【表紙 題箋】 浪華藥種問屋能書張交帳 一 【右丁白紙】 【左丁】 【上段右から】 但馬 ㊥ 湯嶋 【本文】 第一■■【きすヵ】のいたみひぜんのす■■ うちみきりきずさがんかさ【雁瘡】くじき【挫き】 やけどしもやけくさのるい 一さいしゆもつ【腫物】によし 【中心の大文字】 御湯之花薬 【本文続き】 右ごまのあぶらにて付てよし しるけあらばふりかけてもよし 本家 中嶋屋清六 【左項左下】 一本紙之通此度養生場出来有之候間 御出之方は日数十日に全快うけ合申候若又 全快せずば養生中薬代飯料とも一切請 不申日数極めひぜんの根切ふた度さいほつ する事なし○世けんに数多付薬有之と いへども多はあしきにほひなぞ致事有予が 薬之義はあしきにほひ少もなし勿ろんとく 思【息ヵ】なければ内こうのうれひ決してなし 功能は用ひし人にとふべし       日数十日に   養生料      代銀弐拾目 【右端より】 出店養生場 難波新地心斎橋通中筋 山城屋権三郎 ひぜん妙剤      大人分 銀三匁  《割書:密|方》武政膏    小児分 銀一匁五分   加藤周伯伝製 【挿絵内の本文 右上から】 一 夫(それ)ひぜん薬(くすり)数多(あまた) あれども寒剤(かんざい)を以(もつ)て 一旦(いつたん)は全快(せんくわい)すれど瘡毒(さうどく)内(うち)に入(いり) 良(やゝ)もすれば人(ひと)を 損(そこの)ふものすくなからず又 平愈(いゆる)と いゑども其(その)源(ね)をたつ事かたし故(ゆへ)に 暑寒(にき)に再発(さいほつ)の憂(うれひ)あり予 製薬(くすり)は一子(いつし) 相伝(さうでん)稀代(きたい)の良剤(めうやく)にして外(ほか)に 類薬(るいやく)なし ◯予が伝来(でんらい)は 家祖(せんぞ)加藤周伯(かとうしうはく)之(の)代(よ)朝鮮人(てうせんじん) 就来朝(らいてうにつき)旅館(りよくわん)滞留中(たいりうちう)予が 家(いへ)も下宿(げしゆくの)被蒙台命(たいめいをかうふられ) 来舶人(らいはくじん)之(の)内(うち)両三輩(りやうさんにん) ひぜんを困(くるし)む▲ 【挿絵の中央部より、本文の続き】 ▲人あり 典薬司(おゐしや) 薬(くすり)調合(てうがふ)致(いた)し 用(もち)ひ候 処(ところ) 日数(ひかづ)纔(わつか) 之 内(うち)全 平愈(へいゆ)せし 眼前(まこと)の妙薬(めうやく)なり 祖(そ)周伯(しうはく)秘法(ひほふ)を求(もと)め 弘(ひろ)むるところ一人(いちにん)として 全快(ぜんくわい)せずといふ事なし たとへ五年(ごねん)十年(じふねん)難治(なをらざる)の ひぜんにても此(この)薬(くすり)一剤(いちざい)を以(もつて) 骸内(たいない)の瘡毒(さうどく)を発表(はつへう)し 日数(ひかづ)十日に全(まつたく)平愈(へいゆ)すること 請合(うけあい)の妙薬(めうやく)なり此(この)薬(くすり)にて 一旦(いつたん)平愈(へいゆ)せば年々(とし〳〵)催発(さいほつ)することなし 疑(うたがひ)の人(ひと)は 薬(くすり) 用(もち)ひし人(ひと)にたづね とふべし其(その)余(よ)の疾(やま)ひに用(もち)ひて 寸功(すんこう)なしひぜん一通(ひととふ)りの妙薬(めうやく)也 【挿絵左上の文章】 夫(それ)ひぜん瘡(かさ)は人(ひと)を 苦脳(くるし)め其(その)疾(やまひの)源(ね)を たつて人(ひと)の意(こゝろ)を よろこばしむる 故事(いにしへ)武王(ぶわう)の政事(せいじ) に傚(なら)ふて武政膏(ぶせいかう) となづく 【挿絵上段の人名など、右から】 大公望 周武王 殷郊 【挿絵下段の台詞、おおむね右から】 【白い犬】 いつも〳〵ひどい人じやわん〳〵 【右下の女性】 おちやあげ ませう これは はゞ かり さま 【女性からお茶を勧められている男性】 おかげでながいひぜんが なをりましてよろこび        まする 【右上の黒い羽織の女性】 こゝろやすいこと 十日のあいだに ついなを   して しんぜ ま  せう 【黒い羽織の女性と机を挟んで向かい合っている男性】 わたくしはさんねん このかたのひぜんで なんぎ いたし   ます なをり  ませう   かな 【薬を持っている格子模様の着物の少年】 此くすりはさきへ おあかり なされませ 【少年と向かい合っている女性】 これは あり がとふ ござり ます 【戯れている二匹の犬】 くん〳〵 わん〳〵〳〵 【乳を吸っている乳児】 うばちゝ たい〳〵 【授乳している女性】 さあお あがり なされ ませ 【指差している男性】 あのおかたが ついなをしてゞ ござる 【赤ん坊を背負った女性】 ひぜんのついなをるつけくすりは うちかた【注】でござります かへ 【注 他人の家の尊敬語。