【表紙】 【題箋】 飢饉年乃食物 【見返し】 【左丁】 飢饉年乃食物 【左丁】                           □□□    ◯きゝん年(とし)の食物(しよくもつ)  くず《割書:根(ね)をつきくだきしるをとりすいひしだんごにす|わか葉(は)はあぶりてくふふる葉は馬(うま)にくはす》  わらび◦ぜんまい《割書:根(ね)のこしらへ様(やう)右(みぎ)に同しわらび|ばかりくへばやまひをうく》  からすうり◦かたかこ《割書:いつれもかはをけづりこまかに切(きり)四五日水にひたしつきくだき|袋(ふくろ)にいれ水にふり出(だ)しすいひし焼(やき)もちなとにす》 ◯とちのみ◦いちいのみ◦でんぐり◦ほうすのみ《割書:いつれも|かはを》   《割書:けづりあくにてゆで水にひたしほしてこにし何にてもまぜて|たんこにす又なかれにつけて一夜(ひとよ)おき煮(に)てもくふ》  すゝだま《割書:めしかゆにす又こにしてたんごにす|💧【注①】此なりのすゝ玉よし》◦はす《割書:わかばはゆでる実(み)はつきくだき|かゆにもだんごにもす》  おにばす《割書:くきも葉(は)もあくにてゆでるくきはかはをとる|ねはにる実(み)はかはを取めしにももちにもす》◦ひし《割書:かはをむきむしにる又|ほしてこにしもち》   《割書:かゆにすくきもほして|米などませてにる》◦ひるがほ《割書:ねは塩をまぜてむしにる又さらしほしつきくだき|飯(めし)にまぜる又うすにてひきやきもちにす》  ところ《割書:横(よこ)にきざみ煮(に)て一日ながれにさらし又あくにて煮(に)|水をかへ二日ほどおき何にてもまぜてくふ》◯おにゆりのね  ひめゆりの根(ね)《割書:葉(は)はゆ|でる》◦ほどのね◦くろくはい◦山のいも  はこべ◦たんぽ゜ゝ【注②】《割書:ちゝのはれたるに|煮てしるをのむ》◦いたどり《割書:さんごによし|はらみ人にどく》◦なづな◦かしう 【注① 水玉の図】 【注② 「ゝ」に半濁点「゜」有り】 【右丁】 ほうきゞ◦へうな《割書:亀(かめ)とくひ|あはせ》◦すべりひゆ《割書:わらびとくひ合|はらみ人子供にどく》◦おになづな うど《割書:くきも|葉も》◦よめがはざ《割書:今いふ|のぎく》◦やまにんにく◦けいとう《割書:痔(じ)に|よし》 しそ《割書:鯉(こひ)と|くひ合》◦みゝな◦しろよもぎ◦くこ◦あけびのわかめ さいかちのわか葉(ば)◦またゝびの葉◦すいかづら《割書:花|共》◦かまのつの《割書:皮を|とる》 すぎな◦はゝこ草《割書:五行蒿(ごぎやうよもぎ)|とも云》◦べにのなへ《割書:はらみ女と|じんきよにどく》◦よもさの葉 つるむらさき◦こうほね 右いづれも塩(しほ)をませゆてゝくふ しろくはい《割書:根(ね)はあくにて煮(に)皮(かは)をとれはゑごみ|なしわかきくきはあぶりてくふ》◯山ごぼう《割書:根も|葉も》◦しようぶ おけらの根《割書:くろかはを|とる》 《割書:いつれもきざみてあくにて煮(に)|両三日水にひたしてのちくふ》 なるこゆりのわかめ《割書:根も|》◦ねぶのきのわか葉◦くはの葉 もゝの葉◦まる葉(ば)やなきの葉《割書:ほそながき葉は|わるし》◦りやうぶ ゑんじゆ《割書:花も葉も|落(おち)葉も》◦はりぎり《割書:はりのある|木なり》◦くぬぎ《割書:うすかはほうすの木と■|実(み)もわか葉も》 藤(ふぢ)のわか葉《割書:さん婦(ふ)には|どく》《割書:右いづれもゆでゝ水にひたしあくをとり|塩(しほ)をいれてくふ》 【左丁】 米のさやぬか《割書:二三日水にひたしてかきまはし水をかへあくをとり日にほしいりて|こにす米のこなどにまぜだんごにし又/湯茶(ゆちや)にかきたてゝくふ》 わら《割書:根本(ねもと)四五寸 末(すゑ)五六寸 切(きり)すて二三 分(ぶ)ツヽにきざみ二三日水にひたし日にほしほうろく|にていりうすにてひきふるひにかけ其(その)粉(こ)に何(なに)にてもまぜたんごにす》 松のかは《割書:老木(おいき)ほとよし内(うち)うらのあまかはゝにがし外(そと)のあらかはをうすにてつき|ふるひにかけかまへいれ粉(こ)一升に水二升ほど入にえたてゝ一夜(ひとよ)》     《割書:ふたとらずおきて上水をなかし布(ぬの)にてしぼしり何|にてもまぜてだんごにす又日にほしてこうせんにもす》 ぼうし花◦ほうづき◦ほうせんか◦がゞいも◦はげいとう うこぎ◦ゆきのした◦のにんじん◦かんぞう◦しの葉(は)  《割書:右いづれも水にひたして|あふら塩(しほ)をいれてくふ》◦うつほ草《割書:あくにて煮(に)二日ほど水にひたす|秋のかれ葉(は)もくふ》 まこものめ《割書:ゆてゝ塩(しほ)をいれる又実(み)を|つきて米なとにまぜてかゆにす》◦よしのめ《割書:いまだ土中(どちう)にあるものよしこしらへやう|右におなし根(ね)はなまにてもくふ》 おほばこ◦めなもみ◦こくさき《割書:じんきよの|人はどく》◦のひる《割書:根(ね)|共》◦けたで すみれ《割書:すもとり|ぐさなり》 《割書:右いづれもわか葉をゆでゝ一夜水にひたし|あくぬめりをとりてくふ》 わたふき《割書:山ふき共|のふき共》◦つわ《割書:葉(は)もくきも花もゆでゝくへ|つわのくきはほしても用ゆ》◦どくたみ《割書:根(ね)をむしてめしに|ませる塩(しほ)をいれる》 おにあざみ◦こあざみ◦さはあざみ《割書:いづれもあくにてゆで水にひたす|二三寸のときはねもくふ》 【右丁】 かやひきくさ《割書:野(の)むきともからすむき共いふつきて皮(かは)をとり|だんごにす又葉もつきて米にまぜだんごにす》せり《割書:ひる子(こ)をひりつくるは|どく赤(あか)せりはどく》  右いづれも塩(しほ)をまぜるがよし水にひたすものはいく度(たび)も  水をかへる也/草(くさ)の根(ね)木(こ)の葉(は)の類(るゐ)に油(あぶら)を入れはやはらかになる也   天保八年《割書:酉》三月  本居氏印施翻刻       米を一倍(いちばい)に用ふる法 黒米(くろまい)を煎(いり)てよくあらひ。まへ日より水につけおき。米壱升に水二升五合 ほどいれてたけば。大にふえて。是をくへば腹持(はらもち)よく。多くくはず共 飢(うゑ)をしのぐ。かへつて多くくへば胸(むね)つかゆるなり。       米壱一合にて五人一度の食になる法 あかみそ廿五匁ほどよくすりて。米のあらひ汁(しる)弐升にてたてゝ。此中(このなか)へ。 米壱合大こん三四本/里(さと)いも小半升。こまかにきりていれ。よく煮(に)て。なべを おろす時に。小麦粉(こむぎのこ)を半合いれてかきまぜ。ちとの間(ま)うませてくふ       赤(あか)みそを多分(だぶん)に増(ま)す法 赤(あか)みそ一貫目の中(なか)へ。豆腐(とうふ)のから六升塩六合いれ。よくかきまぜよく 押(おし)つけ。日数(ひかず)三四十日たくはへおけば。味(あちは)ひよきみそとなる 【左丁】     ◯じゑきのくすり《割書:昔公義より|御触あり》 ◦黒大豆(くろまめ)をいりて壱合 かんぞう壱匁せんじ時々のむ ◦又めうがの根と葉をつきくだき汁(しる)を取多くのむ ◦又ごぼうをつきくだき汁をしぼり茶(ちや)わんに半分ツヽ  二度のみて其上/桑(くは)の葉(は)を一(ひと)にぎり火(ひ)にてよくあぶり黄色(きいろ)  になりたる時/茶(ちや)わんに水四はい入二はいにせんじ一度(いちど)に  のみてあせをしてよしもし桑(くは)の葉(は)なくは枝(えだ)にてもよし  ねつつよくきちがひの如くくるしむには芭蕉(ばしやう)の根(ね)をつき  くだき汁をしぼりてのむ     ◯じゑきをふせぐ法 医学館印施翻刻 ◦呉茱萸(ごしゆゆ)と云物一両井/戸(と)の中へいれ其水をのめば うつらず 【右丁】 ◦雄黄(をわう)と云粉を鼻の穴にぬればうつらず ◦あづきを袋に入井戸の中へ二日ほどいれおきて  壱人二十一粒ツヽのめばうつらず ◦蒼朮(そうじゆつ)と皂莢(そうきやう)といふ物を庭にてたけば悪気をさる ◦十五日に東にむかひたる桃の枝をきざみてせんじて  ゆをつかふ悪気をうけず 【左丁】     ◯一さいどくけし ◦一切(いつさい)の食物(しよくもつ)のどくにあたりたるには塩(しほ)をなめ又はぬるき湯(ゆ)に  かきたてゝのみてよし草木(くさき)の葉(は)にあたりたるには弥(いよ〳〵)よし ◦又かゆを湯(ゆ)のごとくに煮(に)て塩(しほ)かやき味噌(みそ)をかきまぜて  度々(たび〳〵)すゝるべし ◦草木(くさき)の葉(は)をくひはれたるには。うこぎの根(ね)をせんじてのむ。 ◦竹(たけ)のこにあたりたるには。せうがの汁(しる)をのむ。 ◦喰物(しよくもつ)のどくにあたりて。腹(はら)はりいたむには。苦参(くじん)をせんじ  のめば。喰(しよく)をはき出(いだ)してよし。又/大豆(まめ)の粉(こ)をいりて。さゆにて  たび〴〵のむ。又/口鼻(くちはな)より血(ち)いでゝくるしむには。ねぎを  きざみ。水にて能(よく)せんじ。ひやしおきて。幾(いく)たびも 【右丁】  のめば血(ち)とまる。 ◦茸(たけ)るゐのとくにあたりたるには。忍冬(にんどう)の茎葉(くきは)共。  生(なま)にてかみて汁(しる)をのめ。 ◦芭蕉(ばしやう)の根(ね)をつきくだき。其(その)汁(しる)をのむ。一切(いつさい)のどくあたりに  よし。 