ふ人まゝあり因而(よつて)雪(せつ)  中(ちう)の旅(たび)は譬(たとひ)上戸(しやうご)なりとも大酒(たいしゆ)決(けつ)してすべ  からす大酒(たいしゆ)すれは身(み)熱(ねつ)して雪吹(ふぶき)を事(こと)とも  せぬ心地(こゝち)になれども山野(さんや)の満雪(まんせつ)道路(だうろ)は勿(もち)  論(ろん)田(た)も畑(はた)もなく一面(いちめん)の平地(ひらち)となるゆへ酔体(すいたい)の  元気(けんき)にて方角(ほうかく)を失(うしな)ひ深(ふか)き溝洫(みそほり)に落入(おちいり)て  終(つい)にこゞえ死(しぬ)人(ひと)多(をほ)し夜分(やぶん)は別而(へつして)道筋(みちすじ)見へず  依(これに)_レ之(よつて)朝飯(あさめし)程(ほど)よくしたゝめ外(ほか)に中食(ちうじき)の焼飯(やきいゝ)を  貯(たくはへ)て空腹(くうふく)にならぬやうに心懸へし空腹なれば  厳寒(げんかん)に冒(おかさ)れて神魂(しんこん)気力(きりよく)も尽果(つきはて)て終(つい)に雪(ふ)  吹(ぶき)にあひ絶倒(ぜつたう)することあり故に酒に酔(よい)ざれば  たとひ雪吹(ふゞき)にしまかれて一夜を明すとも命(いのち)に  及(およ)ふ事なし奥越(をうゑつ)の人まゝ雪吹にあふて寒(こゝえ)  死(し)する人多く上戸(しやうご)にて大酔(たいすい)の上(うへ)なる由(よし)語(かた)れり 一 雪吹(ふヾき)にあひたる人こゝえて手足(てあし)覚(おほへ)なく倒(たを)れ  又は気分(きぶん)あしく成たる人をあたゝむるには藁(わら)  火(ひ)を焚(たき)初(はじ)めは遠火(とをび)にして温(あたゝ)むべし又 寒(こゝ)えたる  人を風呂(ふろ)へ入るとも初めは至極(しごく)ぬるくして次第(したい)  に熱(あつ)くすべし火急(くわきう)に熱(あつき)火(ひ)あつき湯(ゆ)にあてる  時は逆上(ぎやくじやう)して塞(ふさ)ぐことあり   寒国旅具并 ̄ニ図式之事 一 雪中(せつちう)旅具(たひぐ)は紙衣(かみこ)胴着(だうき)或は皮類(かわるい)のものを  下着(したぎ)に用ゆへし雪国(ゆきくに)の寒気(かんき)甚(はなはだ)しきと  満雪(まんせつ)の深(ふか)きとは筆紙(ひつし)にも尽(つく)すべからす 【以下図の説明】 駕籠橇(かごそり) 駕籠雪(かこそり)は下地を 籠に組立上を畳(たゝみ) 表(おもて)にて包みたるもの也其籠 を常の雪車へ結附るなり中に 刀かけもありふとん其外手道 具等入ること常の駕籠の如し 貴人医者多く是を用ゆ 雪車(そり) 雪車(そり)は惣而 荷物(にもつ)を積(つみ)綱(つな)を 肩(かた)へかけて一人にて引也米俵 五六俵 ̄ヨリ十七八俵迄引なり 山坂は荷杖(につえ)にて楫(かぢ)をとり自(みつ) から乗なから下ること矢を つくか如し牛馬車等の便 利に十倍せり誠に山国の 舟なり ○ヲノヲレ○ イ夕ヤなと いふ木にて つくるなり 四寸 三寸 三尺 六尺 箱橇(はこそり) 此箱そりは小児の たわむれに用 ゆる也箱もあり 如_レ図草籠も あり カウスキ  ブナといふ木にて作  長サ五尺ヨ 八寸ヨ 六寸 外 ̄ニ長柄あり是は八九尺ヨあり  長サ三尺ヨ 五寸 四寸  此かう鋤(すき)は雪を屋根よりおろし又其ろしたる所の雪を切石(きりいし)  の如くこの筐をもつてきり町の中ほとへ向ふの見へぬ計りにつみ上る  なり又大雪の日には道を掃ふにもし途中(とちう)杖のかわりにするなり  又小児外にて戯(たわむ)れ遊ふにも雪有うちは是を突(つき)ありく也   雪踏(ゆきふみ) 藁(わら)にて作(つく)りふん込(ごみ)の如く 両足へはき雪のふる度々 家の前並 ̄ニ道路の雪を ふみかためつ往来の通路 をつくる器也又米の空(あき) 俵を用る所もあり 同上 是はわらの雪 踏にてふみならし たるり上を又ふみ かたむる具なり わり槙にて作る なりかならず 家毎にあるにも あらず 【以下図の説明】 兜頭巾(かふとづきん) 長範頭 ともいふ革 にてりつくり 木綿にても 作る 赤綿帽子(あかわたぼうし)  是は木のかわにて  製したるもの也 藁笠(わらかさ) 藁沓(わらくつ)  是はすね  迄つくり  付なり  越後にて  多くこれ  を用ゆ 藁はゞき これは寒気 をよくふせく ものなり又 蒲(かま)はゞき もあり然 とも寒気 をふせくには 藁にしくは なし ヲリフキ わらじ  又 かうかけ  わらじ   ともいふ  又 頭はかり なヲリフキ といふ ドモコモ 雪吹を ふせくに よし 源兵衛くつ 藁(わら)にて作 ̄リ 口へ木綿 ̄ヲ 付るなり 麁なる物 は木綿を 付ず武士 町家多く 是を用ゆ 同上 わらくつ くわんぜん帽子(ぼうし)  是は木綿にて  つくり真わた  を入るなり  寒気をふせ  くによき物  なり町家にて  多く用ゆ 赤綿(あかわた)たび 是は赤わた ぼうしを作る 木の皮にて 織たるたび なり下賤 の人多く これをはく 欙(かんじき) 是は鉄(てつ)にて鎹(かすかい)の如く作り 草鞋(わらじ)の下へはき雪の上 すべらぬ為のものなり 又 手軽(てかる)く作りて沓草(くつぞう) 履(り)等の下へはくなり 商人田舎の人是を 用ざるものなし 樏(かんじき) 蔓(つるもの)にて作(つく)り わらじの下へ はき雪の深 き処へふみ 込ぬ為なり 山樵(きこり)又は鷹(たか) 狩(かり)等の人多く これをはく 草履下駄(ぞうりけた) 是は雪の氷りたる日に 坂の上又は橋の上なと 小児此下駄をはき 辷(すべ)り戯れ遊ふなり もつとも寒気強き 日程よくすへるなり 一 ̄ト足に三四十間より 五六十間も走るなり 此下駄をつくる木も 雪車(そり)を作 ̄ル ヲノヲレ也 竹下駄(たけけた) 此竹下駄も草履 下駄の如く辷(すべ)る也 是は辷るに曲ること なくまつすくに はしるなり近年 多くこれを用ゆる といふ是等旅具 にあらざれとも雪 国のみの物故出_レ之  是によつて沓草鞋(くつわらじ)の類(るい)も雪国(せつこく)にて用ゆる品  を其所にて調(とゝの)ふへし前かとより用意有  ても其土地によつて用立ぬものなり   寒国ナテツキの事 一奥州越後の中或は二三里或は五六里が間(あひだ)両山(りやうざん)  峨(がく)々たる山道(さんだう)処々にあり冬年大雪にして春  二月 彼岸(ひがん)比に至而(いたりて)両山の雪 春暖(しゆんだん)に乗して  土際(つちきわ)を離(はなれ)んとする比(ころ)東風(とうふう)或は雷鳴(らいめい)地震(じしん)材木(ざいもく)  等の響(ひゞき)によつて両岸の積雪(せきせつ)一時(いちじ)に其(その)山道(さんだう)へ  こけ落るを鄙語(ひご)にナテツキといふ其折節は件(くだん)  の山路(やまみち)を往来する人其ナテの下に押付られ  て速死(そくし)する人まゝあり此(この)難(なん)にあふ人いかんとも  凌(しの)くべきやうなし又 其(その)災(わざわひ)に逢たる人数(にんづ)其(その)沙汰(さた)  有ても早速(さつそく)其雪を屈(ほり)穿(うかち)て其(その)死骸(しがい)を求(もとむ)ること  あたはず夏(なつ)に至(いたつ)て雪の消(きゆ)るを待外 手段(しゆたん)なし  か様なる所を往来する人は主用(しゆよう)要用(ようよう)の輩(ともがら)也  此時は前後(ぜんご)の寒暖(かんだん)を考(かんか)へ其土地の人に様子(やうす)を  尋ね通るべし其折は足(あし)もあらく踏(ふむ)ことならず咳(せき)  一つも容易(ようい)にせぬやうに慎(つゝし)み歩行(ありく)事其所の  教(おしへ)なるよし既(すで)に会津(あひつ)より越後(ゑちご)へこへ又は上州(しやうしう)  より三国(みくに)ごへなとの山中(さんちう)に其ナテツキの難(なん)に  逢(あひ)て死(しし)たる人の石塔(はか)あり   山中にて狐狸猪狼の類近付さる方 一 深山(しんさん)野原(のはら)の道(みち)を往来する人 道連(みちつれ)ある時は折々  咄声(はなしこゑ)もするゆえ熊(くま)狼(おほかみ)の類(たぐひ)身(み)をかくすなり一人(ひとり)  旅(たび)にては人声(ひとこゑ)なき故に道端(みちばた)なとに伏居(ふしゐ)たる  獣(けたもの)不(はから)_レ図(ず)人にあふ故に驚(おどろ)きて人に嚙付(かみつく)ことあり  然とも白中(はくうちう)には先はなきことなり左様のこと  にあふは皆 夜道(よみち)なりよつて深山(しんさん)曠野(かうや)の人里(ひとさと)遠  き所を往来する折は竹杖(たけつえ)の先(さき)を割(わり)道々(みち〳〵)叩(たた)き  音(おと)をして歩行すへし又 石突(いしつき)有 杖(つえ)をつ  きてもよしさすれば悪獣(あくちう)逃去(にけさる)也又 夜道(よみち)は  火縄(ひなわ)松明(たひまつ)等を持て歩行せば其難なし又 牛(うし)の  糞(ふん)を草鞋(わらじ)のうらへぬり山道(やまみち)を行は悪獣并  蛇(へび)まむし毒虫(とくむし)等おそれ近付すといふ 一 五岳(ごかく)白沢(はくたく)の両図(りやうづ)を懐中(くわいちう)すれば旅中(りよちう)の災難(さいなん)を  免(まぬか)れ悪鬼(あくき)猛獣(もうぢう)近付ことあたはす 一 狐(きつね)狸(たぬき)の所意(しよい)とて忽(たちま)ち道(みち)を失(うしな)ひ或は昼(ひる)を夜(よる)と  なし或は川(かわ)なき所を川となし門(もん)なき所に門を  鎖(とさす)の類(るい)其外 種々(しゆじゆ)様々(さま〳〵)の奇怪(きくわい)をなすことあら  ば先(まつ)心を落着(おちつけ)てたばこを呑(のむ)歟(か)休(やす)む歟(か)して  元(もと)来(きた)る道(みち)を考見るべし其上に分らぬならば  もとの道(みち)を立戻り人家(じんか)へ立寄(たちより)様子(やうす)を承る  べし如_レ此すれば狐狸(こり)も譇(たばか)ることあたはざる也  都而(すへて)心を落着(おちつく)るといふこと道中(だうちう)のみにかき  らす万事(ばんじ)に付て肝要(かんよう)の事なり   船中用心之事 一 船(ふね)に乗(のり)たるならは先(まつ)船中(せんちう)の諸道具(しよだうく)板子(いたこ)竿(さほ)  の類(るい)有所を見 定置(さためおく)べき也 若(もし)大風雨或は早(はや)  風(て)等にて船くつかへらんとする時其板歟竿の  たくひにてもおつとり水中(すいちう)へ入べし如_レ此すれば水(みつ)  をしらぬ人も沈(しつ)まぬゆへに助易(たすけやす)し 一 海上(かいしやう)にて大魚(たいきよ)の類(るい)船(ふね)へ附纏(つきまど)ふことあり其節(そのせつ)  は不(おどろか)_レ驚(ず)して船中(せんちう)人影(ひとかけ)をかくし板(いた)歟(か)又は  音(おと)あるものを叩(たゝき)立れば其(その)魚(うを)逃去(にけさる)なり 一 船(ふね)の際(きわ)にて竜(たつ)まきあれば俄(にはか)に黒雲(くろくも)海上(かいしやう)に  あまくたり波濤(はとう)湧(わき)かへり大渦(おほうづ)を巻(まき)海上 動揺(だうよう)  することあり其折は船頭(せんどう)も心得あることなれ共  不(おとろか)_レ驚(ず)して板子(いたこ)歟(か)苫(とま)の類(るい)にても打込(うちこみ)巻(まか)すべ  しさすれば波(なみ)の渦(うづ)穏(おたやか)になるなり其間(そのま)に船  を乗(のり)ぬくること肝要(かんよう)なり 一 便船(びんせん)の人数(にんづ)多きはあしきものなり第一 乗合(のりあひ)の  難義(なんき)也又 船手(ふなて)も手まわし悪し尤(もつとも)船中(せんちう)の事  は諸事(しよじ)船頭(せんとう)の意(い)にまかせ必(かなら)ずさからふべからす  都而(すべて)船中(せんちう)の事は船中の法式(ほうしき)ありて忌嫌(いみきら)ふことも  あれは船手(ふなて)の邪魔(ぢやま)にならぬ様にするを専一(せんいち)とす  ○船に酔たる時の妙方 一 船(ふね)に酔(ゑひ)たる時大に吐(と)して後(のち)渇くなり其節(そのせつ)は童子(たうじ)【左ルビ「ことも」】  便(へん)を呑(のま)すべしもし童子便なき時は大人の  尿(いばり)を呑すへし誤(あやま)りて水(みづ)をのめば即死(そくし)するなり  つゝしむべし 一 舟(ふね)に乗(のる)時(とき)に其(その)河(かわ)の水を一口呑ば船(ふね)に酔(よわ)ぬ也 一船に乗時に陸(くが)の土(つち)を少々 紙(かみ)に包(つゝみ)み臍(へそ)のうへに  あてゝをれば舟に酔ことなし 一 硫黄(いわう)を紙に包み懐中(くわいちう)すれば舟に酔ことなし 一又方 付木(つけぎ)を二三 枚(まい)人にしらせず懐中すれば舟に  酔ぬなり 一又方つよき醋(す)を一口 飲(のみ)てよし又 梅干(むめぼし)を含(ふく)てよし  又 生大根(なまだいこん)のしぼり汁(し)を呑(のみ)てもよし 一つよく酔(ゑひ)嘔吐(をゝと)やまざる時は半夏(はんげ)陳皮(ちんひ)茯苓(ぶくりやう)の  三味を等分せんじ飲てよし   ○駕籠に酔さる方 一かごに酔人は駕籠(かご)の戸(と)を開(あけ)て乗(のる)べし 一 南天(なんてん)の葉(は)を駕籠(かご)のうちに立(たて)先(それ)を見て乗(のれ)ば  かごに酔ことなし若(もし)頭痛(づつう)甚(はなはた)しく むね(心)わるき  には熱湯(ねつたう)に生姜(せうが)のしぼり汁(しる)を入かきませ飲す  へし冷水(ひやみづ)決(けつ)して呑すべからず 一 女子(によし)馬かごに乗時は水をちを細帯(ほそおび)にてしつかと  