【タイトルの上、三行割書きですが並べて書きます】 はやり歌 あんけら こんけら 止而道致虚録(ヤンシテドウシタキヨロク) 《割書:鳥居清長画|    全》 【上】 建久の頃相州 江の嶋へんに きたい【希代】のしゆけんじや あり人はあんけら ほうとこうし【あんけら坊と号し】又 一人ははんけら坊 とてかち【加持】 きとふに【祈祷に】 ふしとあり【仏子=出家、僧侶】 けれはしよ人 こうほうてん きやうのさいらい【弘法大師空海、伝教大師最澄の再来】 なりとてそのころ かまくらの御所をはしめ 大小めうのいへ〳〵町〳〵まて もしよにんこれ をうやまふこと おうかたならす 【あんけら坊台詞】 なんとこんけらほう とそ【屠蘇】も けんひし【剣菱】てはかくへつ【格別】のめるの ときに きうとうおしまい いかに〳〵 【下】 されば おたかい に きん年は たん ほうも ふへ 御き とうも よくあたる から まつ さらおら【おう?】 のくれさ しかし年 礼のふへ たには うんさり さ 【画面左下】 ことしは たいかい な所は くつと なかし〳〵 【一丁裏】 此頃鎌倉の はんしやうおひたゝしき なかにも鎌倉のまん 中日本橋のにきわひ あしたより夕部【夕べ】にいたりさかな 市の人くんしゆまことに土一升 金壱升【土一升金一升=土地の値段が高い事】といひならは せしことく大商人のきを ならへしなかにも徳わかや【後のページに「とく若や」とある】 万左衛門とて大金 もちの 人あり 北条和田畠山【鎌倉幕府の有力家人の名前が元ネタかと】の 三家へ出入御勝て 向【ご勝手向き】の御用をうけ給り 此外御流向【不用品払い下げのことか?】には かち原大江佐々木【これも梶原大江佐々木で鎌倉の家人の名前かと】 とうへも立入御用金 とゝこほりなくさし 出しけれは諸家より 御ふち【扶持】御ちふくまん〳〵と【満々と=たくさん】 てうたいし【頂戴し】御殿つきの 小そて上下て ひけらかし けるゆへしかつ へらしくそ みへけるしかる に一子万作 今年廿【二十】才 【二丁表】 にて御出入やしき の殿様へすみ じんひん【人品】こつがら【骨柄】 いひふんなくむすこ 一ひきとみへけるが いかなることにや せう とく【生得=生来】女きらいにて 女のてより物とらす【女の手より物とらず】 小袖さへ女のしたてたは むさいとてきらひ 百 人しゆ【百人一首】をよむにも 小町清少納言いづみ 式部とうの歌はよまず よつほどへんちき成 ̄ル うまれつきなり これ〳〵も?うさく□□【らう?】 とかくきかう【貴公】をおたのみ 申からせがれへおとかめ なされてそうおうな【相応な】 ゑんだん御とりもち たのみそんする【頼み存ずる】 これはもうさくさまの御 すゝめでなければ中〳〵 あのこか かてんいたす まい はてきにさへ 入ましたらかるいものゝ むすめてゝもすこし もくるしからぬことさ【軽い者の娘でも少しも苦しからぬ事さ】 【画面右下 剃髪の男「もうさく」の台詞】 此きは【この儀は】 この もう さくか いあん のほかの ちを めくらし さいか しかう ろ?へんを もつてり かいをとつ ば【とっば=取れば?】かたやにおい て石山金太夫 にもせよ御 とく しん【御得心=ご納得】あらん こと かゞみ【鏡】 にかけてみる かことし これさ〳〵【ここより息子の台詞】 もうさく様 【左頁下】 めつたな ことをおふせ られますな 此 ぎはか りは おうけ はいた し ませ ぬそ ひつ きやう【畢竟:つまり】 つまを めとるは子そんそう ぞくのためなれば おそからぬことすて に大せい人こうしの【大聖人孔子の】 御ちゝしゆりやう ごす【=叔梁紇】は六十ゆう よにして【六十有余にして】かんし【顔氏】 をめとりかうし【孔子】 をうむとござ ればせつしやなぞ はまた四十年も はやうごさる 【二丁裏】 【画面下 娘台詞】 もうさんが久しいもんだ 人をばてうさせて【ちょうさせて=嘲させて?】 