【タイトルの上、三行割書きですが並べて書きます】 はやり歌 あんけら こんけら 止而道致虚録(ヤンシテドウシタキヨロク) 《割書:鳥居清長画|    全》 【上】 建久の頃相州 江の嶋へんに きたい【希代?】のしゆけんじや あり人はあんけら ほうとこうし【あんけら坊と号し】又 一人ははんけら坊 とてかち【加持】 きとふに【祈祷に】 □してあり けれはしよ人 こうほうてん きやうのさいらい【弘法大師空海、伝教大師最澄の再来】 なりとてそのころ かまくらの御所をはしめ 大小めうのいへ〳〵町〳〵まて もしよにんこれ をうやまふを おうかたならす 【あんけら坊台詞】 なんとこんけらほう とそ【屠蘇】も けんひし【剣菱】てはかくへつ【格別】のめるの ときに きう□うおしまい いかに〳〵 【下】 されば おたかい に きん年は たん ほうも ふへ 御き とうも よくあたる から まつ さらおら のくれさ しかし年 礼のふへ たには うんさり さ 【画面左下】 ことしは たいかい な所は くつと なかし〳〵 【一丁裏】 此比鎌倉の はんしやうおひたゝしき なかにも鎌倉のまん 中日本橋のにきわひ あしたより夕戸にいたりさかな 市の人くんしゆますに大一味 金□□くいひなかは せしをく 大商人のきを ならへし なかにも徳わうや 万左衛門とて大金 もちの 人あり 七条 和田畠之の 三□□へ出入御□て 向の御用をうけなり 此外御洲□には かち原大江□〃本 とらへしも 立入御用金 とゝこほりなくさし 出しけれは □家より 御ふち【扶持】御ちふく まへ〳〵と てうたいし御殿つきの 小そて上下て ひけらかし ける ものへしかつ へらしくそ みへけるしかる に一子 万作 今年廿【二十】才 【二丁表】 にて御出入やしき の殿様へすみ じんひん【人品】こつがら【骨柄】 いひふんなくむすこ 一ひきとみへけるが いかなることにや せう とく【生来】女きらいにて 女の□かり者とくす 小袖さへ女のしたてたは むさいとてきらひ 百 人しゆ【百人一首】をよむにも 小町清少納言いづみ 式戸【部】□うの歌はよまず よつほどとんちき 成ル うまれつきなり これ〳〵のうさくい□ とかくきろうをおたのみ 申から せがれへおとかめ なされてそらほかづ ゑんだん御とりもち たのみそへする これはもう さくまの御 むらめでなければ中〳〵 あのこか かてんいたす まい はてきにさへ 入ましたらかるいもの〳〵 むすめてゝもすこし もくるしからぬとさ 【画面右下 老女の台詞】 此きは この もう さくか いあん のほかの ちを めくらし さいか しかう ろへんを もつてり かいをとり ばかたやにおい て石山金太夫 にもせよ御 とく しんあらん こと かゞそ にかけてみる かことし これさ〳〵 もうさく□ 【左頁下】 めつたな ことをおふせ られますな 此 ぎはか りは おうけ はいた し ませ ぬそ ひつ きやう【畢竟:つまり】 つまを めとるは 子そん そう ぞくのためなれば おそかぬこと すて に 大せい人たらしの 御くらくしやり□ こ□は六すやう よにしてかんし をめとるはかし をらむとござ ればせつしやなぞ はまた四十条も はやうごさる 【二丁裏】 【画面下 娘台詞】 もうさんが久しいもんだ 人をばはうさせて ばからしい いけすかねへ 【羽織坊主の台詞】 これ〳〵 わかだんな此 うつくなものを御らうじろ 今で此おいそといふては おそらく かま くら中にかたをならべるげいしやは ない そのくせ おやぢがけたや【下駄屋】た からこれまで一どもころんた【売笑すること】こと なし ところをわれらが 女はうのおくの てゞたつた 今ころは せるが御□は なるずる〳〵 かうさくつきらうには おふ人けなされぬひろう のおふるまいしこん おたし なみなされい 【三丁表】 はてさてせがれか女ぎらい にはこまりはてる どうぞ くめんして けいせいなりと 一どかはせてみたいぞ □【とかく?】