【表紙 題箋】 《題:洗湯手引草》 【資料整理ラベル】 858 54 六ノ七 【右丁】        目録  一 洗湯之由来   一 湯屋鋪金証文之事  一 湯 語 教   一 同売渡証文之事  一 湯屋番組大意  一 薪買出 ̄シ早割付  一 同十組割付   一 奉公人請状之事  一 大行事順番付  一 同引取一札之事  一 湯屋万年暦   一 諸薪古木之坪割  一 中昔湯屋諸興記 一 同車 ̄にて積込之員数  一 見世法度書之事 一 松才【材のことヵ】坪割直段付  一 湯屋預 ̄り証文之事 一 三宝日を知る事 【左丁】 夫(それ)湯屋 家業(かきやう)ほど人をさとすに 捷径(ちかみち)の教(おしへ)なるはなし其(その)故(ゆへ)如何(いかに)と なれは高貴(たかき)もいやしきも湯(ゆ)を浴(あび)ん とて裸(はだか)になるは天地(てんち)自然(しぜん)の道理(どふり) にて二 本(ほん)さしたる御武家(おぶけ)がたも 十 徳(とく)着(き)たる医者(いしや)さんも権助(ごんすけ)どの 【蔵書印】 帝国図書館 【購入印】 昭和二一・五・二二・購入 もおさんどのも御坊(おぼう)さんも吾儘子(だゞつこ)も 産(うまれ)たまゝの客(すがた)にて憎(おし)ひ欲(ほ)しいも西(にし) の海(うみ)へさらり無欲(むよく)のかたち也 欲(よく)垢(あか) と梵脳(ぼんのう)とあらい清(きよ)めて浄湯(おかゆ)を 浴(あび)れば旦那様(たんなさま)も権助(ごんすけ)も孰(どれ)がどれやら 同(おな)じ裸身(はだかみ)仏(ほとけ)きらいの老人(としより)茂(も)風呂(ふろ)へ 這(はい)れば吾(われ)しらず念仏(ねんぶつ)題目(だいもく)申もあり 向(むかふ)不見(みず)の侠客(いさみきゃく)も裸(はたか)になれば前(まへ)を おさへて己(おのれ)から恥(はぢ)をしり猛(たけ)き武士(ものゝふ)の あたまから湯(ゆ)を掛(かけ)られても人 込(ごみ)じゃ と堪忍(かんにん)を守(まも)り柘榴口(ざくろくち)をくゝる時(とき) は御免(ごめん)なさひと屈(くゞ)るのは是(これ)洗湯(せんとう) の徳(とく)ならずや無筆(むしつ)むざんではじめ てもやす〳〵暮(くら)して過ぎぬるは則(すなはち)洗湯(せんとふ) 人ころさずさればにや銭湯(せんと)に五常(ごぜう) の道(みち)あり湯(ゆ)をもって身(み)をあたゝめ垢(あか)を 落(おと)し病(やまひ)を治(じ)し草臥(くたびれ)を休(やす)め疾(しつ)ひぜん にはかゆみをとめ心(こゝろ)よく其夜(そのよ)とつくり臥(ふさ)し めるのは是(これ)則(すなはち)仁(じん)ならずや小桶(こおけ)のお明(あき)は 御坐(ござ)りませんかと他人(たにん)の桶(おけ)に手(て)をかけず 留桶(とめおけ)を我儘(わがまゝ)に遣(つか)はず又 急(いそい)で明て貸(かす) たぐひ懇意(こんい)の仁(ひと)には汲(くん)で置(おく)抔(なぞ)是(これ)全(まつた)く 義(ぎ)也 田舎者(いなかもの)で御ざい冷物(ひへもの)で御ざひ御 免(めん) なさい或(あるい)はおゆより又は御先(おさき)へと演(の)べ或(あるい)は お静(しづ)か於(お)寛(ゆる)り抔(など)番頭(ばんとう)どのは叮嚀(ていねい)に挨拶(あいさつ) するは則(すなはち)礼(れい)也 糠(ぬか)あらいこ軽石(かるいし)或(あるい)は糸瓜(へちま)の 皮(かは)で垢(あか)を落(おと)し石子路(いしころ)で毛(け)を切(き)りなで 