【表紙、貼付け題箋】 疫病除之藥 【右丁】 【蔵書印「慶應義塾」」大學醫學」部之圖書」】 【左丁、本文は次コマ】 【付箋】九 【左丁】 【蔵書印「慶應義塾大學」醫學部之圖書」】    ●疫病除の薬  朝比奈五郎三郎殿傳之 毎年五月四日ニ百草ヲ取其日一日干候而直ニ其夜 一夜斗夜露ヲ當テ翌朝取込能包置テ 其翌六日ニ取出シ又候日々能干上ケ置是を 黒焼ニして施薬ニ出ス若大病ニ候ハヽしきみ の葉五枚ト松葉一握ヲ入茶碗ニ水 盃入 せんじ此ゆ【湯】ニ而右黒焼ヲ給る也   但つる出る草且又水草ハ少シも入不申候    ●小児虫の薬 蝉(セミ)のぬけがらヲせんじ七夜の内ニのませる也 きやう風ニ不成又十五才迄ハ虫気の者可_レ飲             四百八十二 【右丁】   薬氣根ヲ切る妙薬也 料【朱】●ゆかりの色法   梅漬の通りニ漬置候上々しそ能々日々   干上ケ又ほいろニかけ能干上りたる時   粉ニしてふるひ置候事      ●きやうふうの薬   若右やうの節者早速かる石ヲ粉ニして水を   井戸ゟくみ上ケ候釣のまゝ直ニ薬わんニ請入   此水ニ而右の粉を為呑べし是妙薬也      ●出生(あかご)の子見よふの事   赤子鳴く時男女ともニ口ヲ大キク明クは吉なり 【左丁】   口小クあくハ虫気有り随分心付毛ケ妙薬用べし   口を明キかね又聲小ク慥不成ハほふづき虫か又ハ   きやう風の類出るもの也是小児家之傳所也      ●毛虫を止る法   毛虫子之内巣ニ籠り居る時右巣の中へ   燈油をたら〳〵と少シ落入べし程なく   不残たへ申候 又方毛虫生じたる木の枝へ竹の筒ニ水ヲ入        此中へ生のするめヲさきて入枝々へ五ケ所程釣        置ば毛虫委【悉の誤記ヵ】ク去る事妙なり      ●蜘(くも)の巣を取たる跡ニ而又巣を掛       ざる法   くもの巣を取候ハヽ其跡江茄子の皮ヲ   水ニ漬置此あく出て赤く成たる水を 【右丁】    右巣の跡又其辺ニ懸置べし巣を懸る    事なし蛾ニは茄子のあく大敵薬也     ●歯(は)みがきの法  若林秀悦傳  大ク磨砂  中位肉桂  少シ丁子  中位はつか    右四味細末を求メ一ツニ能交ゼて袋ニ入又    箱ニ入て能ふたいたし置べし      但右四品合る時少し口ニ入かげんヲ見ニして      又かげんすべし袋ハ薬袋紙が賣物ニ吉 料【朱】●蓮葉田楽の法  中川吉右衛門傳之    蓮の壱巻葉を得とあぶり夫ゟ味噌を付る也 【右丁】 「濟」 ●蜂不_レ指咒    ごふどふみやうはちあびらうんけんそわか    如此三遍となへ候得者さゝれぬ也 「濟」 ●狐おとす法    市谷柳町ニ而薬王寺江行頼候得者    直ニ落シ呉申候代者請不申由     但是者護持院内日輪寺の隠居所也     尤落候印ニ一聲鳴て出行候様好候得者     右之通ニいたし候由       又方神代の哥の由      昔より人のわさにハ限有り刀【力】を添えよ天地(あめつち)の神   【「濟」は墨角印】 【右丁】    ●疝気妙薬 甲斐徳本直傳秘 一むきくるみ弐匁 一紅花壱匁 又方浅草並木道    〆弐味         一月寺番所ト傳法院                裏門際火の見との間                向なめし茶やニて                上刕屋ニ有こより也                代十二文に                又水道丁こ                より薬下谷                仲丁加藤殿【?】                うら門向裏                  に有り 右之通常のかげんニせんじ七日用る   但疝積有之人常ニ用るよし    ●吹出物 疾 水虫 田虫 鳫瘡 右之外万出来物ニ妙湯神田鎌倉河岸 地蔵屋敷ニ有之薬湯也   但是ハ伊豆国かづら谷朱禅寺出湯ニて   道法凡三十六里又同所こなト申所ニも少シ又 【左丁】   和らか成出湯も有之    ●百日咳の妙薬 又方ときといふ鳥ヲ黒焼ニして            度々呑べし黒焼屋ニ有之 三夫婦有之方の飯ヲ為給るが吉    ●吹出物せぬ法 又咒小石川春日町弓師            堀卯兵衛方ニ而いたし無代也 毎月々三日今ニ生豆腐ヲ上ケて鹿嶋様ヲ 可相願決而出来ぬもの也 又方正月飾の裏白ヲ             黒焼ニしてごま油ニ而付る   但万々一三日ヲわするゝ時ハ十三日ニ上る也    ●婦人巡りニ吉又懐妊なれば三ケ月     四ケ月位之分者下り候薬 【右丁】      くじきニも吉由   湯嶋天神男坂ゟ御成道江出ル辺ニ而   本因坊隣か御籏本屋敷長家より   出ス丸薬一包代百文の由  植村平右衛門之弟                藤次郎殿傳授也 料【朱】●浅草のり貯ふ法  又方石しやうの根ト水引草の                黄色成花ヲ指込もよし   ふらそこニ而も只の箱ニ而も宜候間米ヲ能いりて   此米ニ而右海苔を能まきてうづめ置べし   尤風いらぬよふニいたすべし是傳也     ●馬のいき相の薬人ニも用る吉 岩尾次郎右衛門殿家傳   梅の肉 黒砂 人参 右三味能すりまぜ   吞すべし是妙薬也 【左丁】     ●切レ類江金銀箔置やう法   姫のり ふのり 當分ニ入 しやうがのしほり汁ニ而   能クとき是ニ而附るべし傳也 但ちりめん斗へハ                 右箔置たる裏                 の所江斗裏のり                    いたし候     ●うんのまじない   毎月 辛(かのとの)土にあたる日ニ家の内西ニあたる   所の土を取て紙ニつゝミ封置てしん〴〵   すれバ三ケ年の内にうんをひらく事   うだか【たが】ひなし又右の土をむじん場へ   持行時ハあたるなり     ●ひゞ薬   文化十一戌年十月下旬            四谷右兵衛丁小普請奥田主馬支配            大岡治兵衛殿傳授也   もつやく 丁子 酒ニ漬置付而吉 【右丁】 料【朱】●くづあんねりやう  あわ雪みせの傳也    何成とも一器ニ 葛壱盃 酒ハ弐ツ    正ゆは三ツ 水は四ツ 但入物ハ猪口ニ而も               茶わんニ而も升ニ而も分料ハ               同事    右酒醤油水ヲ一所ニ入是江葛を入能々    かきまぜ夫ゟ火ニかけて煉る也     但よくねれたる時夫ゟハ湯せんニかけ置べし     何時迄置ても堅ク成る事なし     ●せんき幷      疾邪拂薬    やくもふそう にんどう 右當分ニして    せんじ用る 【左丁】     ●腰足痛テ不叶ニ妙薬 かさニも妙薬也          せんきにもよし    ひきがいるヲ皮ヲむき股の所斗取り正ゆ    付燒ニして弐三疋ヲ食ス其風味きじ    燒鳥ニ不違匂ひも同し是ハ文化年中比    御目付高井山城守殿家来是ヲ給テ治ス    其外ニも平愈せし人多シ妙薬なり     但蟇蛙の大ク腹赤キヲがまといふ都而     蟇の類ニ毒なし又かさの妙薬ニハ     ひきヲ丸ニ而ゆでぞうふともニ食ス也     ●痔の妙薬 又方五月五日朝日の出前に田の水ヲ           取て付る妙也    亀ヲ煑テ給テ吉七度程給る時ハ厳敷直る也                   尤身斗ニ而吉 【右丁】     ●安産の咒 又方毎年寺々ニてせがきニ上ケ有之           蓮飯を包テ詰たるわらを腹帯ニ入           〆て居べしけがなく安産也  一京大坂ニ而大御番衆部や之道具ニ遣イ候   すりこ木ヲ頼遣シ是ヲ箱ニ入置産之間ニ   釣置べし安産也    但右すりこぎハ女が手ヲ付候而ハ一切きゝ不申間    一寸ニも女ニ者手ヲ付させ候事無用也     ●加持の上手有之所 ろふがい               りういん 其外とも   本所大川橋向横丁ニ而原庭ト申所ニ而   真言宗幸徳寺毎月二七ノ日斗朝四ツ時限   十二銅斗上ル事文化十一戌年冬承之    但人ハ銅しんちうの品ニて湯茶ヲせんし吞ハ甚大毒也    りういんハ是ゟ生ス依之銀トからかねも無用也 【左丁】     ●物もらいヲ直ス法    物もらい出来たる當人ゟいふ わりや何ヲむすぶㇳ問   咒ニ懸る前に清キわらのみごヲ洗イ清メて手一そくに   三本切リテ置なり    咒ふ人口の内ニ而答て いもらいヲむすふト答なから此                  みごヲ壱度                   〳〵ニ一ツ結ぶ   此のことしく當人ゟ聞事三度咒人答も其度ニて   是又都合三度なり如此いたし済候ハヽその結びたる   みご三ツともニ火ニ入焼候へハばち〳〵とはねるト早速   直る物なり但真より出来する吹出来の物貰   もらいニ而不聞候事植村平右衛門殿養母傳之     ●のんどへとげ立テぬきの法               又方手の平ラ内江梶木一草ト書て              なめるべし妙也   はくてう木の葉ヲ生ニてのむべしぬける   こと妙なり 【右丁】     ●のんどの内江はれもの出来の時吹切薬   赤とんぼふ羽迄も赤キが吉黒燒ニしてさゆ   にて吞べし妙薬なり 植村平衛門殿母隠居傳     ●醫者の上手有所の事   加古良元といふて文化年中の比牛込神楽坂ニ居   其後者神田     轉宅いたし候事此比   四十才余の医者なり 植村平衛門殿弟藤次郎殿   傳之     ●洗ひ粉ニ妙薬   石原侍半次傳之   朝皃の種ヲ粉ニして遣ふべし最上也     ●そこまめニ薬 【左丁】   桑の木ヲ三ツ目きりのごとくニ拵是を以押べし   尤永く押シ候得者膿血不残出候事     ●犬ニ喰付れたるニ妙薬ゆずの花なり   早速薬種屋ニ而とこ柚を求メ常のごとく   せんじ出し吞てよし又此せんじたる湯ニて   度々洗ふべし毒氣去ル事妙なり     ●田虫の薬   極上々の樟脳をそくいニ而能おし少シ水ヲ入   とき付るへし      又至てかゆミ有之時ハ鉄ヲ押付居る      