【左丁】 天下之善一也千里翻刻作者之喜如何      飢饉(ききん)せざる心得書(こゝろえがき)《割書:但シ》《割書:麦米一/粒(つぶ)用(もち)ひずして餓死(がし)せず|金銭ついやさずして長寿(ちやうじゆ)する良法(りようほう)也》 一 去年来(きよねんらい)麦米(むぎこめ)の価(あたひ)高直(かうじき)にて難義(なんぎ)する人おほしさればわづかの物(もの)にて飢(うへ)を凌(しの)ぎかつえ死(しに)せぬ妙法(ひでん)  あるを広(ひろ)く世上に告(つげ)知(しら)す也/但(たゞし)一日に四度/食(しよく)して一人/前(まへ)拾六文より廿四文ぐらいにて済(すむ)事(こと)  なれば一日も早(はや)く此(この)法(ほう)を用(もち)ひて父母妻子(ふぼさいし)を安心させ家内(かない)睦敷(むつまじく)世渡(よわたり)し給ふべし ◯米泔(しろみづ)の中(なか)へ蕪菜(かぶらな)又は大根(だいこん)の根(ね)も葉(は)も入(いれ)よく煮(たき)て塩(しほ)少(すこ)し入(いれ)て食(しよく)すれば一/年(ねん)の間(あいだ)にても顔(かほ)いろ  かはらず力(ちから)落(おち)ざる事(こと)妙(めう)也又ねぶかもよし芋類(いもるい)芋の葉(は)大根/干葉(ほしば)もよし又/葛(くず)粉わらび粉(こ)小麦粉(こむぎこ)抔(など)  少シ入(いるゝ)時(とき)はねばりて腹(はら)よくたもつ也 ◯御/屋敷方(やしきがた) 御/寺方(てらがた) 大/店(だな)方 造酒屋(つくりさかや) 餅(もち)屋 あめ屋など世間(せけん)飢饉(ききん)の時(とき)は米泔(しろみづ)を溜置(ためおき)日々(にち〳〵)  施(ほどこ)し給ふべし常々(つね〴〵)も溜置(ためおき)給へ日々/利益(りゑき)あり又/志(こゝろざし)ある人は豆腐(とうふ)を食(しよく)し給へきらずは貧家(ひんか)の食(しよく)に妙(めう)也 【右丁】 ◯冥加(みやうが)を思(おも)はゞ茶漬(ちやづけ)を慎(つゝしん)で白粥(しらかゆ)又は雑炊(ざうすい)を用(もち)ひ昼(ひる)は麦飯(むぎめし)を食(しよく)し給へば七の徳(とく)あり第一/天慮(てんりよ)を休(やす)め  第二/人(ひと)を助(たすけ)第三/麦米(むきこめ)を助(たすけ)第四/財(ざい)を助第五/徳(とく)を助第六/身(み)を助第七/子孫(しそん)を助る理(ことはり)あるゆゑ  無上(むじよう)の大/陰徳(ゐんとく)なれば貴賤(きせん)共(とも)不/作(さく)をおそれひたすら米穀(べいこく)を食(くひ)のばし給へ    ◯雑炊(ざうすい)之/仕方(しかた) 但シ此法にて三人前の食分(くいぶん)あるべし 一/白米(はくまい)二合 小麦粉(こむぎこ)一合 米泔(しろみづ)四升 味噌(みそ)五拾匁 塩(しほ)見合(みあはせ) 此/中(なか)へ蕪菜(かぶらな)  大/根(こん) ねぎ菜(な) 豆(まめ)あづき 芋類(いもるい) 干葉(ほしば) 其外(そのほか)何(なに)なり共/沢山(たくさん)入(いれ)よくたきて一時(ひとゝき)  うまし置(おき)て食(しよく)すれば米寿(ますかけ)を保(たもつ)べしかへす〴〵も米麦(こめむぎ)を喰(くひ)のばして三/度(と)とも  粥(かゆ)雑炊(ざうすい)を用(もち)ひ無病(やまひなく)長生(ながいき)を得(え)給ふべし不/足(そく)なき身(み)もこの通(とほ)りをよく心得(こゝろえ)つゝしみ  うち捨(すて)おかず佗(ひと)にもすゝめ弘(ひろ)め給はゞ開運(かいうん)出世(しゆつせ)うたかひなく功徳(くどく)この上なかるべし 天保八年丁酉三月        平安鳩居堂印施摹抄彫之妙在言外主人 【左丁空白】 【見返し】 【裏表紙】