【表題】 《割書:天保改勢|珍説増補》 鯰年代雑記 【上側一行目、上から番号順に。以下同じ】 増長 高ぶる火  中山の妙法御代につれて流布す 二  きに入木 向しまにせきをちゝしやる諸人顔をかける 三  知行の土  ゑん州日の光りに万石のほふさく 四  すたる金  てら地武士地多店を水のためにながす 五  むかふ水  鳥いなしの野狐町人をなやます 六  一つ家の火  うばがいけをつぶしてうぶ木を植る 【上側二行目】 七  ながれの水  岡場所の弁てんよし原にて開帳 八  身替りの金  はつ物をきんじて金魚を奉る 九  物にする木 いんば沼へ諸大名大金をうづむ 十  怨ねんの火  屋部の大臣さんによつて勢州へ配流 十一 ごまの火  悪水の勢ひやく神をおし流す 十二 地わりの土  他まちの法印をねつみ山へうつす 【上側三行目】 十三 国替する木  皮かむり出羽の国□をうらむ 十四 雁 金  六もん銭通用はしまる 時勢 富の金  おはなしを禁して心学を行ふ 二  なみだの水  ひごの国ゟ林の木八千ぼん上る 三  同 水  大和に堀をほりて一万石つぶれ 四  辻ばんの火  石のあめふりて浜のまつ折る 【上側四行目】 五  益もな木  くすり湯に男女の入込をきんず 六  逆まく水  かれかけし浜まつふたゝび色をます 七  かべの土  町中白かべとなり家持公大つゝう 八  つるの金  竹本義太夫の娘をいけとる 九  ね耳の水  大しほ一時に大坂へわき出る音大筒の如し 十  花びの火  四月十七日に川開をして江戸中を騒す 【上側五行目】 仁政 正し木  玉つしま明神あらわれ悪魔を追ふ 二  とふ山の土  九字の文楽ひ町中にかゞやく 三  替る土  不忠しん蔵浜松にて開じやう 四  うらみの火 屋部大臣配所にてふん死す 五  かゞやく火  備後とびつ中と表替あり 六  溜め金  五つ頭ある金竜誅せらる 【上側六行目】 七  にごりの水  鳥いつぶしてみれば一つ穴の狐と成 八  外を水  先年中小いし川に閉門がしたつ 九  有がた木  きの玉大明神万民をすくふ 珍事 名高木  しま屋のばんとううら門を破る 二  土俵の土  四十八組の火けし水けしとなる 三  往来の土  引はりと云すつつはり所々へ出る 【上側七行目】 四  ふるう土  しなのにてほとけたのんで地ごくへ落る 五  かゞりの火  うら賀沖にちゝはゝの舟見ゆる 六  焔焇火  相州浦にて火薬をもつて新舟をやく 太平 陣がねの金 房さふのゆりぼふを小金へ追込 二  浪せんの金  天の岩戸両ごくにてかいちやう 三  奢りの木  二こくにてビロウドの花を咲 【上側八行目】 四  つたひよ木  いびつなりの銭世の中を廻る 五  水どうの水 反古ばりの獅子勇しをあらわす 六  はなは水  けいこ所より大花見さいこうに 七  通用金  将ぎの上手ぎんを金にしてつかふ 台謾 高利の金  もう人国ゟ官金といふ金を出す 二  負ぬ木  かみ結床ののれんせうじ手を尽す 【上側九行目】 三  とる木  大屋私にたる代の定格をなす 四  かふ木  やくしやあみ笠を捨手ぬぐいと成 五  吉田の土  辻君所々にせんせいをなす 六  元の水  水茶やにむかしのごとくしんぞおる 七  同水  一疋の猫を百疋にする事をはじむ 八  かせ木  あたまでめしをくふ女大行にあらわる 【上側十行目】 大着 きかぬ木  八丁堀にて狐のかたきを打 二  跡を水  長崎の通人囲を破りてもふく 三  費の金  天王まつりに色〳〵の金かくし出る 四  引込金  けいこ所にて男女の入込をはじむ 五  あんどうの火  麦ゆ化してあまざけとなる 六  京の水  ゆふべもらふた花よめきたる 【上側十一行目】 七  大さわ木  日れん宗開帳に大ばたをあぐる 八  薬礼の金  りうきう人日本へ風の神を渡す 九  唐の土  金こう堂人海外新話を出す 十  山しの金  大江山より熊のごとき童子出る 高名 かけ川の水  音羽の梅寿正じんの亡者と成 二  をし木 高らいの錦升丈没す 【上側十二行目】 三  恵みの水  市川のゑび江戸川へ下る 四  焚立る火  川むらより温せんわき出る 五  江戸の水  角木かう桜艸に位を給ふ 六  御しう木  □村市村より寿の踊りをはじむ 七  石川の水  中むらにて日中につゞら中を飛 八  ひい木  三升上人冥土より帰り来る 【上側十三行目】 九  はやる木  大山尊者かんざしに蚕を造る 十  ものず木  木魚こう寒声をはしむ 十一 せん香の火  おく山へ大鯨のぼる 評判 いそがし木  