【表紙 帝国図書館蔵の地紋あり】 奇妙頂礼胎錫杖 【資料整理ラベル】 207 特別 353 【右丁 白紙】 【左丁】 寛政七年【手書きメモ】 【資料整理ラベル】 207 特別 353 【題箋】 奇妙頂礼胎錫杖 一九作 完 肝胆(かんたん)の木(もく)気(き)伸(のび)ん事を欲(ほつ)するものは。本艸(ほんさう)に所謂(いはゆる) 木鬱(もくうつ)の症(しやう)なり。気(き)は木(き)にして。其(その)色(いろ)黄(き)なるをもて 敷初(しきそめ)の蕎麦切(そばきり)に。うどんげの花を咲(さか)せ。初道中(はつだうちう)の酒(さけ)ひた しに浮木(うきゝ)の亀(かめ)の齢(よはひ)をのぶる。延紙(のへがみ)の一筆には。一枝(いつし)を伐の 木性(きしやう)顕(あらは)し遠(とを)く連理(れんり)の末(すへ)を契(ちぎ)る。何ぞ木さしに あらすと謂(いふ)ふべけんや。是(この)故(ゆへ)に木(き)息子(むすこ)あれは木娘(きむすめ)あり。木(ぼく) 訥(とつ)は仁(じん)に近(ちか)しと。其木(そのき)を断(きつ)て此(こゝ)に投出(なげいだ)す事しかり    寛政七乙卯春    十遍舎一九誌 【右頁上段】 天地ひらけて いさなぎいさなみの みことよりはしめて ゐんやうのみち おこなはれ 天照大神 万事を さはいし てこの 国をひらき 給ふその ころまだ ひらきのこせし 一ッの島あり ことの外 大地にて 神さまも 手がまはら ずことに 日本をさる事 御さたまりの とをりうそ 八百里にして 三千せかいの かきねの そとの事 なれば 【左頁上段】 ゑんほうゆへ まづ打すてゝ おき給ひしがそも〳〵 ゐんやうの道は神さま はじめ給ひし事 なれどもおよそ女の 子をはらみてより のちはほとけ たちのかゝ りにて くわいたいのその月より だん〳〵にかはり〳〵に つとめ給ふその ほとけの内でも ふどうめう王は ざかしらにて初月を うけとり給ふやくなれば 太神宮ひそかに ふどうさまのかたへ きたり給ひて かの島の事を はなし給ひいそがしきとて 打すておかんも いかゞなり何とぞ ほとけたちの ほうべんにて いたしかたは あるまひかと そうだんし給ふ 【右頁下段】 〽おなかまの内でも  もんじやせんせい  などがいらるゝ■  どのやうも   しかたがあらふ  ひとへにきこうを   みかけての  おさのみさなどゝ   どうか神さま  だけ思ひなしか   おがみたをしと    いふやうな   せりふに     きこへる  〽こなたへ   まいると   この   ごまの  けふりで   ふすべ    らるゝ     には    あやまる 【左頁下段】 〽ふどうはおつしやる   なくそうが   りけんに      かけて    おせは申      ませふ 〽コレこんがうは   どうしたおさかづき    でももつてきやれ   かんはこつちの     くわゑんでするぞ    【右頁上段】 ふどうさまは 太神宮さまの 御たのみもたし がたくほかの ほとけたちへも はなしいろ〳〵 そうだんして かのしまを ひらく事は いと安けれども さしあたつて 人間の子だねを こしらへる かんじんの ところは 神さまたち ばかり 御ぞんじの 事にて ほとけ たちは いつかう わからぬ 事ゆへ いろ〳〵と くふうし たまひ ふどう さまが 思ひつきにて 【左頁上段】 子だねと なるべき しやくじやうを かのしまへ こと〴〵く うゑつけ にんげんを つくり どりに せんとの 事にて あつはれ でかしがほにて そうだんを きはめ給ふ 〽ヲヤせいしさん  けさからまだ  御目にかゝり   やせん  わつちや   きのふから  ふとうさんの   かなしばりて  このへやに   いつゞけさ 【右頁中段】 〽くわいたい十月をあづかる  ほとけたちのへや〳〵にて  それ〳〵にしやくじやうや   とつこがかねてこしらへてある  その中でもきふんかうゐの   はしにうまるゝしやくじやう    とつこなどには     きんばくか      おしてある 【右頁下段】 〽ヲヤ   みんな  おそろひたの   なんそ    お□らひ   おも■■■でも    あるのかね 