しめて乗へし   ○落馬したる時の方 一 落馬(らくば)して若(もし)むね(心)あしく或は唾(つは)に血(ち)交(まじ)り出る時は  藕(はすのね)の粉(こ)を酒(さけ)にて用ゆべし又 蓮(はす)の葉(は)を細末(さいまつ)  にして酒(さけ)にて呑てもよし又 腰(こし)か足(あし)にてもつ  よく打(うち)血(ち)にじみてむらさきに斑(ぶち)たる所あらは早(さつ)  速(そく)外科(げくわ)を頼(たのみ)て出血(しゆつけつ)すへよししらさすれは後(のち)の患(うれ)ひな  し其上(そのうえ)導引(あんま)すべし 一 馬(むま)の汗(あせ)は大毒(だいとく)也 食物(しよくもつ)又は目(め)なとへ入ぬ様にすべし  ○毒虫を避る方 一 能(よき)匂(にほ)ひ袋を懐中(くわいちう)すればよし又 乾姜(かんきやう)と雄黄(をわう)を細(さい)  末(まつ)にして懐中してよし都而(すへて)竜脳(りうのふ)麝香(ちやかう)樟(しやう)  脳(のふ)の類(るひひ)香気(かうき)たかきものを懐中すればよし  ○道中泊屋にて蚤(のみ)を避(さく)る方 一 苦参(くじん)といふ草(くさ)を生(せう)のまゝにて寐(ねる)敷(しき)ものゝ上へ入  置は蚤よらぬなり最(もつとも)此(この)草(くさ)野山(のやま)に多くあるもの  なれば道すから心かけ手折て敷べし苦参(くじん)の  図(づ)下(しも)にあり見合すへし 一 枳(からたち)一ツ持(もち)夜々(よる〳〵)抱(いだ)き寐れば蚤(のみ)よることなし 一又 棘蓼(たて)を乾(ほし)て床(とこ)の下へ敷てよし 一又方 枳実(きじつ)を沢山(たくさん)せんじじはんをひたしよく干(ほし)  着用すれば蚤(のみ)よらぬなり  苦参(くじん)《割書:和名くらゝ○きつねのさゝげ|一名 土槐》  山野に多し葉は槐(ゑんじゆ)の葉に似  たり花は赤小豆(あづき)の花のめし  根黄白色にして至てにかし  敷もの間に入四置は  よく蚤(のみ)をさくる  といふ  春苗を生し  高 ̄サ五六尺に  直立す夏花  ひらきて秋に  至て枯  ○道中にて草臥(くたひれ)を直(なを)す秘伝(ひでん)并 奇方(めいほう) 一道中 茶屋(ちやや)にて休(やす)む節(せつ)草鞋(わらじ)のまゝにて足(あし)を  下(さげ)腰懸(こしかく)べからず其時は少(すこ) ̄シの間にても草鞋(わらじ)  をぬぎ上(うへ)へあかり急度(きつと)かしこまり休(やす)むべし  草臥(くたびれ)直(なを)ること妙なり 一 旅(たび)なれぬ人くたひれ又は足(あし)へまめを踏(ふみ)出(いた)すはみな  草鞋(わらじ)のはきやう麁相(そさう)なるゆへ也 能(よき)草鞋(わらじ)を調(とゝの)へ  てよく打(うち)はく時も不(いそか)_レ急(ず)のびつまりなきやうに  はくべし又 足(あし)乾(かわ)き熱(ねつ)する故に痛(いた)みもし  まめも出来(でき)るなり因而(よつて)折々 草鞋(わらじ)を解(とき)足(あし)  の熱(ねつ)をさまし急度(きつと)かしこまり休むべし 一 草臥(くたびれ)足痛(そくつう)する時は宿(やと)へ着(つき)風呂(ふろ)へ入て後(のち)塩(しほ)を調(とゝの)  へ足(あし)のうらへしたゝかになすり付火にてあふる  へし妙なり 一 至極(しこく)草臥(くたびれ)たる時は風呂へ入て後(のち)焼酎(しやうちう)を足(あし)の  三里(さんり)より下 足(あし)のうら迄 吹付(ふきつく)べし手にてぬり  てはきかぬなり 一 遠路(とをみち)をして 足(あし)のつち(心)ふまず腫(はれ)痛(いたむ)には蚯蚓(みゝづ)を泥(どろ)  のまゝすりつふしぬりてよし 一草臥(くたびれ)たる時 足(あし)の三里(さんり)承山(ぜうさん)通谷(つうこく)の三 ̄ケ所 灸(きう)すべし  下に図あり見合べし 一 足(あし)のうらへまめを踏出(ふみだ)したる時は半夏(はんけ)の細(さい)  末(まつ)をそくひのりに押(おし)ませてぬりてよし 一又方 煙草(たはこ)の吹(ふき)からをそくひに押交付て火にて  あふりてよし 一又方 薬種屋(やくしゆや)にて唐(から)の土(つち)といふ物(もの)を調(とゝの)へ薄(うす)き  そくいのりにませてぬりてよし 一又方 木綿糸(もめんいと)へ針(はり)を通(とう)し其(その)糸(いと)へ矢立(やたて)の墨(すみ)を  沢山(たくさん)ぬりまめを横(よこ)につきぬけは水(みづ)出(いて)て墨(すみ)まめ  のうちに残(のこ)り痛(いた)み止(とま)ること妙なり 一又方うとんの粉(こ)を水(みつ)にてときぬりてよし 一 夏(なつ)の旅(たび)に足(あし)のうら熱(ねつ)しいたむ時は蓼(たて)の葉(は)  をすり其(その)青汁(あをしる)をぬりてよし 一夏の旅に笠(かさ)の下へ桃(もも)の葉(は)を入かむれは暑気(しよき)  をうけさること妙也 一 毎朝(まいてふ)胡椒(こせう)を一二 粒(りう)つゝ服(ふく)せば夏(なつ)霍乱(くわくらん)をせず冬(ふゆ)  は雪吹(ふゞき)にあふことなし 一 夏(なつ)水(みづ)を飲(のむ)時(とき)胡椒一粒を嚙(かみ)くたきて呑へし又水を  嚙(かみ)て呑はあたることなし 一 毒虫(とくむし)にさゝれたる時は延齢丹(えんれいたん)にても蘇香円(そかうゑん)  てもぬれば早速(さつそく)痛(いたみ)退(しりぞ)くなり 一 田螺(たにし)を醤油(しやうゆ)にて炒付(いりつけ)乾置(ほしおき)て旅先(たひさき)へ持行(もちゆき)  二三日の内用ゆれば水にあたることなし  ○湯気(ゆけ)にあかりたる時の奇方(めいほう) 一風呂(ふろ)へ入て時(とき)を移(うつ)し湯気(ゆけ)に中(あた)りたるには  冷水(ひやみつ)を其(その)面(かほ)にふきかくべしもし衂血(はなち)止(やま)ず  眩暈(めまい)甚しきものは惣身(そうしん)に水を澆(そゝき)かけてよし 一又方 面(かほ)へ水を噴(ふき)かけて後髪(のちかみ)を解(とき)あら櫛(くし)にて  幾(いく)へんもすけば気(き)の付こと妙也又 酢(す)を少々  飲(のま)しむへし 【以下図の説明】 此(この)図(づ)の外に草臥(くたびれ)足痛(そくつう)の 灸所多し試(こゝろ)み覚へてよき 所ともへはすへべし然共わらじ 脚半等にてすれる所は用 心あるべし 三里膝の下三寸 外(そと)のかと ○承山(じやうざん)俗(ぞく)にかこかき  三里といふ ○足の ふくらは きの 図 承山(じやうざん) 両足をつま立れば ふくらはきへ山の かたち出る也その 山の下を承山と しるへし 通谷(つうこく) 足(あし)の小(こ)ゆひのよこの くほみたる所なり くたびれよく直る也  ○道中(たうち)所持(しよじ)すへき薬(くすり)の事 一 熊胆(くまのゐ) 奇応丸(きをうくわん) 返魂丹(はんこんたん)  已上三方は積又は腹痛食傷霍乱によし此外はらあひの薬  いろ〳〵あれとも此三方にてたるべし 一 五苓散(ごれいさん) 胡椒(こせう)  水かわり又は夏人々かわきて水をのむに用ひてよし 一 延齢丹(えんれいたん) 蘇香円(そかうゑん)  気付によし 一 三黄湯(さんわうたう)  是は道中は人々のぼせるものゆへ大便けつしやすし其節  ふり出し用ゆべし 一 切(きり)もくさ  しめらぬやうにして貯ふべし 一 備急円(ひきうゑん)  大食傷にて吐(はき)も瀉(くた)しもせざる時に用ゆる為なり然とも大方は先つ  熊のゐ奇応丸返魂丹にて吐瀉あるもの也 一 油薬(あふらくすり) 白竜膏(はくりうかう) 梅花香(ばいくわかう)  此外近頃流布する朝川の桂花香(けいくわかう)なとよし切疵腫物毒虫  のさしたるによし  右の外は面々(めん〳〵)のあひ薬(くすり)有ものなれば勝手(かつて)次 第(したい)たる  べし又道中にては薬種屋(やくしゆや)にて調ふれば大概(たいかい)急用(きうよう)  はたるべし  ○道中(たうちう)所持(しよじ)すべき品(しな)の事 一 矢立(やたて) 扇子(あふき) 糸(いと)針(はり) 懐中(くわゐちう)鏡(かゝみ)  日記(につき)手帳(てちやう)一冊 櫛(くし)并 ̄ニ鬢付油(ひんつけあふら)  但しかみそりは泊屋にてかり用ゆへし又髪ゆひもあれとも只途中  又は 御関所城下等通る節ひんのそゝけざる為なり 一 挑灯(ちやうちん) ろうそく 火打道く 懐中付木  是はたばこを呑ぬ人も懐中すべしはたこ屋のあんとうはきへ  やすきもの故ふ慮に備ふべし 一 麻綱(あさつな) 是は泊々にて物品をまとひおくに至極よきもの也 一 印板(いんばん)  是は家内へ其印鑑を残し置旅先ゟ遣ス書状に引合せ又  金銀の為_レ替等にも其印を用ゆる為の念なり 一【鈎の図】 此かきを所持すれば道中にて重実なるもの也 【以下図の説明】 革袋(くわふくろ)  駕籠に乗には此 革袋(かわふくろ)を持てよろし  座右の物を残らず入て休み又は  泊りへ着自身ひつさけあかるに  至極よきもの也 胴乱(だうらん)  乗かけには此胴らん至極  重法なり紐を手丈夫  にすべし  ○道中にて日記 認方(したゝめかた)之事 一道中にて名所(めいしよ)旧跡(きうせき)を尋(たつね)風景(ふうけひ)の能(よき)所又は珍  敷物等見聞たるならば何月何日何所にて何を  見ると有のまゝに書付もし詩歌(しか)連俳(れんはい)等の句(く)心  にうかみたらば連続(れんぞく)せずとも其(その)趣(をもむき)を日記にしる  し置へし又山川の真景(けしき)等を画に認るも其通  り見たるまゝを写(うつ)し置 追而(おつて)帰国(きこく)の上 取立(とりたて)  浄書(せいしよ)すべし詩歌もつゝり絵図(ゑづ)もよく書んと  すれば道中する邪魔(しやま)になりてよく出来ぬ  ものなり心得あるへし 【表上段】  ○日の出入の事          正十節   卯ノ八分 ̄ニ出 酉ノ二分 ̄ニ入    正九節   卯ノ七分 ̄ニ出 酉ノ三分 ̄ニ入 二九節   卯ノ六分 ̄ニ出 酉ノ四分 ̄ニ入 二八節   卯ノ五分 ̄ニ出 酉ノ五分 ̄ニ入 三八節   卯ノ四分 ̄ニ出 酉ノ六分 ̄ニ入 三七節   卯ノ三分 ̄ニ出 酉ノ七分 ̄ニ入 四七節   卯ノ二分 ̄ニ出 酉ノ八分 ̄ニ入 四六節   卯ノ一分 ̄ニ出 酉ノ九分 ̄ニ入 五六節   卯ノ時 ̄ニ出  戌ノ時 ̄ニ入 五中    寅ノ九分 ̄ニ出 戌ノ一分 ̄ニ入 十十二中  卯ノ九分 ̄ニ出 酉ノ一分 ̄ニ入 十一十二節 辰ノ時 ̄ニ出  酉ノ時 ̄ニ入  十一中   辰ノ一分 ̄ニ出 申ノ九分 ̄ニ入 【表下段】 ○一年昼夜長短《割書:六ヨリ|六マテ》の大略 正月 ̄ノ中  昼五十コク半ヨ  夜四十九コクヨ 二月 ̄ノ中  昼五十五コクヨ  夜四十四コク半ヨ 三月 ̄ノ中  昼六十コク    夜四十コク 四月 ̄ノ中  昼六十四コク   夜三十六コク 五月 ̄ノ中  昼六十五コク半ヨ 夜三十四コクヨ 六月 ̄ノ中  昼六十四コク   夜三十六コク 七月 ̄ノ中  昼六十コク    夜四十コク 八月 ̄ノ中  昼五十五コクヨ  夜四十四コク半ヨ 九月 ̄ノ中  昼五十コク半ヨ  夜四十九コクヨ 十月 ̄ノ中  昼四十七コクヨ  夜五十二コク半ヨ 十一月 ̄ノ中 昼四十五コク半ヨ 夜五十四コクヨ 十二月 ̄ノ中 昼四十七コクヨ  夜五十二コク半ヨ 【表上段】 ○月の出入の事 朔日  《割書:卯 ̄ノ四刻 ̄ニ出|酉 ̄ノ四ヽ ̄ニ入》 十六日 《割書:酉 ̄ノ四刻 ̄ニ出|卯 ̄ノ四ヽ ̄ニ入》 二日  《割書:卯 ̄ノ八刻 ̄ニ出|酉 ̄ノ八ヽ ̄ニ入》 十七日《割書:酉 ̄ノ八刻 ̄ニ出|卯 ̄ノ八ヽ ̄ニ入》 三日  《割書:辰 ̄ノ二刻 ̄ニ出|戌 ̄ノ 二ヽ ̄ニ入》 十八日 《割書:戌 ̄ノ二刻 ̄ニ出|辰 ̄ノ二ヽ ̄ニ入》 四日  《割書:辰 ̄ノ六刻 ̄ニ出|戌 ̄ノ 六ヽ ̄ニ入》 十九日 《割書:戌 ̄ノ六刻 ̄ニ出|辰 ̄ノ 六ヽ ̄ニ入》 五日  《割書:巳 ̄ノ刻 ̄ニ出|亥 ̄ノ ヽ ̄ニ入》  廿 日 《割書:戌 ̄ノ刻 ̄ニ出|巳 ̄ノ ヽ ̄ニ入》 六日  《割書:巳 ̄ノ四刻 ̄ニ出|亥 ̄ノ 四ヽ ̄ニ入》 廿一日 《割書:亥 ̄ノ四刻 ̄ニ出|巳 ̄ノ 四ヽ ̄ニ入》 七日  《割書:巳 ̄ノ八刻 ̄ニ出|亥 ̄ノ 八ヽ ̄ニ入》 廿二日 《割書:亥 ̄ノ八刻 ̄ニ出|巳 ̄ノ八 ヽ ̄ニ入》 八日  《割書:午 ̄ノ二刻 ̄ニ出|子 ̄ノ 二ヽ ̄ニ入》 廿三日 《割書:子 ̄ノ二刻 ̄ニ出|午 ̄ノ 二ヽ ̄ニ入》 九日  《割書:午 ̄ノ六刻 ̄ニ出|子 ̄ノ六ヽ ̄ニ入》 廿四日 《割書:子 ̄ノ六刻 ̄ニ出|午 ̄ノ 六ヽ ̄ニ入》 十日  《割書:未 ̄ノ刻 ̄ニ出|丑 ̄ノ ヽ ̄ニ入》  廿五日 《割書:丑 ̄ノ刻 ̄ニ出|未 ̄ノ ヽ ̄ニ入》 十一日 《割書:未 ̄ノ四刻 ̄ニ出|丑 ̄ノ 四ヽ ̄ニ入》 廿六日 《割書:丑 ̄ノ四刻 ̄ニ出|未 ̄ノ 四ヽ ̄ニ入》 十二日 《割書:未 ̄ノ八刻 ̄ニ出|丑 ̄ノ 八ヽ ̄ニ入》 廿七日 《割書:丑 ̄ノ八刻 ̄ニ出|未 ̄ノ 八ヽ ̄ニ入》 十三日 《割書:申 ̄ノ二刻 ̄ニ出|寅 ̄ノ 二ヽ ̄ニ入》 廿八日 《割書:寅 ̄ノ二刻 ̄ニ出|申 ̄ノ 二ヽ ̄ニ入》 十四日 《割書:申 ̄ノ六刻 ̄ニ出|寅 ̄ノ 六ヽ ̄ニ入》 廿九日 《割書:寅 ̄ノ六刻 ̄ニ出|申 ̄ノ 六ヽ ̄ニ入》 十五日 《割書:酉 ̄ノ刻 ̄ニ出|卯 ̄ノ ヽ ̄ニ入》  晦日 《割書:卯 ̄ノ刻 ̄ニ出|酉 ̄ノ ヽ ̄ニ入》 【表下段】 ○潮(しほ)の盈虚(みちひ)の事  朔日 十六日  《割書:あさ大|ばん》六ッ四分盈 《割書:ひる|よる》九ッ四分于 二日 十七日  《割書:あさ |ばん》六ッ八分ヽ 《割書:ひる|よる》九ッ八分ヽ 三日 十八日  《割書:あさ中|ばん》五ッ二分ヽ 《割書:ひる|よる》八ッ二分 四日 十九日  《割書:あさ |ばん》五ッ六分ヽ 《割書:ひる|よる》八ッ六分ヽ 五日 廿日   《割書:あさ |ばん》四ッ  ヽ 《割書:ひる|よる》七ッ  ヽ 六日 廿一日  《割書:あさ |ばん》四ッ四分ヽ 《割書:ひる|よる》七ッ四分ヽ 七曰 廿二日  《割書:ひる小|よる》四ッ八分ヽ 《割書:あさ|ばん》七ッ八分ヽ 八日 廿三日  《割書:ひる |よる》九ッ二分ヽ 《割書:あさ|ばん》六ッ二分ヽ 九日 廿四日  《割書:ひる |よる》九ッ六分ヽ 《割書:あさ|ばん》六ッ六分ヽ 十日 廿五日  《割書:ひる長|よる》八ッ  ヽ 《割書:あさ|ばん》五ッ  ヽ 十一日 廿六日 《割書:ひる |よる》八ッ四分ヽ 《割書:あさ|ばん》五ッ四分ヽ 十二日 廿七日 《割書:ひる |よる》八ッ八分ヽ 《割書:あさ|ばん》五ッ八分ヽ 十三日 廿八日 《割書:ひる |よる》七ッ二分ヽ 《割書:あさ|ばん》四ッ二分ヽ 十四日 廿九日 《割書:あさ |ばん》七ッ六分ヽ 《割書:ひる|よる》四ッ六分ヽ 十五日 晦日  《割書:あさ |ばん》六ッ  ヽ 《割書:ひる|よる》九ッ  ヽ 【表終り】  〇日和見(ひよりみ)様(やう)の事幷 古歌(こか)諺(ことわざ) 一 夜(よる)の九ッ時 昼(ひる)の五ッ時七ッ時より降出したるは長雨也  又昼の四ッ時六ッ時の降出しは少しの間にて日和になる也  又夜の五ッ時七ッ時昼の九ッ時の降出しははら〳〵雨にて  早速(さつそく)止(やむ)也又昼の八ッ時六ッ時夜の四ッ時のふり出しは  僅(はつか)半日計りにてあかるなり 一 東風(こち)は雨になるへきものなれとも入梅(にうばい)【左ルビ「つゆ」】と土用にはふり  つゝきたる雨もあかる也○東風 急(きう)なれは夜晴をつか  さとる也○春夏に西北の方より吹風は雨の印也○秋西  風吹はかならず雨也○冬の日南風吹は三日に霜(しも)をつかさ  とる也○西風・北西風は日和・東風・南風は雨風也○日の  没(いり)赤か青は風也・夕雲赤は晴・雲乱飛は大風・風雲跡  なきはやむ・雲の色紅白なれは又大風也○夜 霧(きり)ふれば  翌(よく)日大風也○流星(りうせい)東へ飛ば風也・南へ飛ば晴・西へ飛ば  雨也○月の出色白は雨也・月のかさに星(ほし)あれは雨  なり・笠(かさ)かさなれは大風也・月の入に光(ひかり)つよきは雨・  色白は風・朝(あさ)虹(にじ)西に有は三日のうちに雨也・夕虹東に有は  日和・電(いなひかり)四方にあるは風雨也 一雨ふらんとしては礎(いしすへ)うるほふもの也○山あざやかに見ゆる  時は陽風也又山かくれて見へざれば陰風也○烏(からす)水(みづ)をあ  びるはかならす雨の印也○鳩(はと)鳴(なひ)てかへす声(こゑ)あらば  晴也かへすこゑなきは雨の印也○朝(あさ)に鳶(とび)鳴(なけ)ば雨也  夕に鳴ばはれ也○竃(かまど)の煙(けむ)りもや〳〵として下(した)へさが  らば雨としるべし直(すぐ)に立(たち)のぼりて滞(とゞこほ)らざるは晴也 一 出雲(でくも)入雲(いりくも)にて日和を見ること国々によりて替(かわり)  あり大坂にては雲のあし丑寅(うしとら)の方へゆくを入雲と  いふ雨になる也又 未申(ひづしさる)の方に行を出雲といふ  これも雨になれども風つよく吹時は日和に成(なる)事(こと)あり 一天一太郎。八専次郎。土用三郎。寒四郎といふことは。天一  天上が朔日にあたるを天一太郎といふ。八専次郎といふは  八専が入て二日めをいふ。土用三郎といふは土用が入て  三日めをいふ。寒四郎とは寒が入て四日めをいふいつれ  もこれにあたる日に雨ふればて気あしく成もの也 一天気 時候(じこう)は国所によりてかはること有ゆへに一概(いちがひ)にも  いひかたし大凡 関東(くわんとう)は西風にて晴東風にて  雨ふる関西(くわんさい)は西風にて雨降東風にて晴る也 因而(よつて)  土地所に応して聞合 考(かんかへ)しるべし    古歌并諺  筑波(つくば)はれ浅間(あさま)くもりて鵙(もず)鳴(なか)ば雨はふるとも  旅(たび)もよひせよ  五月西春は南に秋は北いつも東風(こち)にて  雨ふるとしれ   春北風に冬南いつも東は定降(じやうふり)の慕雨(ぼう)    降 霧  照 霧   立 霧  降 霧    ふつきりはてつきり  たつきりはふつきり  右の両句日和を知の妙語也霧ふれは天気也  霧立のほれは雨になるなり余これをためし見るに  違ふことなし又心やすく覚よき語なり前の  古歌も関東にて日和をためし考へたる歌なる  へし都而日和の見やうは譬(たとへ)は関東にてはふじ  山筑波山の雲たちによつて風雨をしるやうに其  国々所々にて目当ありて知こと也 因而(よつて)道(たう)中にては  其所々にて聞合考へみるへし旅は日和の善悪(ぜんあく)に因(よつ)  而(て)損益(そんゑき)あること也 川越(かわこし)船(ふな)わたし等のある前後(ぜんご)は  別而(へつして)了簡(りやけん)あるべき事也 ものゝふの やはせの  わたし  ちかく   とも いそかは   まわれ  瀬田の   長橋   ○旅行(りよかう)教訓歌(きやうくんのうた)  宿(やと)とりて一に方角(ほうがく)二 雪隠(せつゐん)三に戸(と)じまり  四には火(ひ)のもと  道中(たうちう)は自由(じゆう)をせんと思ふましふ自由せんと  すれは自(じ)ゆふぞ  長(なが)たびの道具(たうぐ)はとかく少(すくな)きをよしと定(さだ)めよ  おほきのはうき  道中の事(こと)を手軽(てかる)にする人は川留(かわとめ)故障(こしやう)  あれとあんせむ  早(はや)く立(たち)はやくとまるといふ人は旅にて難(なん)は  なきとしるべし  道中は一度にものをしたゝめずやすみ〳〵て  いくたひもくゑ  道中の食(しよく)によしあしいふ人は土地(とち)も処(ところ)も  見わかぬとしれ  それ〳〵に所の風土(ふど)を味(あぢわ)ひてくらへは悪敷(あしき)  ものもけつかう  上戸(じやうご)ても旅て大酒(たいいしゆ)はすべからす折々すこし  のめは り(良)やう やく(薬)  旅先てたとへいそけとしらぬ川(かわ)しらぬちか道(みち)  つゝしみてすな  仮初(かりそめ)の船路(ふなぢ)をゆかんたひならば遅速(ちそく)の程(ほと)を  かんかへてのれ  雨(あめ)ふる日あかるくならは宿(やど)かりよ暮(くれ)て泊(とま)れば  よきやとはなし  道中は家来(けらい)けんぞくありとても自身(じしん)にものを  するかちにせよ  道中てみへかさりする人達(ひとたち)は必(かなら)すなんに  あふとしるへし  泊りにてもしや近火(きんくわ)のある時は立(たち)したくして  次(つき)に荷(に)をだせ  ものいひを旅てはことに和らけよ利屈(りくつ)かましく  こわたかにすな  得たりとて旅て出(いた)すなそのわざをかくせはひかり  いやまさるなり  落(おと)さしとわかふところに心つけ川越(かわこし)の場(ば)と  ふねののりをり  馬かたや荷(に)持(もち)雲助(かこかき)あなとるな同しうきよに  をなし世(よ)わたり  はらのたつことをも旅はこらへつゝいふへきことは  のちにことわれ  乗(のり)かけは小附(こつけ)まてをも改(あら)めて其(その)数(かつ)合ふた  上(うへ)てのるべし  宿(やと)たゝばもつへき物をあひたかひ忘(わすれ)ぬやうに  気を付てやれ  右(みき)旅行(りやうかう)教訓(きやうくん)の歌(うた)を人々(ひと〳〵)つね〳〵暗誦(あんせう)【左ルビ「そらにおぼへは」】せば後日(かうじつ)  旅行する折の心得となるへし   ○旅立の歌  庭中のあすはの神に小柴さしあわれ祝む  帰りくるまて  定(さた)めえし旅(たひ)たつ日(ひ)とり吉悪(よしあし)は思ひ立(たつ)日(ひ)を  吉日(きちにち)とせむ 【上段横書き】 白沢之図 【下段】 此(この)白沢(はくたく)の図(づ)を懐(くわい) 中(ちう)すれば善事(せんじ)を すゝめて悪事(あくじ)を しれぞけ山海(さんかい)の 災難(さいなん)病患(ひやうく)をま ぬかれ開運(かいうん)昇(しやう) 進(しん)の祥端(せうすい)ある こと古今(ここん)云伝(いひつた)ふる 所也 因而(よつて)旅中(りよちう)は 最(もつとも)尊信(そんしん)あるべし 南胆部州大日本国正真図 用明天皇御宇定五畿七道也文武天皇御宇分六十六箇国 松前 陸奥 出羽 下野 上野 信濃 ヒダ ミノ 近江 佐渡 越後 越中 能登 加賀 越前 ワカサ 常陸 下総 上総 安房 武蔵 江戸 甲斐 相模 伊豆 大シマ 三宅 黒セ川 八丈 駿河 遠江 参河 尾張 イカ 伊勢 シマ  山城 京 大和 河内 イツミ 摂津 大坂 丹波 丹後 但馬 イナバ 伯耆 出雲 石見 隠岐 ハリマ 美作 備前 備中 備後 アキ 周防 長門 紀伊 アハチ 讃岐 阿波 ナルト 土佐 伊予 豊前 豊後 筑前 筑後 肥前 長崎 肥後 日向 薩摩 大隅 対馬 イキ 平戸 五トウ 琉球 朝鮮  夫(それ)我(わか) 邦(くに)の温泉(おんせん)は神代(かみよ)のむかし未(いまた)医薬(いやく)のはじ  まらざる時 万民(ばんみん)疾病(しつへい)夭折(ようせつ)の患(うれ)ひを救(すくわ)んがために  大已貴尊(をゝあなむちのみこと)宿奈彦那命(すくなひこなのみこと)と同しく諸国(しよこく)を巡行(しゆんこう)し  温泉を取立給ひしより已来(このかた)諸民(しよみん)病患(ひやうくわん)を平愈(へいゆ)す  ること得たり然りしより後上は 王侯(わうこう)より下(しも)庶人(しよじん)  に至(いたる)迄(まて)湯治(たうじ)すること今(いま)に盛(さかん)也(なり)抑(そも〳〵)温泉は天地(てんち)の妙(めう)  効(かう)にして人体(じんたい)肌膚(きふ)を膏沢(うるほ)し関節(くわんせつ)経絡(けいらく)を融通(ゆうつう)  して腹蔵(ふくそう)表裏(ひやうり)に貫徹(くわんてつ)するか故に其(その)症(しやう)に的中(てきちう)する  におゐては万病(まんひやう)を治すること医薬(いやく)の及ふ所に非(あら)ず  依_レ之湯治する人温泉を尊信(そんしん)せずんば有べからず 一 左(さ)に著(あらわ)す所(ところ)の諸国(しよこく)の温泉(おんせん)は唯(たゞ)養生(ようじやう)の為(ため)に  湯治(たうじ)する人(ひと)は勿論(もちろん)又(また)物参(ものまいり)遊山(ゆさん)なからに旅立(たびたち)  其(その)もより〳〵によつて湯治(たうじ)する人の為に国分(くにわけ)に  して見易(みやすき)やうに里数(りすう)を加(くわ)へ効験(かうけん)の大略(たいりやく)をあく  依(これに)_レ之(よつて)其(その)順路(じゆんろ)に随(したが)ひ此(この)書(しよ)に引(ひき)合て尋(たつね)求(もとむ)べし湯(ゆ)  の効能(かうのう)不案内(ふあんない)の場所(ばしよ)は其 土地(とち)の人に能(よく)聞(きゝ)合て  湯治すべし病症(ひやうしやう)によつて合(あふ)と不(あは)_レ合(ざる)とあることゆへ  ゆるかせにすべからず 一 湯治(たうじ)する人 其(その)温泉(おんせん)其(その)病症(ひやうしやう)にあふとあわぬとを  ためしみるには初(はじめ)一両度(いちにと)入(いり)て後(のち)胸(むね)腹(はら)すき食物(しよくもつ)  味(あしわ)ひよきは相応(さうわう)したると知(しる)へし若(もし)一両度入  ても胸腹(きやうふく)はり食(しよく)の味(あぢわ)ひあしく不(すゝま)_レ進(ざる)は先(まつ)は不相応(ふさうわう)  としるべし是等(これら)の事は其(その)土地(とち)々々の湯宿(ゆやと)へ委細(いさひ)を  咄(はな)し其上(そのうへ)入湯(にうたう)すべし然ども二三日も入て見れば  おのつから様子(やうす)しれるものなり 一 湯治(たうじ)の仕方(しかた)ははじめ一日二日の中は一日に三四度  に限(かぎる)べし相応する上は五七度迄はくるし  からず老人(ろうじん)又は虚弱(きよじやく)の人は斟酌(しんしやく)あるべし又 多年(たねん)  の病(やまひ)は一 ̄ト回(まわり)二 ̄タ回にては不(いゑ)_レ治(ざる)ものあり故に三四回又は  一二月も入へし 一湯治中病人は勿論(もちろん)無病(むびやう)の人にても禁(きん)じ慎(つまし)む  べき物(もの)は飽食(ほうしよく)大酒(たいしゆ)房事(ぼうじ)冷(ひへ)たる食物(しよくもつ)等也又 湯(ゆ)  上(あがり)には惣身(さうしん)毛(け)の孔(あな)開(ひらく)ゆへ外邪(くわいしや)をうけやすし依(これに)_レ之(よつて)  深山(しんざん)の涼風(りやうふう)にあたり又は清水(しみづ)に足(あし)を冷(ひや)し或は  風(かざ)吹にうたゝねなと決而(けつして)すへからず平生(へいぜい)の外邪  よりも湯上りに受たるは別而(へつして)甚(はなはた)し慎むべし 一 温泉(おんせん)は熱(あつふ)して能(よく)澄(すみ)鑑(かゞみ)の如く底(そこ)まて明(あきら)かなるを  最上(さいじやう)とす温(ぬる)うして濁(にこり)り又は色(いろ)替(かわ)りたる湯は  