【表題】 振出(ふりだ)し鯰薬(なまづぐすり)《割書:價 一ゆり  一百里|同 散(さん)ざい 斗千万両》 大瓢堂製 【本文 右上】 一 抑(そも〳〵)此(この)鯰薬(なまづぐすり)の灵薬(れいやく)は鰻(うなぎ)ぐすりの法(ほふ)に倣(なら)はず瓢(ひやう)たん   薬(ぐすり)の功能(こうのう)とて変(かは)り鹿嶋大明神(かしまだいみやうじん)の御夢想(ごむそう)にして   一子相傳(いつしそうでん)の妙済(めうざい)也|第一時候(だいゝちじかう)の不順(ふじゆん)を治(ぢ)し第二(だいに)   世上(せじやう)の景気(けいき)を直(なほ)す尤(もつとも)薬勢(やくせひ)甚(はなはた)しきに依(よつ)て   大(おほ)ひに動(どう)ずる事(こと)あり然共(しかれとも)其動(そのどう)ずること   有(ある)が故(ゆゑ)に是迠(これまで)年来蔵中(ねんらいぞうちう)に 凝(こり)   集(あつま)り  たる 【本文 左上】 金(きん) 銀(ぎん)の支(つか)へを 下(くだ)し世間(せけん)の 融通(ゆづう)を付廻(つけめぐ)り能(よく)なるに 随(したがつ)て何(いつ)なる冷生(ひえしやう)なる 者(もの)と言共(いへども)追々(おひ〳〵)腹中(ふくちう)に 暖(あたゝか)みを生(しやう)じ貧病(ひんびやう)を愈(いや)す事(こと)震(しん)のごとし 其功験(そのこうけん)の著(いちゞる)しき用(もち)ひてためすべし 【本文 右下】 一|金銀(きんぎん)のめぐりを能(よく)し 一|世上(せじやう)を賑(にぎは)すによし 一|怠(おこた)りをいましむるによし 一|奢(おご)りを止(とゞむ)るによし 禁物(きんもつ) 一|美食(びしよく) 一|美服(びふく) 一|居宅(きよたく)を餝(かざ)る又(また)は 大酒(たいしゆ)をいむ 【本文 左下】    用ひやう 十月二日 夜(よ)四(よ)つ時(どき)一たんに振出(ふりいだ)し猶(なほ)そのふり 残(のこ)りを度々(たびたび)に振出(ふりいだ)し用(もち)ゆべし前(まへ)に記(しる)す所(ところ)の 禁物(きんもつ)を能々(よく〳〵)慎(つゝし)まざれば病(やま)ひ元(もと)にかへる恐(おそ)るべし 【絵左下せりふ】 〽さア〳〵ひやうばんの なまづぐすりじや人形(にんぎよ) ほしくばくすりを かはんせこれは ひやうばん きめう〳〵