嘉永七寅ノ六月十四日      大地震に付て 此度大阪の万民近国に大 変(へん) ありしかども無難(ふなん)に有し事の うれしさのあまりにて 天下 泰平(たいへい)五穀成就(ごこくじやうじゆ)家業(かぎやう)長久を よろこび日夜 異形(ゐぎやう)のふうていにて 諸社(しよしや)え参詣(さんけい)する事引きもきらず  こゝにふしぎの珍事(ちんじ)あり摂州   西成郡 御影(みかげ)近辺(ほとり)山 崩(くづ)れ    岩(いわ)の間より霊水(れいすい)わきいだし     去年(きよねん)の日でりにこりたる百姓     田畑(でんばた)此水にて大いにうるをし     みな〳〵貴異(きゐ)のおもひ     なし此後(こののち)豊年(ほうねん)の       吉随(きちずい)とぞ万歳を          うたひける 【左上挿絵内】御影