【上段右】 一/抑此鯰薬(そも〳〵このなまづくすり)の/灵薬(れいやく)ハ/鰻(うなぎ)ぐすりの/法(ほふ)に/倣(なら)ハず/瓢(ひやう)たん /薬(ぐすり)の/効能(こうのう)と/変(かハ)り/鹿島大明神(かしまだいミやうじん)の/御夢想(ごむそう)にして /一子相伝(いちしそうでん)の/妙済(めうざい)也/第一時候(だいいちじかう)の/不順(ふじゆん)を/治(ぢ)し/第二(だいに) /世上(せじやう)の/景気(けいき)を/直(なほ)す/尤薬勢甚(もつともやくせひはなはた)しきに/依(よつ)て 大ひに/動(どう)ずる/事(こと)あり/然共其動(しかれともそのどう)ずること /有(ある)が/故(ゆえ)に/是迄年来蔵中(これまでねんらいぞうちう)に/凝(こり)  /集(あつま)り        たる▲   ▲/金(きん)    /銀(ぎん)の/支(つか)へと    /下(くだ)し/世間(せけん)の   /融通(ゆづう)を/付廻(つけめぐ)り/能(よく)なるに   /随(したがつ)て/何(いか)なる/冷生(ひえしやう)なる /者(もの)と/云共追〳〵(いへどもおひ〳〵)に/腹中(ふくちう)に /暖(あたゝか)ミを/生(しやう)じ/貧病(ひんびやう)を/愈(いや)す/事(こと)/震(しん)のごとし /其功験(そのこうけん)の/著(いちじる)しき/用(もち)ひてためすべし 【下へ】 一/金銀(きんぎん)のめぐりを/能(よく)し一/世上(せじやう)を/賑(にぎハ)すによし 一/怠(おこた)りをいましむるによし一/奢(おご)りを/止(とゞむ)るによし  /禁物(きんもつ)一/美食(びしよく)一/美服(びふく) 一/居宅(きよたく)を/餝(かざ)る/又(また)ハ    /大酒(たいしゆ)をいむ    「さア〳〵ひやうばんの火ぎよ     なまづぐすりじや人形       ほくバくすりを      かハんせこれハ        ひやうばん         きめう〳〵   用ひやう 十月二日/夜四(よよ)ツ/時(どき)一たんに/振出(ふりいだ)し/猶(なほ)そのふり /残(のこ)りを/度々(たびたび)二/振出(ふりいだ)し/用(もち)ゆべし/前(まへ)に/記(しる)す/所(ところ)の /禁物(きんもつ)を/能々慎(よく〳〵つゝし)まざれバ/病(やま)ひ/元(もと)にかへる/恐(おそ)るべし 【上段中】    老なまづ 常磐寿無事大夫直伝 「そも〳〵なまづのあれくることおばんしやくにおされ諸々 八方のわざハひ/数千人(すせんにん)の見ごりをなして/古今(ここん)のう れひをますしゆんの/時候(じかう)のいかりのときてん にハかにかきくもり大地しきりにゆりしかバ くいとかべをふせがんと小やぶのかげにより たまふ此おりまちくはいほくとなりねだを おり戸をかたねおのがのきばをふさぎてその はりをもたさをりしかハむざとさいごと/入(にう) /寂(じやく)のおはりむだ/死(し)たまひしよりなまづを あやふと申とかやかやうにすでかき/間違(まちがひ)に 身を/悔(く)ふ/民(たミ)のうれひをバきミのなさけで おすくひの/米(こめ)の/五合(ごんかう)ふるかべのほこりた へせぬ/転変地(てんへんち)ごくどう〳〵〳〵とミくらの つちにうたるゝものこそせつなけれ    安政二乙卯年十月二日 【上段左】    差出申御詫一札之事 /我等義(われらぎ)当十月二日/夜酒(よさけ)二/乗(じやう)じ/鳴動(めいどう)之上 /前後亡失(ぜんごほうしつ)仕/八百萬御神(やほよろづのおんがミ)たち御/留守(るす)をも/不弁(わきまへす) 御江戸町々/家蔵(いへくら)等/破逆(はきやく)致し/損亡夥敷(そんほうおひたゝしく)候二 付/神仏方(しんぶつかた)御/怒(いかり)之/段(だん)御/尤(もつとも)二御座候/然(しか)ル所 /先(せん)夜/雨天(うてん)之/節津波共打寄(せつつなミどもうちより)候二付/我(われ)等 /罷出八大龍王(まかりいではちだいりうわう)江相/願(たのミ)右津なミ/差戻(さしもどし)させ 御ぶなん二相/過(すぎ)候/依之蛭子(蛭これによつてゑびす)神を以て御/詫(わび)申 入候所ゆるく御/聞済(きゝすミ)被下置/千萬(せんばん)難有奉存候 /向後震(こうごふるひ)候節ハ/鯰(なまづ)一同/蒲焼(かハやき)すつぽん/煮(に)等に 被成候共/決而(けつして)一/毛(もう)之/動(うごき)申間敷候/為後日(こにちのため)さし ゆれ申一/発仍(はつよつて)ふ/断(だん)の如し 【下段中】 新吉原町仮宅場所付 浅草之便 一東仲丁 一西同 一花川戸丁 一山の宿 一聖天町 一堂瓦丁 一山谷丁 一今戸丁 一馬道 一田町 一深川仲丁 深川 一永代寺門前仲丁 一同東仲丁 一山本丁佃丁 一松村丁 一八幡御旅所門前丁 一続御舟蔵前丁 一八郎兵衛屋敷 一松井丁 一入江町 一長園丁 一陸尺屋敷 一時ノ鐘屋敷 一常ハ丁 【下段左】 く事 「火事ならわたしもとくしんつくたが だしぬけにくづすとハあんまり むごひしかたぢやアあるめへか 火じ 「もそこら辺もゆきハねへけれど よんどころなくつぶされのうへで でき心とやらけんしなせへ 五重のとう 「おめへかたハともかくもおれハ なんにもじやまにハならす ぢしんにあたまをはりたを されるりくつハねへやア かミなり 「コラぢしん手めへやおれや子の中て 仲間トいふハしつているになせおとして くれた江おちていひしにんにハ かれかかつてに一人りておちる かぜのかミの まへもあるいへ よごれたのを ぬし直して くれろ ゑびす 「己レも十月そう〳〵から こんなさハきかミ〴〵へも いひわけなくやう〳〵 おわびハ申したなれど このごハきつと ふるふなヨ なまづ 「へイ〳〵〳〵〳〵  モウ   ぬらくらハ   いたしませぬ