おたく。】 【道に屈んでいる男性】 これから 七里いなん ならん 大きな みち じや ぞ 【左端】 本家調合所《割書:大坂京橋備前嶋町|一名網嶋》加藤権左衛門製 印 売弘所 江戸浅草並木町 叶屋吉兵衛 売弘所 江戸浅草並木町 叶屋吉兵衛 《割書:仙(せん)|伝(てん)》真孫太郎円(まこたらうゑん) 【冒頭の漢文】 山勢㠑嶷水 色蒼茫遊目 聘埋足以徜 詳知是佳処 生物亦良斎 川一虫治 病四方  東原道人題   【印 白文】東【印 朱文】原 【挿絵の説明】 此 図(づ)斎川の風景(ふうけい) にして昔(むかし)源(みなもと)義経(よしつね) 奥州(おうしう)下向の節こゝ かしこ遊覧(ゆうらん)の余(あま)り此地の 景色(けいしよく)凡(ぼん)ならさるを嘆賞(ほうび) し給ふと也よつて今 これを画(ゑかき)て座上(さしやう)の 覧(みもの)に備(そな)ふるのみ 【本文】 夫(それ)孫太郎円(まこたらうえん)の義は往昔(むかし)一(ひとり)の異人(いじん)有て吾祖(わかそ)に来り客居(とうりふ)すること歳(とし)余(あまり)か其 交情(まじはり) 敦睦(あつく)して兄弟の如くす別(わかれ)に臨(のそ)んて懐中(くわいちう)の一 巻(くわん)を出し吾祖(わかそ)に与(あた)へて曰(いはく)此(この)書(しよ)は仙家薬伝(せんかやくでん)の秘(ひ) 決(けつ)にして世と夭札(わかしに)の不幸を済(すく)ひ老彭(なかいき)を致すの一助(いちじよ)たり卿(なんち)よくこれを宝翫(たからと)すへし我は是 源家(げんけ) の郎従(らうしう) 常陸房(ひたちぼう)なり既(すて)に人間(にんけん)の事を棄(す)て仙術(せんしゆつ)を学(まなは)んとするもの也と言尽(ことつ)きて行去(ゆきさ)りぬ 然(しかる)なに此 巻中(まきもの)に小児(せうに)五疳(こかん)【注①】を主(さき)として虚損労減(きよそんらうげん)凡(すべ)て血気不足(けつきふそく)の人に服養(のま)しむる禁方(きんほう)【注②】あり 家祖こゝにおゐて斎川(さいかわ)出産(しゆつさん)の孫太郎虫を附方(ふけん)【「かけん(加減の意)ヵ】することを発明(はつめい)して遂(つい)にこれを製(せい)し得(ゑ)て諸人(しよにん)に 施(ほとこ)すに其 神験(しるし)誠(まこと)に百発(ひやくはつ)百 中(ちう)の良剤(めいほう)にして他薬(たやく)の及ぶ所にあらすと云故に此度 孫太郎円と名つけ始(はじ)めて海内に公(おゝやけ)にするもの也 扨(さて)この孫太郎虫と云は奥州(おうしう)刈田郡(かつたこをり) 斎川 駅(ゑきば)の川より生(せう)する奇虫(めつらしきむし)にして全(まつた)く他所(たしよ)にあらさるもの也若 他産(たさん)の同物(とうふつ)に似(に)たるもの ありといへとも敢(あへ)て取(とる)に足(た)らす因(よつ)て此虫の出産この一区(ひとところ)に止(とゝ)まれは中々 多(おほ)く求(もとむ)ること能(あた)はす 故に斎川の里人(りじん)に謀(はか)り其(その)真品(しやうひん)を尽々(こと〳〵)く買(か)ふて我家に韞匱(いそう)【熟語としての読みは「ウンキ」 注③】し各の仙方 加減(かけん)するもの也  主治(こうのう) 一 男女(なんによ)ともに十五 歳(さい)以下の諸病(しよひやう)を治(ぢ)すること極(きわ)めて神効(しんこう)あり十五歳以上の人は能(よく)虚労(きよらう)血気 不足の症(せう)凡て内損(ないそん)にかゝる病を治す○第一小児五 疳(かん)驚風(きやうふう)の類(るい)夜啼(よなき) 牀尿(よつはり) 欬嗽(せき) 痰喘(せんそく) 盗汗(ねあせ) 泄(はら) 瀉(くたり)或(あるい)は腹脹(はらはり)腹痛(はらいたみ)或は蛔虫(むし)を吐瀉(はきくた)し虫積(さしこみ)癇症(かんせう)客忤(ものおひき)或は寒熱(かんねつ)往来(わうらい) 脱肛(たつこう)或は羸痩(やせおとろい)咽(のんと) 渇(かわ)き或は口渇き痘瘡(とうそう)麻疹(はしか)起脹(はりはた)しかたき時なと惣(そう)して小児 一切(いつさい)の病に用ゆへし○大人は 第一 労症(らうせう)血虚凡て内損のため心下(しんか)留飲(りういん)盗汗 自汗(じかん)或は心怒(はらたち)怔忡(むなさわき)寒熱往来 欬嗽(せき)痰血(たんけつ) 上衝(のぼせ)眩暈(めまい)腹痛(はらいたみ)倦怠(たいくつ)健忘(ものわすれ)等の諸症に用ゆべし但し産前(さんせん)産後(さんこ)には 必(かならす)用へからす其外 指合(さしあい)なし 一 用法(もちいやう)は大人小児ともに一日に一貼(ひとつゝみ)つゝ白湯(さゆ)にて用小児は乳(ち)汁にてもよし但し十五歳以上は三貼を 二日に用ひてよし其 即功(そくこう)一 廻(まは)りにして一生(いつせう)の病根(やまいね)を芟除(たつ)へし 調合所 奥州仙台国分町 東夷斎製    【印】■齋菅原■燈 売弘所      本家 菅原屋仲右衛門 薬代壱貼に付銀壱匁三分 【注① 五つの疳の病。