ばからしい いけすかねへ 【羽織坊主の台詞】 これ〳〵 わかだんな此 うつくなものを御らうじろ 今で此おいそといふては おそらく かま くら中にかたをならべるげいしやは ない そのくせ おやぢがけたや【下駄屋】た からこれまで一どもころんた【売笑すること】こと なし ところをわれらが やはらの【柔の】おくの てゞたつた 今ころは せるが【転ばせるが】御気は なかずる〳〵【このあとから息子の台詞】 もうさく□【殿 or 様?】きらう【貴老】には おに合なされぬひろう【尾籠】 のおふるまいしこん おたし なみなされい 【三丁表】 はてさてせがれか女ぎらい にはこまりはてる どうぞ くめんして けいせいなりと 一どかはせてみたいぞ □【とかく?】【アヘヽ?】くながいきをすれば いろ〳〵のくろうをします どうしたら せがれが女ずき になりませうやら われらふるなのへんをもつてときかけ た れ どもいかな〳〵 大人じん【人参】の かはりにほし【干し】 大こんほども きゝませぬ てだいまかりいで もうさくさまか【もうさくさまが】さし【匙】を おなげなされたうへは 御てんゐがた【御典医方】でもとゞき ますまい此上は江のしまへん のあんけら さまかこん けら様 の御きとふ をおたのみ なされ ます ばかりき 【三丁裏】 徳わかや万左衛門がりんかに住吉や松兵衛とて 是も諸家のおかねしおくり をかぎやう【稼業/家業】にして徳若やにおとらぬ 町人なり一子きしまつ【岸松】た?う年廿才 にて此頃かくれなき びなんのうへに 大のいき男にて女を うれしからせることにめう【妙】 をゑてあたり きんじよのごけ むすめはもちろん 大いそけはい坂【大磯化粧坂】の けいせいにいたるまで 此きし松にうちこまぬ 女もなく 源氏なり平【源氏・業平】なとも此 岸松にはせいもうづうゐの 手合とみへしふかせ 物【吹かせ者=嘘つき】にてまことにしんのいろ 男とは岸松がことなりけるゆへ いつとなくまんしんきざし めつたにうぬぼれより身もち ほうらつ【放埒】になりゆき【、】よるひるなしの 大いそかよひに金銀を ついやしそのうへこゝの ごけのはらが ふくれあそこの むすめがかけこんたのとまい日〳〵のつけとゞけ にかない中が【家内中が】かゝつて【(後始末に)かかって】それらにあいさつするあと からはかけ込又ははらんだしりがきてのちは【左頁上に続く】 【四丁表】 かぎやう【稼業/家業】はわきにしてちうや【昼夜】このとりさはぎ にひまのない仕合なれはせけんも すます【済まず】りやうしんもあきれはてしに しんるいをまねきかんとうせんと【勘当せんと】 ひやうぎをする これは御もつともしごくわかいとは いひながらきのどくせんばん しかし うら山 しい たつ しや な ことだ おとこのこ のうまれ付 のよいは大 きなきず としよつた このはゝおや になげき をかけます にくいながらも みなさまとふぞ よい御りやうけんは ござります まいか 【画面左父親の台詞】 およそはらませしこと 五十人かけこみ八十人 こゝん【古今】にまれなる ふらちものてござる 【画面右下 茶運びの坊主台詞】 いかにもあふせのとをり 一寸のびれはひろ【尋:一尋は約1.8mで一寸の六十倍】のびる でござるましてとうじ ほうりきあらたかな こんけらぼうの いのり これが上 ふんべつ きまり〳〵 【右下】 御母上の あふせ御尤 しごく もとより きし松どの はつめいのうまれ つきなれば なか〳〵いけん などてまいるまい しかし せつしや めが一工夫は ゑのしまへん のめい そう あん けらぼうか こんけらぼうか の内を おたのみ なされ ほう りき を もつて【左頁下に続く】 いのりあらば 御きやうせき【行跡】も なをりそう な ものと そん ずる此義は いかゞ おぼし めす 【四丁裏】 とく若やの 一子万作は とかく女をきらい めつたむしやうにへんくつ なるをりようしんはぢめ 所のものまできのどくに おもひいしや もうさくが いけんの のうちは 名主とし よりまでが かゝりいろ〳〵 すゝむれどもいかな〳〵きゝいれず【左頁上に続く】 【五丁表:左頁】 