くながいきをすれば いろ〳〵のくろうをします どうしたら せがれが女ずき になりませうやら われらふるなのへんをもつてときかけ たれどもいかな〳〵 大人じん【人参】の かはりにほし【干し】 大こんほども きゝませぬ てだいまかりいで もうさく【申さく】さま【旦那様】かさし【匙】を おなげなされたうへは 御てん□がたでもとゞき ますまい 此上は江のしまへん のあんけら さまにこん けら様 の御きとふ をおたのみ なされ ます ばかりき 【三丁裏】 徳わうや万左衛門がりんかに住吉や松兵衛とて 是も□□家のおかねしおくり を かぎやう【稼業】にて 徳わうのやにおとらぬ 町人なり 一子 きしまつ【岸松】たう年廿才 にて此比かくれなき びなんのうへに 大のいき男にて女を うれしからせることにめう【妙】 をゑてあたり きんじよのごけ むすめはもちろん 大いそけはい坂の けいせいにいたるまで 此きし松にうちこまぬ 女もなく 源氏なり平なとも此 岸松にはせいもうづうゐの 手合とみへし□□ 物にてまことにしんのいろ 男とは岸松がことなりけるゆへ いつとなくまんしんきざし めつたにうぬぼれより身もち ほうらつになりゆき よるひるなしの 大いそかよひに金銀を ついやしそのうへその ごけのはゝが ふられあそこの むすめがかけこんたのとまい日〳〵のつけとゞけ にかない中がかつてそれらにあいさつするあと からはかけ込 又ははらんだしりがきてのちは【左頁上に続く】 【四丁表】 かぎやう【稼業】はわきにしてちうや【昼夜】このとりさはぎ にひまのない仕合なれはせけんも ますりやうしんもあきれはてしに しんるいをまねき けんとうせんと ひやうぎをする これは御もつともしごくわかいとは いひながらきのどくせんばん しかし うら山 しい たつしやなことだ おとこのこ のう生まれ付 のよいは大 きなきず としよつた このはゝおや になげき をかけます にくいながらも みなさまとうふぞ よい御りやうけんは ござります まいか 【画面左父親の台詞】 およそはらませしを 五十人かけこみ八十人 こゝん【古今】にまれなる ふらちものてござる 【画面右下 茶運びの坊主台詞】 いかにもあふせのとをり 一寸のびれはひろ【尋:一尋は約1.8mで一寸の六十倍】のびる でござる ましてとうじ ほうりきあらたかな こんけらぼうの いのり これが上 ふんべつきまり〳〵 御母上の あふせ御是 しごく〳〵 もとより きし松どの はつめいのうまれ つきなれば なか〳〵いけん などてまいるまい しかし せつしや めが一ユ夫は ゑのしまへん のめい そう あん けらぼうか こんけらぼうか の内を おたのみ なされ ほう りきをもつて【左頁下に続く】 いのりあらば 御きやうせき【行跡】も なをりそうなものと そん ずる此義は いかゞ おぼしめす 【四丁裏】 とく若やの 一子万作は とかく女をきらい めつたむしやうにへんくつ なるをりようしんはぢめ 所のものまできのどくに おもひいしや もうさくが いけんの のうちは 名主とし よりまでが かゝりいろ〳〵 すゝむれどもいかな〳〵きゝいれず【左頁上に続く】 【五丁表:左頁】 みな〳〵もてあましけるゆへ りやうしんもあまりのことに りつふくし是もかんどうせん とありけるが よふ〳〵しんるいの あつかりになりてとかく仏 神のかこ【加護】をたのむにしくは なしとさつそく あんけら こん けらのかたへつかいのものをたて あんけらぼうとしやうじける さてもとくわうや 住よしやのりやうけ よりあんけらこんけらの りやうほうをしようじて きとうたのまんとむかい として 弥作は茂作八【もさ八】 といへる手代一同に しゆつたつする【右頁下に続く】 【右頁下】 もさが久しい ものよ まづ 大じの つかいを すまして ばんにゆるりと あじのうしほに【鯵の潮煮】で いけだの山〃【遊郭の女郎】とつか まつり よく日 かへりに ゆきの下で けころ【蹴転ばし 下級の街娼】といふ所は おそろし かろふ【左頁下へ続く】 住吉やのもさ八 なんと 申さると 江のしまへ いつたらまつもの をもいわず あわびの丸 かぢりに けんびしと おめにかけて ぐつとさく ようじや ないか 【五丁裏】 画【画面中段】 まづとうざの おはつを【御初穂】と して 金子 十両 おうけ下され ませう【画面上段へ】 さるほとに 両けのつかい 江のしまへんに つきりやうそう【両僧】に たいめんして つかい