肝風疳。脾食疳。腎急疳。肺気疳。心驚疳をいう。】 【注② 秘伝の調薬方法】 【注③ ひつ(匱)の中にしまっておく。】 《割書:蘭国|醸方》補(ほ)血(けつ)大(たい)順(じゆん)酒(しゆ) 功能之略 【薬名下の文章】 万病(まんびやう)を治(ぢ)する薬(くすり)にはあらず中風(ちうぶう)血病(けつびやう)を 治(ぢ)する事(こと)第一(だいいち)の功(こう)なり血(ち)の症(しやう)より発(おこ)る 諸病(しよびやう)はこと〴〵く治(ぢ)せずといふ事(こと)なし △大順酒(たいじゆんしゆ)蘭名(らんめう)「ヒニトロピシ【」】といふ 【本文】 一 大順酒(たいじゆんしゆ)は蘭国(らんこく)雅谷貌伍乙志(こやつぷをいつ)の大奇方(だいきはう)にて実(じつ)に聖方霊酒(せいはうれいしゆ)なり其(その)効(こう)こゝに述(のべ)がたし其(その)あらましを左(さ)にしるす 血(ち)を巡(めぐ)らし気(き)を調(とゝなふ)る事(こと)誠(まこと)に玄妙(げんめう)不思議(ふしぎ)なり一切(いつさい)心気(しんき)不足(ふそく)よりおこる病症(びやうしやう)の類(るい)気病(きびやう)の類(るい)一切(いつさい)血(ち)より起(をこ)る病症(びやうしやう)の 類(るい)血(ち)不足(ふそく)血(ち)不順(ふじゆん)の症(しやう)に用て誠(まこと)に神妙(しんめう)不思議(ふしぎ)なり ▲第一之効 中風(ちうぶう)半身(はんしん)不遂(かなはず)口眼(くちめ)過斜(ゆがみ)手足(てあし)不仁(かなはず)骨節(ほねふし)疼痛(いたみ)筋脈(すじ)拘攣(ひきつける)等(とう)の症(しやう)を治(ぢ)す中風(ちうぶう)起(をこつ)て三日の内に用れば 必(かならず)十日にて全快(せんくわい)すべし誠(まこと)に壱人も治(ぢ)せざるはなし日数(ひかず)おくれたれば夫々(それ〳〵)其(その)病(やまひ)の重(をも)きかるきにより日数(ひかず)は記(しる)しがたし大抵(たいてい) 壱剤(いちざい)用ゆべし此酒壱剤は十二日用ゆる也 病(やまひ)重(おも)ければ長(なが)く用ひ軽(かる)ければ長(なが)く用ゆるに及(およ)ばず病(やまひ)の深(ふか)き浅(あさ)きによる也 薬(くすり)の効(こう)病(やまひ)に届(とゞ) くほど用ひたれば千万人(せんまんにん)に壱人も治(ぢ)せざるはなし誠(まこと)に中風(ちうぶう)を治(ぢ)する聖方(せいはう)なり軽(かる)き症(しやう)は後(をく)れたるにても必(かならず)壱剤(いちざい)にて 治(ぢ)すべし此(この)酒(さけ)を用ひて翌日(よくじつ)より必(かならず)其(その)効(こう)みゆる也 極(きわめ)て体(からだ)の内にかわる所(ところ)有(あり)てしるしを覚(をぼ)ゆる也 能(よく)ためし見るべし ▲膈症(かくしやう)・噎症(いつしやう)・翻胃(ほんゐ)を治(ぢ)する事(こと)大(おゝひ)に妙(めう)なり但(たゞ)し治(ぢし)がたき病症(びやうしやう)なるゆへ三剤(さんざい)より五剤(ござい)用ゆべし尤(もつとも)病末(びやうまつ)になりては功(こう)なし 用ゆる事なかれ噎(いつ)并に反胃(ほんい)は膈(かく)同断(どうだん)也○噎(いつ)○反胃(ほんい)○膈(かく)三症(さんしやう)とも能(よく)胸(むね)を啓(ひら)き追々(おひ〳〵)全快(ぜんくわい)に至(いた)るなり△すべて 脾胃(ひゐ)虚弱(きよじやく)の人(ひと)又(また)は心気(しんき)を多(おほ)く遣(つか)ふ人 常(つね)に大順酒(たいじゆんしゆ)を少しづゝ用ればよく脾胃(ひい)を養(やしな)ひ心気不足(しんきふそく)を補(をぎなひ)血(ち)を潤(うるほ)し 精気(せいき)を増(ます)ゆへ不足(ふそく)より起(おこ)る病(やまひ)発(おこ)らず膈(かく)噎(いつ)反胃(ほんい)などの病を患(うれ)ふ事なし腎経(じんけい)虚(きよ)して水火(すいくわ)共(とも)に不足(ふそく)し手足(てあし)ひえ小(せう) 