みな〳〵もてあましけるゆへ りやうしんもあまりのことに りつふくし是もかんどうせん とありけるが よふ〳〵しんるいの あつかりになりてとかく仏 神のかこ【加護】をたのむにしくは なしとさつそく あんけら こん けらのかたへつかいのものをたて あんけらぼうとしやうじける さてもとくわかや 住よしやのりやうけ よりあんけらこんけらの りやうほうをしようじて きとうたのまんとむかい として 弥作八茂作八【もさ八】 といへる手代一同に しゆつたつする【右頁下に続く】 【右頁下】 もさが久しい ものよ まづ 大じの つかいを すまして ばんにゆるりと あじのうしほに【鯵の潮煮】で いけだの山〃【遊郭の女郎】とつか まつり よく日 かへりに ゆきの下で けころ【蹴転ばし 下級の街娼】といふ所は おそろし かろふ【左頁下へ続く】 住吉やのもさ八 やさ印江のしまへ いつたらまつもの をもいわず あわびの丸 かぢりに けんびしと おめにかけて ぐつとさく ようじや ないか 【五丁裏】 画【画面中段】 まづとうざの おはつを【御初穂】と して 金子 十両 おうけ下され ませう【画面上段へ】 さるほとに 両けのつかい 江のしまへんに つきりやうそう【両僧】に たいめんして つかい のおもむき をのへる こんけらぼう めうてう【明朝】さつ そく両人とも しゆつたついたす でこさろう こんやはゆる りと御 きうそく〳〵 あんけらほう是は〳〵御てい ねいなおはつを【御初穂】たしかにじゆ のうふいたした 御たいぎ〳〵 御□のおもむき大ののみ込【以降は綴じ目で判読不能】 【画面左下】 せつしや しゆ人 住吉やよりも なんりやう 百へん 御じゆのふ 下されませう 【左頁 中表紙印刷なし】 【六丁裏】【右頁上段】 これは名□□御□い□か 子万作をぞ御法力を以て せがれが女ぐるひの止みます ように頼上ます 御き とうがきゝましたらば 御礼は小判で千両 いかに も御 たのみの おもむき せうちいたした しかし ながら むづかしい いのりで ござれば あんけら ほうとも 申し合て いの るで ござ らう 【中段】 ひとへにあなた様 しだいてせがれが みのうへうき しづみ いくへ にも御法力を ねがひ上ます 【下段】 これはちれたものぼう様が なんぼいのつても てう山とげいしやの おかねがことばかりは わすれられまい 【七丁表上段】 おたのみのおもむきさることなから すきをきらいにするよりことの外 むつかしふこざる 一七日だん食 ていのらねはなりませぬ そのかはりにしんのすき にいたすじや それは御くろうな ことおかげて倅か 女ずきになりましたら 御礼は千両上ませう 【下段】 おれが主さまと ちと入 合せると よい ものか 二人てきるに まゝならぬよの中じや わしはあのほうさまのきとふで 門之介【=市川門之助】にほれられたい もんだのう わしやぁ 門之介ても 門介でも かまわぬ たゝくちぢかいかよい 【七丁裏 画面右下】 さるほどにあんけらこんけらの両 そうは御きとうりやう千両つゝに 直ことしてさつそく立かへり壇を かざり日夜おこたりなく 一七日か間いのりしかども 何のしるしもなかり しかは いのり くたひれ両僧 ともにまどろ みける 【あんけら坊台詞 ※お告げ】 ぜんざい〳〵 われはこれいわやの 弁天方の居候 止而(やんして) 道致(とうした) 明王とはわか事なり 汝ら両人大金のきとう料にめが くれてとんだ事をうけ込弁天を いのることさりともむたなりとかく 道理 をわきまへよ【。】天の一気わかれて 陰陽となり 陰陽の気化して日月星辰山河草木珠玉金衣 人間鳥獣魚亀虫の類陰陽の気化なりある か中にも人は天地の正気を受たるものゆへ万【横棒が欠損】物の 霊長なりとて高勝【高尚?】といふではないが其中 【八丁表】 に黒大極上々吉無類飛切天にひとしき順正の気 を受たる人間を聖人といふこれよりしだいして極【?】