下品なり然ども所により濁り色替りたる湯に  ても無毒(むどく)温順(おんじゆん)にして病に能(よく)利(きく)湯もあり一概(いちがひ)に  いふべからず又湯の源(みなもと)一 ̄ト口にして湯宿 数軒(すけん)へ配分(はいぶん)  すれば其(その)家々(いゑ〳〵)により其(その)効能(かうのう)夫々(それ〳〵)に替(かわる)ものあり依_レ之  温泉(おんせん)ある場所(ばしよ)にはいろ〳〵に利(きゝ)めの有湯あるものな  れば其所に至り様子をとくと湯宿へ問合すへし  いかなる名(な)高(たかき)温泉にても其病症に因而(よつて)相応ふ相  応有ことあれは能々聞合て湯治すへし 一 諸州(しよしう)の温泉(おんせん)左にあくるもの凡四十ケ国二百九十  二ケ所 此(この)余(よ)洩(もれ)たる温泉諸国にこれありといへ  ども徧(あまね)く尽(つく)す事あたはず依_レ之 其(その)洩(もれ)たるもの  此(この)書(しよ)へ追々(おい〳〵)加入(かにう)あるべし 諸国温泉  五幾内   大和 武蔵(むさし) 塩(しほ)の葉(は)   摂津 有馬(ありま)《割書:京ヨリ十四里|大坂ヨリ九里》 多田(たゞ)《割書:池田ヨリ|一里ヨ》 一庫(ひとくら)《割書:一庫村|にあり》 一 有馬(ありま)の湯(ゆ)は浴室(よくしつ)一 宇(う)にして湯槽(ゆふね)深 ̄サ三尺八寸  堅(たて)二丈壱尺 横(よこ)一丈二尺五寸 底(そこ)は鋪石(しきいし)なり其(その)  石(いし)の間(あひ)に竹筒(たけつゝ)を狭(はさみ)其中より湯(ゆ)涌出(わきいつ)る也 味(あしわい)は鹹(しほはや)  し中間(ちうかん)に板壁(いたかべ)を隔(へたて)て南(みなみ)を一の湯とし北(きた)を二 有馬温泉 城山 あたこ 一のゆ 二のゆ  の湯とす湯宿二十軒を二十坊とし南北に相  分(わか)れり此(この)外(ほか)の家々を旅人(りよしん)を留る小宿といふ二  十坊の家毎に二婢(にひ)あり一人は大湯女(おゝゆな)といひ通(つう)  称(しやう)嫁家(かか)と呼(よふ)也一人は小湯女(こゆな)といふ是(これ)は年若(としわか)なり  家々(いゑ〳〵)代々(たい〳〵)通名を伝(つた)ふ此二人の湯女 湯治(たうし)する客(きやく)人  に湯の廻(まは)りを告(つけ)しらしめ送(をく)り迎(むかひ)す諸国(しよこく)の旅(りよ)  客(かく)混雑(こんさつ)すれとも其廻り違(たか)ふことなし又 留湯(とめゆ)と  いふあり是は湯幕(ゆまく)を引(ひき)て他(た)の人をとゞむ    一之湯《割書:小湯女通名あり|大湯女はかゝといふ》  奥ノ坊 夏女  伊勢屋 竹女  御所ノ坊 桔女  尼崎坊 移女  称宜屋 杉女  角ノ坊 蔦女  二階坊 栗女  大門 辰女  若狭屋 市女  中ノ坊 常女    二之湯  池ノ坊 松女  川崎屋 弥女  休 ̄ミ取 武女  河野屋 光女  兵衛 小夜女  大黒屋 竿女  水船 辻女  下 ̄タ大坊 鍋女  索麺屋 藤女  萱ノ坊 紀以女 一 妬湯(うわなりゆ) 此(この)湯(ゆ)は湯本谷町にあり女子 化粧(けせう)して  此湯の側(かたわら)へ近付ば湯 怒(いかり)て沸(わき)出るといふ 一 明目湯(めいもくゆ)この湯は温泉寺(おんせんじ)の下にあり眼病(かんひやう)によし 一 多田(たゞ)の湯一名 平野(ひらの)の湯といふ浴室(よくしつ)の広(ひろ) ̄サ方五丈  計(はかり)中(なか)を隔(へたて)て男女 分(わか)ち入(いれる)也此湯はぬる湯を汲入(くみいれ)  て火にてわかして湯治(たうじ)す 一 一庫(ひとくら)の湯 是は多田より近し一庫村の山中に  ありこのゆも火にてわかし湯治す  東海道   伊勢 菰野(こもの) 此湯は山中(さんちう)にて渓水(たにみつ)まぢりて   ぬるき故火にてわがして入なり   遠江 虫生(むじう)   甲斐 川浦 下部 奈良田      塩山 黒平 湯村   伊豆 熱海(あたみ)《割書:小田原ヨリ七里○江戸ヨリハ根府川|御関所手形入ル此地温泉数多シ》   大湯 上町ニアリ   清左衛門湯 此湯の側(かたわら)にて清左衛門 弱(よは)しと   小(ちいさ)く呼(よば)は小く沸(わく)大く呼は大に沸出(わきいつ)る也   野中湯 上町清左門湯の側にあり   法斎(ほうさい)湯 下町ノ北野中ニアリ 此湯も気違(きちがひ)の   法斎坊(ほうさいぼう)〳〵と呼(よべ)ば其(その)声(こゑ)の大小(だいしやう)に随(したかつ)て沸出(わきいづる)也   河原湯 法斎湯の南にあり当時湯する人なし   水湯 本町の北にあり是も湯する人なし   風呂(ふろ)湯 水湯の側にあり   走(はし)り湯 一名 滝(たき)の湯 《割書:熱海より半里ヨ権現の祠の|南にあり》   小奈 東海道三島宿ヨリ三里下田海道なり   修善寺(しゆぜんじ) 同所ヨリ五里半名湯なり   よし名 同所ヨリ七里半 伊藤 宇佐美   湯ガ島 蓮䑓寺(れんだいじ) 湯 ̄ガ野 北湯 ̄ガ野 一熱海の温泉は大 熱湯(ねつたう)にして昼夜(ちうや)に六度 沸出(わきいつ)る也 味(あじわ)ひ  鹹(しほはや)くして其(その)潔白(けつはく)なること鏡(かゞみ)の如し然共此地 海辺(かいへん)にて  潮(うしほ)を交(まじゆ)る故に其(その)気(き)柔(やはらか)にして猛烈(もうれつ)ならず諸病(しよひやう)に効(かう)あり  関東(くわんとう)第一の名湯(めいたう)也 湯宿(ゆやと)数(す)十 軒(けん)各(おの〳〵)樋(とひ) ̄ヲ以 ̄テ大湯を引也又  此地に霊場(れいじやう)勝景(せうけい)多(おゝき)こと枚挙(まいきよ)すべからず就(なかん)_レ 中(づく)日金山(ひかねさん)は天下  の絶景(せつけい)也西南に三保(みほ)の松原(まつはら)富士川(ふじかわ)を見(み)北は富士(ふじ)足高(あしたか)攣子(ふたご)  山東は天木(あまき)嘉貫(かぬき)伊藤(いとう)の諸峰(しよほう)連(つらな)り又 海上(かいしやう)は初島(はつしま)大島(おゝしま)等を  遠望(ゑんぼう)すること編戸(へんこ)の波上(はしやう)に浮(うかむ)が如し凡西国より東国へ  至 ̄ル舶船(はくせん)此(この)洋(なた)を不(すき)_レ過(ざる)はなし其外(そのほか)山禽(さんきん)海魚(かいきよ)名産(めいさん)多く  ありて旅客(りよかく)の有用(ゆうよふ)足(たら)ざる事なし   ○熱海(あたみ)の効(かう)は 中風(ちうふう) 疝癥(せんしやく) 眩暈(めまいたちぐらみ) 痰飲(たんせき) 眼病(がんびやう)   頭痛(づつう) 腰痛(ようつう) 脚気(かつけ) 筋攣(ひきつり) 跌仆(つまつき) 折傷(うちみくじき) 諸虫(むし) 寸白(すんばく)   痔漏(ぢも[◻]) 脱肛(たつこう) 痱痺(はいひ) 疥癬(ひぜん) 諸瘡(しよさう) 淋病(りんしつ) 金瘡(きりきず)   五積(しやく) 六聚([◻◻]へ)但シ腫気(しゆき)あるものは忌(いむ)べし   歯痛(はのいたみ)には湯(ゆ)を口中へいくたひも含(ふくみ)てよし   ○忌(いむ)べき病(やまひ)は 水腫(すいしゆ) 張満(ちやうまん) 癩病(らいびやう) 癲癇(てんかん) 黄痰(わうだん)   虚損(きよそん)等の症(せう)慎(つゝし)んて浴(よく)すべからず   ○脩善寺(しゆぜんじ)は 筥湯(はこゆ) 石(いし)湯 亭(ちん)の湯 新(あら)湯   独鈷(とつこ)の湯等 数種(いろ〳〵)あり温熱(おんねつ)は浴(よく)する者(もの)の心に   任(まか)せ効験(こうのふ)もそれ〳〵にわかれ諸瘡(しよさう)積聚(しやくしゆ)によし   ○吉奈(よしな)は温和(おんくわ)にして酷(こく)ならず身(み)を漬(ひた)し   気(き)を収(おさ)め肩(かた)を汲(ひた)して時(とき)を移(うつ)すにあらざれば   温気(おんき)を覚び老人(らうじん)婦人(ふじん)腰(こし)冷(ひへ)下血(げけつ)寒疝(せんき)或は   中症(ちうせう)惣而(そふじて)羸弱(ゑいじやく)の人によろしく温(あたゝ)むべき   病症(びやうせう)に効(かう)を得ること許多(きよた)なりといふ 一豆州 加茂郡(かもこほり)肖盧山(せうろざん)脩善寺(しゆぜんじ)は山(やま)の風景(ふうけい)唐土(もろこし)  の盧山(ろさん)に似(に)たりとて宋(そう)の西蜀(せいしよく)涪江(はうこう)の浮図(しゆつけ)  道隆(たうりう)《割書:号_二蘭渓_一 ̄ト|謚_二大覚_一》肖盧山(せうろさん)と号(な)つけ彼国(かのくに)理宗帝(りそうてい)  の額(がく)其外(そのほか)奇品(めづらしきもの)を此(この)寺(てら)に蔵す勝景(せうけい)最(もつとも)佳(よし)也  必ず遊ふべき所なり 日金山  アタミ  ヨリ  五十丁  木ノ宮  前湯  小田原三千  本陣  渡部  本陣  今井  弁天  アシロ  明神  相模箱根 湯本(ゆもと) 小田原ヨリ一里半ヨ 湯宿九軒  塔(たう)の沢(さわ) 湯本ヨリ十二丁湯宿十二軒  宮(みや)の下(した) 塔の沢ヨリ 一里半 湯宿八軒  堂(だう)が島(しま) 宮の下ヨリ谷へ十丁計リ下ル 湯宿六軒  底倉(そこくら) 宮の下ツヽキ 湯宿四軒  木賀(きか) 底くらヨリ半道 湯宿三軒  芦(あし)の湯 底倉ヨリ一里-六丁 湯宿五軒  禅定(ぜんじやう)一名 姥子(うばこ) 小田原ヨリ五里定リタル湯宿なし  胡胡米(こゞめ)一名 子産湯又河内湯トモいふ  仙石原 新湯   ○湯本は諸(もろ〳〵の)瘡痬(できもの)。下疳(けかん)。瘡毒(さうとく)。楊梅瘡(やうばいそう)   痼湿(こしつ)。結毒(けつとく)。五痔(ぢ)。腰痛(ようつう)。癥疝(せんき)。金瘡(きりきず)に効(かう)あり   ○塔(たう)の沢(さは)は。頭痛。眩暈。下冷。打撲。くちき。口舌(こうせつ)   の痛(いたみ)。血(ち)の道(みち)痱痺(はいひ)。喘息(せんそく)血瘕(けつかい)。   ○宮(みや)の下(した)は五痔(ぢ)。淋病(りんひやう)。風疹(かさほろし)。疝気(せんき)。寸白(すんはく)に効(かう)有り   ○堂(だう)か島(しま)は 功能同前所   ○底倉(そこくら)は五痔(ぢ)。脱肛(たつこう)。疣痔(いほぢ)。都而 肛門(こうもん)の痛(いた)み   に大効(たいかう)ありゆゑに小倡(かげま)多くこゝに湯治す   ○木賀(きか)は手足(てあし)㿏痺(くんひ)。筋骨(きんこつ)攣急(れんきう)。頭痛(つつう)。痰(たん)   飲(いん)。撲損(ほくそん)。閃肭(せんとつ)。転筋(てんきん)。痛風(つうふう)。に効あり   ○芦(あし)の湯は脚気(かつけ)。筋攣(きんれん)。結毒(けつとく)。狐臭(わきか)。遺尿(せうへんたれ)   淋病(りんひやう)。せうかち。小瘡(せうさう)等に効あり   ○禅定 姥子 効験未詳   ○こゝめ 子産湯 河内湯 同断   ○仙石原 あら湯 同断 一 右(みき)相州(さうしう)箱根(はこね)の温泉(おんせん)は江戸より廿里 余(よ)にして  御関所(おんせきしよ)手前(てまへ)なれば格別(かくへつ)道路(たうろ)の険阻(けんそ)もなく  都下(とか)の老若(らうにやく)男女(なんによ)湯治(たうじ)するにむつかしきことも  なく殊(こと)に江(ゑ)の島(しま)鎌倉(かまくら)金沢(かなさわ)辺(へん)勝地(けしき)ありて  気欝(きうつ)を散(さん)し養生(ようぜう)の為(ため)には能(よき)湯治場(たうじば)なり  尤 此(この)七湯(しちたう)は各(いつれ)も名湯(めいたう)にして熱海(あたみ)と兄弟(けいてい)を争(あらそ)ふべし  然共熱海と其(その)里数(りすう)相(あひ)隔(へだゝ)ること僅(はつか)に七八里にして互(たかひ)に  行(おこな)はるゝものは湯(ゆ)の効能(かうのふ)に差別(さべつ)有(ある)を以也且此地は東(たう)  都(と)の便利(べんり)最上(さいじやう)にして其(その)繁昌(はんぜう)成(なる)こと天下(てんか)第(だい)一なり  武蔵 小河内(おかうち) 甲州堺也切痔に妙也  安房  馬杉  常陸 袋田 月折山の下ニアリ 火にてわかして入也  東山道   飛騨 下呂 蒲田 平湯 落合   信濃 田中善光寺ヨリ六里 渋(しぶ)の湯《割書:同所ヨリ|六里半》   角間《割書:同所ヨリ|半道》 野沢同所ヨリ北十一里   別所 《割書:大湯 玄斎(けんさい)湯 大師湯|古我湯 石の湯 此五ケ所別所村ニアリ》   印内 田沢 内湯 山人(やまうど)湯《割書:田沢村ニ|アリ》   上 ̄ノ諏訪小綿湯 下 ̄ノ諏訪《割書:綿湯|小湯》 山家   七滲(しちゞみ) 浦野 白骨(しらほね) 浅間   上野 伊加保(いかほ) 《割書:高寄ヨリ六里湯宿十二軒壷湯三ケ所|洗湯一ケ所つゝアリ》   万坐 篠根(しのね) 川原 四万(しま) 沢渡(さわたり)   須川 沼田 川端 川中   法師ケ峠 ○伊加保は 下疳 結毒 諸瘡 積 聚に効あり   草津《割書:高寄ヨリ二十里 滝数十二筋アリ|○諸瘡 頭痛 打撲 痔漏 癜風 癩風 悪瘡に効あり》   御坐湯 地蔵湯 綿の湯 熱の湯   滝の湯 鷲の湯 一右 伊加保(いかほ)草津(くさつ)の両所(りやうしよ)各(おの〳〵)名湯(めいたう)にして優劣(ゆうれつ)有(ある)  べからず然とも伊加保の効(かう)草津に増(まさ)るもの  あり草津の効(かう)伊加保に増るものあり是(これ)皆(みな)其(その)  病症(ひやうしやう)によるべし故に同国(どうこく)にしていつれもおこなは  