便(べん)通(つう)じ悪(あ)しく大便(だいべん)結(けつし)咳(せき)出(いで)すでに労咳(らうがい)の症(しやう)とならんとする人もあり又(また)はうき病(やまひ)となる事もある人はみな血(ち)の災(わざはひ) なり此(この)大順酒(たいじゆんしゆ)を常(つね)に用ゆれば自然(しぜん)と腎精(じんせい)を増(まし)腑臓(ふざう)をあたゝめ養(やしな)ひ気力(きりよく)盛(さかん)になる事 世(よ)の腎薬(じんやく)の及(をよ)ぶ所(ところ)にあら ず蘭国(らんごく)の製法(せいほう)夫々(それ〳〵)薬(くすり)の油(あぶら)をとり清気(せいき)をとり其(その)真(しん)粋をとり酒(さけ)に製(せい)する也 煎薬(せんやく)は水に煎(せん)じ用るゆへ症(しやう)により てはまわりおそくきく事(こと)遠(とを)し此(この)薬(くすり)は酒(さけ)の力(ちから)にて薬気(やくき)をめぐらすゆへ格別(かくべつ)の奇効(きこう)妙験(めうげん)あるなり ▲婦人(ふじん)一切(いつさい)血症(けつしやう)を治(ぢ)する事(こと)妙(めう)なり血分(けつぶん)より発(おこ)る病(やまひ)なればいかやうなる症(しやう)にても年(とし)久(ひさ)しき難病(なんびやう)にてもかなら ず壱剤(いちざい)にてしるしあり尤(もつとも)病(やまひ)極重(ごくおも)き症(しやう)なれば二三 剤(ざい)用ゆべし○血不足(ちふそく)の人用ひて大によし且(かつ)第(だい)一に血(ち)を養(やしな)ひ 内(うち)をあたゝめ養(やしな)ふものゆへ懐妊(くわいにん)の婦人(ふじん)用ひ□【「て」ヵ】大(おゝひ)に妙(めう)也▲此薬(このくすり)用ゆる内(うち)食禁(しよくきん)あり●竹(たけ)のこ●松茸(まつたけ)●あぶらけ ●かぶら菜(な)●鳥(とり)けだもの●酢(す)●椎茸(しひたけ)●この類(るい)は薬(くすり)の後(のち)半月(はんげつ)もいみてよし           ○価定 壱舛に附 銀五拾目  壱合に附 銀五匁八分 《割書:蘭国|醸方》丁(ちやう)子(じ)酒(しゆ) 功能 価定《割書:壱舛 六匁|壱合 六分》 ▲第(だい)一 内(うち)をあたゝめ冷(ひへ)の病(やまひ)を治(ぢ)す寒疝(かんせん)冷積(れいしやく)ともに治(ぢ)す老人(らうじん)つねに用ひて手足(てあし) 暖(あたゝか)になり能(よく)血(ち)をめぐ らし気(き)を調(とゝの)ふ腹中(ふくちう)冷(ひへ)る人 常(つね)に用ひて大に吉(よし)腹痛(ふくつう)腹瀉(ふくしや)【月+写】に妙(めう)也 婦人(ふじん)一切 血(ち)より発(をこ)る諸病(しよびやう)に大によし五臓(ござう)をあたゝめ 脾胃(ひい)を補(をぎな)ひ気血(きけつ)を巡(めぐ)らすゆへに中風(ちうぶう)に用ひて大功(たいこう)有(あり)実(じつ)に仙家(せんか)の秘方(ひほう)にして平日(つねに)是(これ)を用ゆる人 自然(しぜん)と一切の病根(びやうこん)を抜(ぬき) 延齢長寿(ゑんれいちやうじゆ)せしむること誠(まこと)に稀代(きだい)の良方(りやうはう)也○婦人(ふじん)懐妊(くわいにん)の初月(はじめ)より少(すこ)しづゝ用ゆれば大に元気(げんき)をまし其子(そのこ)丈夫(じやうぶ)にして産(さん)至(いたつ) て安(やす)からしむ○予(よが)家(いゑ)の薬銘酒(やくめいしゆ)は蘭国(らんごく)の醸方(じやうほう)にして他家(たけ)に類(るい)なき製薬(せいやく)なり 《割書:蘭国|醸方》紫(し)蘇(そ)酒(しゆ) 功能 価定《割書:壱舛 五匁|壱合 五分》 ▲第(だい)一 心気(しんき)を養(やしな)ひ逆上(のぼせ)を引下(ひきさげ) 胸(むね)を開(ひら)き食(しよく)を進(すゝ)む一切 気(き)より発(をこ)る諸病(しよびやう)を治(ぢ)す痰(たん)を化(くわ)し咳(せき)を治(をさ)め能(よく)声(こへ)を出す事 妙(めう)なり鬱(うつ) 症(しやう)癇症(かんしやう)に用ひて気(き)を引立(ひきたて)即功(そくこう)を顕(あらは)す此薬酒(このくすりさけ)よく精気(せいき)を補(をぎな)ひ津液(しんゑき)をまし元気(げんき)を壮(さか)んにす故(かるがゆへ)に常(つね)に用ゆる時(とき)は心気(しんき) 丈夫(じやうぶ)になりて記臆(きおく)つよく根気(こんき)を増(ます)事 神(しん)のことし内(うち)を健(すこやか)にする故(ゆへ)に暑毒(しよあたり)寒毒(かんあたり)疫痢(はやりやまひ)等(とう)の一切 外(ほか)より入(い)るの諸悪症(しよあくしやう)を患(うれへ)ず又 平日(つねに)用ゆる人 大(おゝひ)に腎精(じんせい)をまし惣身(そうみ)に光沢(つや)を出(いだ)し肌目(きめ)を能(よく)す長(なが)く用ゆる人 