付 櫛(くし)で髪形(かみかたち)を直(なお)すたぐい則(すなはち)智(ち)也 湯(ゆ)が焦(あつ)いといへば水(みづ)をうめぬるひといへば湯(ゆ) をうめ互(たかい)に脊中(せなか)をながしあひ老(おい)たる 仁(ひと)には湯を汲(くん)でやるたぐひ則(すなはち)信(しん)也かゝる 芽出度(めでたき)渡世(とせい)なれは水舟(みづぶね)の升(ます)陸湯(おかゆ) の桶(おけ)水(みづ)迺(の)方円(ほうゑん)に随(したが)ふ道理(どふり)を能(よく)々 悟(さと)り て流(なが)しの板(いた)農(の)如(ごと)く己(おの)が心(こゝろ)を常(つね)に 磨(みがき)諸(もろ)〳〵の垢(あか)をたける事(こと)なかれこの 道理(どふり)を不弁(わきまへず)心(こゝろ)に驕奢(おごり)の風(かぜ)立(たて)ば身家(しんだい) は何時(なんどき)にても早仕舞(はやじまい)也 五倫(ごりん)五体(ごたい)は 天地(てんち)よ李(り)の預(あづか)りもの大切(たいせつ)之 品(しな)御 持参(じさん) 之 節(せつ)は見世先(みせさき)万事(ばんじ)に心(こゝろ)を付(つ) ̄ケ喧嘩(けんくは) 口論(こうろん)喜怒哀楽(きどあいらく)の高声(たかごい)御無用(ごむよふ)この 文言(もんごん)を得(とく)と守(まも)り可申候 呼鳴(アヽ)序文(じよぶん)〳〵と 湯を汲(くむ)よふに日々の催促(さいそく)いなみがたく 【左丁】 且(かつは)学者(ものしり)の見(み)る者(もの)もあらざればおこがま しくも筆(ふで)を採(と)りてくだらぬ事を如此(かくのごとし) 右之通御承知之上御 入湯(にうとう)家業(かきやう)可被成候 以上        《割書:当時風来山人》   嘉永四辛亥年五月  向晦亭等琳                 しるす 【右丁 挿絵】                  等琳筆 まき高直に付 子とも衆迄も ゆせん御ふそくなく 御持参可被下候 【左丁】     洗湯之由来 人皇(にんのう)四十五代 聖武皇帝(しやうむこうてい)は仁徳(じんとく)の 君(きみ)にまし〳〵ければ皇后(こう〴〵)【左ルビ:きさき】も専(もつぱ)ら仏(ぶつ) 法(ぽう)を信(しん)じさ勢(せ)たまひ多(おふ)くの仏(ぶつ)【左ルビ:て】 舎(しや)【左ルビ:ら】を建(たて)僧(そう)を供養(くやう)し給(たま)ひ大乗(だいぜう) 根機(こんぎ)浅(あさ)からず憐(あはれ)みを垂(た)れた 【両丁挿絵】          雪山等琳 【右丁】 満(ま)ひし故(ゆへ)已(すで)に仏神(ぶつしん)擁護(おうこ)の奇(き) 特(どく)あらは礼(れ)御身(おんみ)よ李(り)光明(こうめう) 燿(かゞや)きければ時(とき)の人 光明皇后(こうめうこうごう)とあが 免(め)奉(たてまつ)りし東(と)かやしかるに即身(そくしん)即(そく) 仏(ぶつ)南(な)りと怠慢(たいまん)農(の)障礙(しやうげ)に帝(て) 光明(こうめう)堂(た)ち満(ま)ち消失(しやうしつ)【左ルビ:きうせ】せ里(り)こゝに 【左丁】 おいて后(きさき)大に驚歎(きやうたん)【左ルビ:おとろき】し大 慈(じ)の 悲願(ひぐわん)を発起(ほつき)し給(たま)ひ破風造(はふづくり)の 浴室(よくしつ)【左ルビ:ゆや】を営(いとな)【左ルビ:たてる】み千人能(の)垢(あか)をあらひ 清(きよ)め給(たま)はんと誓(ちか)ひて自(みづか)ら往来(おうらい) 