るゝ事 猶(なを)箱根(はこね)と熱海(あたみ)の如し   下野 日光山中禅寺《割書:日光初石町ヨリ三里|湯宿八軒》   御所湯 中ノ湯 滝湯 姥湯   笹湯 自在湯 薬師湯 河原湯  右各 名湯(めいたう)なり寒国(かんこく)故(ゆへ)三月中旬より九月末頃  まて行るゝ也 湯治(たうじ)する人 夏(なつ)にても朝(あさ)夕(ゆふ)は寒(さむ)き  ゆへ衣類(いるい)等其用意あるべし 日光山   裏見カ滝 猿多シ 中善寺   塩原(しほばら) 《割書:奥州街道作山ヨリ入 ̄ル六里半|又 なべかけ宿よりも入 ̄ルなり》   那須(なす) 荒湯 大丸塚 福和田 一那須の湯は諸病に効あれども別而まむしに喰れ  たる人湯治せば痛(いたみ)立所(たちどころ)に退(しりそ)き疵(きず)いへて後(のち)難(なん)なし   陸奥 会津 江戸ヨリ六十五里白川ヨリ西へ入 ̄ル温泉多 ̄シ   天寧寺(てんねいじ)一名湯本 小谷(をや) 熱塩(あづしほ) 沼尻(ぬまじり)   磐梯(はんだい) 荒湯 隼人(はやと) 五畳鋪(ごじやうじき) 一天寧寺の温泉(おんせん)は会津(あひづ)若松(わかまつ)の城下(じやうか)より東一  里余 山中(さんちう)天寧寺村にあり此所を湯本といふ  湯宿(ゆやと)数(す)十 軒(けん)ありいつれも大家なり湯(ゆ)の源(みなもと)は一口  にして其(その)湯(ゆ)を数(す)十軒へ分(わかち)取(とる)なり然共其家に因(より)  温熱(おんねつ)寒冷(かんりよう)の差別(さべつ)ありて先々(それ〳〵)に効能(かうのう)別(べつ)也依_レ之 其(その)  中(うち)の効能に合(あわせ)て入湯(にうたう)すれば諸病(しよびやう)に尤(もつとも)効(かう)あり  此(この)湯(ゆ)は誠(まこと)に清潔(せいけつ)にして鑑(かゞみ)の如く日本 無双(ぶそう)の名(めい)  湯(たう)なり又 其(その)町中(まちなか)に惣湯(そうゆ)一宇(いちう)あり往来(わうらい)の旅人(りよじん)  草刈(くさかり)椎者(きこり)の類(たぐひ)迄 入込(いりこみ)なり此湯は外々より格別(かくべつ)  熱湯(ねつたう)なれども至而(いたつて)温順(おんじゆん)にして諸病に効あり又  右の湯宿の下を流(なかる)るゝ川を湯川(ゆかわ)といふ其川の中(うち)  にも温泉所々にあり其中にも目洗湯(めあらいゆ)とて川の  中に岩(いは)の円(まどか)に少(すこ)しくほみたる所より湧(わき)出る也此湯  眼病(かんびやう)を治(じ)す又 猿湯(さるゆ)とて山岸(やまきし)の滝(たき)の脇(わき)にありこの  滝を猿湯が滝といふ又此湯本迄の道路(どうろ)は大なる山坂  なり其下を件(くたん)の湯川(ゆかわ)流(なかれ)て大滝処々にあり其  中にも伏見(ふしみ)が滝とて雌雄(しゆう)の名瀑布(めいたき)二 ̄ツあり此滝  の上なる山の腰(こし)に湯宿二三軒あり是を滝の湯と  いふ此湯もまた至極(しごく)清浄にして諸病に効あり  且此地の山水(さんすい)勝景画(せうけいぐわ)にも企(くわだて)及ふべからず 一同国若松より北西へ七里余にして熱塩村(あつしほむら)に温  泉あり此湯山中にして甚(はなはた)塩気(しほけ)あり因而(よつて)俗(ぞく)に  熱塩(あつしほ)といふ又同所に鍵(かき)の湯(ゆ)とて錠(じやう)をおろし置  湯(ゆ)あり是(これ)は漫(みだり)に雑人(ぞうにん)をいれず湯宿へ乞(こ)ふて鍵(かき)  をかりて入也此湯諸病に効あり又此所の寺を  慈眼寺(じげんじ)といふ源翁(けんのう)和尚(おしやう)の開基(かいき)也 因而(よつて)慈眼寺  の湯ともいふ 一同若松より東北に八九里にして猪苗代(ゐなわしろ)といふ所に  磐梯山(ばんだいさん)といふ高山(かうざん)有比山中に温泉多し是を  地獄湯(ぢごくゆ)といふ夏日(かじつ)に至りて雪(ゆき)の消(きゆ)るを待て人々  湯治(たうじ)す此 湯場(ゆば)は人家なし因而(よつて)其折(そのをり)は湯宿  ともに年々(とし〳〵)新(あらた)に大 小屋(こや)を補理(しつらひ)て貸(かす)也湯治する 会津 天寧寺  湯本 湯宿廿軒余 毎家湯槽 二 ̄ツ宛アリ 惣湯  人々(ひと〳〵)米(こめ)味噌(みそ)鍋(なべ)釜(かま)の類(たぐひ)迄(まて)自(みつか)ら背負(せおひ)登(のぼ)るなり此湯  は最(もつとも)大熱湯(だいねつたう)にて米(こめ)を笹(さゝ)の葉(は)に包(つゝみ)湯口(ゆぐち)へ入れは忽(たちまち)飯(めし)と  なり其外(そのほか)菜類(さいるひ)筍(たけのこ)のごときもの殊更(ことさら)忽にうたる也  諸病に大効あれとも虚弱(きよじやく)の人は其(その)猛烈(もうれつ)に怖(おそれ)て  入事あたはず其外国中四方の山々に温泉夥しく  あり余国(よこく)の温泉は記事有て世に行るゝ故 略(りやくす)_レ之 ̄ヲ此  地は江戸より僅(はつか)に六十五里にして但馬(たじま)の城崎(きのさき)摂州(せつしう)  の有馬(ありま)等にも増(まさ)るべき名湯(めいたう)故(ゆへ)其大略を記 ̄ス   青沼 川旅 折木 野神 岳 ̄ノ湯   土中 飯豊(いて) 温湯(ぬるゆ) 赤湯 湯沢   飯坂 《割書:同|》箱湯 《割書:同|》滝 ̄ノ湯 湯村 狐湯   山熱海(にあだみ) 磐城 折木 名取 玉造   鳴子 鎌崎 青根 東岳 砂子原   野神 湯本《割書:一名|》 三箱の湯《割書:又|》 沢子の湯 ̄トいふ   湯入 湯原 湯岐(ゆじまた)   巳上三十ケ所は奥州白川ヨリ同仙䑓南部堺マテノ   温泉ニテ いつれも名湯なり   ○三箱の湯は水戸より北へ廿二里岩城郡 平(たいら)の   城下より一里余あり疥癬(ひぜん)諸瘡(しよさう)に効(かう)あり   ○湯岐(ゆじまた)は水戸より十八里西北也 撲損(うちみ)脚気(かつけ)中風(ちうふう)   手足(てあし)不仁(きかず)の症(せう)或は婦人腰冷の類に効あり   ○二本松の湯は城下より二里 山上(さんしやう)にあり夏月(なつ)に   あらざれば至ることあたはず積聚(しやくしゆ)痔疾(ぢしつ)に妙なり   ○鎌崎(かまざき)の湯は打身(うちみ)金瘡(きりきず)に最(もつとも)効(かう)あり   ○青根(あをね)の湯は頭痛(づつう)積聚(しやくつかへ)虫気(むし)に効あり   ○飯坂(いゝざか)は福島(ふくしま)より三里半ほと左に羽黒山(はくろさん)右に   信夫山(しのふやま)を見て一杯(いつはいのもり)泉村(いつみむら)松川河寒村八反川   星の宿比良田村小川を渡りて飯坂なり   湯は五ケ所あり 当坐湯 小湯《割書:村中にあり|》   滝の湯《割書:川上にあり|》 箱湯《割書:同|》 霧湯《割書:川を隔てあり|》   熱湯《割書:川の内にあり》 右はいつれも名湯(めいたう)にして   効験(こうのふ)同じからず依_レ之 湯宿(ゆやと)へ病症(ひやうせう)を咄(はな)して   浴(よく)すべし此所(このところ)に岩湯山(がんたうざん)常泉寺(じやうせんじ)といふあり   此(この)寺(てら)佐藤(さとう)庄司(せうじ)元治(もとはる)が菩提所(ぼだいしよ)なり此(この)元治(もとはる)は   飯坂(いゝざか)の温泉(おんせん)の庄司(せうじ)なりといふ   〇さはこの御湯 此辺にありといふ当時知人   なし其本所詳ならず   南部   台湯 滝 ̄ノ湯 上 ̄ノ湯 中 ̄ノ湯 鉢 ̄ノ湯   箱湯 已上五ケ所台村ニアリ 鴬宿《割書:鴬宿村ニアリ|》   繋湯 《割書:同|》小室 《割書:同|》瘡湯 《割書:同|》荒湯《割書:已上滴石村ニ|アリ》   松川湯《割書:田頭村ニ|アリ》 温湯(ぬるゆ)《割書:金田村ニアリ|》   下風呂《割書:下風呂村ニ|アリ》 新湯《割書:田名部村ニアリ|》   山の湯《割書:一名|》花染(はなそめ)の湯(ゆ)といふ浴(よく)して後(のち)人の肌(はだ)紅(べ)   粉(に)をもつて染(そめ)たる如(こと)くになる也《割書:同郡にあり|》   薬師湯 冷湯《割書:田名部郡ニ|アリ》 鷺湯《割書:脇沢村ニアリ|》   大湯《割書:大湯村ニアリ|》 湯瀬湯《割書:湯瀬村ニアリ|》   湯田湯《割書:沢内村ニ|アリ》 外道湯(げどうゆ)《割書:和賀郡ニアリ|》    熊沢湯《割書:鹿角郡ニ|アリ》 国見湯《割書:生内村ニアリ》   津軽   蔵館 浅虫(あさむし) 大鰐 切明 温湯(ぬるゆ)   板留 沖浦 碇ケ関 湯端(ゆたん) 下湯   岩木島 須加湯 《割書:巳上十二ケ所各名湯也|》   出羽 赤湯 五色 ̄ノ湯 銀山 ̄ノ湯   上野山湯 高湯 温海   駒ケ岳 田川 《割書:巳上八ケ所各名湯也|》     北陸道   加賀 湯涌(ゆわく)《割書:金沢ヨリ|二里半》 山中《割書:金沢ヨリ |二リ半》      大聖寺  山代(やましろ)   能登 涌浦(わくら)   越中 立山 山田 大牧 小川   越後 雲母(きら) 湯沢 村杉 今板   関山《割書:妙香山|ト云》 𣜜(とち)尾股(をまた) 岩室 松 ̄ノ山   大内淵(おゝぢぶち) 眼掛湯(かんかけのゆ) 出湯《割書:一名観音湯ト云|》  山陰道   但馬 城崎(きのさき) 曼陀羅湯(まんだらゆ) 新湯(あらゆ)   瘡(かさ)湯 常(つね)湯 御所(ごしよ)湯 乞者(こしやの)湯   東槽(ひかしふね) 西槽(にしふね) 一 城崎(きのさき)の温泉(おんせん)は日本 第(だい)一の名湯(めいたう)とす其(その)中(なか)にも  新湯(あらゆ)瘡湯(かさゆ)は其(その)効能(かうのう)抜群(はつくん)なりといふべし   因幡 石井 一 ̄ノ湯 二 ̄ノ湯 女郎   小女郎 入込 新湯 《割書:右石井郡石井村ニアリ|》   吉岡 一 ̄ノ湯 二 ̄ノ湯 亀井殿   中湯 入込 荒湯 瘡湯《割書:右高草郡吉岡|村ニアリ》   勝見 一 ̄ノ湯 二 ̄ノ湯 三 ̄ノ湯   入込 新湯 鷺湯《割書:右気多郡勝見村ニアリ|》   伯耆 三笹 《割書:三朝の湯ともいふ|》 湯の関   出雲 三沢 染仁川(そめにかわ) 玉造 潮村   石見 有福 温泉(ゆのつ)津 有福の湯は清潔(せいけつ)   にして飯茶等にも用る也 温泉津(ゆのつ)は濁(にこ)りあり   隠岐 島後《割書:海中にあり|》   美作 湯原 湯(ゆの) ̄ノ郷(がう) 真賀(まか)   周防 湯田   長門 俵山 深川(ふかわ) 川棚  南海道   紀伊 竜神(りうじん) 湯崎(ゆさき) 本宮(ほんぐう)《割書:一 ̄ニ湯ノ峰|薬師ノ湯》 七起峰 本宮 湯の峰   出谷 川湯 二河(にかう)   伊予 道後  西海道   筑前 武蔵(むさし)《割書:一名|》虎麻呂(とらまる)《割書:三笠郡天拝山の麓武蔵村に|あり》 一 此(この)武蔵(むさし)の湯(ゆ)は誠(まこと)に温柔(おんじう)にして西国(さいこく)一の名湯(めいたう)也   豊後 浜湯 鶴□原 赤湯 玖倍里   別府 立石 金輪 浜田《割書:右三ケ所別府村ニ|アリ》   肥前 武雄(たけを)《割書:一名塚崎|》 嬉野(うれしの) 温泉山(うんせんさん)《割書:地獄湯|ナリ》     小浜《割書:海辺にあり|》 高木   肥後 雛来(ひなく) 硫黄 ̄ケ岳 橡木(とちのき) 湯谷   葦北 平山 垂玉 杖立 山鹿(やまが)   日向 霧島 白鳥 硫黄谷《割書:加久藤にあり|》   大隅 安楽 鉾薙(ほこなき)《割書:踊にあり|》   薩摩 副田《割書:入来にあり|》 湯田《割書:市来にあり|》      児水(ちごか) 成川《割書:山川にあり|》      摺浜(すりのはま) 芝立(しはたて)《割書:揖宿(イフスキ)にあり|》      市比野(いちいの)《割書:蒲生にあり|》 大河内《割書:出水にあり|》   壱岐 湯本  凡四十国二百九十二ケ所 一湯治のうちは欝散(うつさん)を専一とすれとも時々 山渓(やまかわ)等に  遊へば湿毒に中るものなり此外養生の事に  勘弁あるへきなり  ○諸国御関所  遠州 今切《割書:荒井|》 気賀  相州 箱根 根府川 矢倉沢     河村 仙石原 谷ケ村  武州 中川 市川 小岩     金町 新卿 小仏  下総 松戸《割書:房川|》 栗橋 関宿  甲州 本柄 鶴瀬 万沢  上州 川促 碓氷 横川     猿 ̄ケ京《割書:大戸|》 杢 ̄ケ橋《割書:南枚|》 大笹《割書:狩宿|》     五料《割書:実正|》 白井《割書:大渡|》 福島《割書:戸倉|》  近江 柳 ̄ケ瀬 山中 剣熊  信州 福島 浪合 帯川 心川     小野川 熱川 清内路 木曽  越後 関川《割書:虫川|》 市振《割書:山口|》 鉢崎 一通 ̄リ手形は大切に所持いたし其所の茶屋にて一度  み上 御番所差上て申也 其場(そのば)かゝり懐中 鼻紙(はなかみ)  入(いれ)等 尋(たつね)さかすは不(ふ)取廻(とりまは)しなるもの也女通 ̄リ手形  等も同様なり若一向に不案の人は其所のもの  に様子を承り合すべし 【表上段】 東海道割増附《割書:左十八宿五割増|残ノ宿々二割増》 五割増 本馬     軽尻    人足 平塚  五十一文   三十五文  廿七文 大磯  二百七十九文 百八十六文 百三十九文 小田原 《割書:六百十五文     四百三十三文   三百三十一文|下七百八十八文   下五百十五文   下三百九十文》 箱根  《割書:七百廿八文     四百七十二文   三百六十一又|下六百五文     下三百九十二文  下三百文》 三島  