此つめたきニ而一たんのしのきニ成なり 【右丁】     ●烟入ふミ出シ形細工人   文化年中小普請組近藤左京殿支配柴山熊太郎   本所津軽越中守殿表門通ヲ先江東の方   二丁程行二ツ目ニ有之横丁右江二軒目之由   岩尾次郎右衛門殿文化十二亥年四月上旬   申聞候     ●無妙ゑんの能の次第 無名異(むめうい)也   是ハ石州ゟ出る無妙ゑん最上之品也是ヲ   御勘定所江たのミ石州の御代官ゟ取寄て   貰ふ也水どくヲけス又打身痛ニ酒ニ而解   付る 【左丁】     ●通ジ薬 又方竹の粉吞てよし          又方 大根しぼり汁江小豆を漬置テハ干             〳〵幾度も             して干上ケ仕廻置のみてよし   蝦夷地ニ而さりがにトいふ是ハおくりかんきりの   題ニ用る薬なり松前奉行支配小役人所持也     ●金はく置やうの傳   せしめうるしへ極上の弁がらヲ少シ入レ   能交置是ヲ下地江すり込置程よくかわく   時ニ金箔ヲ上より置方全わたニ而そろ〳〵と   おし付る也     ●引風の時熱早ク發る法   そば粉ヲ煎てそば湯ヲいたし中へ白砂糖   を入給る事度々ニ而妙也 【右丁】     ●おどり装束幷道具賣所   冨沢町橋を東の方へ渡り北より二三軒目   古着屋ニ而しろと賣いたし候直段ヲ申候ハヽ   半分直ゟ付テ段々少ツヽ付上ルなり 大和屋治兵衛傳    又久上ニ而おしへ候ニハ久松町堺橋通りにて    大黒屋清六方也尤向ニ鮨屋有之    又道具者芝口三丁目右かわ大尾屋ニ有之    又目白坂中程北かわニ細工人有之     ●雷除の法   山谷浄生院滿谷和尚口授雷除咒文    阿伽陀(あきやだ) 刹帝魯(せつていろ) 須陀皇(しゆだくわう) 蘇陀摩尼(そだまに) 【左丁】    くわんくわらいしん    くわんくわくらいしん     愚道之法孫(ぐだうのほうそん)      謹刻                弘道 湯川姓     ●年中諸薬ニ入飲妙薬 文化十二亥年七月二日                御留守居番万年七郎左衛門殿                より傳授之事   毎年八月三日ニ蓼(たで)を沢山取大釜ニ水壱斗入レ   五升ニせんじ詰此水斗を貯置四季ニ不構何   薬江入入テ吞べし其薬格別ニ功能甚敷能   功能有物なり尤右何薬の中江も少々入交   て用べし 【右丁】     ●腰ノ物彫物師遣候形ヲ押候土覚【朱筆】二千六百法   京都ゟ出ル キヨミ土が吉是ヲねり置候   目ぬき其外とも押べし此土大傳馬丁絵の具や   村田宗清方ニ有之     ●虫歯痛ニ虫ヲ取法 又方本郷壱岐坂御籏本衆               石川与次右衛門殿釘打咒妙也               又方湯嶋六丁目こま物屋ニ而               村尾忠兵衛方のるりの粉が吉                     白キ粉代廿文   土器ヲ火の上ニ置能々燒而瓦か杯の上ニ置   此中へねぎの種ヲ少シ入ごまヲいるごとくに   ぱち〳〵とはね燒る処江古きかさへ   筆のじくクヲ差右土器のふたニして中たね   燒る煙ヲ右くだゟ請虫歯痛方の耳へ   當テ暫居る夫ゟ跡ヲ見べし此中へ細き虫が   沢山出有之物なり 【左丁】     ●又方   榎ヲ切テ火ニおこし此火ニ而此火江韮の実ヲ燒此   煙をくだニ而口中へ請吸入其つわヲ右くだの中へ吐也   尤圖之ごとし    又方湯嶋六丁目北がわしつくいや    裏割たばこや甚兵衛咒も吉               鉢ニ水ヲ入火入ヲ中へ入置          「図 鉢に管を指して口元にあてる」     花井政蔵殿直傳     ●びんほう神を追出しテ入れぬ法   毎月朔日 十五日 廿八日 定式ニ小豆飯ヲたき   手前ニ而豆腐を取寄置たる其とふふヲ手前ニ而   燒とふふニいたし此にをひヲ家内中へちらし 【右丁】   候得者びんぼう神殊之外きらい恐るゝ也   又小豆飯も彼神大禁物也如此いたし   候時ハ其家江びんぼう神決而不来自然と   万事都合宜福貴ニ成る物也     諸事談三巻目 九十五ニ有丹後国竹野郡之内船木の廣            船木村うがの神といふハウガメの神也            同七十九ニも有分銅之事   又 一ツ本     好古真説の内八十四ニ有大国天の事     渕瀬物語の内八メニも有地福和合神の事     此妙薬帳弐百六十九ニも有之同帳二十九ニも有     同帳二百五十四メ初音草の事同三百七十五メ唐もろこしの事 【左丁】     ●突眼(つきめ)ニ妙薬   白砥石(しろといし)の粉細末ニして乳(ちゝ)ニて解付る妙薬也     ●白雲の薬 又方桃の皮をせんじ吞てよし   正月の餅青クかびたるヲ黒燒ニして酢ニ而解き   附る二度付れバ直る也     ●舌(した)江 出来(でき)物いたし候時                  又法昆布黒燒ヲくゝむ                  べし直る也   しうかいどうの根ヲ其根の大サ程飯ヲそくいニ押交ゼ   足の土ふまずへ張置妙薬也     ●くじき薬 【右丁】   からす瓜の根ヲ能干置て細末しごまの   油ニ而解付る若又日を経(へ)候ハヽきわだの粉ヲ   少シ交テよし 料【朱】●なめ物 羽田藤右衛門殿傳秘也   赤みそヲ能すり【抹消あり】此中へしそのミ   しやうが くるみ此三味ヲ能細ニきざミ能交ぜて   是をさとふみつニ而ゆるめる也ときわ味噌是也     ●持薬 せいきヲまし         たんの薬りういんニも吉田沢久左衛門殿傳之   黒ごま壱升是ハ摺鉢ニて能する尤ごまハ油のしとり        出てすれがたき物也咒ニハ米ヲ少シ入するなり   さんやく 唐かしう 白刀豆 各十六匁ツヽ 白砂糖廿匁   くこし【枸杞子】 【左丁】   燒塩二十部一入是ヲ何レも粉ニしてさゆニて常ニ   のむなり都合七味也    但少ツヽ拵候方直よし壱升之胡麻四分一之割合を以拵候ハヽ    ごま二合五勺江くこしさんやく唐かしう白なたまめ    各此四味壱両月ニ而吉 白砂糖後五匁 燒塩の割合准之     ●紙江書損したるヲぬく法  薬種屋ニ有之   木通の小口へ水ヲ付て書損たる字の所江斗   上下ゟ白紙ヲあて木通の小口へ水ヲ付そろ〳〵と   心永ニ打ぬくべし尤上下の紙江墨しみ込候ハヽ   新キニ又白紙ヲあてかへるべし     ●朱墨つやよく仕法 又法ところヲ寒中               水ニ漬置氷らぬよふニ               ほし上ケ堅メ置遣ふ也   右之木通がよし是ハ朱墨ヲ能すりたる 【右丁】   時朱墨ヲやめて夫ゟ右の木通の小口ニて   朱硯の中を能こすり夫ゟ認物ニ遣ふべし   至而つやよく出るもの也     ●ゑぞにべの事   是ハ蝦夷国ニて用るにべ也町鮫の腹ゟ出る   こはくの如く成る品ニて是ヲゆせんニ入熊【能】あたゝめ   とかし候へハさ水のごとく也是ヲ以竹か木成とも   継候ハヽ放れぬもの也但是ハ松前奉行衆幷ニ   吟味役其外下役人方ニも有之     ●歯薬の事 文化十二亥十月五日御腰物方           中村八十郎殿傳之   松のみどり 但みどり無之時ハ す桃の梅干         松かさニ而よし 【左丁】   右弐品當分ニして黒燒となし細末して   貯へ置常に毎朝口中へ含居其後うがい仕る   一生口中痛のうれいなし     ●銀燒付の傳 小石川戸崎町正運寺門前            鎗屋長左衛門傳之   しんちう銅の差別なく能みがき夫ゟ炭ニて   能とぎ上ケ能ふきて苗わらにて後とみがき   夫ゟ梅酢を能すり付其上へ水かねヲゆび   にてすり付其上へ銀はくヲ置べし是職人   の法也 但梅干ヲすり付ても出来候得ども       是にてハ跡ニて錆るもの也    又水かねハ沢山付るハ悪し少ツヽ程よくゆびニて    そろ〳〵とすり付べし 【右丁】     ●鮫さや幷木地ろいろとぎ出シ法   ろいろハ燈油ヲ少加へ上粉の糖ヲ交セ手ニて   そろ〳〵とぎこする也つや能出るまた   石持の石又ハ鮫等ハむくの葉て鮫も石も   そろ〳〵とぎ出ス     ●木櫛の色黄色ニ色能つや出ス法   木櫛の分は何木ニよらずくるみの油を以   切レニ包能念入てこすり其上ヲ上粉の   ふるいたる石灰ヲ以こする也 「濟」 ●来月朔日のヱトヲ早ク知方 【左丁】   大七 小六ト知べし たとへバ今月大の月ニハ   右大の月の朔日子ノ日なれバ子丑寅卯辰巳午と七日目午也                来月朔日午の日ト   知べし是ニ准シて小の月ニ来月朔日ヲ知ニは   其小の月の朔日亥の日なれハ亥子丑寅卯辰                来月朔日ハ辰ト可知   是右朔日亥の日ゟ六日目ニ當るなり     ●中氣大妙薬 又方駿河臺ニ而二万石松平備前守いし            文化年中勤居候若林秀悦            名灸いたし候事  深川辺   中木場藤店茶屋之向之方ニ而看板出有之   代三百銅ツヽ右者中氣ニ成三日之内に   用候得者速ニ直ル三日過候而も用候得者   段々快氣也 せんよふ幷用よふハ委細ヲ         のふ書ニ記有之 【「濟」は黒角印】 【右丁】 【上右、右手図】 疳筋(かんすじ) 男子ハ左より 血ヲ取初ル 右の手は 跡ニて取ル 【上左、左手図】 相印 △ 【朱筆】圖之通人さしゆびの一トふし     寸ヲ取是ヲ圖之ことくニ     折返シて一トふしの折目ヲ中の真ニ當テ左右へ点ス 【下、男児圖右】 寸尺取ルハ白キ 元結がよし 【男児圖下】 血ヲ取針の圖 【男児圖左】 此寸ハ ゆひ一トふし    相印△   くびニ當ル    寸ヲ取たる元結の先の    所の圖 【左丁】 一小児十五才迄五疳の名灸ニて何程成疳症ニても  不治といふ事なし委細圖ニ記置なり 一圖の如く小児しやんとかしこまり頭もしやんと  して座ス夫ゟ白キ元結を以圖の朱のごとく  ゑりニかけくるりと前江廻し胸ゟきうびニ  當テ切夫ゟ其切たる元結の先ヲ人さし  