寒中(かんちう)手足(てあし)こゞへず面体(めんてい)血色(けつしよく)の能(よく)なるを見て 其功能(そのこうのう)の速(すみやか)なるを知(し)るべし実(じつ)に此奇功(このきこう)の絶妙(ぜつめう)なる事 今(いま)爰(こゝ)に述(のべ)がたし用ひて知(し)り給ふべし○又 小児(せうに)疳(かん)の病(やまひ)に用ひて大によし   ○右三 種(しゆ)ともに只(たゞ)一 味(み)の製酒(せいしゆ)にあらず其(その)主(つかさ)どる物(もの)をもつて其名(そのな)とす最(もつとも)風味(ふうみ)功能(こうのう)世(よ)の銘酒(めいしゆ)と    異(こと)なるを以(もつ)て知(し)るべし○又 酒(さけ)を好(この)む人も一 度(ど)に 一合より上(うへ)は用ひず少(すこ)しづゝ度(たび)々用ひてよし 《割書:御|免》本家修合所 正誠堂 元弘所《割書:   大阪蜆橋北へ入|諸国取引所》沖田理兵衛【印】          薬料 壱服百廿四文    りびやう薬    《割書:家|伝》超世丸     諸国取次元《割書:大坂中之嶋|大江橋南詰》田中氏    《割書:家|伝》超世丸(ていせいぐはん)《割書:りびやうくすり|いづれも白湯にて用》 一 赤(しやく)白(びやく)痢病(りべう)一切(いつさい)の泄瀉(せつしや)老少(らうせう)男女(なんによ)寒熱(かんねつ)軽(かろき)重(をもき)を問(とは)ず早(はや)く御用ひありて神(しん)の如(ごと)し  或(あるひ)は一日に七八十 度(ど)に及(およ)び百 度(ど)裏急後重(りきうかうぢう)つよくしきりにはら痛(いたみ)手足(てあし)ひへ或は大熱(だいねつ)  にて諸薬(しよやく)応(おう)ぜず九死一生(きうしいつせう)の痢病には半時(はんとき)の内に弐 粒(りう)づゝ三度用ひてよし一度  用ゆればたちまちはらのいたみをとめ裏急後重なく度数(とかず)へりて腹満(はらはり)なし胸(むね)の  痞(つかへ)をさげ寝(ね)入る事ありさめて後大 便(べん)こゝろよく通(つう)じ食気(しよくき)出来(できる)也つゞけて用て猶々(なを〳〵)よし 一 禁口痢(きんこうり)とて初発(はじめ)より熱つよく絶食(ぜつしよく)なる症(せう)ありはやく数粒を用ひてよし 一小児の痢病三四才迄は一粒を三度に用ひ七八才ならは半粒或は一粒痢の軽き重き見合数粒用てよし 一 惣(そう)じて痢病の気ざしあらばはやく御用ひ可被成候たち所に治する事妙也固 油断(ゆだん)すべからず 一 常(つね)の下りはらしぶり腹寒(はらかん)はらしもはらその外かろき腹相(ふくあい)は論(ろん)におよばず 一 産後(さんご)産前(さんぜん)に腹(はら)くだる人に用ひて即功(そくこう)あり破産(はさん)なし兼而(かねて)用てなを〳〵よし 一 老少(らうしやう)男女(なんによ)脾胃(ひゐ)弱(よは)き人または寒夜(さむきよ)老若(らうにやく)小便(せうべん)しげきに常(つね)に用ひてよし 一何病にても痢病とならばはやく御用ひ但し前後半時ばかり他の薬御無用 指合(さしあひ)なしといへども  のみまぜては薬力(やくりき)なし尤此薬御用ひの内 生(なま)なるもの冷(ひへ)なるもの薬喰(くすりぐひ)■【とヵ】ても御 用捨(ようしや)の事 一此薬御用ひの節(せつ)人により少し上気(しやうき)の気味(きみ)ありよろし猶々御用ひの事 右世に超世丸といふもの多(をゝ)し然れ共此方は家伝にして痢を治する事 至(いた)りて妙也此薬を用て 度数(どかず)少(すくな)くなるによつておそるゝ人あり世に多きとめ薬等にはあらず其 発(はつ)する所の病性(びやうせう)に応(をゝ)し発(ほつ) 熱(ねつ)発汗(ほつかん)してとまつて治し又は瀉(くだり)て治するもあり其治方一ならず少も気遣ひなく御用あるべし 自然(しぜん)と内をとゝのへ早(はや)く治する事神妙なり疑(うたがふ)べからず  調合所   防州鹿野市 岩崎伴蔵 【花押?】  諸国取次元《割書: 大坂中之嶋| 大江橋南詰》  田中某 取次所  大阪弘所  《割書:田邊屋橋南詰  帯屋幸助|古川弐丁目   兵庫屋市左衛門》  京都三条高倉下ル   伊勢屋徳兵衛     堺大小路ぬしや町  菓子屋甚兵衛  同 七条油小路西え入 山本弥左衛門     伏見問屋町     木屋武兵衛  江戸山下御門前山下町 出雲屋藤兵衛     兵庫島之上町    今治屋長兵衛  大津川口       舛屋市右衛門     長州赤間関細江   伊予屋久太郎 右取次所は数軒に付別紙口上書に国分して記之売人は出し不申候 【上段】 ウルユス《割書:功能|之略》 痰留飲積気之症左に記 ▲ぜんそくしつたん▲らうがいかん