凡下(ぼんか)の旅人(りよじん)貴賤(きせん)【左ルビ:たつとき いやしき】をわかたす流(なが)し さりたまふぞかし古(こ)く母(も)閑(か)たじけ 【右丁】 なきさ麗(れ)ば九百九十九人の数(かづ)も 満(みち)て今壱人にて大 願成就(ぐはんじやうじゆ)に 至(いた)類(る)とき忽然(こつぜん)として壱人の 乞丐人(かたいにん)出来(いでき)た梨(り)総身(そうしん)たゞれ 脳血(のうけつ)ほどばしり臭気(しうき)【左ルビ:くさき】堪(たへ)がたく 多(おふ)くの宮女(きうじよ)鼻(はな)を掩(おほ)ひてかたはら 【左丁】 によるものさらになし后(きさき)是(これ)をも いとひ給(たま)はずいか伝(で)悲願(ひぐはん)を空(むなし)う せんと帝(て)自(みづから)汚穢(けかれ)の旧垢(ふるあか)を流(あらい) 浄(きよ)めたまひけるに乞丐(かたい)怡然(いぜん)と して我(わか)瘡脳(そうのう)痒(かゆく)して堪(たへ)がたし 口にて吸(すい)出したまはらんやと 【右丁】 いゝけるを后(きさき)のぞみにまか勢(せ) こと〴〵く悪脳(あくのう)を吸(す)ひたまはら んとしたもふ時に乞丐(かたい)の身(み) より金色(こんじき)のひかりをはなち 善哉(よきかな)我(われ)は東方(とうほう)阿閦仏(あしゆくぶつ)なりと のたまひて紫雲(しうん)のうちに入り 【左丁】 たまへば后(きさき)もふたゝび光明(こうめう)赫々(かく〳〵) とあらはれけるこそ難有(ありがた)けれ今(いま) に其(その)事蹟(じせき)奈良(なら)の里(さと)に残(のこ)り け類(る)是(これ)洗湯(せんとう)の濫觴(らんしやう)【左ルビ:おこり】にて風呂(ふろ) の上に破風(はふ)を付(つけ)し由来(ゆらい)なりける 【右丁 挿絵あり】 右之 道具(とふぐ)るいは 雨(あめ)ふり休日等には損(そん)じ 候処を直(なお)し造(つくろ)ひを致べし 井戸 綱(つな)之 縄(なは)は平日たやさぬ よふにたくはへ置(おき)折々(おり〳〵) 朝飯(あさめし)まへに一 本(ほん)ッヽ打(うた)せ置(おき)可申 若(もし)是(これ)をおこたれは家業(かきやう)に 手(て)支(つかゆ)る事(こと)有(ある)べし 【左丁】 此(この)湯語教(ゆごけう)は湯女意観(ゆによいくわん)世 音洗湯(おんせんとふ)農(の) 規則(きぞく)堂(た)る釈氏(しやくし)の釜火(かまひ)ばしを 定規(じやうぎ)に比喩(ひゆひ)方便(ほうべん)を湯沢山(ゆたくさん)清水院(せいすいいん) 洗湯寺(せんとふじ)沐浴上人(もくよくしやうにん) ̄え つげて湯屋(ゆや)の 衆生(しゆじやう)だんに如是我聞(によぜがもん)と授(さづか)り給(たま)ふ 誓(ちかひ)の御哥(おんうた)に 【右丁】  火(ひ)と水(みづ)の恵(めぐみ)も深(ふか)き湯屋(ゆや)とせひ   薪(たきゞ)のおかげ頼(たのも)しきか那(な)  平生(へいぜい)の身(み)もちにほしや風呂(ふろ)上(あが)り 斯(かく)湯屋(ゆや)のことを能(よく)近(ちか)く俗(そく)に和(やはら)げて 湯語教(ゆごけう)なれり此書(このしよ)を暗記(そらん)ずれは 自(おのづから)商売(せうばい)の意(こゝろ)に叶(かな)ひ誠(まこと)の道(みち)に 【左丁】 至(いた)るべし故(かるがゆへ)に薪(まき)を割(わ)り脊中(せなか)を ながす片手間(かたてま)にも湯屋(ゆや)たるもの 