【左頁下段】 〽ばんには  ゆめに見   られる   くちがある   がせり    だしの    あんばい       は     いゝか     しらぬ 【右丁上】 女のくわい たいじ たる一月 めを仏書 にはしやく じやうの かたちと いふにち   がひなく二月めには とつこの   かたちとなり 三月め    にはさんこと なり四  月めには五こと成 五月め より人間のかたち となる ふどうさまの 想ひ付 にてこの しまへかへつけたまふ 人間の なゑも その ことくに して 十月め はすのはの やうなはが でるとその 下より生るゝ なりぼさつたちは 田うへのごとく人の なへをこの嶋へうへ付給ふ 神さまのほうでも子だねを こしらへる事はよなべ しごとにする事なればほとけ たちもやぶんにうへ付給ふ 【右丁中】 〽田うへうたの  かわりに御きやうを    となへて     うへつけ       給ふ 【右丁下】 ふどうさまは  はたけ中    を見    まはり    さしづ    して    うへ付    させ     給ふ     うへ      付      も     いち     どき     だ     から    十月    めには    嶋中か   おきやァ   〳〵で   やかまし     からふ 【左丁上】 しかしかうしんのばんには此なへを うへる事をなせかいましめ給ふ 評に曰 〽ゐんやうがつたいして女のはらむ所  此しやくじやうなかほとけいかぐ  して此しやくじやうをこしらへるや  かてんゆかすそのうへ土へうづめて  人間のはへる事あるべきや此へん  とうによつてさくしやとは          いわさぬそ 答て曰 〽ふとうめうわうしんごんひみつの  咒法によつてしやくじやうをこし  らへ給ふ事人間のしかるにあらす  そのうへほとけたちのほうべん  超絶易往(てうせついわう)の仏力にて亜字(あじ)  功徳地(くとくち)の土をこの嶋へとりよせ  我言(かこん)超世(てうせ)の文をとなへてうへつけ  給ふ事なればむりやうじゆの  花実をむすひ帰 命(めう)の人たいを  うけん事うたかひなし  このほかは  みな仏の  ほうべん  むやう  なら  せう事が    ねへ   【右頁上段】 仏たちのうへ付給ひし 人のたねは五つ月めより人間の かたちとなるゆへとびからすの うれひをさけんとせきだいや はちへうへてそれ〳〵に そだて給ふあさはん ちゝのかはりに米を とぎし白水をかけて 子たねこへとし給ふ はくせつかうではぜにか入るゆへの 御けんやくなりきめうてうらい とらがによらいのおてしたちも このしまへ来りてうへかへ たる子共をもちはこび なとしてほとけたちのてつだいをする 〽御ちうげんじやが  ちよつとおたね   ませうあか子の  なへよりだん〳〵と  人の木となるは  きこへたがいつまでも  はちうへでゐては  第一あるく事が  ならずふじゆふな  ものなり  これはいがゝ 答曰 〽人けん三十にして  立といふ事あり 【左頁上段】 立は断なり三十才にして はちうへのねがきれて これよりあゆみならふ也 日本にては二三才のころより あゆみならへとも此しま にては三十才にてやう〳〵と 人に手を引かれて あんよはしやうず ころぶはおへたといつて 立ならふ事也三十より 下にては木もしまらぬ ゆへはちうへをはなれても 一本つかひにはなりがたく それゆへ三十才にて はやほんとうの 人となるしかし はちうへの うちでも あるかれぬと いふ事がない でもなし  たん〴〵   つぎを    見たまへ 【右頁下段】 〽あか子かおきヤァ〳〵となくゆへおたまり  ますそ〳〵と       いつて                 あるく 〽生れる  ときは  何の事は    ねへ  もくら   もちの    やうだ     げな 【左頁下段】 〽たれかあか子のなへを 本うつちやつておいた   大かたてめへであらふイヤサわたくしでござりますと                   はやくしやく                      じやう                        