綿温石奇効報條 《二丁表 左頁》 享和二年壬戌  三馬作 上中下      歌川豊廣 画 仙方(せんぽう)  綿温石(わたおんじやく) 新製上品 長寿(ちやうじゆ)     一箱価三匁               需に応して無拠           報條     式亭三馬述【印】 【枠囲み記載】 別而申上候かやうにむだ事らしく 申上候へ共此くすり綿は一昨年より  御ふいてう申置候諸所もより     の取次より御もとめのうへ宜敷            御こゝろみ可被下候 這(これ)箇(この)長寿(てうじゆ)温済綿(うんさいめん)やつぱり俗(ぞく)に綿温石(わたおんじやく)の儀は予(よ)が先祖一(せんぞいつ)子 相伝(さうでん)の秘授(ひじゆ)などゝ嘘(うそ)をば申さず勿論(もちろん)中華(もろこし)名医(めいい)伝方(でんぽう)と名(な)も 偸(ぬす)まず抑(そも〳〵)温綿の由来(ゆらい)を尋(たづね)奉るに口上書(かうぜうがき)や弁舌(べんぜつ)に巧言(よそほひ)令色(かさり)は 内科(ないくわ)外科(げくわ)古方(こはう)後生(こうせい)恐(おそ)るべし仲景(ちうけい)思邈(しばし)が声色(こはいろ)つかふ彼(かの)野夫(やぶ)ならぬ 良医(おゐしや)より密(ひそか)に授(さづか)る妙剤(めうざい)也 常(つね)に茲(この)薬(くすり)綿(わた)を懐(ふところ)に入れおへその上に あて置(お)く時は忽(たちま)ち薬力(やくりき)五臓(ござう)にめぐり寒風(かんぷう)秋雨(しうう)に犯(おか)さるゝの愁(うれい)なし 所謂(いはゆる)「かぢけ」さむがり坊(ぼう)の御方様 或(あるひ)は巨燵(こたつ)え首(くひ)つたけ色(いろ)より介(くわい)□ 抱火鉢(だきひばち)の愛情(あいぜう)をも寒(さむさ)と倶(とも)に忘(わす)るゝ事 神(しん)のごとしと申てはお定(さだま)りの 自讃(てまへみそ)と思その御方さまも可有之候得共/誠(まこと)に/古今(こゝん)/未曽有(みぞう)稀代(きたい)不(ふ) 思儀(しぎ)の霊薬(れいやく)也◯世(よ)に/行(おこな)はるゝ/箱入(とゝらう)/温石(おんしゃく)のがらくぴつしやり/塩(しほ)温 石の衣類(ゐるい)をぷすく/其(その)効能(こうのう)を争(あらそ)ふといへども温石なんぞ/大病(の/心(こゝろ)を