ゆび圖の朱のごとく一トふしゟ其一トふしの間ヲ  寸ヲ取其元結ヲ其長差サニ又今一ツ折返ス都合  二タ折ト成を印ヲして圖のごとく真中を  きうびニ當其左右へ点ヲして夫より又  うしろヲむかせ前のごとくのんどゟ右の  元結をうしろへ引下脊骨の真中へ 【右丁】   きうびの節のごとくニ當テ夫ゟ胸のごとく   左右へ点ヲいたし尤何レも灸数壱ケ所へ   十五火ツヽすへる也 一 圖ニ有之手の疳筋より血を取事都合   三度ニて三度目ニ跡ニ而灸点いたし扨又血を   取ニ者木綿針がよし男子ハ左ゟ取初メ跡ニ而   右手ゟ血を取ル但突たる穴より出るたけハ   何度も血をしぼり取ル病強キ程血多ク出る也 一 寸尺ヲ取ニハ白元結がよし 一 灸点いたし候ても不就成日が又ハ宅ニ而取込の   事あらバ翌日ニても吉 一灸数ハ一ケ所十五火ツヽ 【左丁】 一 忌中又ハ服中ニ而も構なし 一 寸を取たる元結ハ焼捨べし 一 乳をふきたる紙ハ雪隠ニ入べし 一 眼病の躰ニ見請候節者左のことく灸点いたし遣候  【小指、薬指を折った右手掌】尤何レか両眼之内あしき                方江点スべし又両目とも                不宜時ハ左右とも点ス灸                数右同断ツヽ日々一ト廻り也                此帳百三十六枚目ニも有之                おこりの灸点ニ似たり                 但法ハ本所逆井渡向四軒                 茶屋ゟ右江行徳海道半道程                 行左江西一の江村ニ而大杉                    権五郎方ニも有之由 【朱筆】圖のごとく小ゆびの先の      あたる所灸点スル也 【右丁】     ●ぬいもよふいたし法   糸類ハ何糸何色にてもぬいをいたすぬい糸をいふ   丸金糸幷大白糸等ヲぬい付るハふせ糸といふ   金糸ハかば色のふせ糸ニて是ニのりヲいたし   能干上ケて遣ふ   艸木の葉ニハもへぎ糸又ハひわもへぎ糸等也   水ヲ縫ふニハ大白糸二筋幷てふせ糸を以付る   但都而何糸ニてもよりヲ懸るハ悪しよりヲ   掛ると糸のつや不出   一切のもよふぬい上ケて枠(わく)ヲはづす前ニぬいもよふ   の裏ゟ薄キおしのりを以付る此のり能干上りて 【左丁】   わくよりはづすべし   下絵ハ水ヲ不入只の粉おしろいニ而書也   地の切レハ左右ともわくへからぬいニぬい付る   ぬうニハ上へよりハ左り手ニ而針ヲ遣ひ右の手ハ   下江入置下ゟ針ヲ上へ突出スべし   縫い初ハ糸の崎へ結び玉ヲいたしテぬい初メ仕廻ニハ   糸の先ヲ長クのこし置テ是ヲのりニ而付る也     ●虫歯其外歯薬 又方節分の柊葉ヲ             水ニ入置和らかニしてたゝミ             痛歯ニくわへ居るべし   青山宮様御門向横丁 かわ二軒目ニ而   御家人之由前田氏方ゟ出ス代三十二銅ツヽ    又方赤にしの貝塩ヲ詰て白燒ニして常々歯みがきニ遣ふ也 【右丁】 「濟」 ●小児人見知るヲするニまじない   代二三文程の   一金砂子ヲ付たる土の天神様ヲ壱ツ其人見    しりヲする子の守江入下ケさせ置べし    止るものなり 料【朱】●料理ニ用る焼物肴焼候節      鉄きうへ焼付ぬ法   焼物肴焼掛る時うちわヲ以向へ手ヲ   のばし向ゟ前江の方へ三度火ヲあをぎ   夫ゟ又前ゟ向へ三度あをきテ夫ゟ常の   通上よりおふぐべし扨能焼け候ハヽ   引返ス時自分のひたいヲ三べん手の平ニテ 【左丁】   なで直ニ其手ニテ右焼肴の上より肴へ   さわらぬよふニ三べんなでるまねヲして   夫ゟ引返スべし焼付ぬ物なり     ●欣枡散(きんしやうさん)の法 俗ニ蝦夷香泉と云   菓子昆布ヲ能々火ニあぶり能クかわかし置て   やげんニておろし是ヲ能ふるい此中へ山枡ヲ   細末して能交ゼル也又肉桂もよしのふ書左ニ記ス袋ニおすべし   但昆布買所     菓子昆布壱〆目 弐匁壱分    霊岸嶋      元揃壱〆目   壱匁八分    會所ニ而     しのり壱〆目  壱匁三分 【濟は黒角印】 【右丁】 【薬袋表、枠囲い】 丸にカタバミの家紋 新製 欣枡散(きんしやうさん) 一第一精氣をまし痰を解し能血を治め  腹内をあたゝめ能とく【毒】を出し胎中の滞を  下す多産の婦人ニハ別而吉常に御用有て  其德多し  文化十三子年正月半田氏製 【袋下】 竹筒か曲物又ハ 焼物等ニ詰るべし       三十二銅―△   代   四十八銅―半月形       百銅  ―○           相印覚     ●席浄煙(せきじやうゑん)の法 代十六銅ツヽ   壱升ノ小豆ヲ細末し其中へ干たる   桜の葉ヲ細末し弐合交ル也 【下段、薬袋、枠囲い】 秘法 席浄煙(せきしやうゑん) 半田氏製  何によらず不浄の香匂ひ候ハヽ  早速手あぶり火入の類へ此薬  少しツヽ入れ程よくたくへし  悪敷香を止る事妙なり 【右丁】              田沢久左衛門殿傳之     ●暑寒にとぢられふさぎて食物薬も不通言施したる時の法   さゆヲ煑立て中へ手拭ヲ入れ程能しぼり此あつきヲ   みぞおちへ何度も取替〳〵押あて置あたゝめ   べし立所ニ能ひらく也其時薬ヲあとふる也   又吐も下しもせぬ時ハ塩湯沢山給ル也吐か下ス也其跡ニ而薬用るべし     但落馬等ニ而打候ニも其打たる所ヲ如此すべし     是妙ニして立所ニ平癒ス其切ニ而跡引不申     又肩張たる時も如此ニして治ス     ●油虫除ケ   木々ニ油虫附候時紙ニ而も小札江左之通   認メ枝々江所々ニ下ケ置べし油虫去る事 【右丁】   奇妙なり【紙縒り図】前銭十六文 「濟」●足ニまめふみ出さぬ咒   遠方江出候節足の裏ニ錐(きり)トいふ字を   書て行べし妙なり 料り【朱】●初たけ作よふの事 小出大助殿ゟ傳之   男松の木有之下の辺へ初 茸(だけ)の錆(さび)たる   取喰ぬヲきざみて所々江沢山ニ土の上ニ蒔テ   置べし自然と其気土ニ残り有て翌年   より其辺江初たけ生ずるもの也     ●鉄物さび落ス法 【左丁】   もみ糖【糠】沢山の中へ入て能クこするべし   若又落兼候ハヽ水を少ツヽ打テよし     ●塗り物仕上ケみがきの法   うるしぬり物ハ極上の小ぬかヲ燈油ニて   しめし手の平又ハゆび先を以念入こすり   候得者つやよく出る物是塗師方の   傳秘なり黒朱其外何ニも如此ニ而よし     ●かさ直る薬 又銘法ニハひきがへるの腹わたを取り捨            其跡へせみのからト耳艸ヲ當分ニ入            能詰黒焼ニして六十一日ケ間さゆニて吞也   草のどく溜メを干置て三ケ年給候得者   本腹ス但塩氣者堅ク忌べし 【「濟」は黒角印】 【右丁】     ●無名異(むめうい)の事 かた張たるニ而付手妙也             常ニせんじ用テ諸病之妙薬也             但土びんニてせんじ候事   無めうゐ者石州濱田金山ゟ出る金氣   最上之品ニ而例年石州御代官ゟ是ヲ   錫の壷ニ入献上有之夫ゟ御残御配り者   御支配ニ付御勘定奉行衆幷勘定吟味   役衆同組頭衆江も配り候事諸病ニ由   水替りニ由どくじんとうゟも厳敷品也            但製方ハ五百十五ニ有     ●水替りニ妙薬   九年穂の皮を陰干ニして置尤ほそく   割ミて干が吉道中抔ニて水代りヲ給候節   此皮を能かミて夫ゟ水か茶も給るべし 【左丁】     ●角を器物に作る法  小石川戸崎町                 鎗師長左衛門傳之   鹿の角ヲ鮫ニて卸し細末し青竹の皮を外の方斗能取り   厚紙の如ニ削り是江角粉ヲ入テ夏月厠の壷の内へ入置   廿日程へて出ス右の角粉とろけて糊の如ニ成是ヲ物へ   延付細工スべし又是を堅シト思時ハ大根のしぼり汁に   ひたすべし堅ク成ル又ハ甘艸ヲ煎ジ出シたる水江入   置べし又方鹿の角ニ鮭の頭ヲ入煑るも和らかニなる    上ニ書たるハ古方也細工ニよりて難用秘中の秘には    角を鮫にておろすか又ハ鉄槌ニて枠【砕】き鍋ニ入水ハ    見合入て䗜蜒(なめくじ)を数拾ヲ修入て能煑る若解ざる内に    水干ハ別ニ湯を沸シ置是ヲさすべし如此すれバ後ハ糊の    如ク解ル若餅の如ニ而細工ニ仕がたくハ暫置べし堅ク成ルいか    よふの細工ニも出来候若早ク堅メ度ハ甘艸せんじ水ニ入て吉 【右丁】     ●䗜蜒(なめくじ)作 又法しつける地に付古傘ヲ置へし           此中へなめくじ出来いたす也   竹廣記テハ地骨皮(ジコツヒ)牙硝(ケセウ)柳枝(リウシ)水を用て煑ル     ●象牙(ぞうげ)鹿角ニテ珊瑚珠(さんごじゆ)ニ仕法   鹿の角ヲ其器の形を拵へ上酢ニ蘇枋(すおふ)ヲ入レて是ヲ煑る   取出し堅煎脂ヲ能々付て色よき時又々さつと以前   の酢へひたし煑べし色見合取出ス寔ニ珊瑚珠玉ニ   成るなり     ●石を和ニする法   胡葱ヲ舂たゞらかし【爛らかし】冷水ニ入焼物の鍋ニて煑ル水   減らハ又熱水を入煑る叓三伏時石和カニ成るヲ   度とす何にても器に造べし終而甘草水ニテ煑る事 【左丁】   一伏時なれハ又元の如くニ堅ク成るなり     ●磁器類江穴ヲ穿又ハ心ニ任セ切製術   磁器の類江穴明ルニ夏月極暑の時杦の木ニて錐(キリ)ヲ拵へ   此きりニ䗜蜒(なめくじ)ヲさし通シ炎日ニ干べし能かわき付物也   この錐(きり)にて穴ヲあくべし心易く穴穿なり又鋸小刀の類   も拵へ是ニ䗜蜒ヲ干付べし何様磁器にても切レル叓疑   なし     ●硝子絹   絹ヲ火の上に干引張テ渋柿ヲ弐ツニ割テ是ヲ数遍する   硝子(びいどろ)の如クニなる又なき時ハ上之新渋ニ白砂糖ヲ加へ絹を   火ニあふり引べし此絹ハのし目なれば一段吉又一方には 【右丁】   荏桐油壱升是なくハ胡麻油芥子の油よし   石灰弐分能細末シ能々ねり合セぬる也     ●綱ニ引ちやん   松脂壱升 胡麻油三合 鉄松壱升 胡麻壱合          木ニハ弐合ニて吉     ●万継物の薬   