百六文    六十六文  五十壱文 吉原  二百三十七文 百五十文  百十五文 蒲原  六十六文   四十五文  三十三文 日坂  《割書:百四十五文     九十二文     七十一文|下二一百廿六文   下百四十五文   下百十一文》 袋井  百八文    六十八文  五十三文 舞坂  五十三文   四十七文  十八文 新居  百十八文   七十五文  五十九文 【表下段】 中仙道 《割書:当時|壱割五分増》  守山 五割増  美江寺 五割半増 日光道中 《割書:当時|壱割五分増》  例幣使道  御成道共  石橋 四割半増  雀の宮 四割半増 甲州道中 《割書:当時|壱割五分増》 奥州道中 《割書:当時|壱割五分増》  喜連川 四割半増 江戸日木橋より諸国出口方角道法 一東海道口 南に当り品川宿へ出るなり  日本橋より品川迄二里 一中仙道口 乾に当り本郷追分より  板橋宿へ出る也日本橋ゟ板橋迄二里十三丁 【右丁表上段】 二 川 百十四文   七十一文  五十四文 赤 坂 百六十一文  百六文   七十七文 藤 川 百廿一文   七十七文  五十九文 石薬師 五十一文   三十五文  廿七文 庄 野 百三十三文  八十七文  六十六文 坂の下 《割書:三百四十二文    二百廿三文    百七十一文|下二百五十八文   下百七十一文   下百廿七文》 草 津 二百五十三文 百六十四文 百廿六文 右十八宿之外品川宿ゟ守口宿迄并ニ 佐屋路美濃路共惣而当時二割増 なり此外中仙道日光道中甲州路 奥州道中は当時壱割五分増なり 其中(そのうち)に縷(こま〴〵)二三宿五割増或は四割半増等 有之 ̄ニ付左之両道中賃銭は割増を不 _レ加 ̄ヘやはり本駄賃にてすへ置なり 【右丁表下段】 一川越道口 乾に当り巣鴨より上板橋宿へ  □□煉馬宿へ出る也日本橋ゟ煉馬迄四里 一岩附道口 乾に当り本郷追分ゟ川口へ出る也  日本橋ゟ川口之渡迄四里半 一甲州道口 西に当り四谷追分ゟ高井土宿へ  出る也日本橋ゟ高井土まて四里半 一相州大山 ̄ノ近道口 申の方に当り青山百人町  ゟ長つた村へ出る也日本橋ゟ長つた迄七里半 一奥州道《割書:并|》日光道口 北に当り浅草橋より  千住へ出る也日本橋ゟ千住迄二里八丁 一水戸道口 丑の方に当り浅草真崎より  新宿へ出る也日本橋ゟ新(にい)宿迄三里半 一下総道口 東に当り両国橋ゟ中川へ出る也  日本橋ゟ中川渡場迄二里但 ̄シ江戸ゟ行徳迄  舟にて行には小網丁ゟ朝舟に乗べし  成田山。鹿島。香取。息柄。潮来。銚子の強  皆比口より出るなり 【左丁表上段】 東海道五十三次駄賃附   本駄賃     本馬    軽尻   人足 日本橋 二リ    九十四文  六十一文 四十七文 品 川 二リ半   百十四文  七十三文 五十六文 かわ崎 二リ半   百十四文  七十三文 五十六文 かな川 一リ九丁  四十九文  三十二文 二十五文 程 ̄ケ谷 二リ九丁   百八文   六十九文 五十三文 戸 塚 一リ三十丁 八十六文  五十八文 四十四文 藤 沢 三リ半   百六十文  百五文  七十八文 平つか 廿六丁   三十四文  二十三文 十八文 大いそ 四リ    百八十三文 百廿四文 九□文 小田原 四リ八丁  《割書:四百卅八文   二百八十三文 二百十八文|下五百廿文   ヽ三百卅八文 ヽ二百五十七文》 箱 根 三リ廿八丁 《割書:四百七十七文  三百十二文  二百卅八文|下三百九十五文 ヽ二百五十六文 ヽ二百文》 三 島 一リ半   六十八文  四十四文 三十四文 沼 津 一リ半   六十八文  四十四文 三十四文 【左丁表下段】 木曽路六十九次駄賃附   木駄賃     本馬    軽尻   人足 京   三リ    百六十九文 百十一文 八十二文 大 津 三リ半六丁 百六十六文 百九文  八十一文 草 津 一リ半   六十一文  四十文  三十一文 守 山 三リ半   百四十五文 九十二文 七十一文 武 佐 二リ半   百六文   六十七文 五十文 愛知川 二リ八丁  八十文   五十三文 四十一文 高 宮 一リ半   六十二文  四十二文 三十一文 鳥井本 一リ六丁  四十七文  三十文  二十四文 ばん馬 三十丁   四十二文  二十九文 二十文 醒ケ井 一リ半   六十一文  四十文  三十一文 柏 原 一リ    四十二文  二十九文 二十文 今 須 一リ    四十二文  二十九文 二十文 関ケ原 一リ半   六十一文  四十文  三十一文 垂 井 一リ十二丁 五十二文  三十四文 二十六文 あか坂 二リ八丁  八十九文  五十八文 四十四文 【右丁表上段】 原   三リ六丁  百三十四文 八十四文  六十五文 吉 原 二リ卅丁  百五十五文 百文    七十四又 蒲 原 一リ    四十四文  三十文   二十二文 由 井 二リ十二丁 百六十二文 百七文   七十九文 興 津 一リ三丁  四十七文  三十二文  二十三文 江 尻 二リ廿七丁 百廿一文  七十七文  五十八文 府 中 一リ半   八十二文  五十三文  四十一文 まりこ 二リ    百四十四文 九十一文  七十文 岡 部 一リ廿九丁 七十九文  五十一文  三十九文 藤 枝 二リ八丁  百廿七文  八十一文  六十一文 しま田 一リ    百廿四文  七十七文  五十八文 金 谷 一リ廿九丁 百四十八文 九十四文  七十一文 日 坂 《割書:一リ|廿九丁》   《割書:九十四文     六十一文     四十七文|下百四十八文   ヽ九十四文    ヽ七十一文》 かけ川 二リ十六丁 百十二文  七十文   五十五文 袋 井 一リ半   六十九文  四十五文  三十五文 見 附 四リ八丁  二百卅四文 百五十一文 百十七文 浜 松 二リ卅丁  百廿五文  七十九文  六十一文 【右丁表下段】 みえ寺 一リ六丁 四十七文  三十一文 二十四文 合 度 一リ半  六十七文  四十四文 三十四文 加 納 四リ八丁 百七十文  百十六文 八十三文 鵜 沼 二リ   九十四文  六十一文 四十七文 太 田 二リ   九十四文  六十一文 四十七文 伏 見 一リ五丁 四十二文  二十九文 二十文 御たけ 三リ   百四十文  八十九文 六十七文 細久手 一リ卅丁 七十一文  四十六文 三十五文 大久手 三リ半  百八十五文 百廿二文 九十文 大 井 二リ半  百十一文  六十八文 五十三文 中 津 一リ五丁 五十五文  三十六文 二十八文 落 合 一リ五丁 五十五文  三十六文 二十八文 馬 込 二リ   百八文   六十七文 五十二文 妻 篭 一リ半  八十三文  五十四文 四十二文 みとの 二リ半  百廿八文  八十文  六十二文 野 尻 一リ卅丁 百三文   六十四文 四十九文 須 原 三リ九丁 百五十五文 百二文  七十六文 上 ̄ケ松  二リ半  百四十文  八十九文 六十七文 【左丁表上段】 舞 坂 《割書:海上|一リ》    《割書:荷物一駄|三十五文》   《割書:馬一疋口付共|三十一文》  《割書:人一人|十二文》 あらゐ 一リ廿六丁 七十六文  五十文  三十九文 白須賀 《割書:一リ半|十六丁》    六十七文  四十五文 三十三文 二 ̄タ川 一リ半    七十三文  四十七文 三十六文 よし田 二リ半四丁 百十八文  七十五文 五十七又 御 油 十六丁   二十三文  十六文  十二文 赤 坂 二リ九丁  百七文   六十八文 五十一文 藤 川 一リ半   七十八文  五十一文 三十九文 岡 崎 三リ卅丁  百七十五文 百十六文 八十六文 池鯉鮒 二リ卅丁  百廿七文  八十二文 六十一文 鳴 海 一リ半   六十九文  四十五文 三十五文 宮   《割書:海上|七リ》    《割書:荷物一駄|百九文》   《割書:馬一疋口付共|百十三文》 《割書:人足一人|四十五文》 桑 名 三リ八丁  百五十一文 九十五文 七十三文 四日市 二リ廿七丁 百廿七文  八十一文 六十一文 石薬師 廿七丁   三十四文  二十三文 十八文 庄 野 二リ    八十六文  五十八文 四十四文 【左丁表下段】 ふくしま 一リ半  七十七文  四十九文  四十文 宮 ̄ケ越   二リ   八十三文  五十四文  四十二文 藪 原  一リ半  七十七文  四十九文  四十文 ならゐ  一リ半  七十三文  四十八文  三十六文 贄 川  二リ   九十四文  六十一文  四十七文 本 山  三十丁  三十一文  二十文   十六文 洗 馬  一リ卅丁 七十三文  四十八文  三十六文 塩 尻  三リ   百六十一文 百六文   七十七文 下詠訪  五リ八丁 三百五十文 二百廿八文 百七十三文 和 田  二リ   八十四文  五十六文  四十三文 長久保  一リ半  六十文   四十文   三十文 あし田  一リ八丁 四十七文  三十文   二十四文 望 月  卅二丁  三十文   二十二文  十七文 八はた  廿七丁  三十文   二十文   十六文 塩なた  一リ半  五十二文  三十四文  二十六文 岩村田  一リ七丁 四十七文  三十一文  二十四文 小田井  一リ十丁 四十九文  三十二文  二十五文 追 分  一リ三丁 四十二文  二十九文  二十文 【右丁表上段】 かめ山 一リ半    六十九文  四十五文 三十五文 関   一リ半    百十七文  七十三文 五十六文 坂 下 二リ半    《割書:二百廿五文    百四十六文  百十一文|下百六十九文   百十一文   八十二文》 土 山 二リ半十一丁 百廿七文  八十一文 六十一文 水 口 三リ十二丁  百四十六文 九十一文 七十文 石 部 二リ半七丁  百四十文  八十八文 六十九文 草 津 三リ半六丁  百六十六文 百九文  八十一文 大 津 三リ     百六十九文 百十一文 八十二文 京 都        凡里数合百廿四里半十五丁 ○佐屋廻りの記 宮   二里     《割書:本馬       軽尻     人足|八十六文     五十七文   四十七文》  上十五日は万場へ付越なり 岩須賀 半リ     二十二文  十五文  十二文 万 場 一リ半九丁  六十九文  四十六文 三十五文 冠 守 一リ半九丁  六十九文  四十六文 三十五文 【右丁表下段】 沓 掛 一リ五丁  四十四文  三十文  二十二文 軽井沢 二リ半八丁 百八十一文 百廿一文 八十九文 坂 本 二リ半   百七文   六十七文 五十二文 松井田 一リ卅丁  九十二文  六十文  四十七文 安 中 三十丁   三十四文  二十二文 十八文 板 鼻 一リ卅丁  七十一文  四十六文 三十五文 高 崎 一リ十九丁 五十五文  三十六文 二十八文 倉賀野 一リ半   六十文   四十文  三十文 新 町 二リ    七十八文  五十文  四十文 本 庄 二リ廿九丁 百十一文  七十一文 五十三文 深 合 二リ卅丁  百十二文  七十文  五十五文 熊 合 四リ八丁  百六十九文 百十文  八十二文 鴻の巣 一リ卅丁  七十一文  四十六文 三十五文 桶 川 三十丁   三十七文  二十五文 十九文 上 尾 二リ八丁  七十八文  五十二文 四十文 大 宮 一リ十一丁 四十九文  三十四文 二十五文 浦 和 一リ半   五十三文  三十六文 二十八文 わらび 二リ八丁  八十九文  五十八文 四十四文 【左丁表上段】 佐 屋 川舟三リ 桑名 【左丁表下段】 板ばし 二リ    九十四文  六十一文 四十七文 日本橋       凡里数合百三十五四里十一丁 【左丁表一段目】 伊勢参宮道 四日市 二リ卅五丁 神 戸 一リ半 白 子 一リ半 上 野 二リ半 津   二リ 雲 津▫二リ 松 坂 四リ 小 俣 一リ半 山 田 外 宮 内 宮 津へモトリり 津   一リ半 久保田 四リ 関   東海道 【左丁表二段目】 《割書:秋葉山|鳳来寺》参詣道 掛 川▫ 三リ 森 町  一リ半 市のせ  一リ半 子ならあ 一リ 戌 亥  二リ十四丁 秋 葉  一リ十五丁 うんなあ 一リ半 石うち  二リ く ま  一リ廿丁 大 平  一リ半 酢 山  一リ 大 野  一リ 鳳来寺  九丁 かとや  三リ 【左丁表三段目】 本坂越之道 見 附  三リ かやんは 四リ 気 賀  三リ 三日市  二リ半 吹瀬山  四リ 御 油  東海道 宮ヨリ越前海道 宮   一リ半 名古や 一リ半 清須▫ 一リ半 稲 葉 一リ半 はき原 一リ おこし 二リ半 【左丁表四段目】 尾州名古屋ゟ 大井へ出 ̄ル道法 名子屋 二リ 梶 川 一リ半 坂 下 一リ半 内 津 一リ八丁 池 田 二リ 高 山 二リ 土 岐 二リ 釜 戸 三リ 大 井 木曽 大津ヨリ大坂道 大 津 四リ八丁 伏 見▫五十丁 淀  ▫三リ十二丁 【右丁表一段目】 伊勢ヨリ大和廻リ 奈良吉野高野道 山 田《割書:イセ》一リ 小はた  二リ くし田  二リ 松 坂  一リ 六けんや 半リ 月 本  二リ ひさひ  四リ なかの  二リ あ わ  三リ 山 田  二リ 上 野《割書:イカ》二リ 島河原  一リ半 大河原  一リ半 かさき  二リ か も  二リ 奈 良  一リ 【右丁表二段目】 しん城  二リ半 大 木  二リ半 御 油  東海道 伊勢ヨリ田丸越 山 田  一リ半 田 丸  二リ あふが  二リ半 つ る  一リ半 大 石  一リ半 みかき  二リ た け  一リ 大きつ  半り 花 原  半り 杉 原  一リ かうずへ 半リ すかの  一リ半 もゝの又 一リ 【右丁表三段目】 すのまた 三リ 大垣口▫ 二リ半 垂 井  一リ半 関ケ原  一リ半 ふち川  一リ半 すいせう 四リ おたに  二リ半 木の本  二リ二丁 やなかせ 一リ つばい  二リ 中河内  三リ 板とり  二リ 今 庄  一リ ゆのを  二リ 脇 本  二リ 府 中  一リ 鯖 江  一リ 水おち  一リ 【右丁表四段目】 枚 方  五リ 大坂 伏見ヨリ大坂へ下船 伏 見  十三リ 大坂ヨリ京へ上リ舟同ヤウ 大坂ヨリ紀州道 大 坂 三リ 堺   一リ 石 津 三リ 岸和田 半リ 貝 塚 二リ 志 立 三リ 山 中 一リ半 山 口 二リ 和歌山▫ 【左丁表一段目】 帯とき  一リ 市の本  一リ 丹波市  一リ 柳 本  一リ 三輪神社 一リ 慈恩寺  一リ はせ観音 一リ半 さくらゐ 半り あ べ  一リ あすか  十丁 岡 寺  二リ 小 坂  五十丁 多武峰  二リ ちまた  一リ 上 市  一リ よしの  一リ十八丁 あんせんじ 五リ とろ辻  十八丁 【左丁表二段目】 山かす   一リ半 田 口   三リ はい原   一リ半 は せ   一リ半 み わ   二リ 丹波市   二リ 帯とき   一リ 奈 良   一リ くらかり峠 五リ 大坂 江島鎌倉道 日本橋  二リ 品 川  二リ半 川さき  二リ半 かな川  一リ九丁 程ケ谷  二リ九丁 戸 塚  一リ卅丁 【左丁表三段目】 あさうつ  二り 福井 越前▫  此所ヨリ  三国ヘ五リ  大聖寺へ九リ  小松へ十四リ  金沢へ廿一リ 江戸ゟ加賀信州 善光寺道中 江戸ゟ追分迄は木曽同 追 分  三リ 小諸▫  二リ半 田 中  二リ半 上田▫  三リ さか木  三リ 室井迄二通りあり 八代三リ  八代二リ半 丹波島《割書:一リ|十丁》 松代二《割書:▫|リ》 【左丁表四段目】 大坂ヨリ長崎道 大 坂  三リ 尼か崎▫ 二リ 西の宮  五リ 兵 庫  五リ 明石▫  五リ かこ河  五リ 姫踏▫《割書:正所へ|回り》  姫路ゟ所々へ道法  三日月へ八リ  因州取鳥へ廿八り  作州津山へ廿リ  《割書:津山ヨリ|よね子へ》廿二リ  《割書:よね子ヨリ|松江ヘ》七リ半 正 所  十八丁 かた島  三リ六丁 う ね  《割書:二リ|廿八丁》 【右丁表一段目】 とろ川  五十丁 つほの内 十八丁 天の川  《割書:九リ|此間宿々多シ》 高野山  五十丁 かみや  二リ か ね  一リ かふろ  一リ はし本  二リ きのみ峠 二リ 三日市  二リ半 いはむろ 二リ ふく町  一リ半 も ず  一リ 堺    三リ 大 坂 江戸 ̄ヨリ奥州道 日本橋  二リ 【右丁表二段目】 藤 沢  三リ半 かまくら 二リ 江の島 大山参詣道 藤 沢 《割書:東海道|二リ》 一の宮  十八丁 田 村  二リ いせ原  一リ 子 安 大 山 江戸ヨリ甲州 富士山身延道 日本橋  二リ 四ツ谷  二リ一丁 下高井戸 二リ一丁 布 田  一リ廿七丁 府 中  二リ八丁 【右丁表三段目】 善光寺《割書:一リ|十丁》 川田二リ半 荒町二リ半 長沼三リ 室井    室井 二リ 柏 原  一リ 野 尻  一リ 関 川  一リ半 二 俣  一リ半 関の山  一リ十六丁 松 崎  一リ廿丁 荒 井  二リ半 高田▫  一リ 中屋敷  二リ 長 浜  一リ 有間川  二リ なたち  三リ の ふ  二リ十二丁 かち屋敷 一リ六丁 糸魚川▫ 一リ十六丁 【右丁表四段目】 三ツ石  二リ廿丁 片 上  四リ二丁 藤 井  二リ五丁 岡山▫  二リ十二丁 板 倉  三リ 川 辺  三リ 矢かけ  三リ 七日市  一リ十二丁 高 屋  一リ廿七丁 神 苗  四リ 今 津  二リ 小野道  三リ 見わら  二リ半 ぬた本卿 一リ半 たまり市 二リ さい条  五リ半 かいた  二リ 広島▫ 《割書:クサツエ|一リ》 【左丁表一段目】 千 住  二リ八丁 草 加  一リ廿八丁 越ケ谷  二リ廿八丁 かすかべ 一リ廿一丁 杉 戸  一リ廿五丁 幸 手  二リ三丁 栗 橋  《割書:舟ワタシ|二丁》 中 田  一リ卅四丁 古河▫  廿五丁 の ぎ  一リ廿七丁 まゝ田  一リ廿四丁 小 山  一リ十一丁 新 田  廿九丁 小金井  一リ半 石ばし  一リ半五丁 雀の宮  一リ一丁 宇都宮▫ 二リ廿三丁 白 沢  一リ半 【左丁表二段目】 日 野  一リ廿六丁 八王子  一リ廿七丁 駒木野  廿七丁 小 仏  一リ廿二丁 小 原  一リ十七丁 よしの  廿六丁 関 の  三十四丁 上野原  十八丁 つる川  一リ六丁 のた尻  三十丁 犬 目  一リ十二丁 上鳥沢  廿六丁半 さるはし 廿二丁 駒はし  十六丁 大 月  三十丁ヨ  此所ヨリふじ山道   大月 十三丁   矢村 一リ半 【左丁表三段目】 あふみ  一リ廿七丁 う た  二リ 市ふり  一リ さかへ  一リ廿九丁 泊 ̄リ   《割書:左二リ廿九丁|右一リ十二丁》 横山  《割書:右|廿七丁》 舟見《割書:左|二リ廿九丁》 にうぜん《割書:二リ|十六丁》 浦山《割書:一リ|十七丁》 三日市  二リ うをつ  二リ一丁 滑 川  二リ廿五丁 東いわせ 二リ卅四丁 下 村  一リ十七丁 小すき  二リ廿五丁 高 岡  四リ 今不動  二リ廿二丁 はにう  十四丁 竹の橋  三十一丁 つはだ  三リ半 【左丁表四段目】 此所より  宮島へ四リ  石州浜田へ廿三リ 草 津 二リ 廿日市 四リ八丁 く は 三リ せきと 四リ  此間ニ岩国道アリ くが本郷 半リ 高もり  二リ 今 市  二リ 窪 田  廿八丁 花 岡  一リ半八丁 徳山▫  半リ 富田新田 廿二丁 ふく河  二リ半 とのうみ 二リ 宮 市  四リ半 【右丁表一段目】 氏 江  二リ四丁 きつれ川 二リ卅丁ヨ 作 山  一リ廿五丁ヨ 太田原  三リ三丁 なべかけ 六丁 こゑ堀  二リ十一丁ヨ 芦 野  三リ四丁ヨ 白 坂  一リ卅三丁 白 川  廿七丁▫ ね だ  一リ 小田川  十三丁 大田川  二十四丁 ふませ  二十三丁 大和久  八丁 しん田  十一丁 矢 吹  廿四丁 くるし  十二丁 笠 石  一リ半 【右丁表二段目】  おのま一リ半  上吉田  富士山 下花崎  一リ五丁 下初かり 一リ 白 野  一リ 黒野田  一リ半 つるせ  一リ三丁 かつ沼  二リ十七丁 石 和  一リ十九丁 甲府▫《割書:コレヨリ|みのぶ道》 かちか沢《割書:石沢ヨリ|五リ半》 羽木井 五リ半 身延山《割書:東海道へ出ル|道》 南 部 三リ 万 沢 四リ 松 の 二リ 岩 淵《割書:東海道》 【右丁表三段目】  金 沢 加賀▫ 《割書:金沢|ヨリ》小松大聖寺道 金 沢   一リ    富山より のゝ市   一リ八丁  金沢みち 松とう   一リ  富 山 《割書:三リ|十一丁》 かしわの  一リ  三戸田 《割書:一リ|七丁》 水 島   一リ  中 田  卅三丁 栗 生   一リ  戸 を 《割書:一リ|廿七丁》 寺 井   一リ  今不動 《割書:二リ|廿二丁》 小 松   一リ▫ はにう  十四丁 今 井   一リ  竹のはし 卅一丁 月 津   一リ  つはた  三リ半 いふかばし 一リ  金沢▫ 佐 見   一リ  滑 川《割書:ヨリ》四リ 大聖寺▫      富山へ 豊前小倉より 薩摩鹿児島道 【右丁表四段目】 おかうり《割書:山中へ|二リ半》  此所より  長門萩へ十リ 山 中  二リ半 舟 木  一リ八丁 あさの市 二リ廿八丁 よし田  一リ 小 月  二リ 長府▫  二リ 下の関  三リ 小倉《割書:▫黒サキヘ| 一リ三十丁》  此所ヨり  中津へ十三リ 小倉ヨリ田代迄 両道アリ ひや水通り分 小 倉 二リ卅一丁 黒 崎 二リ卅四丁 【左丁表一段目】 すか川  一リ廿八丁 笹 川  十八丁 日出の山 十一丁 小原田  十五丁 郡 山  廿八丁 福 原  廿三丁 ひわた  卅三丁 高くら  一リ七丁 本 宮  一リ十二丁 杉 田  一リ六丁 二本松▫ 一リ二丁 油 井  六丁 二本柳  一リ二丁 八丁の目 一リ二丁 若 宮  十一丁 ねこ町  一リ廿五丁 福島▫  二リ八丁 せの上  一リ十二丁 桑 折  一リ七丁 【左丁表二段目】 江戸ヨり上総 房州道法 行 徳 三リ   大和田 《割書:船はし|ゟ三リ》 舟 橋 二リ   臼 井 《割書:二リ|一リ》 馬 加 十八丁  佐倉▫  二リ 校見川 二リ半  横 芝  一リ半 寒 川 三十丁  東 金  三リ そかの 廿六丁  野 田  二リ はまの 廿丁   千 葉  二リ 八わた 一リ   うるゐ戸 二リ 五 井 一リ   六地蔵  二リ 姉 崎 二リ   高 師  二リ半 ならば 二リ   一ノ宮  二リ半 木更津 四リ   長者町  一リ 佐 貫 一リ▫  流 山  二リ 天神山 一リ半  長 南  二リ 百 首 二リ   大多喜  一《割書:▫|リ》 金 谷 一リ   今 富  二リ 【左丁表三段目】 小 倉  二リ卅一丁 黒 崎  二リ卅四丁 こやのせ 四リ半六丁 飯 塚  三リ半 内 野  二リ半九丁 山 家  二リ半十二丁 松 崎  三リ 府 中  三リ 宿の町  二リ せたか  四リ 南の関  四リ半 高 瀬  五リ十五丁 高 橋  二リ 川 尻  五リ 小 川  四り 高田村  二リ ひな久  三リ 田のうら 二リ 【左丁表四段目】 こやのせ 四リ半六丁 飯 塚  三リ半 内 野  二リ廿九丁 山 上  一リ九丁 原 田  二リ 田代 此田代の入口ニテ八丁峠 の通リト出合ナリ 小倉ヨリ八町峠 通 小 倉    三リ廿四丁 ゑひの    十四丁 さいとう所  一リ かうはる河原 三リ いのひさ   二リ 大くま    二リ三丁 せんじゆ   二リ十四丁 此間ニ八丁峠アリ 【右丁表一段目】 藤 田  一リ七丁 貝 田  十八丁 こすがう 一リ十六丁 さい川  一リ十六丁 白石▫  一リ廿八丁 葛田宮  一リ十二丁 金がせ  三十丁 大河原  一リ十二丁 舟迫リ  一リ十一丁 概 木  一リ廿七丁 岩 沼  一リ卅丁 倍 田  卅一丁 中 田  一リ 長 町  一リ十三丁 仙台▫  二リヨ 七北田  二リ十九丁 しん町  一リ廿二丁 吉 岡  三リ十丁 【右丁表二段目】 保 田《割書:安房|一リ》   茅 や 一リ 勝 山 二リ(▫)  久留里 一リ(▫) 大 房 二リ  かつ浦 二リ 府 中 二リ  上 野 一リ半 北 条 一リ  小 湊《割書:安房|二リ》 館 山 一リ半 内 浦 一リ 那 胡 一リ  天 津 五リ 洲 崎     乙浜 江戸ヨリ鹿島香取 息柄てふし道 日本橋 三リ 行 徳 一リ 八 幡 二リ八丁 金ケ谷 二リ八丁 白 井 二リ八丁 大 森 廿六丁 木おろし此《割書:所ヨリ舟》  朝来へ 七リ 【右丁表三段目】 佐 敷 四リ半 水の俣 四リ十二丁 いつみ 二リ四丁 野 田 二リ半 阿久根 三リ半三丁 西 方 三リ半十丁 向 田 三リ半七丁 みなと 二リ半七丁 苗代川 三リ四丁 横 井 十七丁 鹿児島薩摩 琉球国百廿里 瀬の上ゟ  白川より 米沢道   会津道 せの上  一リ九丁 白 川 二リ半 佐々木の 一リ   飯土用 一リ 庭 坂  二リ八丁 小 や 二リ 李 平  二リ八丁 牧 内 二リ半 【右丁表四段目】  秋月▫ 二リ  野 町 一リ六丁  松 崎 二リ卅丁  此所より  久留米へ三リ  此所より  柳川へ五リ  此所より  熊本へ十六リ 田 代《割書:□へ|一リ》 此所ニテ冷水通リト出合 とゝろき 一リ廿二丁 中ばる  二リ九丁 かんさき 一リ半 はるの町 一リ半 さ か  二リ 牛 津  一リ 小 田  二リ十二丁 【左丁表一段目】 三本木 一リ廿八丁 古 川 一リ十二丁 あらや 一リ廿丁 高清水 二リ十九丁 月 立 廿丁 宮 野 一リ卅丁ヨ 沢 辺 十八丁ヨ 金 成 二リ六丁 有 壁 二リ三丁 一の関 廿丁ヨ 山の目 三リヨ 前 沢 二リ卅一丁 水 沢 一リ卅四丁 金 崎 二リ六丁ヨ 鬼 柳 十八丁 黒沢尻 三里 花 巻 三リ十丁 石とや 二リ 郡 山 四リ七丁 【左丁表二段目】  鹿島へ九リ  香取へ十リ  息柄へ十二リ  銚子へ十八リ 木おろし《割書:陸路|二リ》 安 食 四リ 神 崎 二リ 津 宮 三リ 香取神社 小見川 二リ 佐々川 二リ 野 尻 二リ 銚 子 江戸ヨリ日光道中 日本橋 二リ 千 住 二リ七丁 草 加 一リ卅丁 【左丁表三段目】 坂 谷 三リ   永 沼 二リ 大 沢 三リ三丁 勢至堂 二リ 米 沢《割書:▫|二リ》    見 代 半リ 粕 ̄ノ目  一リ   福 良 一リ半 筑 茂 一リ三丁 赤 津 一リ半 赤 湯 一リ   原   一リ半 川 樋 四丁   赤 井 二リ 老清水 二リ   会 津《割書:若松|▫二リ》 中 山 一リ   高 久 二リ半 川 口《割書:一リ|十一丁》    板 下 一リ半 上の山《割書:▫|一リ半》    片かと 三リ半 戦 バ 二リ   野 沢 一リ半 山 辺 一リ   野 尻 一リ半 長 崎 一リ半  白 坂 一リ半 さかへ 《割書:一リ|半》   八ツ田 一リ半 白 岩 二リ   焼 山 一リ半 海 塩 一リ半  天 満 一リ 佐 沢 一リ半  津 川 二リ 【左丁表四段目】 成 頼  二リ一丁 塩 田  二リ廿四丁 嬉 野  二 リ廿八丁 その木  三リ 松 原  一リ 大村▫  三リ いさはや 四リ 矢 上  一リ 日 見  二リ 長 