東□□□□覧 □【東都勝景一覧 下】 Toto  meicho itchiran T.II 【貼紙】 JAPONAIS 633 2 【下部手書き】 Don 7605. 183 湯島(ゆしま)天満宮     座巳登々丸 きのふまで  つゞきし雨(う)ごの   みはらしは 愛宕(あたご)にまけぬ  ゆしま天神     苫家明風 坂の名に男女を  わくるとも 現金湯嶌人の     いりごみ 【右丁】 不忍(しのはず)池   末広庵     長清 早起(はやおき)の  自慢(じまん)心に   花みれば いつしか  おきし蓮の    しら露   涼窓亭裏風 弁天のやうな 娘(むすめ)のはすはかも 人目忍ふか岡   よりぞみ見る 【左丁】   無能庵     山猿 ひちりこの  中ふみ込て   とる蓮の 池は上野の  山の足もと   桜川亭近柎? 咲はすの  花は君子と  ほむるとも 徳にたとふる  風はいとへり 【右丁】 新吉原    八朔   機音亭 足跡の  なきこそよけれ  八朔の 小袖の雪に  まぶの通路(かよひぢ)   甘露斎    道遠 八朔に内は  灯籠の  ほとほりが さめねと またもいさ  ゆき見かた 【左丁】   藤棚    長房 帷子(かたびら)の  越後は   きのふ  けふは雪 人ふり袖や  さとの八朔   門前市成 ふりつもる  雪の小袖の   道中は  ひたひに富士       も   見ゆる     傾城(けいせい) 【右丁】  芝神明   万歳逢義 此 宮居(みやゐ)鮨(すし)の  おしあふ参詣(さんけい)に   つけこんてうる  生姜(しやうが)あき人   気面堂行成 あま口な   ことではゆかず  はしやうがの  からきめをする    市の人こみ 【左丁】   善亭    実成 商人は  夫婦の   やうに  むつましく 火打のはかね  土 生姜(せうが)売   玉葉庵広道 神明の市も  秋とてたつた山 なかばもみぢの  葉生姜の色 【右丁】 深川  八幡祭礼   文章亭 御祭(みまつり)に芸者(けいしや)の  供もやとはれて  さんせん箱を   かつぐ深川   紀於佐丸 仲町を  わたる家台(やたい)の   たいこもち けふ武蔵野の  つき出しもあり 【左丁】   目利    面人 八まんの きをん はやしの 鼓(つゞみ)ほど 宮居に  鳩(はと)も たゝつ  ぽう〳〵   一睡舎夢成 富が岡神の  御輿(みこし)のそのうへに 月さえ渡る秋の     夜すがら 【右丁】   目黒    三曲庵音成 尻(しり)からはおひ  まくらるゝ   いそがしさ あめやもけふの     廿八日       鴨浮丸 ちりかゝる瀧の   きりやのあめならん  見世をひらくも      からかさの下 【左丁】   橘鈴成 咲つゞく  秋は目黒に  つき立の 庭のもち花 野路の草花  田原常則 此瀧は  えぞの錦の   竜(たつ)の口 五爪(ごつめ)と  みゆる秋の   もみちは 【右丁】  堀之内(ほりのうち)  雑司谷(ぞふしがや)    会式詣(ゑしきまうて)   六蔵亭 御会式の さくらは和州(わしう) よし野紙 朝(あさ)な〳〵の くもつにもさす   小川清志 雑司谷   脚半(きやはん)腰帯(こしおび)    むすびあけ 妻(つま)は乳(ち)のたる   願(ぐわん)ほどき哉 【左丁】    雪下亭      呉明 法の場  かさるや   菊のつくり花 祖師におわたを  着せ申す日は   楊口亭彳 さふしかや  みちの   おち葉の    風車 これも会式の  土産とも     なれ 【右丁】   愛宕(あたこ)山    手脚延人 登りては  うへ見ぬ鷲よ   あたこやま 木の葉猿をも   風そつれ行   桂花影 山のはな高き  おたきのこからしに このは天狗の   飛おつる見ゆ 【左丁】   百番亭外也 あたご山  落葉を風の   手になげて 土器(かはらけ)町(まち)へ  ひら〳〵とちる   桂楼舎風 愛宕山  こだちしなひて    額(がく)にある  小太刀落せし   風むてき流(りう) 【右丁】  境町(さかひてう)   松梅亭広丸 はま弓の  二丁のやなみ   賑(にぎ)はしく 弦(つる)をも  はると祝ふ    顔見世   高陽亭丸寐 一陽(いちやう)となりては  水もぬるむらんの なまづ坊主(ばうず)の   出るかほみせ 【左丁】   木白雪 盃の大入  うけて   見物を ひとのみに  するえひの   㒵見世   一声舎喜丸 顔見せは  鳥居が   絵かく  役者附 出世もみやる  稲荷町まて 神田明神   夏引糸人 明神の影に  そひてや髪置も なゝつはかりに    見ゆる大から   巻上次女 しやうさまの  祝中華の    芥子坊主 いまた言葉に  つうしまみいる   平方庵早樹 柚味噌(ゆづみそ)の   取手(とつて)ほどなる     髪置の わんぱくさまに   口もすくなる    貢庵 利口(りこう)ぞと  おもふ   三つ子の  たましひを 祝ひてあげた   百の御 初穂(はつほ)  浅草年市(あさくさとしのいち)   真砂庵 ものゝ具(ぐ)も   市の直段の     やす国や  桶(をけ)の兜(かぶと)に   すりこ木の       太刀(たち)   千種庵 裏白(うらしろ)の出来も  ことしはうすば       にて 浅草市の  きれものと      なる   浅草庵 あぶりこの  網(あみ)から神の   宮(みや)戸川  直段(ねたん)にかゝる   観(くわん)音の市 画工   北斎辰政 彫工   安藤円紫 寬政十二《割書:庚| 申》正月開版    御江戸本町筋北《割書:江》八丁目通油町  書林     蔦屋重三郎板 大津丁   五味氏 【裏表紙】