より大に いたり黒上々吉白上々吉或は上々くだりては めはな【目鼻】は同 しくして其品の高下有事ちうさん【昼三】とにたりよるも 甚し惣じて気化するに順送りあり邪正ありへん成 ありかたちにへん気を受たるをかたわといひ心にこれを受 たるをとんちきべらぼうどろほうしわんぼう【吝ん坊=ケチん坊】 みなかたわものなりしかれ共 かたわもとりゑあり めくらへびに おちず ばかばけ物     を こはがらす しわんほう銭にことをか□ず【かゝず】ぶなん 女郎にはまらずこれを天道人ころさずといふ こうきまつたものしやからいのりとはとんだ やぼのいたりなりけるをよく〳〵いひきかせ てくれふと弁天のたのみなれど今この きとうがきかずはなんぢらが【汝らが】かぶが【株が】すたるであらふに よつておれがないしやうでくめんをしてこぢまな りやくをあらわしゑさすべじ【し】ゆめがさめ たならばこの一くわんをみよ さらば〳〵 【八丁裏】 あんけらこんけらゆめさめ たれはむちうに御つげありし ごとくの一くわんだん上に ありければこはありがた やとひらきみるにまき ものゝうちに変魂の名法 一 酉の年酉の日酉のこくに 生れた豆蔵【豆蔵=大道芸人】が三十年来 もちつたへたる品玉【曲芸用の玉か】のかず 七〃四十九 一 高利をとらぬ 座頭のめやに七匁【座頭は高利貸しを営むもの】一魚くわぬ 出家のはなくそ七匁 一 若?女形 のぬれことの時のかづらのけ七筋【ここまで四品、ありそうもないものが列挙されている、はず】 右四品黒やきにして水はつをゝ【水初穂を】 くみ切ひ【切火】にて用べし件昼三度 夜三度あんけらが衣をこんけら着 こんけらか衣をあんけら着しその度 〳〵□ふきかへおこたりなく一七日か間 しゆ文【呪文】をとなへ用ゆるならば全く しるしあるべしうたかふべからず 其呪文に曰 【以下呪文の読み仮名のみ記載】 おで でこ てん にで てこでん おでさん よで てこおで てこでん きよ? とつ? も の じや 【おででこ:御出木偶、人形を使った見世物。おででこでんはそのはやしことば。それを使ったデタラメの呪文なので、2ででこ、おで3、4でてこ…と数が増えているのではないかと解釈(違うかも)。最後の行は意味不明。また呪文の文字は梵字を模したデタラメ。】 【水はつを=水初穂:早朝一番に汲む井戸水】 【切火:火打ち石をカチカチ鳴らすこと。火花と音で邪気を払う。】 【頁中ほど】 両僧 よろこぶ これはありかたい【有難い】 御むそう【夢想?】 一こくもはやく 四品を せんぎ いたそう 【九丁表】 夫より【それより=それから】 あんけらこんけら てわけをしてかまくら中 をせんきすれどもくだんの 四品てに入らずさま〴〵 のてすじをもとめて くめんせしかとも此頃は魚 くわぬ出家と高利をとらぬ ざとうはきついきれものにて 大きにこまり【困り】けるが きつとくふうをめ ぐらしとても人がらに はへる出家や座頭 にはないにきはまり ければ酒【?】ほうすの おいぼれあるいは御めしを 一はい下されませと大 とう【大道?】を ありく【歩く】こぢき めくらのたぐいへ代もつ をつかはしめやにとはなくそを かいあつめる 【同ページ右下】 【あんけら坊のせりふ】 こんや中にたんとためて またあしたここへきて まつてゐやれ 【その左】 やれあり がたいはな くその代りに 弐朱銀とは 又御用なら  今から はな を かま ずに ため て おき ませう 【九丁裏】 扨二品のもとめたれど 毛の七筋にはこまり いかゞしてかもとめんと くふうせしがふつと思ひ付 役者のかみゆひをたのみ 娘がたのかつらのけをもらふ さてゑかたき物は酉の年の豆蔵か【豆蔵なら大道芸人か】 しよちせし品玉なり是も酉のとし から思ひ付て雪の下のつる七と云豆蔵【鎌倉雪ノ下の大道芸人】 へてすじをもつていひこみ酉の日の酉の 刻に代物と引かへ 品玉かづ四十九かいもとめける 【セリフ】 【右下から】 申【もうし、】おめへさんに御むしん がござりやすこんどの おかつらのけをす こし いただ き まし たい 【中ほど】   それはとこぞの むすめにでも たのまれたか 又 ■下【雪ノ下?】 