崎 大坂ヨリ長崎迄船路 大 坂 十リ 兵 庫 五リ 明石▫ 十三リ 室   五リ 大たぶ 五リ 牛まど 七リ 【右丁表一段目】 南部盛岡 四リ廿七丁《割書:目|ヨ》  しぶ民 四リ三丁ヨ  沼宮内 八リ八丁ヨ  一の戸 一リ卅一丁  福 岡 七丁  金田市 三リ二丁ヨ  三の戸 三リ十五丁ヨ  麻 水 一リ十七丁ヨ  五の戸 一リ廿四丁ヨ  伝方寺 卅丁ヨ  藤 島 三リ卅丁ヨ  七の戸 五リ廿九丁ヨ  野辺地 四リ十三丁  小 湊 四リ十丁  野 内 二リ十七丁  青 盛 一リ十三丁ヨ  大 浜 三リ十九丁  蓬 田 二リ三丁ヨ 【右丁表二段目】 越ケ谷  二リ卅丁 かすかべ 一リ半 杉 戸  一リ半 幸 手  二リ廿二丁 栗 橋  二リ 中 田  一リ半 古河▫  廿九丁 野 水  二リ まゝ田  一リ廿五丁 小 山  《割書:一リ半|七丁》 新 田  十九丁 小金井  一リ半 石ばし  一リ半 雀の宮  二リ三丁 宇都宮▫ 一リ 野 沢  一リ半 徳二良  二リ半 大 沢  二リ 【右丁表三段目】 本道寺 一リ  湯 口 《割書:ヱチコ|三リ》 いさご 二リ半 荒 屋 一リ十丁 し つ 六リ  綱 木 一リ半 たむき 一リ  赤 谷 一リ 大 網 一リ半 山 内 二リ 松 根 二リ   芝田▫ 丸 岡 一リ  米 倉 一リ 鶴 岡《割書:庄内|一リ》▫  いち峰 一リ 乗折ゟ     加 持 一リ 秋田道     中 条 卅二丁 乗 折 一リ半 黒 川 二リ八丁 小 坂 二リ  平 林 二リ 上戸沢 一リ  村上《割書:ヱチコ| ▫》 下戸沢 一リ  庄内ゟ 渡 せ 一リ  本庄道 瀬 木 一リ  鶴岡《割書:庄内|一リ》 なめつ 一リ  藤 島 二リ 峠 田 一リ  苅 川 五リ 【右丁表四段目】 ひ ゞ  三リ しもつい 七リ 白 石  三リ 鞆    五リ ゆ け  十リ みたらい 五リ かまかり 八リ 津 和  五リ かむろ  七リ 上の関  五リ 室すみ  五リ かさた  七リ むかう  五リ 新泊り  十三リ 下の関  三リ ○下の関ゟ大里へ二リ 御大名方は大里にて 船ゟ御上り被成候 【左丁表一段目】 蟹 田 三リ十六丁ヨ 平 館 五リ廿丁ヨ 今 別 一リ八丁ヨ 三 厩 海上七リヨ 松 前 ▫ ○野辺地ゟ佐井通 ̄リ 野辺地 二リ八丁ヨ 有 戸 四リ廿六丁ヨ 横 浜 二リ廿七丁 中野沢 三リ廿一丁 田名部 三リ廿七丁ヨ 大 畑 二リ廿一丁 下風呂 二リ卅四丁ヨ 異国澗 一リ廿五丁ヨ 大 澗 一リ十丁ヨ 奥 戸 二リ 佐 井 海上八リヨ 松前箱館 【左丁表二段目】 今 市 二リ 鉢 石 十丁 日 光 江戸ヨリ水戸海道 日本橋 二り 千 住 一リ 新 宿 一リ 松 戸 二リ 小 金 三リ あびこ 一リ 取 手 二リ 藤 代 二リ 若 柴 二リ 牛 久 二リ 荒 川 二リ 中 村 一リ 土浦▫ 一リ 【左丁表三段目】 湯 原 三リ     酒 田 六リ 楢 下 二リ     吹 浦 一リ 上の山 一リ廿丁   女 鹿 一リ 松 原 一リ廿二丁  小砂川 二リ 山 形 《割書:▫|三リ半》     塩 越 《割書:一リ|十八丁》 天 童 二リ     象潟 六 田 一リ半    金の浦 《割書:一リ|五丁》 楯 岡 一リ三丁   芹 田 一リ 飯 田 一リ     平 沢 三リ 林 田 一リ廿丁   本庄口▫ 尾花沢 二リ     秋田より 柳 沢 《割書:一リ|九丁》     津軽道 舟 方 三リ     久保田 《割書:秋田|四リ》 清 水 二リ     湊   四リ 相 貝 一リ     大 窪 十一丁 古 口 六リ     蛇 川 四リ 新 座 《割書:▫|四リ》     大 川 二リ 金 山 三リ     鹿 渡 一リ半 【左丁表四段目】 小倉▫ 《割書:二リ|三十一丁》  此所より福岡道  小倉▫  二リ卅一丁  黒 崎  二リ卅四丁  木やのせ 四リ  赤 間  二リ  あせ町  二リ  青 柳  三リ廿五丁  箱 崎  廿三丁  持 田  一リ  福 岡 黒 崎  二リ卅四丁 こやのせ 四リ 飯 塚  三リ 内 野  二リ廿九丁 山 上  一リ九丁 原 田  二リ 田 代 【右丁表一段目】  本馬  卅六貫目  乗掛下 《割書:十貫目より|十八貫目まて》  軽尻  三貫目より  あふ附 八貫目まて 右の駄賃は右 ̄ニ記 す本駄賃を二つ 合て三つに割則 からしり駄賃なり たとへば本駄ちん 百文の時二ツ合 せば二百文になる これを三つに割ば 六十四文としるべし  人足荷五貫目 此駄賃本駄賃の 半分なり 【右丁表二段目】 中ぬき 一リ 稲 石 二リ 府 中 一リ 竹 原 一リ 片 倉 二リ おばた 二リ 長 岡 二リ二 水戸▫ 《割書:此所ゟ大田|通奥州道|二リ》 新 田 二リ 額 田 一リ半 大 田 二リ 町 家 一リ わふち 一リ 川原の 一リ十丁 折はし 一リ 大 中 一リ 小 中 是ゟ奥州 【右丁表三段目】 のそき 三リ   森 岡  三リ 院 内 一リ   桧 山  三リ 横 堀 三リ   鶴 形  一リ半 湯 沢《割書:四リ|卅丁》    飛 根  一リ半 横 手 二リ   荷上場  一リ 金 沢 一リ半  小 繋  一リ 六 卿 一リ   前 山  一リ 大 曲 一リ   今 泉  廿丁 花 立 十五丁  房 沢 《割書:一リ|三丁》 神宮寺 一リ半  つゝれこ 五リ 刈和の 《割書:二リ|十八丁》   大 館  一リ 堺   四リ   釈迦内  五リ 戸 島 三リ   碇ケ関  五 久保田《割書:秋田|▫》    弘前《割書:沖軽|▫》 湊ヘ二リ     此所より 此所より     陸地三馬 松前へ海上    屋まて 七十八里     二十八里ヨ 【右丁表四段目】 是ゟ長崎迄前に同 肥前名子屋ゟ 対馬朝鮮里数 名子屋 《割書:船路| 十五リ》 勝本▫ 《割書:イキ| 四十リ》 対馬▫ 四十八リ 朝鮮国 大坂ヨリ釜山浦迄 三百七十里余 長崎ヨり外国里数 南京(ナンキン)へ三百四十里 広東(カントウ)へ八百七十里 東京(トンキン)へ千六百里 柬捕塞(カボチヤ)へ千八百里 暹羅(シヤムロ)へ二千三百里 天竺(テンチク)へ四千百四十里 阿蘭陀(ヲランダ)へ一万二千九百里 イキリスへ一万二千六百里 【左丁表一段目】 西国三十三所 観音霊場地名 一番《割書:紀伊国|》智山(なちさん) 二番《割書:同|》三井寺(きみゐてら) 三番《割書:同|》河寺(こかわてら) 四番《割書:和泉国|》 槙尾寺(まきのをてら) 五番《割書:河内国|》 葛井寺(ふぢゐてら) 六番《割書:大和国|》 壷坂寺(つほさかてら) 七番《割書:同|》 岡寺(おかてら) 八番《割書:同|》 長谷寺(はせてら) 【左丁表二段目】 秋父三十四所 観音霊場地名 一番《割書:四万部|》 妙音寺(みやうをんし) 二番《割書:大棚|》 真福寺(しんふくし) 三番《割書:岩本|》 常泉寺(しやうせんし) 四番《割書:荒木|》 金昌寺(こんしやうし) 五番《割書:ゴカノ堂|》 語歌寺(ごかてら) 六番《割書:荻ノ堂|》 卜雲寺(ぼくうんし) 七番《割書:牛伏|》 法長寺(ほうちやうし) 八番《割書:青苔山|》 西善寺(さいせんし) 【左丁表三段目】 坂東三十三所 観音霊場地名 一番《割書:相州|鎌倉》 杉本寺(すきもとてら) 二番《割書:同三浦|》 岩殿寺(がんでんし) 三番《割書:同鎌倉|》 田代堂(たしろだう) 四番《割書:同|》 長谷寺(はせてら) 五番《割書:同足柄郡|》 飯泉(いゝすみ) 六番《割書:同飯山|》 長谷寺 七番《割書:同金目|》 光明寺(かうめうし) 八番《割書:同星谷|》 星谷寺(せうこくし) 【右丁表一段目】 九番《割書:奈良|》 南円堂(なんゑんだう) 十番《割書:宇治|》 三室戸(みむろと)寺 十一番《割書:山城|》 上醍醐寺(かみだいごじ) 十二番《割書:江州|》 岩間寺(いはまてら) 十三番《割書:同|》 石山寺(いしやまてら) 十四番《割書:同|》 三井寺(みゐてら) 十五番《割書:山城|》 今熊野(いまくまの) 十六番《割書:同|》 清水(きよみつ)寺 十七番《割書:同|》 六波羅蜜寺(ろくはらみつてら) 十八番《割書:同|》 六角堂(ろつかくだう) 【右丁表二段目】 九番《割書:明星山|》 明智寺(あけちてら) 十番《割書:万松山|》 大慈寺(たいじし) 十一番《割書:坂氷|》 常楽寺(しやうらくし) 十二番《割書:仏道山|》 野坂寺(のさかてら) 十三番《割書:ハケノシタ|》 慈眼寺(じげんし) 十四番《割書:長岳山|》 今宮坊(いまみやほう) 十五番《割書:母巣山|》 蔵福寺(そうふくし) 十六番《割書:無量山|》 西光寺(さいかうし) 十七番《割書:ハヤシ寺|》 定林寺(しやうりんし) 十八番    神門寺(かうとし) 【右丁表三段目】 九番《割書:武蔵国|》 慈光寺(じかうし) 十番《割書:同比企岩殿|》 正法寺(せうほうし) 十一番《割書:同吉見|岩殿》 安楽寺(あんらくし) 十二番《割書:同岩付|》 慈恩寺(じおんし) 十三番《割書:江戸|》 浅草寺(あさくさてら) 十四番《割書:武州|》 弘明寺(こうめうし) 十五番《割書:上州白石|》 長谷寺 十六番《割書:同|》  水沢寺(すいたくし) 十七番《割書:下野佐野|》 出流山(いづるさん) 十八番《割書:同日光|》 中禅寺(ちうせんじ) 【左丁表一段目】 十九番《割書:同|》  華堂(かうだう) 二十番《割書:同|》  善峰(よしみね)寺 廿一番《割書: 丹波国|》 穴穂寺(あなうし) 廿二番《割書: 摂津国|》 総持寺(そうじし) 廿三番《割書:同|》  勝尾寺(かちをてら) 廿四番《割書:同|》  中山寺(なかやまてら) 廿五番《割書:播州|》 新清水(きよみつ)寺 廿六番《割書:同|》  法華山(ほつけし) 廿七番《割書:同|》  書写山(しよしやさん) 廿八番《割書:丹後国|》 成相寺(なりあひし) 【左丁表二段目】 十九番《割書:飛淵山|》 竜石寺(りうせきし) 二十番 岩(いわ)の上(うえ) 廿一番 矢(や)の堂(だう) 廿二番 栄福寺(ゑいふくし) 廿三番《割書:ヲガサカ|》 音楽寺(おんかくし) 廿四番《割書:シラヤマ|》 法泉寺(ほうせんし) 廿五番《割書:久那|》 久昌寺(きうしやうし) 廿六番《割書:下影森|》 円融寺(ゑんゆうし) 廿七番《割書:上影森|》 大淵寺(たいゑんし) 廿八番《割書:ハシタテ|》 橋立寺(きやうりうし) 【左丁表三段目】 十九番《割書:下野|》 大谷寺(をほやし) 二十番《割書:同益子|》  西明寺(さいめうし) 廿一番《割書:常州|八講》 日輪寺(にちりんし) 廿二番《割書:同天神林|》  佐竹寺(さたけてら) 廿三番《割書:同笠間|》  佐白山(さしろさん) 廿四番《割書:同雨引|》  楽法寺(らくほうし) 廿五番《割書:同筑波山|》  大 御堂(みたう) 廿六番《割書:同南明山|》  清滝寺(きよたきてら) 廿七番《割書:下総|銚子》 飯沼山(いゝぬまさん) 廿八番《割書:同滑河|》 竜正院(りうせういん) 【右丁表一段目】 廿九番《割書:若狭国|》 松尾寺(まつのをてら) 卅番《割書:江州|》 竹生島(ちくふしま) 卅一番《割書:同|》 長命寺(ちやうめいし) 卅二番《割書:同|》 観音寺(くわんをんし) 卅三番《割書:美濃国|》 谷汲(たにくみ)寺 右谷汲寺迄巡廻して 信州善光寺へ参るには加 納へ出夫ゟ木曽路洗馬 より右へ行なり 【右丁表二段目】 廿九番《割書:笹ノ戸|》 長泉院(ちやうせんいん) 卅番《割書:フ力タ|》 宝雲寺(ほううんし) 卅一番《割書:鷲ノ窟|》 観音院(くわんをんゐん) 卅二番《割書:ハンニヤ|》 法性寺(ほうせうし) 卅三番《割書:小坂下|》 菊水寺(きくすいし) 卅四番《割書:水クゞリ|》 水潜寺(すいせんし) 秩父は一郡のみにして他郡へ またがらずして便利よき也 【右丁表三段目】 廿九番《割書:同青蓮|》 千葉寺(ちばてら) 卅番《割書:上総|高倉》 高蔵寺 卅一番《割書:同笠森|》 楠光院(なんかういん) 卅二番《割書:同音羽|》 清水寺(せいすいし) 卅三番《割書:房州|》 那呉寺(なごし) 右房州迄の道すからは 日光鹿島香取其外名 所旧跡最も多ありて西 国にもおとらぬ風景也 帰厚客話《割書:景山先生著|初編十冊近刻》 此書は士農工商の孝道忠義寄特正直 并諸芸技術人々深切に鍛錬したる上 いつれも妙境に至りたる事譬へは士は君に 仕へ家を興し農家は田畑山林を肥し百工は好事にして名人と聞へ商家は 正直にして豪富と成しこと各篤厚を積あけて一大家を成したる 古今の実事を集め夫々部分にして初学の志を立る楷梯の書なり 《割書:女子|教訓》水かゝみ《割書:  同|絵入全二冊 近刻》 女子教訓の書は古昔ゟよき書あまた有て何 とてたらざることなけれとも時代に随ひて其風 俗詞折々替るものなればいかなるよき風俗も 今の世に合せて見時はよしと思ふ人はすくなし夫故におのつから古風を学ふ 志しも立ぬ也教訓も其如く古へのまゝにては当時の人に聞へかたきによつて此書は 女子の育方より諸芸の教かた礼儀作法に至るまて古の教を当時のことに引 直し絵姿模様等も今時の風にして女子に王極のみこみよき為の書也           彫工   佐脇庄兵衛 文化七年庚午八月既望    同 伊三郎          日本橋通壱町目 東都書肆        須原屋茂兵衛          下谷池之端仲町             須原屋伊八 【裏表紙】