アリンス国より直下けの札を出す 二  手ぜうの金  地ごくより美人生捕また地ごくに落す 三  天上の火  先年太鼓持のころ付所々にておつこち 【上側十四行目】 四  柳の水  大屋の父子飼猫のために役落 五  自由の金  女いしやなん病りやうじ妙術をあらわす 六  手向の水  市むら何紅なごりを出して冥土へ下る 七  かひ切の金  当□大明神中村にて開帳さんけい大入のごとし 八  【空欄】 九  【空欄】 【上側左端の和歌、上】   海なき国のうた 銭なきは苦ろふをするがみの  おわりかへさぬきでは   かす人もなし 大水や火事やきゝんは  しのけども世のつまるには   だれも銭なし 【上側左端の和歌、下】   ぢしんのうた 苦い悔ひ後日をあてにしち  日なしむりやりくりに   かせぎしそする   たましいのうた としよりと女子供は三升よ   男五しやうと五水りやうあれ 【下段】 此よめ記は是迄追〳〵撥出したる年代記其外に もれたる珍説等を書加えて盧生の一むかしを 一紙に編□て笑ひのたねに備るのみ   嘉永四年亥仲秋 思案房述 六用吉凶【上側に右から横書き】 先妾日 願ひ望事は取入てよし      末はわるしとしるへし 友引日 ゑんにつれて立身し      □の□□き事あるへし 前後日 あとのばん先にたつ事あり      ひかへめにしてよし 悪滅日 大悪日なれどこゝろたゞしき      人にはさはりなし 大安日 物事あらたまりて      あんしんする大吉日なり 借口日 なんとなく世の中つまりて      下〳〵口ぜつ事あり   八勝人善悪之事 大ざいみづの方   此さたに及て万よし            但石かわらをふらす 大しやうぐん上の方 此かたに願ふと            千年もさかへり 大おんうけの方   むくひて国替よし さいけうひつしの方 此さたにおよんて            きんざあらたまる たいはいへの方   町〳〵ふしんせず            根つぎもはしめず たいせつにしの方  このかたより            よめとらず わうばんしろの方  大しほに向て            弓はしめよし ほうびうけの方   向ひてぜんごをろんぜず            身命おしまず 暦中段 【上側に右から左へ横書き】 立除満平定取破危成納開閉 【横書き文字の下に二行ずつ記載】            高利の金證文面を以て 願ひ出るによし ふじ同行は先達なしに ひかへめにすべし 芸人は残らず江戸へ 下りてよし 銭なきことに貴賤の へたてなし 諸株とりきめに よし たる代五せつく 物あつめによし 長崎の大通望ことに用 其外はわるし 下〳〵の者考事に  用てわるし 雷所〳〵へ出歩行に よし 着類調度七つ屋のくら  入によし 寺稼の出家女色に有に よし うり居かし店の  札はるによし 十考 きのへル よふな世の中になり      しをはま松かれて きのどク とおもふ者はたゞの      ひとりもあらはれす ひのへ  〳〵につもりきし      人の思ひに今はたゞ ひごと  に其身にむくひき      てなくもなかれす つぢばん もみじんになつてうち      こわし石かわらふる つちのど どふなる事と身をも      んであんじる内に かざい  まて引はらわれて      おためごかしで引取た かぶと  もたちもとり上られ      今さらに取付所もなく みづのウへ に居る心はらを切るには      命はおしくおのれを            せむる みづのとガ たゞのめ〳〵と生て      居て何をたのみに        末をまつやら 十二子  珍らしい 子(ね)つぎをする  芝居  ぢごくは 寅(とら)れても  たゝんず  十組は 辰(たつ)よふに  なれど  とかくに 午(むま)らぬは  御くら米  評ばんは 申(さる)わか  かん三郎  犬おふ物は 戌(いぬ)のめい  わく  しま屋とは 丑(うし)ろの通り  名となり  銭金に 卯(う)らみの  かず〳〵  まだたつ 巳(み)のさたは  きかず  今のぶんでは 未(ひつし)やうの  出来あき  二丁目は 酉(とり)かさねた  病人  一さわぎかみ 亥(い)とこの  大はたん 金銀精 【外側から内側へ、十二時の位置から右回りに記載】 萬寶世重 小判二分額銀子粒弐朱當百 寛通永寶 【左側の記載】 金きん星のやりくりよふは   七つ屋は 八ヶ月〆   日なしは 六十日〆   店ちんは 三十日〆   盆暮は  百年目    順にくるべし