【収蔵用外箱・表紙】 養生歌 【収蔵用外箱・表紙】 養生歌 【収蔵用外箱・背表紙】 養生歌 【整理ラベルあり、薄くて読めず】 【整理ラベル・富士川本/ヨ/77】 【朱印・富士川家蔵本】 養生歌 養生歌序 一橋黄門のきみ仰ことあり凡 人ことに生楽を遂しめんには 養生の道をしらしむるにありと いへとも其書載る所繁冗にして 【蔵書印 朱】京都帝国大学図書之印 【受入登録印 朱】富士川游寄贈 【受入登録印】187265/大正7.8.31 諳誦しかたくかつ雅言は解しかぬる 人も多けれは俚語もて歌に作り たらんには博愛の一端なるへ しとそ僕深く其厚徳を感し 奉るといへとも徒に犬馬の年を 経て和歌の道いかなることをしら す然れとも医【醫】も亦仁の術也修養 の道とその帰する所一にして おのれか任の関係する処【處】なれは 固辞し奉らむによしなく蕪陋 を忘れ翠竹院の養生歌【謌】の体に 擬して漫に三十一字に綴り其 命に応し奉ることゝはなれり その躰陋にして言野なりと いへともそのことは皆先賢の格言 なりもし人ことに此意を謹み 守らは永く壽数を保つへき こと疑ひなからんのみ寛政六 年【秊】八月初旬法印安元しるす 養生歌八十一首           法印安元    大意(たいい) 養生(やうじやう)はその身のほどをしるにあり ほどを過すはみなふやうじやう 不養生とおもひながらもふやうじやう なさば思はぬ人にをとらん 薬(くすり)さへ仕方(しかた)によれば毒(どく)となる 飯(めし)と酒(さけ)とを見てもしるべし 【右頁】 身(み)のうちのぬしはこころよ一身(いつしん)の 安危(あんき)はぬしの心(こゝろ)にぞある 心(こゝろ)にてこころよきぞとおもふこと おほくはためにならぬ物なり 若(わか)き身(み)の丈夫(ぢやうぶ)だのみの不養生 やがて老後(らうご)の後悔(こうくわい)となる をのが身に病(やまひ)ありては何(なに)の身で 君父(くんぷ)につかへ奉(たてまつ)るべき 達者(たつしや)だて丈夫じまんの無理(むり)わざは つゐに病の種(たね)とこそなれ 【左頁】 すくこともよき程(ほと)にせよ耽(ふけ)りては 身のやしなひは忘(わす)れはつべし 心をはつねに静(しつか)にその身をば つねにほどよくうごかすぞよき 兎(と)も角(かく)も癖(くせ)になしなばくせづかん ただよきくせをつくるにぞある 不養生はこらへこらへてすべからず のちには常(つね)の癖となる也 常(つね)にただ義理(ぎり)の書物(しよもつ)をよむか又 よませてきけばよき癖(くせ)ぞつく 【右頁】 慾情(よくしやう)は獅子(しし)/身中(しんぢう)のむしなれや こころよりこそ身をもほろぼせ 大病(たいひやう)となりてのゝちは如何(いかが)せむ ただつね〴〵に養生をせよ 少々(せう〳〵)は苦(くる)しからじの不養生 つもり〳〵て後悔をすな 自由(じゆう)なる都人(みやこびと)より不じゆうに くらす山家(やまが)に長寿(ちやうじゆ)おほきぞ 目(め)なとめそ耳(みみ)になふれそ情慾(しやうよく)は 見きゝにつけて動(うご)くものから 【左頁】    飲食(ゐんしよく) 飲食は我身やしなふ為(ため)なるを 口のためぞと思(おも)ふはかなさ 目と口のために食(しよく)すなたゞ食は 腹(はら)のかげんを第一(だいいち)とせよ よほど腹(はら)すきて食事(しよくじ)は喰(くら)ふべし すかぬにくへば八重(やへ)食(しよく)となる 食事をはすき過(すぎ)ぬ間(ま)に食すべし