今明治廿四年十月廿八日 暁(あか)□(つき)【扁があるが天では?】 午前六時二十分の地震(ししん)は別(わけ) て岐阜(ぎふ)名古屋(なこや)大垣(おほがき)地方(ちほう)は 劇烈(げきれつ)なる地震(ししん)にて震動(しんどふ) はけしく地(ち)さけ家(いへ)倒(たおれ) れ死人(しにん) 何(なん)数(まん)人(にん)なるをしらべ 兼(かね)る程(ほど)にて且(かつ)出火(しつか)有(あ)り 水災(すいさい)をこふむる有(あり)て実(じつ)に 前代(せんだい)未聞(みもん)の事なりける 先(まづ)家(いへ)倒(たを)れ半身(はんしん)家(いへ)にひ しがれ出ることならず其(その)傍(かたはら) より火(ひ)うつりて生(いき)ながら 焼(や)け死(し)したり又は地(ぢ)さげ て半身(はんしん)地(ち)にうづもりて死(しし)た るなりて不便(ふびん)といふもおろ かなり進行(しんこう)の汽車(きしや)転動(てんどう) 常な【ら脱カ】ず乗客(でうきやく)ふしんに思ふ 折(おり)進行(しんこふ)をとゝむるや否(いな)や 前後(せんこ)の山 崩(くづ)れて進退(しんたい)する 能(あた)はず乗客(ぜうきやく)終日(しうじつ)車中(しやちう)に【?】居(い) て食(しよく)を求(もとむ)る事(こと)叶(かな)わず各(めい) 各(めい)下車(げしや)して独歩(どつぽ)して 行(ゆく)の不便(ふびん)にあひたりける 猶(なを)近県(きんけん)近江(おふみ)方(ちほう)にもつぶれ 家(や)なりける其(その)実況(じつけう)をう つしてこゝにしるす