饂飩ノ粉壱升さわ〳〵と煑立石灰弐合細末ニして入   搗合ヲ置焼物塗物一切つぐへし庭の木石などに   苔ヲ付るも是にて附べし 又法玉子の白味に   石灰ヲ交ゼ継べし庭石色付是ニ煤ヲ交セ引べし   古く見事ニ成るなり 咒【朱】●蛙(かわず)の鳴ヲ止法 【左丁】   菊沢山植たる中ニ花の咲ざる菊有なり其葉ヲ取   黒焼ニして其池か堀歟の水中へ入置べし     ●毛生薬   鼠の赤子 蛭(ひる)の膓(わた)をしごき真菰の根右三色黒焼ニ   して胡麻油ニて付べし     ●木ヲ曲ル法   木にまんていかの油ヲ付あぶりそろ〳〵と曲ル也     ●木ニ墨能染ル方   蒼甘の汁にて墨をすり木ニ文字ヲ書べし一寸程通ル 咒【朱】●革の類水へ入てこわらぬ法   水壱升柿の葉百枚入五合ニ煑詰切菊ニて革の裏より 【右丁】   三偏【遍】程すり付べし水に漬てもこわらず 「濟」 ●夜道難のがるゝ眼脉 咒【朱】先眼を塞き目頭を指にて押テ見るへし銘々皆   眼中に金輪見ゆる也不意の難ニて逢前ニハ此金輪見へズ     ●五辛を食シ𠺒止ム   艾を鉄砲玉程ニ丸メ火ヲ付揉消シ是ヲ飲べし又生 芹(セリ)   一本食し熱キ湯ヲ吞べし     ●紙永代不離法   曼珠沙花(マンジユサケ)俗ニシブト花ト云根ヲ摺つぶし是ニ而紙ヲ継也 「濟」 ●新鍋釜のかなけ抜方   其鋳口江一ト火灸すへべし鉄氣不出也 【左丁】     ●膠ツキノ方   藜藘(ヲモト)をもと根ヲ黒焼ニして膠をぬる     ●鉄錆ヌ方   杉の木炭又桃の核ヲ焼粉ニして交ル 「濟」 ●病人生死ヲ知る法   病人の年 煩月 煩日 此三ツヲ合セ三増倍ヲ掛ケ九ツ拂   余り無ヲ半吉又調なれば必死ス又半ならバ吉也     ●木ヲ結ふ法   削たる木を結ニハ鼠の糞を沢山あつ【め脱ヵ】灰の上ニ蒔其上に   薦ヲ覆一夜置べし馬蛭と成ル是ヲ釜ニ水ヲ入湯沸シ 【「濟」は黒角印】 【右丁】   熱たる湯の中へ木ヲ入暫煑テ此木ヲ手拭にて指添   結べし自由也     ●焼刃もよふ付方   鼠 糞(ふん)を水ニて解き是ニ而もよふヲ書半月程置テ硎(とぐ)也 「濟」 ●盗賊ヲ顕ス法 「濟」   其年の年徳神江備たる昆布ヲ黒焼ニして酒の中へ   入て此酒ヲ疑鋪人々ニ飲セ見ルニ盗ハ忽チ頰腫叓妙也 「濟」 ●寒手足凍へざる方   樒の実ヲ生酒に浸置陰干ニして細末し手足ニぬる也     ●飛行散   荊芥(ケイガイ) 防風 草鳥頭 細辛 藁木 右五味細末シテ 【左丁】   草履又ハわらじの内ニぬる油ニて解ぬるも吉草臥ズ     ●小便こらゆる方   青松葉ヲ能クもみて臍の内へ入置べし     ●蝋燭空ニ釣方   能々そこねざるよふニして中へ水銀蝋壱分白蛇五分   龍脳三分是ヲ水銀ニて錬合セしん江入尻の方へ薬の   不出よふニ詰置いつ迄も火ヲ燈スべしろふそく中ウにて   ともる事妙々也     ●蚤(朱・ノミ)碎方   夜式の下へ苦参を鋪べし又方牽牛花実ヲじゆばんの   両袖ニ入置べし又方百部 䄅芃二邑粉ニして火ニて如焚ニ燻(フス) 【「濟」は黒角印】 【右丁】     ●石へ穴ヲ明法   山査子(さんざし)ノ粉一つまみ石へ穴ヲ明たき所ニ置灸すへて   䗜蜒ヲ竹の先ヲ錐(きり)の如く削り此先へ䗜ヲ指テ日ニ干付テ   是ニてもむなり     ●幾夜も不眠法   鷂(ハイタカ)の尾を黒焼ニし水ニて解臍ニ入上ヲ糊ニて紙ヲ張置べし 「濟」 ●闇夜眼見ル法   梟根を黒焼ニし粉ニして萍(ウキクサ)の汁ニて解目ニ付べし見ゆる也     ●銀箔錆ズ   箔下ニ鶏卵の白ミ引其上ニ銀箔ヲ置又上へも白ミヲ引テ吉     ●雷ニ中リシ蘇生ス方 【左丁】   降真香(こうしんこう)ヲたきて全身ヲ薫べし甦(よみかへる)なり又法ニは   紫藤香(しとうこう)ヲ懐中スべし     ●鯨髪ヲ付鱘   竹の筒の中へ鮫のからの削 屑(クズ)を堅ク搗入木ニテ堅ク口ヲシ   筒ともニ釜江入久鋪ゆでゝ取出シ中の鮫とろりと解ケ   たる時本石の灰ヲ交そくいへらニて交つぐべし     ●うるしヲ離ス法   サハカニヲ入ユデレハ離ルヽ也     ●膠(にかわ)ニテ鑓ヲ離ス法   茄子ヲ摺つぶし付置べししばらくしてのちニは   はなるゝ物なり 【右丁】     ●きのこニ當りし時   山梔子ヲ煎じ飲テよし 又ぼうふうをせんしよく              ひやし置吞てよし              又にんどふのしぼり汁を呑て吉     ●鰒ニ當りし時   セうのふヲさゆニて吞べし 咒【朱】「濟」●人喰犬ニ哥   我れハ虎いかになくとも犬ハいぬ獅子のはがみを恐れざらめや   右の大指より戌亥子丑寅と折強ク握る也 「濟」 ●手負生死ヲ知る方   白馬の糞(ふん) 蓮肉 右弐味等分香色ニあぶり能舂交ゼ   ぬるきゆニて用る快氣するハ此薬ヲ受ル本腹せざる人ハ   吐逆するなり 【左丁】     ●酒かわらぬ方   藤の実をいりて二三粒入置べし     ●木のよごれを洗法   皂莢のせんじ汁にて洗べし     ●神仙不醉の秘   白葛花 小豆花 ケンホナシ各等分 良姜少 塩少各   どんぐりの大サニ丸じ一丸飲バ十盃呑ム又十丸百盃呑醉     ●火ヲ久敷貯法   胡桃壱ツ火ニ入半分燃テ火ニ成たる時熱灰の内ニ埋ミ   置べし四五日きへず 【「濟」は黒角印】 【右丁】     ●あかゞり   五月五日早朝ニ苦(にが)ナ(な)を摘(ツミ)汁ヲもみ出し出来ル処へ付ル     ●疱瘡澑り薬   タマリ穴何程ニ深クとも鶏子の白ミヲ落シ入べし     ●魚目   餅米ヲ嚙ミて付べし 咒【朱】「濟」●夜歩行の時咒   左ノ手或ハ右手の中指ニテ手の内ニ我是鬼ノ三字ヲ書テ   此手ヲ固ク握リテ行べし自然ニ恐ルヽ事なし     ●飢ヲしのぐ傳   黄石公張良ニ傳ニ曰 仙粉三匁ヲ五年酒ニ浸シ干又浸テハ干                  酒壱升ヲ浸シツクス 【左丁】   壽延 人参各壱匁ツヽ混合丸シ米粉ヲ以て衣とし   能干堅メ用ユ壱ツ腹すれば二三日飢ス氣力常よりも   勇力大ニ増然トモ毎日一丸ヲ服して可也仙蕎麦粉 寿   𫟀米是秘事也 「濟」 ●鶏鳴吉凶法   黄昏ニ鳴ハ大ニ吉事初夜ニハ悪事夜四ツ時ハ妨ケ也   雌時ヲつくらハ其家亡婦人家乱べし     ●絹布江どふさ不引して書法   しやうがのしぼり汁又ハ糯米の粉ヲ入テ墨スリ書べし     ●生蝋ヲ遣よふ   生蝋解シ時焼塩少シ入べし急ニ不固して繪よふ等 【「濟」は黒角印】 【右手】   能出來ス 近藤三右衛門物語     ●休息丸 阿蘭陀直傳   阿片(あへん)蟾酥(センリ)右壱匁ツヽ紫稍華(シちやうくわ)五分 射香(じやこう)弐分   龍脳(りうのふ)弐分右粉ニして酒ニて解丸ズ其上ハしんしやニて   衣を掛ル扨又用ル時つわニてとき亀の尾江ぬる也     ●諸湿拂 ヘキシヤコウ吉 又方まこもヲしつけの                  有処入物の内下へ敷べし                  盆會の品ニ而も直吉     ●痰咳の妙薬   甘艸一味ヲ細末し飯糊にて丸シ口中含ミ候得者咳止妙也   又法からす瓜五十但実斗去白砂糖壱斤酒壱升右   細末其上ヲ酒ニテ解炭火ニて煉薬程ニ成候節少ツヽ用ル也 【左手】     ○聦明散   龍骨 遠志 石菖蒲 亀甲各等分     ●八仙散   天門冬 生地黄 肉桂 茯苓各一両 石菖蒲   五味子 遠志甘草の水 各三両         ニて浥し 咒【朱】「濟」草臥ぬ妙薬   烏頭 𫇨芎 ビヤクシ 各等分ヲ細末しそくいのり   にて煉り九分四方程の紙ニぬり足の土ふまず江張置べし     但シ六文程求候得者三四度用ユ 【「濟」は黒角印】 【右丁】     ●角ヲ解ス法   角ヲ切蓋有之器ニ入右の中江水を入置なめくじヲ入   蓋をしかといたし置候得者解ル叓妙なり     ●青角の法 今村氏口傳   角ヲ彫上ケ緑青壱匁五分 タンパン同 生ミヤウバン五分   水 右銅鍋ニて煑尤水酢ともニ追々さす酢少入ル     ○チヤン油幷シヤウヘイト同   ヱの油壱升 ミツタ草弐拾目 古錢六文   右三品入レ何も𤋎申候尤炭火ニて藁みごヲ入油ヲ付   水中へたらし入て見其たらし物丸ク成時分藁みごの   ほき〳〵折候も相圖よしと知べし 【左丁】     ○石江文字を書落ス法   きせるのやにヲ墨ニ摺交ゼ是にて文字ヲ書せゝなぎへ日数   六十日入置テ後取出し見る文字石ニ染込洗テもすりても   決而不落物なり     ●鮑貝の内江絵歟又ハ文書ヲ認メ鮑の穴ヲ能ツメふさぎ   酢ヲ沢山入壱ケ月斗過て酢ヲ捨貝ニ書たるセシメうるしヲ   おとし見べし     ●人形の繪の眼ヨリ光リ出法   胡粉江 蠧(シミ)是ハ本類又ハ紙類江 是ヲ摺交セ彩色スル也        自然とわく箔虫也 咒【朱】●鼠通穴ヲ止ル法   蒟蒻玉ヲ入置テ吉又蓮の莖ヲ入ルモ吉又其外カミたる所ニハ   雄黄ヲぬる又甘艸ヲぬるも大ニよし 【右丁】 料り【朱】●道中味噌の仕方   極上々味噌ヲ能摺板ニ塗付日ニ干テ粉ニして持参し   食する時水ニ入汁となす旅中の調法なり 咒【朱】●くだ物植ル法   上十五日ニ植ルハ実多シ又下十五日ハ実少シ凡 菓(クタモノ)始テ熟する時   両手ニテ取べし年々実ヲ結ぶ又社日ニ菓木の下ヲ舂バ実   落ス物なり 「濟」 ●水ニ溺(おぼれ)レ死たるヲ救方   足の大指のヒカヽミスル人ハ生ル管(くだ)を以明礬ヲ鼻より吹入   べし暫有テ水ヲ吐也 こふもんの菊座外江ひらきはぜ             かへりてハ不叶候事又〆り有時ハ生ル     ●石摺の法      「二千七百法」【朱】   白芨 酸漿艸 細粉 白礬各等分右ノ白芨白礬粉ニして 【左丁】   能ふるひ二色目壱分細粉二分入能スリ酸漿草もミ汁ヲ取   粉薬解テ文字書乾 墨ぬり乾薬粉拂            ツヤ出唐蝋にて摺ル     ●酒カビ味酢ク成時直ス法   蚫貝ノ白焼を粉ニして酒の中へ入ル忽直る也   又藤の花陰干ニして入よし又からす瓜の実を能洗火ニて   焼灰ニして入てよし又酒壱升玉子一ツ石膏半両細末シ   