のおもむき をのへる こんけらぼう めうてう【明朝】さつ そく両人とも しゆつたついたす でこさろう こんやはゆる りと御 きうそく〳〵 あんけらほう是は〳〵御てい ねいなおはつを【御初穂】たしかにじゆ のうふいたした 御たいぎ〳〵 御□のおもむき大ののみ込【以降は綴じ目で判読不能】 【画面左下】 せつしや しゆ人 住吉やよりも なんりやう 百へん 御じゆのふ 下されませう 【左頁 中表紙印刷なし】 【六丁裏】【右頁上段】 これは名□□御□い□か 子万作をぞ御法力を以て せがれが女ぐるひの止みます ように頼上ます 御き とうがきゝましたらば 御礼は小判で千両 いかに も御 たのみの おもむき せうちいたした しかし ながら むづかしい いのりで ござれば あんけら ほうとも 申し合て いの るで ござ らう 【中段】 ひとへにあなた様 しだいてせがれが みのうへうき しづみ いくへ にも御法力を ねがひ上ます 【下段】 これはちれたものぼう様が なんぼいのつても てう山とげいしやの おかねがてゝばかりは わすれられまい 【七丁表上段】 おたのみのおもむきさることなから すきをきらいにするよりことの外 むつかしふこざる 一七日だん食 ていのらねはなりませぬ そのかはりにしんのすき にいたすじや それは御くろうな ことおかげて倅か 女ずきになりましたら 御礼は□両上ませう 【下段】 おれが主さまと ちと入 合せると よい ものか 二人てきるに まゝならぬみの中じや わしはあのほうさまのきとふで 門三介にほれられたい もんだのう わしやぁ 門三介ても 門介でも かまわぬ たゝくちぢかいかよい 【七丁裏 画面右下】 さるほどにあんけらこんけらの両 そうは御きとうりやう□の両つゝに 直ことしてさつそく立かへり極を かざり日夜おこたりなく 一七日か間いのりしけれども 何のしるしもなかり しかは いのり くたひれ 両僧 ともにまどろ みける 【あんけら坊台詞】 ぜんざい〳〵 われはこれいわやの 弁天方の居候 止而(やんして) 通致(ふくみした) 御□とはわか事なり 汝らまへ大金のきとう料にめが くれてとんだ事をかけ込弁天を いのるをさりともむたなりとかく 道理 をわき【脇】 主に天の一年わかれて 陰陽となり 陰陽の気化して日月星辰山河草木珠玉金衣 人間鳥獣魚□虫の類陰陽の気化なりある か中にも人は天地の正気を具へたるものゆへ万【横棒が欠損?】物の 霊長なりとて高勝【高尚?】といふではないが其中 【八丁表】 に黒大極上々吉無類底切天にひとしき順正の気 を留たる人□を聖人といふこれよりしだいして□より大に いたり□上々吉日上々吉或は上々くだりては めはな【目鼻】は同 しくしてそらにのこる下辺事ちうさん【昼三】とにたるよりも □し無で気化するに順送りあり□正ありへん□ にへん気をはのたけをかたわといひ心にこれを□ たるをとんちきべらぼうどろほうしわんぼう みなかたわものなりしかれ共 かたわもとりえあり めくらへびに おちず ばこんけ者を こはがらす しわんほう□所をとずぶなん 女房にはまらずこれを天の人ころさずといふ こうき□つたものしやからいのりとはとんだ やぼの□りなりけるをよく〳〵いひきかせ てくれふと弁天のたのみなれど今この きとうがきかずはなんぢらがくぶがすたるであらふに よつておれがないしやうでくめんをしてこぢまな りやくをあらわしえさすべし〴ゆめがさめ たならばこの一くわんをみよ さらば〳〵 【八丁裏】 あんけらこんけらゆめさめ たれはむちうに御つげありし 一どくの一くわんだん上に ありければこはありがた やとひらきみるにまき ものゝうちに□魂の名 一酉の辛□の日西の法とくに 生れた□藤が一辛年来 もちつたへたる□□のかず 七〃四十九一高利をとらぬ □□のめやに七かし一魚くわぬ 出家のはなくそ一悪女形 のぬれことの時のかづらのけ七之助 右四か所悪女きにして水みるをく くみ切ひにて月べし□壱三度 夜三度あんけらが衣をこんけら□□ こんけらか衣をあんけら□しその度 〳〵□ふきかへおこたりなくl一七日うま しむふ文をとなへ用ゆるならば全く しるしあるべしことかふべからず 其呪文に曰 【以下呪文の読み仮名のみ記載】 おで でこ て