【表紙 題箋】 住よしのほんち《割書:中》 【題箋の左上の手書き文字 数字なのか文字(アルファベット)なのか不明】 【整理番号のラベル】 SMITH-LESOUEF JAP   177 2 【右丁 表紙裏 文字無し】 【左丁】 わだづみこゝろにおほしめされ けるやうはこのまれ人と申はかたし けなくも大しんぐうの御しそん 大日ほんこくの御あるしにてやん ごとなき上らふにておはします いかにもしてしたしくなりこの くにゝとゝめまいらせたくおもひ けれはだい二のむすめとよたまひめ と申はようがんぶさう【容顔無双=顔立ちが(よく)ならぶものがない】のひめなれは さいはひの人にて候ひけるを御みや つかへのためにとてみことの御まへに まいらせけりみことこのひめの うるはしきすかたにめてたまひ 【右丁】 ひよくのかたらひをなし給ふほとに つりはりの事はゆめにもおほし よらす御ちきりなりあるときわだ つみしほつゝをのおきなにむかつて のたまふやう日ほんこく御あるし はしめてこのかいにくたり給ふ事 なをさりならぬさいはひなりしかるに いかなる事をかおほしめしいてゝ これまてはる〳〵御らいりんあり けるそととひたまへはおきな申 されけるやうはこのみことのこのかみの みことにこかねのつりはりをかり給ふ をうをにとられ給ひしかあらけなく【荒々しく】 【左丁】 せめこはれ給ふによつてわたつみを 御たのみありてこれへみゆきにて さふらふやとくはしくかたり 申されければわたつみおほき におとろきさやうの事を いまゝてもうけたまはりおよば ぬこそふかくなれさらばじこく をめくらさすかい中のぎよるい ともをまねきよせせんさくして つりはりをもとめてまいらせん とてかい中にふれをめくらし ければちよく【勅】におうじてまいる うをともはなに〳〵そまづなみを 【右丁】 とうしていかづちをなしあはを はきてあめきりをなすけい げい【鯨鯢=クジラの総称。鯨はおすのクジラ。鯢はめすのクジラ】と申大ぎよそのたけすせん りによこたはりてまいりけれは つぎにこうぎよたいぎよと 申は十二のあしくるまのことく おひたればそのかたちかにゝにたり はくてうぎよと申は四つめ六そく あるうをのおのいろすこしあか ければきじのかたちにこと ならすけいせきのねをいだす ひぎよはそのかたちふくてう【鵩鳥=ふくろう(梟)の異名】とり ににたりけりしやちほこと 【左丁】 いふはさめのはゝなりはる にもなればそよ〳〵と ふくやのどけきこちのうを ゑいをすゝむるさけのうをの むがごとくにはむあぢはほう ぼにさはらすはしりて はしかにいるかこのしろの はまちをさしてとひうをや さめしたゝみしたちうをに ふかでおふたりわにのくちその ほかなよしすゝきます かつをひほく【ひぼく=「ひもく(比目)に同じ=ヒラメ、カレイの類の異名】うぐひゑうかなが しらとしをつもるかかい 【右丁】 らうやよろつよをふる     うみかめや         かれいに          そなふ   たいのうを        ほらがい          あかゞい       あはひにし            さゞい  かきはまぐり       まてとべた    いたやかい      くちなしといへど 【左丁】 くらげたはらご【俵子=なまこの異名】なまこの       たぐひまで     一るいしな〳〵を         わかちて  りうぐうじやうの          みぎはに     こぞりつらなつたる          ありさま   なにゝ      たとへん       かたもなし 【両丁 絵画 文字無し】 【右丁】 すゝきと申うをはうへまてもしろ しめしたるものなれはすなはち御てん にまいりてもろ〳〵のうをともこと〳〵 くまいりあつまり侍るよしをそう もん【奏聞】申けれはりうわう大きに御 かん【御感=天皇、将軍、高貴の人などが深く感動すること】まし〳〵てしをつゝのおきなに 此よしかくとの給ひけれはやかて かのうをともの中に入こかねのつり はりをのふだるうをやあるときせん くんじゆ【貴賤群集】のその中をにしからひがし きたからみなみじうわうむげ【縦横無碍=縦横無尽、四方八方思う存分】に たつねさがし給へともつりはり のふだるうをはなかりけりさてかい 【左丁】 ていにすむうろくず【「うろこ」。