胴人形肢体機関 曲亭馬琴作 胴人形肢體機関 人面(じんめん)おなじからざること。猶(なお)人心(しんしん)の同(おなじ)からざるが如(ごと)く。肢体(からだ)に 小(すこ)しき異(こと)なるあるは。賢愚(けんぐ)斉(ひとし)からざるに似(に)たり是(これ)を以(もつ)て これを観(み)れば。斉(せい)の東郭(たうかく)信義(しんぎ)の瘤(こぶ)あり蜀(しよく)の魏延(ぎゑん)に企叛(むほん) の骨(ほね)あり胴長(どうなが)。出臀(でつしり)。肥満娘(ふとつちやう)。家鴨(あひる)の横飛(よことび)一寸矮児(いつすんぼうし)。人(ひと)の姿(ふり) みて吾風流(わがふり)の。今茲(ことし)もなほらぬ筆癖(ふでくせ)は。相者(さうしや)でもなく医者(いしや) でもなくしらふことなしの胴人形(とうにんぎやう)。おどけ作(つくつ)て魂(たましい)の。入(い)らざるお世話(せわ) に教訓(きやうくん)も首尾(しゆび)よくまいればお慰(なぐさみ)。いよ〳〵著述(ちよじゆつ)にかゝりませふ《割書:テン〳〳〵〵|カラ〳〳〵〵》 《割書:スツテンテン| 》           細工人   庚申 はつ春     曲亭馬琴製 【馬琴の印】 【右頁上段】 むかし〳〵教訓(きやうくん)先生(せんせい)といふもの あり人相(にんさう)てのすじのほか何に よらすからだの内のzんあく にてその吉凶をさだめければ まい日先生のいほりにきたり てからだのよしあしを とうものおびたゞしく ことのほかはんぜう しけり 〽きやうくん先生の いわくにんげんの かほはまるくみゆ れともこゝろさし あしければおのづ から四かくになりて心 ある人にはし四かくにみゆ るなりそれはどふした ことゝとへばおさない ときてならいがくもん せねはとしよつて 人なかではぢをかく これ一かくなり扨心 【左頁上段】 がけわるくしておごりをこのむ ものはついにまづしくなりて つねにことをかくこれ二かくなり その心まことなき人はおのづ からぎりをかくこれ三かくなり いろをこのみてやすものを かへばかさをかきはなを かくこれ四かくこの 四かくをつゝしみて 心はいわのごとく どのような 人がきてそゝ のかしてもうご かぬようにもちはらは かいどうとおもつて口くひ ものにおごらず手はあさがほの はなのごとくたへずひらいたりつぼんだり またはきねづみのごとくあつちへうごかし こつちへうごかしすこしもゆだんせずあしは すりこ木のごとくぼうになるまでかけまわりて かせぐときはかほの四かくかどとれてしごくまるい上にんげんとはなるなり 【右頁下段】 〽イヤハや先生の 高論(かうろん)おそれ入り ました 〽心としらみはうわべ からみへぬもつた ものたみへるとたちまち はちをかくせんさくでござる 【左頁下段】 〽このあしがまんなかへ   つくがさいご大ごとだ 【右頁上段】 およそよの中に 美じんなきにはあら ねども三十二 相(さう) そろつた ものは又 なきもの なり心ざしの よい人はあれども まさかせいじん けんじんといわるゝ ほとの人はなきが ごとしさればかたちに かけたるところあるは心 にかけたる所あるににたり かたちはめにみゆれど心は めにみへずゆへに今 かりにそのかたち をもつて心をろん ずべし人としが よればあたまはあかく はげてひかりがでるこrこれを やくわんあたまといふとしより 【左頁上段】 のあさぢやをこのむも このいわれなりまたはとし よりてのちつま子をうし ないゑてちやのみ ともだちをいれた がるものなりこれ まつたくやくわんの なすところなり そこでむすこは とんだちやがまと わるく思ふもむり ならねどやくわんは みがくほとひ かりがでるもの にてそのひ かりがむすこへ うつりて人なかで ばかにされぬといふも みなおやのひかりゆへなれ ばとかくこう〳〵をつくしてや くわんのあたりを心がけや くわんあたまをへこませぬ〇 【左頁中段】 〇ようにするが子  のやくめといふべ         し 【右頁下段】 〽どうこ【銅壺】なおしがきたら  よんでおくりやれけさ  かみゆひにこびん【鬢】を  ちよいとやられたから  