すき過ぬれはやまひとぞなる 【右頁】 前(まへ)の食に厚味(こうみ)しよくせばその次(つぎ)は あぢはい淡(あは)きものを食せよ むましとも八(はつ)九(く)/分(ぶ)/喰(くは)ば足(たる)とせよ 十分(じふぶん)ゆへに身の害(かい)となる 一(ひと)しなを偏(へん)に食して害なきは 飯(めし)と汁(しる)との二(ふた)つなりけり 菜(さい)の類(るい)はその時々(とき〳〵)に取(とり)かへよ おなじ品(しな)のみ偏(へん)に食すな 食事して直(ぢき)にいぬれば食もたれ やがて病になるものとしれ 【左頁】 食後(しよくご)まづ額(ひたい)と両(りやう)の頬(ほう)までを 自身(みづから)数度(すたび)撫(なで)おろすべし 食後には縦(たて)横(よこ)数間(すけん)あゆむべし しよく気(き)めぐりて養生によし 食事(しよくじ)せば立(たち)はたらきて時(とき)をうつし 一時(ひととき)ばかり過(すぎ)てねよかし 食/物(もつ)はこなれやすくてやはらかに あぢはひ淡(あは)き品(しな)のみぞよき 厚味にて重(おも)きはもたれ硬(こはき)もの 冷(ひえ)たるしなも多(おほ)く食すな 【右頁】 嗜(すけ)ばとておなし品のみしよくすれば 偏気(へんき)つもりて病とはなる 飽食(ばうしよく)は数 日(じつ)つゝけばたゝまりて つゐに大事(たいじ)の病とはなる 賤者(かろきもの)はおり〳〵厚味/喰(くふ)もよし 貴人(きにん)は常(つね)に麁食(そしよく)まされり 喰度(くひたき)も暫時(ざんし)の間(あいだ)こらゆべし のちに益(えき)あるほどの久しさ 夏(なつ)もたゞあたゝかなるを食すべし 冷物(れいふつ)をのみ喰(くへ)ば霍乱(くわくらん) 【左頁】 百薬(ひやくやく)の長(ちやう)なる酒もわが分(ぶん)に すごして飲(のめ)ば百/毒(どく)の長 酒のまばほろ〳〵酔(ゑひ)を程(ほど)とせよ その盃(さかづき)の数(かず)はかぎらで 一杯(いつぱい)の酒にゑふ人/十杯(じつぱい)の さけにゑはぬも其人(そのひと)のほど 饑(うえ)過て食するときはそのまへに 湯茶(ゆちや)か味噌汁(みそしる)とくとのむべし 食(しよく)こなし持薬(ぢやく)にのみて大しよくの 人の脾胃虚(ひゐきよ)は十倍(じふばい)としれ 【右頁】 渇(かはく)とも湯水(ゆみづ)はおほくのむなたゞ 口にふくみて数度(すど)うがひせよ 飽食とうえてものくふ時ならば いり湯【注】はかたくせぬをよしとす 【注 「入り湯=桶(おけ)の中にすわってはいる湯】 さなきだに夏は食物(しよくもつ)こなれがたし 冷たるものと過食(くわしよく)ばしすな    閨門(けいもん)【家庭内での行儀作法】 腎水(じんすい)は人の命(いのち)の本(もと)なれば おしみたもちて大切(たいせつ)にせよ 【左頁】 男女(なんによ)こそ子孫(しそん)/求(もとむ)るためなるを わが慰(なくさみ)とおもふおろかさ 二十歳(はたとせ)は四日に一度(いちど)三十歳(みそとせ)は 八日に一度/房事(ばうじ)有べし 四十(よそじ)歳/経(へ)ば十六日め五十歳(いそとせ)は 廿日/六十歳(むそし)は房事(ばうじ)/慎(つつ)しめ 持(もち)まへのよはき生(むまれ)はさだめある 房事の数も猶(なを)へらすべし たゞ一度/泄(もら)すも精気(せいき)/耗(へる)ぞかし 重(かさ)ねもらさば大病のもと 【右頁】 大寒(だいかん)と大暑(たいしよ)の時に房事せば なにか病を起(おこ)すとぞしれ 