転じて「魚」】はさばかりにて やあるらんといふかしくおほしつゝ なをもかい中をせんさくせられ けるほとにちくらがをき【筑羅が沖=韓(から)と日本の潮堺にあたる海。】のとなり に七十よ里なかれたるがんぜき ありそのほらにふと申うをのい まをかぎりとなやみけるゆへに このたひのしゆつしにもれたるあり けりすなはちこのうをりうくうへいて まいりたりしほつゝをのおきなこの よしを御らんしてなんぢはいかなる しさいありてかさやうにはなやみけるそと とひ給へはかのうをこたへて申やう去(さん)ぬる【サリヌルの音便形。過ぎ去った。】 【右丁】 ころうとのおきにたゝよひ侍るところ にいつくよりともなくつりはりひとつ くちの中になかれ入てあぎと【魚のえら】にぐさと たちこみて侍るほとにたゝかたさの あまりにぬかん〳〵とつかまつり候へは つりはりのおはきれてのき候へともはり はいまにぬけ候はずしだひ〳〵にのんど せまりいたみまさり候へはいのちかきり ちかく候によりてこのたびめしにおうじ 候はすとそ申けるおきなふしきにおほ しめしかのうをのあぎとにさゝれたる つりはりをぬきて見たまへはこかね のつりはりなりこれこそうたかひもなき 【左丁】 みことのたつね給ふ御たからよとよろこひ もろ〳〵のうろくずともにおほせけるは このつりはりをたつねんためにこれまて めしよせて侍れともしよせんたつね もとめて候へはへちのやうなけれはなんぢ らはとく〳〵すみか〳〵にかへるへしと のたまひけれはうろくづともはよろこひて いろをなをし水にたはふれなみをうがち てをの〳〵ふるさとにかへりけりさてしほつゝ をのおきなはくだんのつりはりをもちて みことの御まへにまいり君はおほしめしわすれ 給ひけるかおきなはすこしもおこたる 事なくはかりことをめくらしすなはち 【右丁】 このつりはりをもとめえてまいらせ 侍るなんばう【注】君へ御ほうかうのもの にて侍るそと申けれはみこと此よし ご御らんしてわれとてもつゆわするゝ ひまはなけれともことのしけき【繁き=忙しい】に うちまきれよしなく月日をくらし けるこそこゝろうけれさりなから たつぬるところのたからをはもとめて たまはり候へはよろこひてもあま りありとてふかくおさめたまひ けり 【注 男房。女房に対して蔵人の称。平安時代、天皇の身辺の雑事に勤仕することを意味したときの称】 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 くはうゐんおしむへしとき人をまたさる ことはりひまゆくこまのあしはやみ【注】つなが ぬ月日かさなりてみこととこよのくに におはします事きのふけふとは申 せともみちとせになるはほともなし やをよろつの神たちこれをうれへな げき給ひつゝとこよのくにへ御むかひを つかはされけりすなはち御つかひはかい中 にすみ給ふあとべのいそらをつかはされ けりいそらしんちよく【神勅=神のおつげ】をかうふりとこ よのくにゝまいりてこのよしをかくと 申けれはみこと大きにおとろき 給ひてやかてこのいそらとともにくわん 【隙行く駒の足早み=壁の隙間に見る馬はたちまち過ぎ去ることの意から、月日の早く過ぎ去ることのたとえ】 【左丁】 ぎよ【環御】なるへきよしきこえけれはわだ つみをはしめたてまつりもろ〳〵の かいじんたち御なこりをおしみたて まつる事なのめならず中にもみことの さいあいし給ふとよたまひめはおりし も御くはいにんのもなかなりければ こゝにて御さんのひもをもとかせ給ひ てたいらかならんを御らんしたゝこそと ちゝはゝこゝろもとなくおもひ給へは いろ〳〵にとゝめさせ給へともわかくにの