伊勢(いせの) 大輔(たいふ) いにしへの  ならの みやこの 八重  さくら けふ九重(ここのへ)に  にほひ   ぬるかな   六十一番 右の心は一条の院の御時にならの八重 桜を人の奉りけるを御前に侍りければ其 花を給はりて歌よめと仰られければよめる と云々さればふるき都の桜花の色音も 今のみやこに参りては一 ̄ト しほまさりて八 重桜が九重に匂ふとしやうくわんしたる 当座の詞まことにめでたし内裡 を九重といふ故さく らのいろ音とかね てこゝにいへり