縮砂同杏仁七ツ右四色酒入壷或ハ樽入口ヲ封して三日置べし 咒【朱】●蝿ヲ去法 又方浅草御むまやバしゟくわんおんの            方へ先西かわ            如圖角々出ちがい有之横丁へ入右かわ            四五軒目ニかんばん            出有之       【地図あり】   十二月の雪水ヲ貯置夏日果子飲食類ニそゝげハ去ル   又方五月五日の午時紙に白の字ヲ書柱の四方に張置べし 咒【朱】●鼠穴ヲ塞叓 【「濟」は黒角印】 【右丁】   正月初の辰ノ日幷毎月庚寅日壬辰ノ日上叚の滿ルノ日   鼠穴ヲふさぐべし又三月庚午ノ日鼠ヲ取り尾ヲ斬テ其血ヲ   家の梁ニ塗べし 咒【朱】「濟」●小児夜啼止ル法   天皇皇 地皇皇ト六字ヲ竈の床ニ書置ハ止ル 咒【朱】●疫病家ニ行時法   右の手の中指ニテ坎ノ字ヲ書其手ヲ坒ク握リテ行也 咒【朱】●川渡ル時   土ノ字書べし又朱にて書たる字ヲ身ニ佩(ヲヒ)レバ難(ナン)なし 咒【朱】●蚊去法   天地太清日月太明陰陽太和急々如_二律令勑_一 【左丁】   暗キ所ニ向ひて此文ヲ七遍念じ燈心の上ヲ吹テ此燈心   にて火ヲ點ズべし 「濟」 ●三箇悪日   大禍 摩訶盧(マカル)補  貪欲(トンヨク)神   狼藉 波羅毘(ハラビ)神  嗔恚(シイ)神   减門 伽羅陀(キヤラダ)神  愚癡神     ●人馬平安散賣所   四ツ谷御門外  薬種屋ニ而はいぶきやト申   方ニ而壱器百文是ハ引風其外氣分うつ   とう敷所かぐへし氣分引立テよし 【「濟」は黒角印】 【右丁】     ●外科(げくわ)の鋏遣候傳秘の事   本之阿蘭陀鋏ヲ求メ何療治ニも能々   なめてつわヲ付て遣かふべし尤阿蘭陀の   はさミヲ用る時ハふしぎニ痛少シ又々   俗ニ云鼻茸等ヲ切ルニ能なめねバ鼻の穴へ   入らぬ物なり依之きんそうヲ縫候にも   糸ヲ一針〳〵ニなめ縫而ハ又なめてハ其糸針ニて   縫なり是極秘也     ●とふぞく出ス法   松平大和守殿領分武州川越ニ而松山と   申所 箭弓(ヤキウ)稲荷大明神江自分か又ハ   代参かを以願かけ候得者早速出申候 【左丁】   尤是ハ右大和守殿家来足軽之内   瀬谷(セヤ)林八と申を尋テ頼候得者此者が   願がけいたし呉申候且又むじんニも願   がけ次第ふしぎニ急度中り候事     ●無名異(むめうい)製法(せいほう)の事   是ハ水沢山ニ入能粉ニしてかき立能すりて   水ヲおどませ置此上ハ水ヲ外之壷江成共   入置おどみたるハ極細末也是ハ石州濱田ゟ   御留品ニ而献上ニ成る上品ニ而目方四匁壱両ニ付   代金百疋位いたし候夫ゟ跡ハ段々順々に   すりてハこし又〳〵〳〵夫ヲ二番或ハ三番ト   申品なり 【右丁】     ●懐妊する法 又法曲渕甲斐守殿家傳ニて懐妊            有無の法心次第成る仕方有之   是ハ七五三の法ニて是万事の初ニして七ハ天の七曜星   を評し五は五行五常也三は天の三星とすこの   七五三の数ヲ合セ見れば都合十五ト成る此十五は   朔日より十五日迄と定メ則此十五日ケ間ニ物事   滿るたとへバ婦人月々の不浄ニなれば十二日ケ間なり   此内婦の性ニより四五日か又ハ六七日流血するも有り   此十二ケ間の不浄相済翌十三日十四日十五日と三日の   間ハ情分滿て此時懐妊するハ其子誕生して   後疱瘡軽し躰毒其外腫物等の憂イなし   又此月水の内ニ懐妊する子ハ癩病と成る又此   出血止ミたる跡ニ而も十二日不浄の日数の内ニ妊する   子ハ兎角田虫其外身ニ腫物生ス一生少ツヽハ其 【左丁】   氣有物なり陰事慎べし又一ケ月三十日の内   上ミ十五日の間ハ右の如し十六日より末の十五日ケ間ハ   女の精分おとろへ不_レ全依_レ之先ハ孕事少なし   尤此三十日ハ其婦人月の内幾日ニ不浄ニ成り候共   其不浄ニ成たる日ヲ初日朔日と心得て夫より   先へ順ニ二日三日と筭へる也是至極の秘事也     但し植木類くだ物も同事ニて上ミ十五日ケ間に     植たるハ実沢山ニ生ス下十五日の間ニ植たるは     実少し 又懐妊せぬ女ハ玉門の内子壷ニ申分     有之物なり其生レ付ニて子の壷曲リテ有歟     又ハうつむくか又ハあおむくか成べし左候ハヽ     常ニ夫が中ゆびニてさぐりて其 形(なり)ヲ本途ニ     直スべし数へん如此すれバろくニ成物なり     又懐妊する法ニハ子宝(こだから)草の根ヲ葉莖共ニ 【右丁】     能ゆでゝ給る又鉢植ニして常々願ヲかけ愛する也     又此子寶草の実ヲ吞てよし又此実ヲうすき     紙ニ圖之通ニうすのりて子持筋ニ張り置是ヲ     交合の時男ハ玉茎の元ニ結付女ハ玉門の     ふちニ張置夫ゟ交合スべし此法書之通り     いたし候ても懐妊せざるハ全の子なき性なりと     あきらめてよし又神仏へ願かけるハ全の     無利ニしてたとへ子出生有とも悪人か又は     かたわ者成べしうたがひなし又ハ其子     せい長すらバ父か母の内死ス事有なり  【上図文言】  結目ハ上の方か下かの内が吉       玉茎の元江むすび付ル  【下図文言】  玉門江張ル     但子宝草の実は至而     細カキ種なり又子有無ハ     人相ニも出テ見ゆる物なり 【左丁】     ●ぢん薬拵法   蛤を酒斗り入て水なしニからむニして   能口明キ候時実斗取りからを捨て   直ニ其𤋎汁の中へ蛤の実斗入又候能ク   酒ヲ入テ得と煑付候時成丈わたを   去り則其𤋎汁の中へ大白砂糖を入レ   加へて又候能煑付露無之時取出し   能摺て壷物ニ入置常々用る時ハ是   最上のぢん薬と知べし     ●鶏肉丸(けいにくぐわん)の法 精分よわき人ニ吉   にわ鳥の柏(かしわ)女鳥一羽能毛焼迄もシ腹綿ヲ取 【右丁】   頭と両足を切捨夫ゟ丸の侭鍋ニ入上酒ニて   得と煑候得者骨こと〴〵と能はなれ申候   夫ゟ取出シ能々骨ヲ取捨身ニして此中へ   大白砂糖ヲ加へ夫ゟ能々摺て錬薬の如くニ   成たる時さまし置て丸薬ニする也                    小石川小十人丁ニ而     ●労症之妙薬 弐番鑓大御番組頭上田三左衛門殿            文化十三戌年二月廿八日口傳ス   土用中極大暑の日ニどじやうヲ求中ニも   至而精分強きヲ天火ニて干付ル是ハ生キ   たるどぜうゆへはね候間深キはね出ぬ   物ニ入置干殺シ極大暑の日ハ一日ニ而夕方ハ   能干ル也尤一ト時も干付候へは死候間夫よりハ   板の上抔ニ而干べし且又右どじやう脊ニ星 【左丁】   の府有ハ悪し真どじやうとて脊ニ府星   なく色黒きキ方が吉是ヲ能干付上ケ候ハヽ   土器ニ入目ぬりいたし針かねニ而十文字ニ結ひ   黒焼ニして細末ス是ヲ病人から腹の時   みゝかきニ五ツさゆニて飲む又しばらく過而   給物ハよし尤労症も至而おもき   病ニ成候てハ印なし初の内ニ用候得ば   全快相違なし 又方松平備前守二万石駿河藩の          上屋敷ニ居いし若林秀悦名灸有     ●瀬戸物ヲ張子ニて拵る法 水けニハ数日漬置候ても                  不苦候但あつきものハ                  不入候事   真ニよりさきたるキ紙ニ而上ハ張迄数へん張立尤渋せんニして   仕上ケハ唐の土ヲ以白ク塗上ケ能干上ケて夫ゟあいにて絵ヲ書   ひきの油ヲとかしてはけニて引也 【右丁】     ●そろばんニて雷除の事   十露盤弐拾七間   一ト桁ヲキ     七二九六   一ト桁ヲキ     四三弐五   一ト桁ヲキ     一六二   一ト桁ヌキ     一四六   右之通法ニ置居間ニ雷鳴方へ向ケ置也 【左丁】     不浄の香除ケ 又方御歌   同断一桁ヌキ    榊葉二ゆふしでかけて打拂ふ     六四一     身ニハけがれの露程もなし   同 六四二         【「不浄除」】   同 一六五   同 二六九二   右之通ニ置て匂ふ方江向て置べし    是ハ文化十三子年三月朔日大御番九番組    与頭石原新十郎殿ゟ傳秘也  【「不浄除」は横向き黒丸印】 【右丁】     ●百柚湯(ひやくゆとう)の法 文化十三子年三月四日大御番             二番組与頭榊原九右衛門殿ゟ             傳授請之   柚の数百大小の構なし丸の侭ニてよし   カンシヤウ目方拾匁一杦の皮割シテ拾匁   右三種麻か木綿袋ニ入風呂の中へ   初メより入焚火ニてせんし候事    但冬至の日より三廻り入湯スべし    又ゆヲ立ぬ時は此中の薬袋ヲ引上ケ    蓋の上ニ置又候わかす時ニ入る也  功能手足真ンの痛 打身 くじき    婦人月々厄不巡り 【右丁】     ●解毒丸(げどくぐわん)  同人ゟ請之            大毒虫さしたるニ吉            大食しやうニ吉   御医師高弐千石久志本左京殿宿所は   市谷加賀屋敷也施薬ニ被下之候間   玄関ニ行可願三粒ツヽ被下候得共旅立   いたし候者えは五粒ツヽ被下之也    但食あたり又毒虫のさしたるニハ    一粒ヲ半分削り給る残半分ハ削りて    とき毒虫のさしたる所へ付テよし    立所ニて全快する事神妙也 【右丁】     ●石とふろふ木にて拵る法   春日形 雪見形成とも思ふまゝに木にて拵へ   仕上り候はゝ右の木え鳥ヲ取もちヲ一面に村なく   ぬり付是えまりばぢやりヲみかげ色に合セ   置是ヲふりかけそろ〳〵と能おし付て   日に干上ケべし四季とも庭に而雨露霜   雪等に當り候とも落る事なし     ●根たば合せる訳   是は何之無益之事なり併御用に而御ためし   有之時牢屋敷え御指掛り御硎師竹屋喜四郎   其外渋谷助五郎角野藤次郎等も壱人ツヽ   罷出ねたば合候得共何之せんも無之事之由 【右丁】   是は何之事もなく剃刀ヲ硎ける刃返りヲ手   合せして拂落スト同利也又は上仕上ケかんなヲ   硎候節先キヲいさゝか一寸と合せどに而刃先斗   そつと急になでる利と心得テよし   右之趣文化十三子年三月七日於 御城に竹屋   