あまつ日つき【天つ日嗣=皇位】はおろそかならぬ事 なりとてかのとよたまひめをもあひ ぐし【相具し=同行する】かへらせ給ひけりひうがのくに 【右丁】 みやさきのこほりうと【鵜戸(うど)】のゝ【「の」が重複か】いはや【岩屋 注】につき給ふ やをよろづの神たちみことをはいしたて まつりよろこひのかくらをそうし給ひけり すなはちみことのみこのかみほこふりのみことへ くだんのつりばりを返し給ひつゝおそろ しき事をのたまひけれは大きにおそれ 給ふとかやさてもとよたまひめは御くわい にんの月日もみちけれはいそき御さんや をまうけらるへしとてうとのいはやのかたはら にあらたに御さんやをつくらるむかしは ひはだ【檜皮】なんといふものもいまたなかりしかは うへをはうのは【鵜の羽】をもつてふきおほはんとこゝ かしこよりうのはをたつねもとめけるとかや 【注 宮崎県日南市宮浦の地名。日向灘に臨む岩窟内の鵜戸神宮がある】 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 御さんやすでにとゝのをりけれとも のきをいまたふきあはせさるところに きさきの御さんの気しきりなれは いそきかしこにうつしまいらすすな はちたまのことくなるおとこみことむ まれたまへり御子をはひこなみさけ うかやふきあはせすのみこと【注】ゝ申たて まつる又はうのはふきあはせずの みことゝも申なり御さんやいまたふ きあはせさるによつてかく申なる へしちゝのみことはひうがのくにゝおはし ます事六十三万七千八百九十二年 にして天しやう【天上…死去。昇天】し給ふふきあはせすの  【注 『日本書紀』に「ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと」、『古事記』に「うがやふきあえずのみこと」とある。】 【左丁】 みことほうそ【宝祚=天子、天皇の位】をつかせ給ひしかはとよたま ひめの御いもうとたまよりひめと申をむ かへたてまつりてきさきとさため たまひつきひあひし給ふほとに この御はらにみこたちあまたうまれ たまふたいしにあたらせ給ふをは かんやまといはゝれひこあめすめ ろぎのみことゝそ申ける御とし十五 にてみこのみやにゐたまふふきあはせ ずのみことは御代をおさめ給ふ事 八十三万六千四十二年にして天じやう し給ひしかはみこのみや御とし五十二と 申かのとのとりのとし【辛の酉の歳】ほうそをつかせ 【右丁】 給ひけり御代をおさめ給ひつゝ五十九 ねんと申つちのとのひつしかみな月【己の未神無月】に ひうがのくにみやさきのくはうきよより とうせいしてとよあしはらの中つくに にとゝまりかねひ山のちをてん してかしははらのち【橿原の地。 「は」の重複か】をきりはらひ みやつくりしてすまはせ給ふが十七 ねんのち三月一日つゐにほうきよ【崩御】な り給ふ御とし一百二十七さいのちの御 いみなはじんむ天わうとそ申たて まつるこれをほんてう【本朝=我が国】にんわう【人皇=神代に対して人代となってからの天皇】のはし めとしてけいこうてんわうまて十二代 はやまとのくにところ〳〵にくはうきよを 【左丁】 たてよをおさめ給ひしかはくにゆた かにたみさかへけるとかやしかるに このきみの御宇十年と申かのえ たつのとし【庚辰の歳】の秋八月にあふみのくに 水うみにひとつのしまあらはれいで たりこれへんざいてんの御さいしよ こんりんざいよりしゆつしやうしたる しまなりいまのちくぶしまとはこれ なりこれによつてみかとのくにに みゆきあつてさゝなみやしがのやま へに大みやつくりしてすみ給ふ これをあなほのみやとそ申ける此とき にあたりて三かん【韓】のわうくまわりと 【右丁】 申ものほんぎやく【叛逆=そむきさからうこと。