権中納言定家(こん ちう な ごん てい か)
来(こ)ぬ
人を
まつほの
浦(うら)の
ゆふなきに
やくやもしをの
身もこかれつゝ
   九十七番
此心はこぬ人をまつほのうらとはただ一日
の間の事にはあるべからす日ごろへて
まつと云心にや夕なぎといへるはなみ風
もなきゆふべなり扨夕なぎに塩
やくけぶりもたちそふるをわ
がおもひのもゆるさませつなる
によそへて身もこかれつゝと
いへりまたつゝととまることば
一日の事にあらずれん〳〵
おもひのせつなるをいふなり