喜四郎へ尋候処右之通申聞候間記置候事   尤ねたば合候へは首ヲ討候時のんどの皮切り   残らず能切落ス物也併太刀取の者手中   定り事なれたる切手には根たば合セルニ不及候     ●せいぶんよわき人に持薬 ねあせ出るに吉   にんにく皮を去りて三ツ くるみ壱合各能割テ   黒ごま一つかみ何れも三味とも能すり白砂糖 【右丁】   半斤入又能 摺交(すりまぜ)て古酒壱升ニ而煑詰   常の練薬より少シ堅メニして○程ツヽニ丸シ   置常々持薬に壱ツヽ用て吉但口中若シ   匂ひ悪鋪候はゝ其時飲少々飲て吉右悪敷   香を去る事妙なり     ●せゐぶんよわく聲を遣ふ ひいよわく      氣きよの類ニ常々持薬ニ用る方   大梨子皮ヲ去りて三ツわさびおろしニて能おろし水ヲしぼりて摺也   しやうが十かぶ右同断ニして吉 大白砂糖壱片   黒ごま壱合能する右四味一所ニして右なしと   しやうがのしぼり汁ニ而まぜ唐手鍋ニ入とろ〳〵   火えかけせんじ詰る但至而虚性の人ニは左之通   桃仁壱匁目甘草五分ひげ人参五分各細末ヲ加る 【左丁】   若又なししやうがの汁不足の時は上酒少シ   入せんじ詰て吉     ●のんどけ口ひの薬 又方なんてんの実ヲ丸ニ而               呑候得者夫たけははれ不申候               痛ニは実ヲかみて呑べし黒焼も吉   のびるの玉斗りを取り三盃漬にいたし置   常々少ツヽ持薬に用て吉又赤とんぼう黒焼ヲ吞て吉     ●さんごじゆヲ角ニ而拵る法   角を好の形に拵置夫ゟ酢ニさんざしヲ入   にる也又青くするニハ梅酢え塩抜板緑青   を入て煑るべし 料り【朱】●昆布ヲ和らかにする法   こんぶヲ塩水ニ漬置ば和らかニ成也 【右丁】     ●諸の角を糊のことく又餅のごとく      器物に作る法   鹿角粉(つのこ)を能キ青竹の跡先ニふしヲ附置   右竹の外皮をけずり取厚紙の如くニし   小サ穴を明ケ是え右角粉ヲ入堅くせんニ仕   夏月厠の壷え漬置弐十日程過て取出し   見れば角粉和らかに糊のことくニ成る是ニ而   細工ヲすべし又堅んと思はゞ大根のしぼり   汁ニひたし置て吉又甘艸のせんじたるを   水ニさまし置此能ひへたるニひたすべし   能ク堅く成る物なり 【左丁】    但是は古法にて急の間ニ不合   角粉ヲ鍋ニ入テ水は見合入䗜蜒を数十   入能々煑る法が吉則此帳五百三〆ニ留有之     ●玉ヲみがく法光り出ス傳   万玉類さんごじゆ水しやう其外とも磨たる斗ニては   光り無之光りヲ出スニは磨ク一日前ニ燈油ニ   ひたし置テ取出し磨ケバ光り出る也     ●象牙又は鹿の角を珊瑚珠ニする法   ぞうげ又角成とも其器の形を拵へ能酢ニ   すおふヲ入是をせんじ取出シ堅べにを能々   付て色よき時又さつと以前の酢ニひたし煑る也 【右丁】   色を見合べし     ●上田屋太吉傳にんどふ香文化十二【ママ】子年                 五月十日請之   にんどふ一荷能処斗ヲ取 桑根の甘皮三方壱但桑根ニてもよし   大釜にてせんじ詰蜜のごとくニいたし  一豊後梅壱升能つへたるを日ニ干能すりてこし   板にあつくぬり付天日ニ干上ケ是を少シツヽ入かげんいたし余り酢く無様ニいたし蜜   にて煉りにんどう桑根のせんじたる中へ交ゼ   貯置なり第一氣付中氣ニ吉痰ニ吉   せいぶんを益【=増】其外のんどかわくニ吉     ●あざヲぬく法田口久次郎極秘傳也  一黒あざ赤あざともニ誠の石州無名異ヲ 【左丁】   能キ酢にて解幾日も氣こんニ付べしあざ   いつとなく取れる事妙也     ●手ニ染たる草の渋ヲ取方 ずいきふき其外                  何のしぶニてよし  一車井戸の縄か又は火打石ニ而水ヲかけながら   すりあらふべし立所に落る也     ●じん薬の事 又方年中四季ともニくこの            葉お汁ニして喰てよし            年中病のうれいなし  一何よりするめがよしいつれニいたし給ても吉尤   なまあぶりニして塩ヲくみ付給るべし 料理【朱】●さしみニとふふ用る方  一つととふふのごとく是ヲ布ニ包テゆてる也   尤右とふふヲ能する時ニ中へ葛ヲ程よく   まぜ是ヲ能すり鉢ニてするなり 【右丁】 料理【朱】●沢庵漬上風味の仕法又方風味宜いたし候ニハ                 漬る時酒ヲふり〳〵漬る也  一例年定式漬方一樽ニ付早漬は糠六升ニ塩四升入   中比出シ候方は糠六升能ふるひテ塩六升入年ヲ越から漬ニはぬか六升ニ塩八升入  右之通何レも押は随分つよく候方よろしく候  是は文化十三子年六月中旬巣鴨新屋敷之  大御番鳥居又右衛門殿之実母ゟ傳授有之     ○角和らかニする法 御納戸頭星野鉄三郎殿傳  一鹿の角ヲ地中え埋置外皮ト真ンを除き正味ヲ   鰹節のごとく削り目方百目げぢ〳〵壱合入レ   右二品を水ニ而せんじとかす也    但し麦わらを壱寸ふとニ切白水ヲかけて    むらす置べしげぢ〳〵ニ成るなり 【左丁】     ●心ト申字認方心得筆法の事 《題:心》 ホウケン」ノ点【四画目】 シンホウラク」ノ点【三画目】 ナイシ処ノ点【二画目】 シンシ」ノ点【一画目】 《題:存》 折枝ノ点【六画目】 《題:也》 入日(ニウビ)ノ点【三画目】     ●入歯の歯ぐき色よき法   右歯ぐきのつげ黄色ニて色不宜時はまづ   一遍せんじ出シ能干上ケて夫ゟ後すおふのせんじ   たる妙ばん不入がよし此せんじ汁ニ入能せんじ候へば   よき色に色が付候事 但右歯ぐきえ歯ヲ植ざる             前ニ右のごとく色ヲ付候事 【右丁】     ●中暑靏乱速治の仕法 文化十三子年七月三日                西丸御目付中川惣左衛門殿ゟ                請之   先中暑ニて吐氣有之氣分悪敷節早速手ぬぐいヲ   折たゝみ𤍽【=熱】湯にひたしなましぼりにして心下鳩尾を   三四度むし候得ば速に快成也又隺乱には手拭二筋   同様にいたし替々𤍽湯にひたし数度むし候得ば快シ   又腹痛水泻も留る尤寒氣あたり其外諸病に   用ひて吉 但最初暑邪請候時心火ひへてふさぎ   食物停滞むし候て腐候ゆへ吐氣付候其時服薬用イ   候得者吐泻有之より事により痢病其外種々の   病に變ず然るを其場に不至内に暑邪停滞   の食物消和いたし速に治する事不思議の良法なり   都而暑氣の頃朝夕とも常に数度用れば暑邪不請也    附山野原人家なき処にて隺乱して氣絶いたし 【左丁】    行たをれたる者薬用ゆべきに湯水なき時早速    はだかにして小便ヲ仕かけ候得者速に蘇生也   右の法用て功を得しにより人々に傳へけるに其功甚多シ   斯用ひ安くして其徳廣太成故に諸人に傳へその   疾愚を救ん事を求む依て令施板もの也     ●踊に行場所   毎年六月夜宮八日當日九日品川宿の   天王祭礼藝者ヲのぞみ申候 七月廿六夜も                右同所え行也   浅井肥後守次男浅井壽楽隠宅住所  ●十二里有之あつぎと申所え立寄此所繁昌の   宿にて踊はやる夫ゟ相州え出立湯治場え行なり 【朱筆は「」で囲む】 【右丁】  踊に行には毎年四月中旬出立にして  八月帰ル  湯治場の覚 浅井壽楽「二楽」傳之              文化十三子年六月  ●相模国七湯の事何レも御関所手前 「旅かせぎには 湯元    湯場宿 福住九蔵  参不可参」是ゟとふの沢え半道  小川万右衛門       「東の沢」   湯宿 「湯バ初り」とふの沢       秋山弥五兵衛       是ゟどふが嶋へ壱里よ 一の湯沢右衛門                  田村久右兵衛       坂の下にて      「堂がしま」      どふが嶋「江戸ゟ藝者 同 大和屋             落着テ吉」奈良や六郎右衛門「方え」       是ゟ宮の下へ壱里半 【左丁】      坂の上にて      同 奈良屋兵次「方え」 「二」  宮の下          藤屋勘右衛門       是ゟそこくらへ五六丁      「底倉」       同 蔦屋平左衛門       そこくら        万屋伊兵衛       是ゟきがへ十二丁      「きが」       同 柏屋       木賀          仙石屋直次「方え」       是ゟ芦のゆえ壱里よ 「湯元ト 「いほふの匂ひつよく不宜」同 松坂屋  同断」    芦の湯         伊勢屋         「此所には宜客不来候」           都合にて三里半 【右丁】 咒   ●やく病よけ咒 又方神田三川町新道四軒丁            長崎屋ト申薬屋にて壱貼に付            代廿四文ツヽわげつとふ人参入   胡茶に梅干をかざしテ左の古哥に包み   三日の間たもとへ入置四日目に川え流す也    しゆうかんは風のたよりに来れども   【天地逆に記す】今吹かへせ伊勢の神風   右之通下の句をさかさに認候事 咒   ●はしらの咒門口へ張置候事   比川宗左衛門殿舩にて御約束の事   と認メかど口へ張置なり 【左丁】 咒   ●犬除の詛法   三遍申事   西川の関の清水を春見れば     口なきいぬは何をくらはん   此跡にて三べん唱ル事    あびらうんけんそはかと唱ルなり     ●暑中り      くはくらんの薬 又方干 鰷(あゆ)をざつとせんじ此ゆを呑也   しいたけをせんじるか又は𤍽【=熱】湯に入其湯   きいろに成たる時吞べし妙薬なり     ●頭痛の薬 又方七月十八日に柳の葉十八枚水常の通入           せんじ吞て見なり   盆の十三日に土器ヲ頭のひよめきに置此中へ大灸   程能あつく成る迄こらへ居テよし  【行頭の咒は朱】 【右丁】     ●寛中丸 文化十三子年七月廿九日          中村圭周母ゟ請之   随分新キにがきヲ用   よふばいひ 香附子 がじゆつ とふやく 各等分   虫氣 しやく 食傷 腹のいたみ 