反逆】をくはたてすてに つくしひうがのくにをおそふよしそう もん【奏聞=天皇に奏上すること】する事あり三かんとは日ほんより にしにあたつてしんらかうらいはくさい【新羅、高麗、百済】 とて三ツのくにあり此くにのたみしんだん こく【震旦国=中国の異称】にもしたかはずわがてうへもふくせ ずみつからほしいまゝに世にほこる にてそ候ひけるみかと大きに御しう しやうありてみつからこれをせいし たまはんとていくさをおこしきしう ゆらのみなとより御ふねにめされつゝ つくしをさして御げかうあそはし けるがすてにつくしのちにいらせ 【左丁】 給ふところに夜に入そらくらくなり てとうざいぜんこもわきまへがたけ れはふな人ともこはいかゝせんとあき れはてたるところにゆんでのかた【左の方】に あたつてほしのことくに火のひかり 見えけりみかとこのよし御らんして ふな人ともをめされてあれはいかなる 火そとのたまひけれはさん候【「さにそうろう」の変化した語。そのことでございます】たれ人【誰人=何人(なんぴと)】 のとほしたる火ともしらぬ火にて 侍るとこたへ申けりさてこそしらぬ ひのつくしとは申つゝくるなるへし 【両丁絵画 文字無し】 【右丁】 みかと御ふねをつくしのちにこきつけ させて御らんすれは三人のおきなあつて めん〳〵に火をたきてゐたりみかとふし きにおほしめしさてなんじらはいかなる ものそととはせ給へはをの〳〵こたへて 申けるやうはこれはいにしへいざなぎいざな みの二はしらひうがのくにあふきがはら にてはらいし給ふときかいていより あらはれいでしうはつゝを【上筒男(命)】中つゝを【中筒男(命)】 そこつゝを【底筒男(命)】の三かみ【三神=この三神は住吉神社の祭神】なりかみつせ【上つ瀬】はすは のみやうじん中つせ【中つ瀬】はかしま大みやうじん これたけいかつちのみことなり下つせ【下つ瀬】は すみよし大みやうじんふきあはせすのみこと 【左丁】 これなりいにしへよりわか日のもとをまほ らん【守らん】ためにあるときは君となりては たみをなであるときはしんとなりて よをおさめ四かい【「四海」=四方の海。転じて天下】たいへいなる 事はこのぜう【尉=老夫】らがおもふところに 侍ると申されけれはみかと大き にゑいかん【叡感】あつてめん〳〵の まほりによりてこんどのいのち まつたき事をえたり此のち いよ〳〵くわうきよをまほりた まへとかたくけいやくまし〳〵て すなはちいぞく【夷賊】をせめたまふ ところにまことにかみの 【右丁】 ちからをあはせ給ふそや       いぞく【夷賊】ら          いくさに         まけて     ほどなく         世       しづまり          に        けり 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 みかとゑいかんのあまりにかの おきなの侍りしちくぜんのくに なかのこほりにくわんぎよ【環御】なりて 三人のおきなを神といはゐた まひけりすみよしみやうじんは これなりこのこゝろをうらべ かねなを【卜部兼直】がうたに   にしのうみあふきかはらのしほち【潮路】より    あらはれいてしすみよしのかみ とよみしはこのいはれなりかくて けいこうてんわうの御代六十ねん せいむてんわうの御代六十年は 天下ゆたかなりしところに 【左丁】 ちうりてんわう【仲哀天皇のことか】ぐわんねんに又 くまはり【三韓の王の名】ほんぎやくをくわたて しかばみかとみづからいくさを おこしかしこにみゆきありて せいばつし給へともいぞく【夷賊】ら いくさこはくしてたゝかいに まけさせたまひしかばくわん ぎよありてかしはひ【橿日】のこうきう【後宮】 にしてつゐにほうぎよなり にけりみかとのきさきのみやをは じんぐうくわうごうと申たてま つりしかこの事をゑいらん【叡覧】ありて これしかしながらせんていのはかり 【右丁】 ことのいみしくましまさねはこそと おほしめしたうてうへいくさのそく しゆのためにしやきん【謝金】三万りやう をつかはされりたうおうの一くわんの ひしよをつたへらるこれはくわう せきこう【黄石公】か第五日のけいめい【契盟=固く約束すること】にかひ【下邳】 のいしやうにしてちやうりやう【張良】に さづけししよ【書・・兵法書】なりことすでに さたまりてのちいくさひやうぢやう の御ためにとてくわうごうもろ 〳〵の天じんぢぎ【天神地祇】をしやうじ 給ふところに伊勢くわう大じん ぐうより二人のあらみさき【荒御先=軍の先鋒をつとめる荒御魂(あらみたま)。】