奴婢(ぬび)【左ルビ:めしつかひ】を使(つか)ふ主人(あるじ)に此書(このしよ)を読(よま)しむ べしと賢人(けんじん)めかして■(つゝれ)【糸+写】しを 覗(のぞき)きが穴(あな)を見(み)すかして褌盥(ふんどしだらい)の 底(そこ)あさき戯書(たはむれがき)をあてがきに 【右丁】 書(かき)し白痴(たわけ)なやつと人の譏(そし)らむ 事を爪(つめ)とる鋏(はさみ)できらりと思ひを かる石(いし)で踉(かゝと)の厚皮(あつかは)をこする 心地(こゝち)してかくばかり嗚呼(あゝ) 湯あがりに満尾(まんひ)の紅(くれない)奈(な)るを 夫(それ)如何(いかん)ぞせむ 【左丁】 湯(ゆ) 語(ご) 教(けう) 《振り仮名:薪高故不_レ焚_二多分_一|まきたかきがゆへにたんとたかず》   《振り仮名:以_レ有_二古木_一薪為_レ貴|ふるきあるをもつてまきたつとしとす》 《振り仮名:株肥故預人不_二引合_一|かぶこひたるがゆへにあづかりにんひきあはづ》 《振り仮名:以有_二【三点は誤】客数多_一為_レ貴|きやくたんとあるをもつてたつとしとす》 湯屋者是一生財(ゆやはこれいつしやうのたから)    身滅則子株主成(みめつしてもすなはちこはかぶぬしとなる) 湯株是万代之財(ゆかぶこればんだいのたから)    《振り仮名:命終而必勿_二【一点は誤】滅事_一|いのちおはつてもかならずめつすることなかれ》 【右丁】 《振り仮名:湯屋不_レ磨無_二光沢_一|ゆやみがゝざればひかりなし》  《振り仮名:無_レ光常客人不_レ入|ひかりなきはつねにきやくじんいらず》 《振り仮名:石垣不_レ磨糠汁穢|いしがきみがゝざればぬかしるでよごれ》  奇麗湯屋常繁昌(きれいなゆやはつねにはんじやうす) 《振り仮名:風呂内湯有_二減事_一|ふろのうちのゆはへることあり》   《振り仮名:井之内水者無_レ減|いのうちのみづはへることなし》 《振り仮名:雖_レ積_二【五点は誤】一日之現金_一|いちにちのげんきんをつむといへども》 《振り仮名:不_レ如_二 【五点は誤】一日之薪前_一|いちにちのたきゝまへにはしかづ》 《振り仮名:冬商売常不_二引合_一|ふゆはしやうばいつねにひきあはづ》   夏之内心掛而(なつのうちにこゝろがけて)《振り仮名:可_レ残|のこすべし》 【左丁】 《振り仮名:釜厚永不_レ損涌遅|かまあつければながくそんぜづわくことおそし》 《振り仮名:釜薄是為_二【三点は誤】財物釜_一|かまうすければこれざいもつのかまとす》 一日薪一本除焚(いちにちにまきいつぽんよけたけば)   三百六拾本虚焚(さんびやくろくじつぽんむだにたく) 《振り仮名:一本不_レ疎助_二数日_一|いつぽんおろそかにせさればすじつをたすく》 況一生数年損乎(いわんやいつしやうすねんのそんをや) 《振り仮名:故客計不_レ余不_レ足|かるがゆへにきやくばかりあまらづたらづ》  《振り仮名:心付而可_レ焚_二釜前_一|こゝろづけてかままへをたくべし》 《振り仮名:召仕譬如_二【三点は誤】手足之_一|めしつかひたとひばてあしのごとし》 《振り仮名:朝夕御客尽_二愛想_一|てうせきおきやくにあいそうをつくせ》 【右丁】 《振り仮名:四大日々逢_二【二点脱】盗賊_一|しだいひゞにとふそくにあへば》 《振り仮名:心神夜々為_二苦労_一|しんじんや〳〵にくろうする》 《振り仮名:透時無_レ怠不_二能番_一|すいたときおこたりなくよくばんをせされば》 