しめ やる な 【十丁表】 あんけらこんけらの両僧やう〳〵 薬にもちゆる四品をあつめくろ やきにせいほうする【黒焼きに製法する】 此黒やき は大ぶん くさい ではないかはなもちがならぬ【鼻もちがならぬ】 これ〳〵そういわつしやるな なんぼ くさくつてもそのかはり には金二千両しめこみ 山だ日を かぞへてまつべし〳〵 うまくまいつたら 三両一分【?】 に まわし  かけやう  なんと〳〵 【しめこみ山:しめしめとせしめる=しめこむ+山。語尾に山をつける言葉遊びが通人の間で流行った】 夫【それ】よりこん けらはあん けらといひ 合せやん して明王【止而明王】 のつげの ごとく 一七日が 間おで でこの しゆ文【呪文となえ】 とな へ黒 やきの御ふう【=護符】昼 夜に三度つゝ水 はつを【=水初穂】でちうや おこたりなくふく 用させけれは ふしきや 七夜の あかつきにいつとも なくしんくわとひ【心火 or 神火飛び】 きたり きし松がふところへ 入りこみへしがまた一ツのしんくわとび出とく若や のかたへとびゆきけるがかないのもののめには すこしもみへざるこそ    ふしぎなり ひとへに御 ぼうさまの 御法 力をもつて只今迄 のまよひがはれました からはこゞ【古語】にござる ごとく過ては改るに はゞかることなかれ【論語にあり】 でござりますこれ までのふらちまつ ひらごめん下さりませ【不埒まっぴらごめん】 やれ けがら はしの けいせい うと ましの 女げい しや とも  に ごろうじ ■し かみのふうも【=髪形も】 かへました 【中ほど、こんけら坊のせりふ】 まづ せつそうが ほうりきは 此くらいな ものでござる 【中ほど下、岸松の母親?のせりふ】 さても きめうな御きとう このやうなありまさな御利 やくもあるものかな これからはおとなしう しやれよ 【左端、岸松の父親のせりふ】 おゝ うれしや 〳〵 【万作の台詞】 みんながぐいのみのしゆん■や さかなは酒一はいをもつてなん りやう【南鐐=銀】八片にかつ■を かさねてのめば ■片 【右ページ下遊女、大杯で酒を飲む男を見て】 よふ のめる ことじやの こはらしい【恐らしい】 はらだ の 【左ページ上、台詞】 なんと文【けん?】 生の はらも大 きいが よくも ふかい やつだの みどりや そでの むめ をすへ ふろに【据え風呂に】 たてろ といへ 【その下、剃髪の男の台詞?】 これは せつしやもお 一つたべ印か な【語尾に印を付けるのも通人の流行り言葉】 【その左、本文】 徳若や 万左衛門が 一子万作は あんけらがいのり にや【、】にわかにかたきも【固きも】 やわらきければこれにしたがふ おは?いしにおだてられこのやうなおもしろい 事今まてしらぬとはよく〳〵なやぼだ 【左下の男、真ん中で大杯で酒を飲む男を見て】 こ?れ で?は のめるぞ てうど これで 三十□は のつゝけ のみ□まふ のあいては     ある     まへ【=相手はあるめえ】 ちと 少 めい いた して □□ へん 申 共□へん □□□ いた□□たい 【右ページ】 徳わかやの 万左衛門は一子 万作がきしつやはらぎ【気質和らぎ】 女好になりしを よろこひけるが 日ましに放埓【?】に なりのちは 両しんももて あまし□への □□□□□ □□□ □ なんぎ【?】 と成 ければ きうに【急に?】 あんけら をま ねき もとの 通りに して 下されとたのむ 【中ほどから左端へ、あんけら坊のせりふ】 いさい せうちいたしたなれと 今度はこんけらと両人 ていのらねはまいらぬ 御はつをはまへの通 千両 こん とは まへ金で ごさる 【下方】 そのきは何ほど でもくるしうござら ぬ どうそ 一日も はやく もとのものに してほしう こさる 【左ページ】 あんけらこんけら 両僧ばくたいのきとう料を むさほりしかともよく【欲】にはいたゞき なく今度はまへ金にて御初穂と名付 て大金をとり又れいの ごとくだんをかさり【例のごとく壇を飾り】やんして明王【止而明王】をいのり けるにふしきやたちまち 白雲まひさがり雲中よりめうわうあらわれ給ひなんちら いかほとにいのりても今度のねかひはいつ かうかなわぬそ【今度の願いはいっこうかなわぬぞ】 まへにもいひきかせしごとく人のせいは天ゟうけたる所にて 神力仏力のおよふものにあらすしかれともなんちらかへそを かいてなげくに【べそをかいて嘆くに】より無理無たいなくめんを してよたれ 薬【業?】 