ころ                         エ〳〵 〽おしやらくさまの   たんじやう      〳〵 【右頁上段】 とし月をかさねてはや 三十才のおとこ廿あまた ありてみな〳〵はち うへをはなれほん とうの人となりけれは まづきせうのすぐ なるをゑらみこの 嶋のかしらとなし 子だねをそだて やうを仏たちおしへ 給ひしんだる ものをばそのみ 出生したるはたけへ うづみおけば又 それよりあか子の めがでるつもりに からくりおき 給ひし事なれば だん〳〵と人が はへる也同し はたけへはへたる ものをこれを 地すじといひて かとくをゆづる 事也 〽此のはちうへ  廿五のあかつき  まではずん〳〵と      のびる 【右頁下段】 〽はちうへにしておいたる  子たねの木よりしやく  じやうのめか出て又子の  できる事あり□此■  方などにてはこれを   作れんしといふ  そこて一門を門■ゆと    いつたものさ   〽御きりやうの     御生れ付で      おいゑのねつぎ      ばん〳〵        ぜいで         ごさり          ます 【左頁上段】 人かいといへは 日本にては どろぼうのことく いやしむれども このしまの 人かいは はたけの うへより かいとりて そだて上 せきだいの まゝくびにかけ くわいらいしと いふみにて やうしの木なと をうつてあるく 〽胎卵湿化(たいらんしつけ)の 四生のうち此 しまの人は土の 湿より生るゝゆへ すへて人を木と いひ左右のてを ゑだといふそれゆへ ゆやなとにて ごめんなされませ ゑだがさはり    ますと      いふ 【左頁下段】 〽此嶋の人   老木となり  こしがかゞむと   こんなつえを    ついて      あるく 【左頁中段】 〽やうしの木は    入りませぬかずんと     すなをな木ぶりのよい      やうしの木や〳〵 【左頁下段】 〽やうじの木なら   かんぼくか    あきれらァ     【右頁上段】 せんそよりつたはる せきだいや はちなどふたい〳〵の きりかぶが のこつてあるいへなどへは そのかぶの あるをみこみに やうしの口を ほう〴〵からいつてくるゆへ よくその ねもとを たゞし木がらの よきやうしの木をもらひ いゑのかぶつぎ木にして せいちやうのうへかとくを          ゆづる 〽ひんぼうな  ものは子たねを  やしなふ  事が  なりがたく  まだ  とつこや  さんこの  内に  引ぬいて  ことものみばへは  入りませぬかと  うつてあるく  またわるもの  ともがうしの  ほねや馬の  ほねをひろつて 【左頁上段】  とつこやさんこ  によくにたる  さいわいに  こどもの  なへや  〳〵と  にせものを  あきなふ  事あり  それゆへこの嶋の  いさみ手合が  たいへいらくには  わり  やァ  とこの  馬のほね  かうしの  ほねが  しれね  なとゝいふ  又ねを  たつて  ゑた  はを  からすと  いふ  かたき  やくの  せりふ  も  この  嶋より  出たる  ことば  なり 【右頁下段】 〽びんぼう人は  子たねの  木のまだ  できるか   てきぬ内に  とかくはやく   なべ口     入れ     たがる     やつさ 〽そのお子の   おとしごには    いゝみばへがご     さりますか     おめしなされ      ませぬか 〽つき  木の  むすこ  は竹の   かはの 【左頁下段】  ほう   かふり     を    して     いる 〽おいらが所の  かぶへつぎ  木にした    から    もふ    たの   下のはい   めで   ■めへの    もんた 此かぶも  ほんの  むすこ  かぶに   なつた    のさ 【右頁上段】 こゝにふしきなる事ありこのしまに かぎりて男女かう〴〵のみちはいつかう すかたんのはづなれどもこのごろは そろ〳〵としやれてきてなんの木竹の みではあるまいしなどとわれを わすれてあぢなきになり あいおいの木れんりの ゑたなぞと そろ〳〵 いろ事の 道がはじ まりしは此 さくしやも いつかう