《振り仮名:盗而後雖_二【三点は誤】恨悔等_一|ぬすまれてのちうらみくやむといへども》 《振り仮名:猶言訳無_レ在_二所益_一|なをいへわけしよゑきあることなし》  故夏眠催勿番怠(かるがゆへになつはねむりをもやうしてばんをおこたることなし) 《振り仮名:添番台居増_レ眠|そいばんだいにすわればねむりをます》   《振り仮名:込逢中立番勿_レ怠|こみおふなかたちばんおこたることなかれ》 《振り仮名:隣湯屋常不_レ合_レ気|となりのゆやとつねにきがあはづ》   《振り仮名:面向能而心如_二用針_一|おもてむきよくしてこゝろにはりをもちゆるがごとし》 【左丁】 《振り仮名:我他人之取_二徳意_一|われたにんのとくいをとれば》   《振り仮名:他人亦我取_二徳意_一|たにんまたわがとくいをとる》 《振り仮名:是論互不_レ成_二商売_一|これをあらそへばたがひにせうばいにならづ》 《振り仮名:飛_二【三点は誤】夏虫之_一如_レ入_レ火|なつのむしのとんでひにいるがごとし》 《振り仮名:泰平国恩如_二 天地_一|たいへいのこくおんてんちのごとし》   《振り仮名:徳沢恵渡世為_二安堵_一|とくたくのめぐみとせひあんどする》 《振り仮名:株主御影如_二日月_一|かぶぬしのおかげじつげつのごとし》   《振り仮名:手薄如_レ映_二【三点は誤】手厚影_一|てうすにしててあつきかげのうつろふがごとし》 《振り仮名:水之恩者深_レ従_レ海|みづのおんはうみよりふかし》   《振り仮名:上水夏温冬如_レ氷|じやうすいなつはなまぬるくしてふゆはこふりのごとし》 【右丁】 堀井戸夏冷冬温(ほりいどなつはひやゝかにしてふゆはあたゝか) 《振り仮名:深井戸綱早可_二取替_一|ふかきいどのつなははやくとりかいべし》 《振り仮名:薪之徳者高_レ従_レ山|まきのとくはやまよりたかし》   《振り仮名:従_二【三点は誤】本所【一点衍】薪_一徳_二海薪_一|ほんじやうまきよりうみまきとくなり》 《振り仮名:伝放一両人不_レ押|でんぼういちりやうにんおさいべし》   《振り仮名:大勢押終成_二喧嘩_一|おゝぜいおさふればつへにけんくわとなる》 《振り仮名:三宝御捻除_二落銭_一|さんぼうのおひねりおちせんをよける》   《振り仮名:是無銭之為_二埋草_一|これむせんのうめくさにする》 弱哉(よはへかな)弱哉(よはへかな)此(この)商売(しやうばい)  御前之御無理御尤(おまへのごむりはごもつとも) 【左丁】 少湯銭子供引連(わづかなゆせんでこどもひきつれ)    《振り仮名:擬八文湯溢如_レ滝|あてがひのはちもんでゆをあぶることたきのごとし》 《振り仮名:有_二【三点は誤】熱言者_一有_二【三点は誤】温言人_一|あついといふものありぬるいといふひとあり》 《振り仮名:真似_二木魚_一唱_二【レ点は誤】念仏_一|もくぎよのまねをしてねんぶつをとなひ》 《振り仮名:喘涸声呻_二【三点は誤】浄瑠璃_一|しやがれたこへでじやうるりをうなる》【注】  《振り仮名:拌返而成_レ炎腹立|まぜかへされてあつくなつてはらをたつ》 《振り仮名:終■【扌+放】_二小桶_一湯為_二仕舞_一|はてはこおけをほふりゆをしまはせ》  《振り仮名:或風呂中放_二灰墨_一|あるひはふろのなかへはいずみをはなち》 無尽呪軽石盗隠(むじんのまじないにかるいしをぬすみかくす)  《振り仮名:借_二着物_一更以不_レ返|きものをかりてさらにもつてかへさづ》 【注 淪瑠理は誤ヵ】