ちともる【漏】るようで           ござる 〽やくわんあたまをへ  こませればおやを  つぶしにするよふ  なものならふこと  ならいつまでも  いけておきたいも  のだとこのむす  こふるかねかいの  ようなせりふを    いつてゐる   〽にばなはどひんに いたしませうあなた のおつむりではかなけか でませう  【右頁上段】 人にさひづちあたまといふ あたまありとかくかつこと をつゝしむべしまづどら をうちて女郎にうち こめばしんせうのは めつとなりあみあみを うちてふねにで ればなんふうの おそれあり そばを うちて きやくを まねけば 思はぬ物が いりたいこ をうちて したかたを ならへばきが うはついてくる ものごとさいづちの あたりやうわるければ おのつからくひのまわるがごとく 【左頁上段】 しんだいもかた むいてくるもの なりたゞそろ ばんのてもとに きをつけてあき ないのめあてを はづさず人の あたりをよく すれば大こく でんのつちの ことくつひに きん〴〵をうち たすしあわせ あり 【右頁下段】 〽くひをうち  こんだら  身のかきを   する    ことた 〽弐両や参両  うちこんじやァ   なんの  へんてつ     も     ねへ 【左頁下段】 〽いくらでも  うちこみ  なんし  こんやは  ぬしにでる  くいで    おつす 【左頁上段】 〽おとゝしはやつた  かたじやァねへが  しんぞうをくひに  しちァようさ〳〵    新杭ぐいだ 【右頁上段】 さるといふものはにんげんより はつめいらしい事もある よふにみゆれどけの三本 たらぬおろかなること おほし人にさるまなこ とてまなこさるに にたるものあり これもまつげの 三ぼんたらぬゆへ にてなにごとも よくみわけて ぢよさいのない よふなれともめ のとゞかぬとこ ろありそのめの とゞかぬところ よりほうこう にんのどらうちが できるやう女ぼう子に あなどられてまおとこを されるやらよつてたかつて よいようにされる事あり 此ときはじめてめかさめ 【左頁】 女ぼうをさる  猿まなこ かゝァをさる さる〳〳〵〵と はらをた つても かへらず たゞま なこは 日月(しつけつ) の 草 木を てらし たまふ ごとく すえ〴〵 までてら しあきら めていへを おさむること かんようなり 【右頁中段】 〽ひとつとは  かいたが  あとが  つまら    ねへ 〽ふうふげんかをする  ならはや引を一さつかつて  をいてすることださりぜうが  かけぬとぢきにさしつかへて  じやん〳〵トなる 【右頁下段】 〽はやくだすなら  だしなせへよが  ふけるわな 【右頁上段】 心に思わぬ へつらいをうふ て人をうれし からせるをだん こにするといふ ことありこれ こゝろのまる きより出たる なるべしかよふ の人おのれが はなをたかく せずずいふん したてに出る ゆへそのはな おのづからたん ごのごとくみゆれども 一トかどなけれはころび やすくいつもひかんと思ふ 人はよろこびもすれ心ある 人はそのへつらひをわらふ なりたゝ心にかさることなくば たとへかほはほたもちなりとも たんこはなにはまさるべし 【右頁中段】 〽はなよりたんごくひけより  いろけでてめへがはなを  ちやほけにするとちやが  いつはいたんとのめる 【右頁下段】 〽をや久さんまた  わたしかはな  をいつてまる     めな      さる        よ 【左頁上段】 いぬは一日かわれてその しうのおんをわすれず よる〳〵はかとをまもり てぬす人をほへいつ かとのやくをつと めるなんほひたい ばかりとうけん びたいにぬき あげても 人のをんを おんと思わ すよい からくう〳〵 ねたかる人は いぬにたもしる ざかべし かやうのやからを せわすればかへ つてかい犬に手 をくわるゝのわさ わいありつゝしむ べし 【左頁中段】 〽しろくろみへぬやみのよに  おれにしつほをみつかつ  たる百ねんめいたとあき  らめてぬすんだものを  きり〳〵とおいてしとも  わたすともどうとも  しろいぬへんとうはわん   わんわみわんとたエヽ 【左頁下段】 〽イヤやせ犬の  人そばへほへ  だてせすと  そことを    せさ 【右頁上段】 てんちくのしゝはけた ものゝ王なり此ほう にてしゝといふはゐの しゝのごとにしてこの いのしゝといふものは さきへはかりすゝみ てあとへもどる事 ならずあとさき のかんべんなき ものをいのしゝむ しやといふ人 にしゝはなあり またいくひあり これもあとさ きのかんがへも なくしゝはな はぼたんのすい ものをすゝらん ことをねかひ いくひはふすい のとこに廿四文の たのしみをきわめんと 【左頁上段】 すれはつひに かん平がてつ ほうにあたり しゝくつたむ くひははやく ほたんの鼻(はな) のおちること 廿日もまた すして すみやか なり 【右頁下段】 〽おらあはぎのしろ  きにみとれて廿四文か  つらをうしなつたからあさ  ばん水をくめの仙人と  いふほうこうをするやつ  さまた 【左頁下段】 〽角兵へさんそこ  には犬のくそがあるによ  そして三介をまつたり〳〵  とまたせておいたからてへ  げへにしてかへんなせへ 【右頁上段】 馬はおもきをせおひて わうらいし人をの せて千里をはしる くにになくてかなはぬ ものなりまつしき人 はその馬のかわりさへ つとめてあさから ばんまでおもきに もつをせおひかん のふゆもあせ水 ながしてかけまわ れば女ぼうは子 ともをせおうて からしりで はしり あるくかゝるかんなん の人さへあるにかほ ばかり馬づらでも かたへてぬぐひは のせながらふろ しきつゝみ一つ さけることも いやがり 【左頁上段】 ただ うつ く しい まめ ばかり くひ たがり てのら くらと して あ そ び たがる もの はた れも その 仲(な)ヶ(か)間(ま) へは のりて が なし 【右頁下段】 〽小荷駄百までわしや九十九まで  ともにしり馬はねるまでかせがねは  ぜにがとれぬァヽ四百四びやうと馬の  こへひんほどつらひものわないわひ 馬(むま)づら 【左頁下段】 〽ばんにははようもどり  馬にしてくだされや 〽かゝさん  おらアたひ  こがうち     たい 【右頁上段】 心とせなかはおなじ ことにていつしやう われとわがめには みへぬものなりせなか にもねこぜなかと いふせなかありねこ といふものははな はだきのよき ものにて人に ぶたれても はらを たつた かほを せずいへの うちのねず みをふせぎて いつかどのほう かうをつとめわづ かかつほぶしの うはけづりぐらゐ にていつせうをおくる ものなりわがせな かはねこぜなりでも 【左頁上段】 わがめには みへぬゆへ ねずみとら ずののうなし となりのら ねこのさかな このみ大げび そうのぬすみ くひがきずと なりてとこへいつ てもしりがすわ らすねこの めほとかわる よの中に とりとめた せうはいも せずはては いろ〳〵には けてよの人 のすてねこ となるたゞ ねこの能は まなぶべし ねこの△ 【左頁下段】 △くせはまな  ぶべからず 【右頁下段】 〽此きやくじんはくちはねこじたせなかは  ねこぜなかあしはねこあし うちへいつて みた ら おふ かた ねこ のひたい ほとのくらしだも       しれぬ 〽あなた  ぐらい  あがるお  かたは此  てうめん  にもこさ     り   ませぬ 〽さけもいろ〳〵のんでみたが  いけだの【山印で「すやま」のふりがな】ほどいゝさけは  あるめへ第一火かいらず  いろがうすしそして  いつまでおいても  かわらぬところが  みやうだ 【左頁中段】 〽おまへさんはねこしただ  からぬるかんにいたし         ました 〽しらぎく  きみしらず  でかさねる  ものはおれ  ばかりだろう 【右頁上段】 ひざがしらのことを ひざこぞうといふ ことは子といふもの はおやのすねを かぢるものゆへ ひざを子ぞうに たとへたりおやこ 六人くらしのやせ しんたいねたと ころをみれば 州といふじの ことく人には 子たからとうら やまるれとさむく なくあつくなく うし馬にふまれ ぬよふにそたて あるくまでは おやぢがすね きりうせかねは