しあんの外にてがてん ゆかずそれゆへかむすめの木を もちたるいへの かどくちへは せけんのむすこの 木が■■だ ぢうへいろ〳〵に いろとり ゑがき たるを その おや〳〵が はち うへの まゝ むすめ の木 の家 のまへゝ なをし 【左頁上段】 ておく 事 あり その もやうの さに □□ たる を むす めの 木 の むこ 木に する こ れ を にし さゞ たつるとも そめ木とも いふ木むす こももう こんなに いろどる やうに なつては 大さはきだ 【右頁中段】 〽おめへかたは    すなはらひに    お■〳〵は   こんにやくを  あがるがいゝ   まだつちの   中にこざる      から 【右頁下段】 〽よたかは三十ふり   そで四十しま    だゆへやつ     ばりつね     の通りさ 〽このころは  どこても  ふしきゝが  とんだ   はやる 〽ふしきゝ  てやいは   あまや    どりと    いふ     身     して    はな     し      を    し    ながら    たち    あか    し     て    ゐる 【左頁下段】 〽おいらが  からだは  べちヤァ     ねへ  おゆきの   いたみ    てやいと   いふもん      た 〽もう  なん  とき   だの 【右頁上段】 うつ ろふ ものは よの中の 人の心の 花とよみし 小町がうたは此 嶋の事をや ゑいじけんだん〳〵と しやれにみが いつてきてこゝも ながれの嶋の内と いつしかくるわが できて女しの 木をあきなふ やうになり こまげたからの 思ひつきで くろぬりの せきたいを 二ッにして 両ほうの あしをうへて そのせきたいへ ぜんまい からくりの やうにしかけて おきけふは 中の町いどこそこへ 【左頁上段】 ゆかふと思ふと てうどそこの 門口でとまる やうにぜんまいを しかける さりとはよく したもの也 これより 嶋中いつとうに このとをりに なりわがでに せきだいの せんまいを しかけ ながら あるく ゆへ どこまでも ゆかれる てふほう    な   事也  〽あんな  の    木をねびき   にして    手いけの    花と     ながめたひ 【右頁中段】 あふ木や内  ひき出し   ひの木    きのめ    ふたば 【右頁下段】 〽わつちがぜんまいは  どうかかけんが   ちがつた    やうてヲス     しれつ      てへぞ       ヨウ 〽かふろ    と  いふは  きくの  事て  しん  そう   と  いふは くさの  事   かね 【左頁下段】 〽只今おいらんどう中の所でございはなれものでござり  ますればいつくこさりませうあしもとに御目を                とまられませ  〽此くるわが   できてから  しまちうの  むすこの木が  まぶれてきて  とんたはんじやう  するにした   がひちよき   といふ木が   てきれは    かごる木       と     いふ      木も      てき       る 【右頁上段】 そりつ どろぼう よ〳〵と おつかける やつも ぜんまい ておつ かければ にけるやつも じやり〳〵と せんまいでにげる ゆへ壱尺おつかけるわづか 一二間もあとから おつかけながらつかまへる事も ならずこればつかりからちの あかぬものにて十町も廿丁も おつかけやうからてめへも やすんでにげたがいゝと いふやうになり二三日も つゞひておつかけるとのちには どろぼうと心やすくなつて はなしをしなからつれだつて おつかけどこまでいかふも           しれぬなり 【右頁下段】 〽コリヤ〳〵そんなに にける事はねへ  小便でもしたくは   ねへか 〽こんな事な  かねのせきだい  でもはいたら   よかつた 【右頁】 扨御目通りへかざりおきましたるは此嶋のしうげんのていなりすべて十六七のものを つほみといひ十八九より花といひ廿五より実(ミ)といふか此しまのならはしなり そのつほみのうちを木むしこ木むすめといひ 又よめと  なりむことなれば花よめ花むこ といふしうげんなどには大しまだいを