【表題】 《割書:大地震|大津波》 安達原(あだちがはら)三段目 抜文句 【三段目という三文字横書き】 【最上段右から】 年寄(としよつ)たからだは いつ何時の かうなり はてた身の上 一度におどろき 轉(まろ)びおり垣(かき)押破(をしやふ)り 跡の詮(せん)義は某(それがし)が よきやうに ゆんでめでへ はつたとけとばし 天眼通(てんがんつう)は 得ざれども はしらんと すれども 皮(かは)もやぶれし 三味せんの 濱(はま)ゆふが とびたつばかり 隙(ひま)入ほど 為にならぬ 嘆きは理(こと)はり 何かに付て 爰(こゝ)迠くるは きたれど 【二段目右から】 丸太(まるた)で もたす古家(ふるいへ) 穴堀(あなほつ)て埋(うづん)で ゐる瀬戸物や ろうじから 空地(くうち)へ逃出る人 内にのこる 番頭 川内へ押込(をしこん)で 来(き)た大舩 いつの何時にゆ ると知た魚(うほ)する人 途中(とちう)で地しんに あふた人 さんざい中へ ゆさ〳〵 鳥羽(とば)浦 大つなみ 工(く)手間 増(ます) 舩大工 芝(しば)居茶や ちり〴〵に にげた人 【三段目右から】 はつとおどろき またばつたり テモ扨も扨も〳〵 おもひがけない 是はまた あんまりきつい 今思い知り おつたか わが身ながら あいそのついた 聞て心も こゝろならず 追立られ かしこの橋では 八幡殿の 北の方 おまへに問たら しれるであろ われ〳〵が 大望(たいもう)の妨(さまた)げ かきがねに錠(ぢやう) しつかとおろし 縄(なわ)引切て逃(にげ)出ん と存ぜし所 【四段目右から】 津なみと聞て 三手打する人 座敷へ舩の みよし入られたの 十一月五日の 夕かた 爪(つめ)の長い 家主 釣臺(つりだひ)で逃(にが)して もらふ病人 いせから奉公(ほうこ)に 来(き)てゐる人 津波に 出合た茶舟 しづかに 有た都【?】 江戸から 戻つて来た人 京の 顔見せ 家内連て在(ざい) 所へ逃る人 つなみの 咄(はなし)する舩頭(せんどう)