下り腹   小児にも至而よし 咒【朱】●かつけの咒所   本郷六丁目紺屋の裏にてたくはつに出る   びくにに頼候事但水引二把半紙弐枚ト   塩が入用に候間可致持参事     ●尺八の笛寸尺の覚   左之通り拵可申候事金さし長サ壱尺六寸八分 【左丁】 【尺八の図】   口の処ふし  印長の半     前     ふし五ツ 半 半     のふ書は三枚目に張付て有之     ●きれん丸の法 小石川源覚寺前町ニ而             松屋彦七傳之由田口の与兵衛傳之   へちまヲほして黒焼となし細末し   是え丁子ヲ細末して加へみつにてねる也    但両国吉川町花火やニ而玉屋の向横丁角ゟ二軒目虎や伊兵衛方    きれん丸代五十文百文 料理【朱】●鯉にこしやうヲ入るは魚の毒解シ也   上方の国々にては小しやうヲ川え流して翌日其           こしやうの水ヲ吞たる魚類是に酔て   腹ヲ上にして浮上り有之時ざるを以すくひ取候   近年は山椒を右之代りに流して右之通に取也 【右丁】      用ひ方一ふくヲ五ツにわけ湯      五勺程ツヽにて三度に用ゆ跡の      弐度分は湯壱合五勺程にて      用ゆ時に心得べし吞とおくび出ル      男女とも人によりて■【瘋(=頭痛)ヵ】も出る是            亦ヵ血の道の妙薬也 【地図 天王宮から谷田院(こくでんいん)前天王横丁を経て四ツ谷大通りに突き当たる】 ●ちのみちの薬血調散  一貼代六拾四文ツヽ  一廻り分九貼也  是又鍋墨ヲさゆにて  吞もよし 【左丁】 ●銀なん壱升ヲ割テ 新は七合五勺程に成           ひねは四合程に成ル也  料【朱】●玉子見よふの事  長キは男鳥 【卵図】 此玉子頭の方ヲ舌(した)に付見るに  短ク丸キは女鳥     暖成るは生キ玉也尤ほそく              尾の方冷成るは生玉に候   又頭尾の方ともに冷なれば死物ㇳ知べし   尤鶏卵けろける時に初メ横にけろけ後には   竪にころける物なり四百六十四にも記置候事 料理【朱】●鴨雁其外鳥ヲ冬向求るに心得方 【右丁】   是は下腹よりふん穴の辺ヲ押テ見るべし都而   冬之内ニ而も此辺よりくさる物なり     ●かい置たる犬猫外ニ而まちん【馬銭】給たる時仕方   是は早速水を数度吞せ又腹えも幾度も   かける快氣するもの也     熊の膽求る時見よふの傳   先之少シ斗水に入見るべし種有品は一向不解   白ク種水中に残る是は拵もの也     ●死犬ヲ薮え埋ヌ次第   右犬の頭しやれたる時頭の目の中ゟ竹の子生る   ときは必々其家亡ルもの也 【左丁 この間落丁ありヵ】      又方 又たび だい〳〵 白さとうゆにて吞てよし 又法       むくろふじヲ割せんじ吞もよし 一またゝび 甘艸 各當分にしてせんじ吞也 又法 一足のふくらはぎに有之俗にいふかごかき三里え灸吉 又法 そば粉ヲ𤍽【=熱】湯にほだて吞べし 一正月十六日 七月十六日 六月十六日 此日斗は晝ノ                    九ツ時に限る也  常ニ而も發り候はゝ用テよし 又法 一ま虫の干粉を少シ吞て吉但吞たる後足に  筋高く堅り候はゝ疝氣の根切也尤其  當分七日程は青物給る事ヲいむべし 【右丁】     ●痳病の根切法 信州ゟ来ル餅舂□□             傳之   桑の根の皮 とふしん五本 青木の葉三枚」五枚   右能せんじ吞べし即妙也 咒【朱】●運仕合能成る咒   毎年浅草市ニ而十七日」十八日之内にくわん音様右   の方ニ而ばゝ【婆】が賣テ居るさいみの茶袋を   求来る但此中に銭三文入有之苧に入テ有り   是ヲ左のたもとに入呉候間宅え帰右のたもとゟ   出シ正月三ケ日福茶ト一所に入せんじ家内中   給ル跡は仕廻置候事 【左丁】 咒【朱】●又法   毎月十七日にこんにやくヲ煑テ家内身内斗ニ而   給る家来えも不爲給候事 咒【朱】●又方   甲子の夜九ツ時ヲ打初ルト袋ヲぬい初メ鐘ヲ   打仕廻迄にぬい上ケ此中へ文銭三文黒大豆   三ツ入袋の中へ願望ヲ申入テ口をぬい切常々   身にかけ居る事 咒【朱】●又方   庚申の夜毎に七かふしん文銭十二銅□上ケ   置候事 但七庚申切ニ而吉信心スべし 【右丁】 料り【朱】●鱈の料理法遣ひ方  一大クさいの目に切山椒せうゆいる付る吉  一あんかけわんもりも吉  一薄へぎにして酢ヲかけすりせうが吉     ●韮(にら)植置よふの事   根分して吉尤しやうがのごとく成は不宜候間取捨ル   夫ゟ二三本ツヽ所々に植べし但こやしにはわらの灰最上也  料【朱】●あみの塩から拵法  あみ五合に塩弐合の割を以漬置べし廿日程ねせる也     ●手ぬぐい遣ひよふ  初而遣ふ時は水にて洗出シ遣ふべしよこれ方おそくきれい也 【左丁】     ●石とふろふ求メ方の叓  大和国の御代官ヲ頼テ吉直段安くかつこよし若又  右御代官に手釣なき時は御勘定奉行か又は吟味役か  組頭の内を以頼べし 咒【朱】●不浄よけ御歌 婦人等も月疫中など             神々え供物燈明上ル時は             此御歌を絵里襟に縫込置べし             但是ヲかけて神棚へ             掛りてもよかろふか抔と             うたぐる心有れば             必ばち當る也             依之心慥に             思ひてすれば             少シも障□  榊葉にゆふしてかけて打拂ふ   身にはけがれの露程もなし 咒【朱】●疫病よけ咒御歌 門入口へ張置べし              又銘々一枚ツヽ懐中スル也  いかでかわ神裾川の流扱 「梵字」日止にあたりてなんの疫霊 【右丁】 咒【朱】●途中にて放レ馬向ゟ欠来る時又は坂にて      車とゞめ兼候時立向ひ此哥三べん申也   ほの〴〵と明石が浦の朝雰【=霧】に    嶋がくれゆけ 舩おしそ思ふ 咒【朱】●盗賊不入御歌 門口其外道具入等えも張置也       又方上総国柴山の仁王尊可信事肝要也   うき草の人はなれにや磯がくれ    思ひなかけそ沖津しらなみ     ●半紙安キ上紙求よふ   大紙屋に而見せ紙とて四ツに竪に折有之是は   壱〆メの紙の見せ紙也壱状に付上品十六文ツヽ也 【左丁】  料【朱】●あわび和らかに成る法  是は生の鮑を貝をはなし夫ゟ生大根にて  両面より能たゝきて煑るべし妙也  料【朱】●さゞい和らかに煑る方  生のさゞいヲ蓋の上方ゟへらヲ入てくるりと  中をこすり廻してみを抜べし夫より  能洗てぬめりヲ取テざつと煑る也和らかに成ル  料【朱】●な漬和らかに漬る法  塩湯を煑立沢山ヲさまし置此極ぬるゆへ  なヲ入上より鍋ふたの類ヲふたにうかし置べし  四五日過候へは能つきて和らかに給る也 【右丁】  料【朱】●ほら貝生に而ぬく法  天井ゟ慥成縄に而ほら貝に中ウに釣置此下へ  さらに酒ヲ入置と此酒の匂ひに而自然と貝の  中ゟ身ぬけ出長く成るテ下ル有之とき  そろと引両手に而一さんに脇へ引落スべし  何なく抜ヶ取る物也圖之通り 【ほら貝を釣り下げた図】     ●すゝ落し法  しゞみの黒焼にして是をあくに立置此水に而  洗べし数年のすゝ又はふるびも落るなり 【左丁】     ●こし水上々吉と成法  樽の中へ下ゟ七八分も間を置よふに板へ二本  足を打夫ゟしゆろのくずを度々能あらひ  干上て是ヲ敷其上へ上砂を度々能あらい  敷て夫ゟ水を汲込置のみ口ヲ付置ちよろ  〳〵と出し此水にて茶をせんじのみて妙也     手玉のろしの方  土場にて焚火いたし其中へ狼の立ふんを入候へは  火煙 真直(ますぐ)に空に上る也且又若立ふん無時は  只のふんに而も狼のふんなればよし 【右丁】     ●角粉細工練方極秘傳但なめくじげぢ〳〵ヲ入テ角粉ヲ               にるもよし   なめくじ沢山そくいにて押つぶし水にして是を以   極細末成角粉ヲねる也 但角粉に無之ても              安ごふんヲ極細末にして              此水に而練も同様堅ク成              水に入置ても不解ひきの              油ト同事也    又上ヲ能みがき上ケ其上にて    つやヲ出スも此水にてぬるべし  料【朱】●うなぎかばやきえ付る醤油の本法の事   上醤油えみりん酒を入うなぎの頭ヲ焼たるヲ入て   よく煑る也油玉うき風味至而吉秘也  料【朱】●ゑだ柿仕方みの国名物枝柿植村駿河守殿領分にて   渋かきの先花落の所五分四方程のこし皮ヲむく夫ゟ   へたに糸を付一ツ々に釣置程能干たる時筥へわらヲ敷 【左丁】   其上に彼なま干の柿ヲならべ又其上へわらをかけ   〳〵〳〵幾通りも如此して漬置百日程も過て   箱ゟ出シて見れば白ク粉がふき有之也  咒【朱】●狐に被化ぬ法 又方此葉ヲゆでごま和も吉               甚薬のよし岩田殿傳也   白けいとふの花を八月十五日夜八ツ時に取所持いたし   居候へ共【ママ】狐狸等にばかされる事なし     ●疫病煩ぬ法   びんろふじ五ツ生せうが三かぶ吞水の内へ入置て   此水に而万給物茶に至迄も仕立給る也四季に   ケ様いたし候得は疫煩なし     但手前井戸ならば井の内水中へ釣シ置て吉 【右丁】     ●痢病の薬又腹薬也 又方五月のちまきヲけづるか               粉にして鰹節沢山入うすき               みそ汁にて給テよし   白キ切餅二ツ三ツ 白ハスの華東向に咲たるヲ三ツ程   水あめ五十程入水ヲ入テ右三味鍋か土鍋にて得と   極和らかに煑立程能さまし置給テよし 料【朱】●さとう白黒ともにちりごみヲ取る法   右砂糖へ程よく水ヲ入能せんじよく煑へたる時   玉子の白ミ斗少シ入べし然時は右さとふのごみ   不残此白ミへ附かたまり申候其時右白みヲ   すくひ取るべし大久保主水方の傳秘也 咒法【朱】●刀等の乱レ焼ト直焼ヲしる法   圖之通いたし見候へは知レ申候 