をまい 【左丁】 らせらる一にんはすみよし大みやう しん一人はすは大みやうじんなり そのほか日ほん一しうの大小の じんぎみやうだう【神祇冥道】みなちよくぢやう【勅定】 にしたがつてひたちのかしまに まいりたまふところにかいていに あとをたれ【跡を垂れる=仏、菩薩が衆生を救うため、かりに神や偉人となってこの世に現れること】給ふあとべのいそら【神功皇后の三韓出兵を助けた海神】一人 いまためしにおうせずくわうごう いふかしくおほしめしこれいかさま ようあらんとてもろ〳〵の神たち にみことのりをし給ひてにはびを たかせさかきのえだにしらにきで【白和幣=穀(かじ。こうぞの一種)などの皮の繊維で織った白布の幣帛】 あをにきで【青和幣=麻で作った純白でない幣帛】をとりかけてふう 【右丁】 しよく【風色。『太平記』には「風俗」とあるよう】さいはら【催馬楽】むめかえ【梅が枝】さくら 人【桜人】いしかは【石河】あしかき【葦垣】このとの【此殿】なつひき【夏引】 ぬきかは【貫河】あすか井【飛鳥井】まかねふく【真金吹】さし くし【差櫛】あさふつのはし【あさうづのはし(浅水の橋) 注】りよりつを しらべ【呂律を調べ】ほんま つ【本末】を       かへして【返して】          すへん【数反】    うたはせ        たまひ          けり 【注 「梅が枝」から「浅水の橋」まで、催馬楽や謡曲の曲名】 【左丁 絵画 文字無し】 【右丁】 なりけるところにかいしやう【海上】さは かしくしらなみしきりにひる かへるほとに神たちあやしく おほしめすところにいそら【磯良=神功皇后の三韓出兵を助けた海神】すて にうかみいて【浮かび出で】かみあそひ【神遊び=神々が集まって、音楽を奏し、歌舞すること】のにはに まいりけるそのかたちを御らん するにしたゝみ【しただみ=小さい巻貝類の総称】かきがいもにすむ むしてあし五たいにとりつきて さら〳〵人のかたちにてはなかり けりくわうごうおほせけるやうは なんじいかなれはかゝるかたちとは なりけるそと御たつねありければ いそらこたへて申やうわれあをうな 【左丁】 はらのうろくす【「うろこ」転じて「魚」】ともにましはりこれを りせん【利せん=救済せん】ために久しくかいていにすみ 侍りぬるあひた此かたちになりて候 なりけるあさましきかたちにて やんことなき御しんぜんにまいらん 事のはつかしさにいまゝてまいりかね て候ひつるをしは〳〵ゆう〳〵たるりつ か【律雅】の御こゑにはぢをもわすれ身をも かへりみずしてまいりたりとそこたへ申 けるくわうごうなのめに【どうでもよいこと】おほしめしなんぢ をこゝにめしいたさるゝ事べちの【特別の】しさい なしいそきわたつみのみやにゆきて かのところのてうほう【重宝】みらいのたま 【右丁】 をしよもふしてまいるへしとその給ひ けれはいそらちよく【勅】におうしてとこよの くにゝむかつてくわうこうのちよくぢやう【勅定】 のおもむきくはしくのべ給ひければ りうじんたちこの事はかくあるへきと ひやうぢやうまち〳〵なりわたつみ【海の神】 おほせけるやうはとよあしはらのあまつ日 つき【天つ日嗣=天皇の位】と申たてまつるはこれわか御しそん なりしかるにかの君いこくにおかされた まふとうけたまはれはいかてかおしみ奉る へきとてかんしゆまんしゆの両くわ【両貨】をいそら にわたし給ひけれはいそら二ツのたまを うけとりてくわうごうの御まへにまいりて         さゝけたてまつりけり 【左丁 絵画 文字無し】 【両丁文字無し】 【裏表紙 文字無し】