くわれぬからき 世の中にあまい ものばかりくひ たがりおやのすね をかぢりたらず 【左頁上段】 とらやき さつまいも のかいぐひも おやぢかふまへ たしんしやうの あまりなれは あしのうらを とゝさま かゝさまに たとへて 嚊(かゝ)爺(とゝ)  いふも 此りくつ なり    【右頁中段】 〽おいらはすへ  られぬうち  はやく  にけ  ませう 【右頁下段】 〽かゝさん  おいらは  こめんだよ 〽あしをななげ  だしてまんまを  たべるとじきに  此とをりで     ござる        ぞ 【左頁下段】 〽このころはひさつこそう  かふきやうきになり  おつてあくらをかきた  かつたりねころひた  かつたりするによつて  こらしめのため   にたゝかきうを   すへてやるがいゝ 【右頁上段】 女のあるきくせにそと わにうちわにといふ ことありわにといふ ものはおそろ しき もの にて こいつ にみこ まれた ものゝいきた ためしかなし 女のわにあし にみこもれたり もそのことく ついにはしやつ きんのふちへ ひきすりこ まれしんせう をひとのみに さるゝことわに のあきと に かゝるがことし ひさしいものたかおそるへし〳〵 【右頁下段】 〽ものはひかへてうち  わにしてこゝろたて  はにやうわに  もつがよふおすか  あかきつきはかりは  そとわにがりつはに        みへりす 【左頁上段】 ゑりまるいものを ぼうずゑりといやし めれどしゆけと いふものはよくをはな れてみちをおこ ないぜんをすゝ めて人をみちひ くものなるに ゑりはかり ぼうすゑり でもよくづら をかわひて ゑりもとに つきほんのう くぼのぼん なふにまよふ ものはなま くさほうず ととうしつの論(ろん) にして人のかしら とはなりがたし とあるおしやうさまの申されたか 【左頁下段】 〽にんげんのあた  まといふものはもく  ぎよのかわりに  つかつてはとう  なすにはおとつた  ものだ 【右頁上】 大きなしりをたなつ しりといふてしりを たなにたとへたりげに もかつてもとにたなと いふものがなければ なかしもとかかたづ かすいへのうちに女 ほうがなければ身(しん) しやうがばつとして とりかたずかぬもの ぞかししかれば女ほう にたなつしりの  ひもかゝるいわれ なるべししかるを じぶん〳〵のふ きりやうはたなつ しりへあけてをひて あそこのかみさんはたなつしりだ など〳〵人のことばかりわるくいゝ たがるは大きなるりやうけんち がいなり人のしりみてわが しりなおせとはかようの事 を申すべし 【右頁下】 〽ゐのめのすいものわんの  そばにかめのをのさか  づきもあるはづた 〽すかしのたばこぼんにひたり  ねじりのひばしはかさいの  きやくじんのときだしたはつたが 【左頁下】 〽これでおならをされるとすぐに  あをのけにふきとはさ  れるたらう きのせへかちと  くさいよふだ 〽せうめんへしりをむけて しつれいのさんは御ようしや   くたされませう 〽  【右頁上】 百せうのすきくわは ぶしのやりかたなと おなし事にてこれを たつさへてす ひやくてうの あれ田をも きりひらき あるときはいし にうちあてゝめ から火がてるいたさを こらへまたあるときは こひをかきまわして しりからへのでるくさ さをしのぶ米一りう にするしんくはみな くわのはたらきなり そのかんなんにはき もつかずたま〳〵 あしはくわへら あしにむまれつい てもちよつといぬ のくそをふみつけ てもたいそう 【左頁上】 らしくこゞと をいひちらしはだ しになるをいとつ ていへのうちでも うはぞうりをはき たま〳〵そとへでる ときもふたへ はなをに五まい うらつまさき へでもつちの つかぬように あしを大せつ にすることみな 大きなるあやまり なりたゞあしは くわのごとくに つかひこなして あさからばんまで とろだらけにして かけまわればついにぜに かねのできあきにあふ ことうたがひなし 【右頁下】 〽ことしはしこく  さくのてきか  ようこさるいね  とくささうしは   さくはかりか    めあてゞ     