日(ひ)と月(つき)の蝕(しよく)と雷電(らいでん)/大風雨(だいふうう) /地震(ぢしん)の時は房事/慎(つつ)しめ 色念(しきねん)をこらへて情(じやう)を遂(とげ)ぬには 腰湯(こしゆ)に下(しも)をあたゝめてよし 房事あらば胸(むね)と腹(はら)とをさすりつゝ しばらくしてのちいねるよしとす 房事/以後(いご)しばらく歩行(ほかう)するもよし かならず直(ぢき)に寝入(ねいる)べからず 【左頁】 色念(しきねん)の起(おこ)るまかせに房事せば 陰虚火動(ゐんきよくわどう)【注】となるぞおそろし 【注 陰虚火動=漢方医学の病名。房事過度のため精力が減退し、鼓動が激しくなり熱が出て衰弱する病気】 腎薬(じんやく)を呑(のみ)て恃(たのみ)の不やうじやう はては頥(あご)にて蝿(はい)をゝふべし 灸治(きうぢ)せば前(まへ)は三日にのち七日 緊(きび)しく房事/慎(つゝしみ)てよし やみあがりよきに由断(ゆだん)し房事せば これ労復(らうふく)【注】の大病となる 【注 労復=治った病が過度の疲労により再発すること】    起居(ききよ) 【右頁】 家(いへ)にあらば程(ほど)よく身をばつかふべし しよく気(き)めぐりて薬(くすり)にもます 行住(ぎやうぢう)も坐臥(ざぐわ)も久(ひさ)しくすべからず ひさしきときは皆(みな)/毒(どく)となる 譯(わけ)もなく昼寝(ひるね)/度(ど)ゞする楽寝(らくね)こそ 気血(きけつ)をふさぎ病とはなる 大風雨らいでん雲霧(うんむ)ふかきには 雨戸(あまど)をさして其(その)/気(き)/避(さく)べし 閑(ひま)ならば常に手足(てあし)をつかふべし 徒(たゞ)に坐(ざ)しなば気血めぐらず 【左頁】 ひや〳〵と冷気(れいき)おぼえはたゞはやく 衣服(いふく)かさねよこらへべからず 枕(まくら)もとに火(ひ)の気(け)はをかぬ事(こと)ぞよき 逆上(ぎやくじやう)の気(き)をたすくればなり 寝(ね)つきにはむねと腹(はら)とをいくたびも 自身(じしん)しづかになでさするべし 夏はそのほどよくすゞみ暑(しよ)をしのげ すゞみ過(すご)せば病とぞなる 寒気(かんき)より暑気(しよき)に中(あた)ればすみやかに はげしきやまひやむものとしれ 【右頁】 夏のよの更行(ふけゆく)までにすゞみ居(ゐ)ば 夜気(やき)にあたりて大病となる なつのよの夢(ゆめ)のかりねに寝冷(ねびえ)せば これ大病の基(もとゐ)ならまし ねむりなば風ふくところさけぬべし あふぎうちはのかぜもよからず 寒(さむ)き日か凍(こごえ)たる時はじめより すぐに熱湯(あつきゆ)つかふべからず 冬(ふゆ)は先(まづ)日の出(で)を待(まち)て起(おき)つべし なつのあしたは早起(はやおき)ぞよき 【左頁】 ふゆの朝(あさ)気(け)寒さはいたく厭(いと)ふなり ゆうべ夜中(よなか)はことに避(さく)べし ふゆ寒(かん)にあたれど冬は目(め)にみえず 春(はる)にいたりて大病となる 老(おい)は老(おい)わかきは若(わか)きほど〳〵に その養生を心得(こゝろえ)てよし 貴(き)と賤(せん)と身(み)のならはせの違(ちがひ)あり とりちがゆれば病とぞなる 八千世(やちよ)ふる椿(つばき)も伐(きら)ば枯(かれ)なまし のこる氷室(ひむろ)も人の手(て)わざぞ 【この歌はどのような意味でしょうか?】 月と日のめぐるがごとく我(わが)/業(げう)を つとむる中(うち)に養生         もあり