こしらへ  むことよめをしまたいの上へ あげて     さかつきをさせるあいおいの 木の    心なるべし 〽おまへはくまで   わしや九十九まで 〽かうした所 十けんたなへ かざつた  やうだ 【右頁下部】 枝をなさぬ みよなれや あいにあい おいの松こそ めてたかり けれと ぢくちでも なんても  ない   やつさ 【右頁】 このしまの うへ木や などはとんだ かうまんな ものにて 木ぶりを なをすゆへ 日本の いしやの ことく かごに のつて あるき 又よめや むこの せわをする 〽ごしそくも  ちつと  ゑだへ  はりかねを  もちひすは  なりますまい  そしてすいぶん  ねもとへこもても  まいてひへぬやうに    なされたがいゝ 〽せがれめもじせつの  わるひじぶんにうへかへ  ましたからとかく   木せいがないと  申ますひとへに   あなたを     おたのみ      申ます 〽はりがね  とはさみ  はげかい  しやの   やふだ 【左頁】 むこの木がうつり 木といふ木になりて よその女の木へ あしにこゝろを よせる事など あればよめの木が りんきと なりてつのるに したかひ むこの木を のろう ときは 男のからだへ しきに くぎを うちこむ 〽そのくぎを   うたれて   たまるものか  そこつの   木しやァ    ある     めへし 〽せきだいのぜんまいか  のびて候ふみかへ  されてけが  あるなといつ  てもやつはり  きこへぬ  そふた 【右頁上部】 むすこの木もそたてやうが わるひとわがまゝにはびこり まかりくねつてすぐな木 にはならぬゆへこんな木は おやの手にもあまり ついにうつちやれて やうなしこし木と いふ木になり ふゆなとはかん きをしのがんと こもやたはらを かぶつてくらす也 のちには木も くさつてくると からたの内へ くさかできて つるなどが引つり 引はりほね からみといふ わつらひあり まかつたむすこの木は みな此ことく也 かんきを うけて らちも ない物になる 【右頁中段】 〽おやはなくても子はそたつと  のなかにおちこぼれたる子  たねがしせんと  せい人     したる   をかゞしと     いふこのてやいは     はたけのはんなを     をしてよを     わたるとり     おとしたる      たねより       はへたる      ものゆへ     名鳥おとし       ともいふ 【右頁下段】 ■■曰 〽弓矢は  いへに つたへ  ても はね  な□ とりも  射ぬ  たろ 〽あまり  □□  □□  たい  くめ□  できい  われた  すり   はち  なとを  ひろ  つて 【左頁下段】   し   ん   が   て   に   か  はつ  て  いる 【左頁上段】 〽てめへの  かほは  まつさを  でてうとその うりを二つに わらづに  そのまゝだ 〽かうしたところは どうかあふぎ あはせにありさふな        身だ 【左頁下段】 〽あごで  はなをおつているやうに    なつたはとうても    木のおとかへか          しら           ぬ    【右頁上段】 此しまのまつりにはいゑ〳〵の 子ともを花だしまんどに したてゝ出すきん〴〵の はくをもつてせき だいをさいしき だしなど 引くに うたを うたふを 木やりと いふしかし此 たしの子どもが ちうじきをするには はしごをかけて べんとうをつかはす そのさまふくろく じゆがさかやきを するににたり よき木ふりの 子どもの木を もつたものは きやうたいなから はへたまゝでまつりにはだす どうかとつとほめたりと いふみぶりのごとく又 むすめの木などなどは それそうをうに 【左頁上段】 しやつきやうなその 思ひつき中にも あふきをくわへて いかのかうでこし らへたしらさぎの 思ひつきはこの しまでも よつほどきの きいた手合の あんじと   みへたり 【右頁下段】 〽しやつ  きやうな  出た子は  どうりで  しゝつはなだ 【左頁上段】 〽おいらがなりは  七ようのほしが   三つでたゆふだ 【左頁下段】 〽こいつはつまらねへ  