しやうやみ▲はれやまひちやうまん ▲ひまんしびれちうぶ▲かくしやう きしゆ▲ちのみちのしやくき▲りん びやうせうかち▲たんのはれもの ▲のんどいたみむねいたみ▲むなさき つかへまたはたなをかきたるやうに おぼえ▲こはらちからなくむなさき はり▲はらおさゆればごぼ〳〵となり ▲はらにかたまりあり▲はらなりはら はりからゑづき▲むなさきへさしこみ いたみ▲しよくすればつかへいたみ ▲せなかのほねゆがみだるくいたみ ▲くびかたかいなこりいたみ▲けんぺき よりはらせなか七九のあたりに こりいたみ▲こし手あしいたみ又は ひきつり▲ふくちうのきみあしく ▲大べんけつし又は五六日めにくだり ▲小べんすくなくにごり▲酒に二日 ゑひするしやう▲つねにときやくし ▲むねやけむねわるく又はなまつばを はききみづいで▲しよくうけあしく ▲しよくもつおちつかず▲ちかがつへ 【近餓ゑ】 むらしよくし▲こしよりしもひや〳〵と 水におぼえ又はたゞをり〳〵ねついでる しやう▲かほいろあしくいきだわしく 【息だはし=息切れがする。】 ▲づつうのぼせたちぐらみ▲かほ おもくよねられず▲目かすみはな かはきみゝなり▲はぐきよりうみち出 ▲したあれくちびるやぶれ▲手あし だるくねることをこのみ▲むねふさぎ どうきをどり▲きむすぼれこんきなく ▲たび〳〵あくび出きぶしやうになり ▲きおもくこゑかれ▲のんどかゆく又は びろ〳〵したるものあるやうにおぼえ 右之症皆痰留飲積気也【黒地囲みに白抜き文字】 【下段本文】 △抑(そも〳〵)此(この)ウルユス(うるゆす)の儀(ぎ)は阿蘭陀国(おらんだこく)回斯篤児(へしすとる)の一大(いちだい)奇方(きはう)我(わが)朝(てう)に渡(わた)りし砌(みぎり)其(その)蘭書(らんしよ)を見開(みひらき)此(この)方(はう)を 授(さづか)る然(しかる)に此(この)方(はう)痰(たん)より発(おこ)る諸病(しよびやう)を治(ぢ)し留飲(りういん)をくだし積気(しやくき)を治(をさ)め其(その)重(おも)き病者(びやうじや)を救(すくひ)し事(こと)爰(こゝ)に述(のぶ)るに 遑(いとま)あらず然(しかり)といへども万病(まんびやう)を治(ぢ)するといふ方(はう)にあらず只(たゞ)痰(たん)留飲(りういん)積気(しやくき)の諸症(しよしやう)を治(ぢ)する大奇薬(だいきやく)なり 其(その)病根(びやうこん)軽(かる)き重(おも)き年(とし)久(ひさ)しき症(しやう)夫々(それ〳〵)に随(したが)ひ此(この)ウルユスを服用(ふくよう)する時(とき)は其(その)功能(こうのう)速(すみやか)なる事(こと)雪霜(ゆきしも)に 沸湯(にへゆ)を掛(かけ)るが如(ごと)く其(その)験(しるし)其(その)日(ひ)其(その)夜(よ)に著(あらは)す事(こと)顕然(げんぜん)たり続(つゞい)て服(ふく)し益(ます〳〵)全快(ぜんくわい)必定(ひつぢやう)せり 【縦線あり】 △夫(それ)人(ひと)と生(うまれ)て痰(たん)なき者(もの)はなし古書(こしよに)曰(いはく)人身之痰(じんしんのたんは)如長流水(ちやうりうのみづのごとく)一度(ひとたび)滞(とゞこふれば)百病(ひやくびやう)因生矣(よつてしやうず)宜哉(むべなるかな)されば 痰(たん)は病(やまひ)の根元(こんげん)なるべし一度(ひとたび)滞(とゞこふ)れば種々(しゆ〴〵)の病(やまひ)と変(へん)じ災(わざはひ)を作事(なすこと)顕然(げんぜん)たり又(また)痰症留飲(たんしやうりういん)を病人(やむひと)かならず 短命(たんめい)也(なり)といへり又(また)痰飲(たんいん)ある人(ひと)は卒中風(そつちうぶう)麻痺病(しびれやまひ)俄(にわか)に発(おこり)或(あるひ)は頓死(とんし)する事(こと)ありと昔(むかし)より医書(いしよ)にも深(ふか)く 論(ろん)ぜり是等皆(これらみな)痰飲(たんいん)の破壊(やぶれ)なり殊更(ことさら)当今(たうせい)の人(ひと)多(おほ)く心労(しんらう)を過(すご)し体(からだ)を不遣(つかはず)して飲食(いんしよく)に耽(ふけり)故(かるがゆゑ)に 痰留飲(たんりういん)積気(しやくき)の症(しやう)甚多(はなはだおほ)し深(ふか)く考(かんがへ)心得置(こゝろえおく)べし依(よつ)て痰留飲(たんりういん)積気(しやくき)の症(しやう)を示(しめ)し上(うへ)の条(でう)に記(しるす) 【縦線あり】 △上(うへ)の条(でう)に著(あらは)す病症(びやうしやう)いづれも痰留飲(たんりういん)積気(しやくき)より発(おこ)る所(ところ)の病(やまひ)也(なり)其内(そのうち)軽(かる)き症(しやう)と侮(あなど)り捨置(すておく)時(とき)は 