同前の■うくみをもつて一旦ことすみたればもはやかなわぬ 此うへはなんぢら両人がたましゐを半分つゝにとりわけ万作が たましゐと入かへそのかわりに万作がたましゐを半分つゝそのほう どもへさつける【授ける】なりとの給ふこゑともともに一ツのしんくわ【心火 or 神火】とび きたり二つにわかれりやうそうかふところへ入とひとしく二人の しんくわ半分つゝぬけいでかまくらさしてひきやう【ひぎょう=飛行】しける 夫ゟ【それより】あんけら こんけら両人 万作がどうらく【道楽】 なるたましゐ とひ入しゆへ 両僧大どら ものとなり むさほりし 三千両の 金 にて 大いそ けはい坂【大磯化粧坂】 はもちろん かけま【陰間】は いふにおよ はすかまくら 中の遊所へ入 ひたり大おこり【大驕り or 大奢り、次コマにもあり】 の大さわき にてちうやの わかちもしら すたのしみ ける 【右頁 こんけら坊】 つがも  なく  うつ  くし   く  なつ  たに これ〳〵 【右頁 遊女】 あれおよし    なんし   〳〵 あゝもふ  しつこらしい【=しつこい】 【右頁 中】 たんな 一つ いたゞき ませう 【左頁 遊女】 あんさん【?】    は いつそ【一層=とても】 よく おあ【わ?】 がん なん す ね 【左頁 中】 だんな みごと でご さり  ます お■う【?】 なに 一つ 申 ませう あんけら こんけら の両ぼうづ 遊ちらしおごり ちらかして その うへに あんけらが思ひつきにて大じんと名をしれたく衣のうらへあん けらこんけらの名を入てつゝりあめうりの【飴売りの】しゆこう【趣向】にしてうたふ【飴売りは唐人風の格好をして楽器を鳴らすなどして売り歩いた】 げいしや哥吉ともにうたひしやれる 哥【?】 〽むす■■はむかしのことに してやんして どうしたのふ かよやかよふほど【通や通ふほど】 ハア あん けら 【左頁上】 こん けら こん けら あんけら すいとなるハア やつさもつさそつちてせい【やっさもっさ=大騒ぎ、あっちでやれ/ここではただの囃子詞】 きん〳〵め?まいのふ おいのふ 【右頁下】 ほんに〳〵 おもしい【=面白い】 うたで おざりやす と ばゝあ むしやうに つゝめる【甘言にのせる】 哥 〽しやみがへたでも ひくこがよけつ■や してやんしてどうしたのふ【どうしたのう】 すくふこことも【小言も?】コリヤおさへる こごともおもしろい やつさもつさ【大騒ぎ】めもとの 【左頁下に続く】 よいならこつちへこい へん〳〵へこ〳〵へん コリヤ中の町て けいしやさま かいのふ おいのふ おつ おい のふ 【左頁中】 へん〳〵へこ〳〵へん イヤ あつ あいのふ 【左頁芸者横】 あの 哥【うた】は さみせん に あいんせう おもしろ いね 【左頁 左端】 いや 哥は つかもない【つがもない=途方もない】 できた たんなきつい ものでござり ます かくて徳若や 住吉やの両け【両家】 のむすこたち 今ふぎり【不義理】なく よいほとの人物 となり両け共 に目てたくいへ とみさかへける【富み栄えける】 万左衛門松兵衛 むすこをつれ 江のしまの 己まちへ【=巳待ちへ】   まいる 【巳待ち:巳の日を待つ行事。巳の日は弁天の縁日。江ノ島には裸弁天が祀られているので有名】 【右中ほどから】 さやうども 〳〵 われ らも 御どう ぜん 〳〵 【その左】 なむ べさい ふくじゆ そん天 さま 【右下から】 なんと万作さま 今までつかいまし た金では四分 五りん?かしまして もよほどのび ますにはかな【に、ばかな?】【にわかな=考えもなしに急な】 ことを いたし ま し た 大ぐわん しやう   じゆ 清長画 【裏表紙】