もんだあさから  ばんまでものを  いふ事がならねへ あふきなばんくるはせだと  口ではいわねどさう         とつてる 〽よそめからは でんがくでも  くつている やうだろう 〽かしはのとりや 木からおちた さるが一ばんにわたる          げな 三千世界(さんぜんせかい)概之図(おほむねのづ)  并 組上之図(くみあげのづ)者(は)次(つき)に記(しる)す 【右頁上段】 同(おなじ)組上之(くみあげの)図(つ) さくしや一九てばなを ぷんとうみすてゝ曰く さてたゞ今あらはし ましたせかいのづに いつさい人けんはもち ろんばんぶつのこらず だいのある事を申て きかしませふそれ わか国のゑびすは とこのまにおいても いわの上にさし給ひ 大こくはつくゑに がざりても たはらのうへに すはり給ふ 仏にもれんだい あり此しまに かぎらずせかいの人 みなだいあり■たいといひ 武家のだいといひせんぞの だいよりうけつぎかとくに すはるを代かわりといひ 丁人下々もたいありすこし にてもたいかあればだん〳〵 大しんたいともなるものなり 店をかりても店代かなければすはつてはいられず 【左頁上段】 もしふらちものがあつてたいなしとなれは おへないといふやつこさまとなつて二合半の もりきりををせしめるなりとかくだいを うしなはぬがかんじんこゝにかざつてある まるひものはさ三千せかいのくみあげのゑづでごさる せかいは一つのまりのごとしとふるき書にもいふごとく 天は丸く地は角なり此丸きものをせかいぢうが とりまいているやうなものにて日本は此まりの かしらにあたつてあれば唐はよこのほうにて てんちくはまりの下にあたるなり人間は ありのことくみなこれにとりついているやうな ものなれは日本の人はすぐにしてからの人は よこにとりつきているなりよこやさかさまに たつているはづはなけれどもこれみな 目にこそみへねだいかあるゆへさかさま でもよこでもたつてあるくなり そのだいといふはちかくいへは このおき上り小ほうし也 是もあしも手も なけれども中に おもみのたいるある ゆへよこにしても さかさまにしても しきにたつなりたつときも いやしきもそれそうおうの しんだいといふだいがあるゆへ たつているなりとかくこの だいをふみはづさぬやうに 心がけ給ふが人間の第一也    何とがてんか〳〵 【右頁中段】 〽家をたてるにも   どだのといふがかんじん             さ 【右頁下段】 〽とかく人はくわねばた■す   そのくひものをこしらへる   をだいところといふのさ     またよしはら      などへ行にも      あけだいといふ      だいがなければ       いかれぬと        おほしめせ 〽このまりのかたち   しばいのがくやたいこの    ごとくなれば   どんてんきといふは     この事さ 【左頁下段】 〽なるほどねつから   わかりませぬは■ 【上段】 さてこのさうしもいま ■■しになりしところへ □そろしきおにがこつぜんと □らはれ作者一九をむにむざん にとつつかまへていわくなんじ あとかた  きもうけんをはきて 此さくをなせりあまり人をばか下したに あらずやそれ人はゐんやう影気(けいき)の二化に よつて出生せり■■にはじんだいこん のごとくはたけにうへてつくらんや これうそづきのはなはだしき也 よつてなんちがしたをぬく也と くぎぬきをもつてなんの くもなく引ぬいたり もとよりさくしや したを二まひつゝ つかふ男なればけつく もつけのさいわひ にてこれより した一まひになれば うそを【以下判読不能】 な【以下判読不能】 ち【以下判読不能】 【判読不能】 【判読不能】やしかり ■ふゆへくたんの■には きもをつふし■■ おそろしのかみさまやとにげ行 ■をすりさす一九はこゑはり上ヶ おには外〳〵ふくはうち〳〵〳〵 【下段】 〽大三十日のおにも  きさまのやうに   にげてく■■は         いゝ めでたひ   〳〵  ふくは内〳〵〳〵    おにはそと       〳〵 〽おにかへりがけの  てめへもくさ 【見返し部 両丁文字無し】 【裏表紙 帝国図書館蔵の地紋あり。】