漸々(ぜん〴〵)病(やまひ)深入(ふかいり)し後(のち)には破壊(やぶれ)来(きた)りて重(おも)き病(やまひ)を生(しやう)じ大事(だいじ)に及(およぶ)事(こと)あり総(すべ)て痰留飲(たんりういん)積気(しやくき)の症(しやう)は年(とし)久(ひさ)しく 催(もよふ)して発(おこる)所(ところ)の病(やまひ)なれば上(うへ)の条(でう)に著(あらは)す病症(びやうしやう)少(すこ)しにてもある人(ひと)は深入(ふかいり)せぬ内(うち)はやく此(この)ウルユスを 用(もち)ゆる時(とき)は病(やまひ)の根元(こんげん)より導(みちび)き痰(たん)は元(もと)の道(みち)に順環(めぐり)来(き)て発(おこ)る所(ところ)の病(やまひ)下部(げぶ)に下(くだ)り心下(しんか)快(こゝろよ)く捌(さばけ)て痰(たん)は 大便(だいべん)にとり留飲(りういん)は小便(せうべん)にとり病(やまひ)去行(さりゆく)事(こと)眼前(がんぜん)見(み)え猶(なを)胸腹(むねはら)に知(し)る腹中(ふくちう)の気味(きみ)試(こゝろ)むべし 【縦線あり】 △痰留飲(たんりういん)積気(しやくき)ある人(ひと)はのぼせ強物也(つよきものなり)又(また)は諸病(しよびやう)区(まち〳〵)に発(はつ)し上(うへ)の条(でう)に著(あらは)す病症(びやうしやう)折々(をり〳〵)何処(どこ)となく 煩(わづら)ふもの也(なり)此(この)ウルユスを多年(たねん)貯(たくはへ)服(ふく)する時(とき)は二便(にべん)快(こゝろよ)く捌(さば)け諸熱(しよねつ)去行(さりゆき)逆上(のぼせ)を引(ひき)さげ腹中(ふくちう)を快(こゝろよ)く 調(とゝの)へ其印(そのしるし)胸腹(むねはら)を空(すか)し飲食(いんしよく)をすゝめ全(まつたく)諸病(しよびやう)生(しやう)ぜず痰留飲(たんりういん)積気(しやくき)を病事(やむこと)なく無病(むびやう)ならしむ 酒呑(さけのみ)の輩(ともがら)は多(おほ)く留飲(りういん)を生(しやう)じ命(いのち)縮(ちゞま)るに至(いたる)此(この)ウルユスを酒(さけ)の前後(ぜんご)に用(もち)ゆる時(とき)は気血(きけつ)順廻(じゆんくわい)し酒(さけ)も 自然(しぜん)と薬(くすり)と成(なり)諸病(しよびやう)生(しやう)ぜず留飲(りういん)の滞(とゞこふり)なし益(ます〳〵)壮(さかん)にして命(いのち)長(なが)し其印(そのしるし)二日酔(ふつかゑひ)する事(こと)なし 【縦線あり】 △婦人(ふじん)血(ち)の道(みち)の痰積(たんしやく)水気(すいき)滞(とゞこふり)の浮病(うきやまひ)一夜(いちや)の中(うち)に気血(きけつ)を環(めぐら)し滞(とゞこふり)両便(りやうべん)に下(くだ)る小児(せうに)の痰咳(たんせき)は勿論(もちろん) 第一(だいいち)丹毒(くさ)胎毒(たいどく)を下(くだ)す事(こと)不思議(ふしぎ)の功(こう)あり音曲(おんぎよく)を発声(はつせい)する人(ひと)用(もちひ)て其声(そのこゑ)清(きよ)く爽(さはやか)なる事(こと)甚妙(しんめう)也(なり) △右(みぎ)五(ご)ヶ(か)条(でう)に述(のぶ)るが如(ごと)くいづれも痰留飲(たんりういん)積気(しやくき)より発(おこ)る所(ところ)の病症(びやうしやう)なれば此(この)ウルユスを服用(ふくよう)して 速功(そくこう)を顕(あらは)す事(こと)蘭国(らんこく)希(き)【ママ】代(たい)の奇方(きはう)なり尤(もつとも)重(おも)きに至(いたつ)ては用(もち)ひやう第一(だいいち)なり依(よつ)て病(やまひ)の浅(あさ)き深(ふか)きに 応(おう)じ用(もち)ひやう彼国(かのくに)の伝授(つたへ)あり委(くはし)くは中包紙(なかつゝみがみ)に記(しる)し置(お)く篤(とく)と心得(こゝろえ)用(もち)ゆべし 【上部】 御  製薬所 免 【中部】 根元 長崎 健寿堂鑑製【印 健寿】 本店 大阪 《割書:中之島越中橋》肥後屋丈右衛門【印 定賢】 【下部】 江戸出店《割書:大伝馬町|三丁目》 大黒屋儀助【印 常▢】 京都出店《割書:烏丸通|六角下 ̄ル》 蚊帳屋久兵衛【印 蚊屋?】 尾張出店《割書:名古屋本町|拾弐町目》長岡屋弥七【印 長彌】 【左欄外 右下】 諸国出店 同取次所 別紙 ̄ニ記ス 【左欄外 中央】 【印 回斯篤兒?】 