【表題】 持〇長者 【本文】 蔵建(くらたて)る力(ちから)はなくて菊畑(きくばたけ)平家(ひらや)に すみし風雅人(よすてびと)は潰(つぶ)れたといふ咄(はなし)もなし さて持丸(もちまる)の長者(ちやうじや)たち此節(このせつ)でこざり ますその身(み)〳〵の分限次第(ぶんげんしだい)こゝろ もちの施(ほどこ)しをいたしたいもので こざり升が何(なに)をほどこしたら よかろふやらマアこゝが御そうだん 〽さやう〳〵ごくなんじうなものを ゑらみそれ〴〵へせぎやうして やりましたらこれにこした いんとくはこさりますまい 〽なるほど〳〵左様(さやう)〳〵 おやのない子や子のない おやめのみへぬもの つえついたとしよりなどに ほどこしたらよをござり ましふ〽サアそこでございます つえをついたものにほどこす なら此せつのたふれかゝつた 家(いへ)へのこらずほどこしを おたしなせへナ 【下の絵の右】 積善(せきぜん)の家(いへ)に余(よ)けいな 金もちは たまりし はらのそうじ したまへ