上功能 第一せんき。|寸白(スバク)。|癪(シヤク)つかへ。りうゐん。|痰(タン)せき。|頭痛(ヅツウ) 眩暈(メマイ)。立くらみ。一切の腹痛(ハライタミ)。|淋病(リンヒヤウ)。せうかつ 五痔(ゴヂ)。|脱肛(ダツコ)。|長血(ナガチ)。|白血(シラチ)。婦人血の道|産前(サンセン)|産後(サンコ) 月水(クハツスイ)の|滞(トドコホリ)|又ハ子(コ)なき婦人ニ而も懐胎(クハイタヒ)する事妙也 黄(アヲ)たん。|喘息(センソク)。かつけ。|脹(チヤウ)□【にくづきに満の右側】(マン)。|労咳(ロカユ)。|中風(チウブ) 足腰(アシコシ)の痛(イタミ)。|金瘡(キンサウ)。|打身(ウチミ)。切きず。たむし 頭瘡(ヅサウ)。|小瘡(ヒセン)。|小児(コドモ)|五疳(コカン)。|胎毒(タイドク)。よこね 梅毒(ハイドク)|旧(フルキ)|新(アタラシキ)とも即(ソク)妙なり 或ハ目のうすくなる症(シヨウ)又は朦眼(トリメ) 諸眼病(シヨカンヒヤウ)によし 癲癇(テンカン)。|癩病(ラユヒヤウ)。うきの病(ヤマヒ)。|下部(ケブ)の病一切によし 其外いかやうの難病(ナンヒヤウ)にても入湯して普(アマネ)く 治せずといふことなし 但し湯あたり等(ナト)と申事一切無之候    国恩 抑(そも〳〵)此(この)黒薙(くろなぎ)の温泉(おんせん)ハ世(よ)に無比類(たくひなき)名湯(めいたう) なれハ是(これ)まて開(ひら)けざるをうたかハしく 思(おも)ハるれと此(この)湯(ゆ)の涌出(わきいづ)る所(ところ)ハ御縮山(おしまりやま)の うちにして 公(きみ)の御(おん)ゆるしなけれハ開(ひら)く事(こと)不能(あたハず)樵(きこり)杣人(そまひと)抔(など) のミひそかに浴(ゆあミ)し助(たすか)り居(い)たりしに今(いま)世(よ)の 経済(たすけ)となりぬる時(とき)至(いた)りけるにや 慶応三丁卯初冬のころ 公(きミ)のふかき御(おん)慈悲(なさけ)にて医薬(いやく)を 用(もち)ひすして人(ひと)のたすけと成(なり)名湯(めいたう)なれハ 速(はや)く開(ひら)けよと恐(おそ)れおふくも仰(たれ)玉ハりし により普(あまね)く世(よ)のたからとハなりぬ    |道程(ミちのり) 魚津(うをづ)ヨリ二リ三日市(ミかいち)ヨリ二リ浦山(うらやま)ヨリ半リ愛本(あいもと)大橋(おはし)ヨリ 三十丁|音沢村(おとさハむら)ヨリ湯本(ゆもと)迄(まで)山道(やまミち)二リ間 新道(あたらしきミ ち)幅(はゞ)八尺ニ造(つく)り馬(むま)駕籠(かご)往来(おふらい)自由(じゆう)也 且愛本橋|詰(つめ)ゟ湯本迄二リ三十丁間 川舟(かハふね)通行(つうこう)なるゆへ深雪(ふかゆき)之 時節(じせつ)も 入湯(にうたう)さしつかへる事なし    追加 倭(ハ)漢(かん)共(とも)普(あまね)く諸州(くに〳〵)の温泉(おんせん)紀元(はじまり)并|功能(こうのふ)の穿鑿(せんさく)を 観(ミ )るに病症(やまひ)によりふさふとふさハざるありて 其(その)利害(よしあし)わけず入湯(にうとう)すれハ却(かへつ)而|損害(わさわい)をまねくと 温泉考(おんせんかう)|養生録(よをしようろく)|其外(そのほか)|医書(いしよ)又|世人(よのひと)の俚言(いひならわし)とも なり来(きた)りなれど此(この)黒薙(くろなぎ)の温泉(おんせん)いまだ世(よ)に広(ひろ)く 開(ひら)けず万病悉治至妙奇特(いろ〳〵のやまひミ ななをるめづらしきふしぎ)の功能(こうのう)ある事を こゝろミ たまへさるのあやまりなり是(これ)まて諸名(がくしや) 家(がた)なとの確論(いハれしこと)も管見臆断(せまきてまへりくつ)にして更(さら)に取(とる)ニたらず さすれハ天地(てんち)造化(そをくハ)の妙用|無尽蔵(むじんそう)足(たる)事|人智(じんち)を以(もつ)て 全(まつたく)量(ハかり)究(きハ)むへからすとする処(ところ)欤(か)恐(おそれ)べし謹(つゝしん)へし 【右下】    功能 ケ様万|病(ひやう)の治(なを)する根元(たね)ハ唯(たゝ)入湯の 功能のみにあらず此|湯(ゆ)萬(よろづ)の食事(しよくじ)に 用(もち)ひ且湯治中|間(ま)隙(ひま)なく白湯(さゆ)にて 飲(のむ)ゆへ惣躰(そふたい)五臓(ごさう)六|腑(ふ)の痼疾(こりやまひ)を 追下(おへくた)し元陽(げんき)を補(おぎな)ひ気血(きけつ)を潤益(そだて) せしむるゆへ小児(ことも)ハ胎毒(たいどく)を除(のぞ)き 速(すミやか)に成長(せいちよう)せしめ中人(おとな)の腎虚(よハミ)にハ 忽(じき)ニ堅固(たつしや)ならしめ老人(としより)ハ却而(かへつて)壮健(じやうぶ) ならしむ子(こ)なき婦人(おんな)ハ懐妊(はらむ)せしむ および人生養育(からだのやしなへ)に神変(めづらしき)不思(ふし) 議(ぎ)の功能(こうのふ)あるが故(ゆへ)に往古(むかし)より 山人(やまびと)とも神通泉(じんつうせん)とハとなひ 来りし也|速(しき)に来りて功(きゝめ)を 得るふべし 【左下】 文会堂彫 越中新川郡 黒なき温泉 湯元   謹誌