みだれ焼は刃ヲ上にして                  不立直に横に成る也 【右丁】   すぐ焼は刃ヲ上にしてしやんと立申候    但下に認有之圖之通板かなどへ    左右振わけにかけ置見るべし    刀脇差ともに右同断   【刀を板の上に置く図】     ●銅きたへよふの叓   かづら等の銅なまがねにてはへろ〳〵と   してぐら〳〵して堅ク無之是を   きたへるには塩ヲ付て焼べしたちまち   かたく成りきたへかねと成なり 【右丁】     ●さし木仕よふ傳 こよみに有社日が吉              地火の日は悪し   是は圖之通去年の目ヲ吹たる所がよし   今年吹たる今年切テさしたるは悪し   附かねる物なり      【今春目と去年春目の図】      但秋目の枝は不用也     ●渋柿のしぶを抜く方 有徳院様御方   しぶき柿の木の根の廻り壱尺よけてほり三年   寒中に下こへヲ入べし渋氣不残取れる也     ●なりたる柿落ぬ方 同断   寒中は猶吉シ春に而も其柿木の根廻りヲ   七八寸も堀て其中へいわしか又はひしこの   古キ求メテ入べし其柿不落也 【左丁】     ●継ほの臺の木覚 社日がよし   何木の枝成ともかり継にはハスの臺へ継べし   違なく附く也但久敷は不持候事見合本臺へ継替る也     ●歯痛に薬 又方冬瓜ヲぬかみそに漬置           黒焼シ粉にしておはぐろに交遣候へは一生歯の           なんぎなし   仙人艸俗にはこぼれといふ也是ヲ蔭干にして   能干たる時塩三分一入レ黒焼にス     ●植木は諸木ともに春目は不切秋目は      不残切ル事秋目えは翌年花無之     ●松の下枝かれぬ方   毎春松の新目出候はゝ委【誤記=悉】ク可切如此すれば下枝かれず 【右丁】     ●歯を痛なくぬく方   仙人草といふ草薬種屋に有之是え塩を   すり付抜く歯え斗附テ置べし暫ク   過て前か奥えか抜ケる勝手を見合テとなり   の歯へさわらぬよふにつくべし痛なく   早速ぬける也 料△【朱】●はぜをむまく仕る法 【頭を落としたハゼの図】   はぜの頭を圖のごとく切捨夫ゟ火へあぶりこ   にてかけ程能焼て其あつき処を脊より   薄きへらにて脊へりを尾の方迄さく   べし夫ゟ頭の付きわより胴骨を引立候へは 【左丁】   脊骨に付て骨の分は不残取れ申候是を   又元のごとく手にてにぎり付元のはぜの   かたちに拵置是を何へ成とも入テ煑る時は   骨少シもなく至而風味よし 料【朱】●又方はぜを頭斗取り生のまゝ骨ともに    鳥のごとく能たゝき夫ゟ大ゆびの先程に    丸メ干置てごま油にてあげる是を何へ    成とも入テにる時は鳥のごとく風味吉 料△【朱】●又法上の印のごとくして骨をぬき    其あつき内に元のごとくあわせにぎり付    さまし置夫ゟ三ばい酢に附置給る    べし至而風味よし 【右丁】 料【朱】●酒の肴   小野岩太郎殿傳之   なた豆を小口よりうすく切是を塩   にてもみあく水を捨る能しぼりて   日に干上ケべし白ク干し是を貯置て              遣ふ時ゆにて洗しぼりて   三ばい酢に漬給るしやうじんの   肴によし又精進に無之時は鰹ぶし   成とも生りふし成とも生肴成とも入テ吉     菊味 料【朱】●黄菊漬の仕方 飯塚長三郎殿傳之   黄菊を能むしりばら〳〵にして其儘   能あらひ能かわきたるとき時壷に入壱へらツヽ   置テ其上へ梅干ヲばらりと並べ白さとうヲ 【左丁】   ふり又黄菊を敷此順に何 重(じ)もいたし   ならべ仕舞候はゝ上よりみりん酒ヲ村なく   かけて夫ゟ目張いたし貯置也いつ迄も   替る事なし     但歯のなき人給料には此黄菊を     ざつと湯がき能干上ケぱら〳〵と     する時前書之通漬込置てよし     ●火縄の火水中に而不消法   木綿火縄へめうばんをこくせんじて   引テ干〳〵〳〵三べん程いたし能干て   仕廻置べし雨天に付ケて行とも不消也 【右丁】     ●けらはご仕よふ   下に有之圖之通に小キ薄板え竹ヲ曲て   左右へ指此竹へもちヲぬりて置べし   鳥来て中の餌ヲくわへ引候へはおのすと   脊にかぶる其時早く出て取べし           【半球形の鳥わなの図】            もちヲぬり置也            虫ヲ付置    但は茶わんか杯に入水油ヲ少シ入火にて    そろ〳〵とかしてまぜ置遣べし    如此すれば寒中に而も氷事なし     こよみに有之     ●天一天上の日有之覚幷天社日とも   是は壱ケ年中にみづノとの巳ノ日にて六十日目也   天社日は壱ケ年に五度ツヽ有之 【左丁】     ●あざヲぬく法   大根おろしのしぼり汁を常々氣こんに付べし   いつとなくぬける也但赤あざはぬけ不申候事     ●すいおくび仕むねわるく水を仕吐胸痛ニにて不痛      かゆきよふにて心わるきに薬   びんろふじ ちんひ粉にして用る     ●つわりに而ときやたしからゑつきに薬   かふぶし くわつこう 甘艸當分にしてせんじ用     ●きうつして頭痛に薬   かふぶし せんきう 粉にして常々用る     ●遠道して足はれたるに薬はんげヲぬりて吉 【右丁】     ●ひじ赤がりの薬   山枡をせんじ洗てよし 料【朱】●初だけ料理に用る細工にて作る方   一上々のとふふのからを誠に能すりて玉子にて    能ねり合せべんがら粉ヲ至て少シ入又能すり    まぜてかわかし置堅ク成次第に形え押詰    打ぬく夫ゟじくヲ能程に切其辺え青のりヲ    さびに付火にあぶりさまし置て大成分は    程能 焼(きり)て遣ふ也吸物にも又硯臺物には    頭の表へ斗醤油一へん附あぶりて吉 【左丁】   ●赤地金入拵よう  一緋紋羽片面色よきヲ求メ置生麩のり   姫のりふのりヲ合せ至而うすく解キ是ヲ   油ぬきの洗粉ヲ水にて能とき此うわ水ヲこして   此上は水を以うすく解く是に而一面に表の   けば立たるヲ地へ能すり附テ干上る能干   上りたる時金入の形を為付可申候金入の   形ヲ付る処赤坂御門外大黒屋トいふ呉服やの   近所にて切レ屋賣人 【右丁】     ●せんきの妙薬 文政三辰年正月十六日             信州ゟ来る餅舂久治傳之   正月十六日 六月十六日 七月十六日年内に此三日   そばこ上々ヲゆにいたし吞べし根切妙薬也    但六月十六日は晝九ツ時に限テのむべし    正月ト七月十六日は其日の内なれば吉     ●髪の毛黒くする方   瓜の葉をもみて此汁ヲ付る黒く長く成也     ●小児頭瘡薬幷大人ほつぱん草類疾氣有に薬   白ハス花蔭干焼心各當分甘艸少シ入  春田小兵衛殿傳   右三味能せんじ出シ湯茶の代りに常々三廻り程も 【左丁】   吞べしいつとなく直る翌年ゟでき不申候   但小児えはかんぞう少余慶入るテ吉     ●疾の妙薬 大御番八番組与頭酒井但馬殿組也             春田小兵衛殿傳之             文政三辰年二月晦日   しつでき初メならば蕗の根か又は            けいぼうはいどくさんヲ一廻り   為給置夫ゟ跡に而細末いわう壱匁同せうのふ壱匁   焼たる玉子一ツきみ斗ヲ取能交ぜ合せ夫より   白しぼりごま油にて能ねり吹出物えよく〳〵   すり込べし不残すい出ス依之古キ草物成とも   若ス【しかず】也三廻り程湯水遣ふ事無用の事   三廻りも立候はゝ白水ヲ湯にわかして   洗ふて吉少シも追込心遣ひ無之事 【右丁】   ●乳能出る名薬 文政三辰年頃大御番八番    酒井但馬守壱組与頭春田小兵衛殿家    傳妙薬有之行而願べし     但外に病有て不出には印なしまた     無病に而何事も無之乳不出には忽チ     即妙有之也     ●薬湯立候所   岩附に而禅宗才福寺此寺にて毎年之   二月十五日ゟ八月十五日迄積ト疝氣の薬湯   立入湯いたし所々ゟ入人来候事 料【朱】●池の魚などどろくさきヲ取ル法 【左丁】   何肴にても一夜土地え並置其上え大たらい   かぶせ置べしどろくさき匂ひ去ル也猶又   弐枚におろして身の方ヲ土え付置ば弥吉 咒【朱】●仕合能成る法   文政三庚辰年三月廿四日    但當辰年迄四百廿一年目に而當り候事   此年明之方申酉之間庚の方也  一年徳神を祭る吉日也     備物左之通り   金 銀 銭之内ヲ何にても黄色成物にて 【右丁】   ねじりぬいの袋に入  一小豆めし 一明の方の清キ土少シ   庚辰年甲辰月甲辰の日甲辰之刻   土曜星金曜星相生之吉日也   此祭りをいたし候得は心願成就富貴   繁昌寿命長久福徳の最上吉日也     ●せんき名薬一日に用る袋入壱貼百四十文   日本橋近所に而瀬戸物町乾物やいせやに有之     但他国より和尚来而出之也一ふくヲ一日に吞也     ●痔の名薬 文政三辰年四月朔日            祥雲寺和尚ゟ被發之 【左丁】   虎(とら)の革(かわ)黒焼ヲ薬種屋にて求メ是ヲ酢にて   吞べし一度切にて根ヲたち再起る事無之   尤とらのかわ黒焼は代六十四文か七十二銅に吉 料【朱】●干あん仕様   寒中小豆を何升成とも能ク水に而煑上   みそこしかすいのふに入置水ヲぬき干上ケて   其まゝ袋に入貯置べし是を皮のまゝ臼にて   挽細末して置入用之時入用のほと程熱湯に   入能くかき合せて夫ゟ砂糖ヲ入あんと成る   何餅に成とも付るなり 大御番酒井大和守殿              一番組与頭天野清右衛門殿              より受之文政三辰四月五日 【右丁】 咒【朱】●手足等えまめ出来候節咒之事   其出来たる豆の上へ米三粒置夫え十の字ヲ   書て其米を川か下水か人のふまぬ所え   捨べし忽チ直る物なり     ●わきがの有無を知る法   みゝをかきて中より出るあかを見るべし   わきが有は男女ともに耳のあかゆるく候事     ●婦人下腹の痛に妙薬   ほふづきから 外に甘草少シ加ル是ヲ薬種やにて取   能せんじ度々呑べし妙薬也 【裏表紙】