こさり      もう       す 【左頁下】 〽たばこをのむ  うちあしを  あそばせて  おくもむたの  いたりだ   しかしあし    のくわ      べら       は      しごく      よいが      はら      のから      すき      になる       には      こまる        そ 【右丁上】 はとにさんしのれいぎ ありとてはとゝいふとりは れいぎたゞしきとりにて 子とりはおやとりよりうへ のゑだにとまらす弟と りは兄とりよりしたの ゑだにとまるとかや人に はとむねあれどもその むねははとにおよばず おやのまへでもあしを なげ出し兄よりかみ ざでめしをくひたが りいへばとのせけんみ ずよりこいつをかせ ぎてまめこのみを しはてはうそ八ま んのつかわしめと なりててゝつぽう とはなかずして すてつぽうと いゝちらすは 豈(あに)とりにだ もしかざざるべ 【左丁 けんや 〽此ところのあきちをかすりに 御ひろういたし候 旧友(きうゆう)京侍見世たばこ入れ かみぢきれ地御はなかみぶくろ 御きせるその外工夫のしん がた当はるおびたゝしく 出来申候相かわらず御評 判被下御もとめ可被下候 【右丁下】 〽まづ〳〵兄うへ  おとびなされ  ませイサ  おともいたし  ませう 〽むかふのかゝにまめがよほど  こぼれてみへまするおやへは  ごらうたいにもござなされば  おゆるしをこうむりわれ〳〵  兄弟たちこへま■■でござ          りませふ 【右丁上】 人のしんだい のよしあし につけてやたい ぼねが大きい ちいさいといふ ことありげにも しんしやうはから がのごとくほね ぐみがかんじんなり 酒色遊芸(しゆしよくゆうげい)はしん せうのために毒(どく)也 たゞ正直を持薬(ちやく)に していかにもしん せうをぜうぶにこや しもとできんをど だいにして千両二千両 にくみたてる事みな いへのはしらたる主人 の心よりいづるなりいへは うつばりはしらにてもち からだはほねとすじにてもつ はなにせうじのへたてありてあかゞに 【左丁上】 かきがねのしまりあり さればせたいとからだは ひとつとうりなる事 を思ふべしいへにせに なきははらにしよく なきがごとく命(めい)は 食(しよく)につなぎせたいは ぜににつなぐその理 みなおなじかる べし    〽これはたいぎな     やくだこうして     いるうちぜにの     もうかるくふう     でもしませう 【右丁下】 〽ことしのたなおろ  しも五百両のひた  めでたい〳〵のびてわるい 【左丁下】  ものはそはとはなげばかりだ  しんしやうののびはいくら  でもだいじない  ずいふんせいだし  給へし 【右丁上】 人のかほかたちおなじから ざるはその心の同じからざる がごとく美人(ひじん)の心うつくし きにあらずあく女の心みに くきにあらずみのうちのぜん あくはかゞみにうつしてもみ ゆることあり心のぜんあくは てらしみるべきかゞみなし こゝにのべるたる五たいのぜん あぐはしばらく心を からだにかりてかたちと 心のおなじからざる おもむきをしるし たりたゞかほかた ちのうつくしき をもとめず心の うつくしからん ことを思ひ給へと 多きにおせわな 教訓(きやうくん)先生(せんせい)のなが ものがたりにはる のみじか夜ふけ やすく四つの かねがごゥん〳〵 【右丁下】 〽くさぞうしのさくも  ゑくみがよければ  かき入れがおもしろ  くなしかきものが  よくできればゑくみが  わるいこれもかたちと心の  そろわぬどうりじや △化競(ばけくらべ)丑満(うしみつの)鏡(かね)   と申す本   出扳仕候是は   ばけものゝ   せかいを上るり   本のように   おかしくつゞ   りなし候   よみ本に   御座候  御もとめ   ごらん    に被下候 〽れいのとをり  めでたし〳〵 【左丁】 山東(さんとう)一風(いつふう)煙管簿(きせるのひながた)  曲亭翁            一枚摺  どんなたばこきらひでも忽  一ふくのみたくなる儀   れ草のうさをわするゝ妙作也