VLOYM VAN MITTR たんりういんしやくきの薬 拾五粒入  ウルユス       【印 健寿堂】 阿蘭陀国回斯篤児之奇方  賈銀一匁 【上右方 貼り紙】  第一(たいゝち)根気(こんき)を強(つよ)くし腎精(じんせい)を  益(まし)諸虚(しよきよ)百損(ひやくそん)を補(をぎな)ふ良薬(りやうやく) 《割書:仙|伝》○人参(にんじん)満寿円(まんじゆゑん)    大阪道修町三丁目 御免本家日野屋卯之松謹製 【本文枠】 〇/人参(にんしん)満寿円(まんしゆゑん)主能(しゆのう)《割書:并(ならびに)|》七之妙(なゝつのめう) 夫(それ)人(ひと)は未病(みびやう)を治(ぢ)する事(こと)養生(やうじやう)の第一(だいいち)にして聖人(せいじん)のふかく をしゆる処也/此(この)満寿円(まんじゆゑん)は預(あらかじ)め諸病(しよびやう)をふせぎ真元(しんげん)を堅(かた)め 身体(しんたい)をとゝのへすくやかにするの大(だい)妙方(めうはう)にして服用(ふくよう)するときは かならず七(なゝ)ッのしるしをあらはす事/妙(みう)なり  第(だい)一/眼耳(がんに)をあきらかにし  第二/気分(きぶん)をおさめ根気(こんき)をつよくし物(もの)に退屈(たいくつ)せす  第三/胸(むね)をすかし腹中(ふくちう)の動気(どうき)をしづめ  第四/食物(しよくもつ)こなれやすふして飲食(いんしよく)をすゝむ  第五/二便(にべん)滞(とゞこふ)る事(こと)なく常(つね)に倍(ばい)して快(こゝろよ)く通(つう)ず  第六/手足(てあし)のめぐりを盛(さかん)にし長座(てうざ)すといへどもあかず    遠行(とうあるき)しても草臥(くたびれ)れず  第七/腎精(じんせい)をまし陽事(やうじ)を起(おこ)し仮令(たとへ)虚弱(きよじやく)の人(ひと)    六十をすぐといへども子(こ)あらしむ 右七つの妙(めう)此(この)薬(くすり)を用(もち)ゆる時(とき)は速(すみやか)に其(その)しるしあり預(あらかじ)め五臓(ござう)の労(らう) 虚(きよ)を補養(ほやう)し諸(もろ〳〵)の損減(そんげん)を調治(てうぢ)して飲食(いんしよく)色欲(しきよく)の傷(いたみ)を受(うけ)ず 温疫(はやりやまひ)風邪(ふうじや)の気(き)に感(かん)ぜず男女(なんによ)老少(ろうせう)常(つね)に養生(ようじやう)のために用(もち)ひ て其(その)功(こう)神(しん)のごとし諸病(しよびやう)薬(くすり)のしるしなきもの此(この)薬(くすり)を用ゆれば必(かならず) 二/廻(まは) ̄リ三廻 ̄リにして妙(めう)をあらはす事/秘術(ひじゆつ)の効験(こうげん)なり常(つね)に用(もち)ひ て無病(むびやう)壮健(そうけん)ならしめ延年(ゑんねん)長寿(てうじゆ)せしむる霊円(れいえん)也▲諸薬(しよやく)食物(しよくもの)差合(さしあひ)なし   ○用(もち)ひやう掛目(かけめ)弐匁ッヽ食前(しよくぜん)にさゆにて用ゆべし           原田梅檀秘方【角印 梅檀】        大阪道修町三丁目 御免本家調合所   日野屋卯之松製    開運(かいうん)長久(てうきう)天寿(てんじゆ)を保(たもつ)事/奇々(きゝ)たるを以て    御(ご)祈祷(きたう)の御/煉薬(ねりやく)なりと世(よ)に挙(こぞつ)て仰之(これをあふぐ)        【本文枠外 左下】七 【左上片枠】  むねいたみづつうの妙薬 《割書:心痛胸痛|積痛妙薬》涼心円(りやうしんゑん) 《割書:二■|》効能(こうのう) 【左下片枠の外上】《割書:二■|》 【左下片枠】 《割書:仙|伝》○人参(にんじん)満寿円(まんじゆゑん)《割書:此(この)薬(くすり)をふくして七(なゝ)ッ|の妙(めう)を顕(あらわ)す《割書:并》用(もち)ひ|やう共(とも)包紙(つゝみがみ)にしるす》 此(この)人参(にんじん)満寿円(まんじゆゑん)は《割書:予(よ)》が先祖(せんぞ)より一子(いつし)相伝(そうでん)の良剤(りやうさい) にして奇品(きひん)良種(りやうしゆ)の薬(くすり)を撰(ゑら)み四季(しき)三旬(???ゆ?)【右ルビ さんじゆんヵ】の加減(かげん)を以 金粒丸《割書:よろづによし|さしあひなし》 第一しよくだゝりむねのつかへしやゝむしはらのいたみせんきす向ときやゝ くわくらんかしらのいたみこしのいたみ氣のつかへニ而ゑひ大人小児ともに よし〇つねのやうじやうにはさゆにて一度に一りうづゝわづらひにはしやうが わさびおろしにておろしきぬぎれにつゝみあつゆのうちにしぼり入かきたて のみしるに仕一りうづゝおもきわつらひには二りうつゝ大人俄(にはか)におもきしよくたり 大むしのいたみには一度に二りうつゝ二三度もつゞけて可用妙あり魚にゑい