《題:十四傾城腹の内  全》 【参照資料:国会図書館デジタルコレクション>日本名著全集 江戸文芸之部>第11巻・黄表紙廿五種>十四傾城腹之内 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1018497/277】 ●模範解答付きコレクションは、国会図書館が公開する翻刻本を参照資料として、自分で答え合わせをしながら翻刻を進めることができるコレクションです。 ●参照する翻刻本では、かなを漢字にしたり、濁点や句読点を付加するなど、読みやすさのために原書と異なる表記をしている場合があります。入力にあたっては、「みんなで翻刻」ガイドラインの規則に従い、原書の表記を優先し、見たままに翻刻して下さい。 ●参照する翻刻本と原書の間で、版の違いなどにより文章や構成が相違する場合があります。この場合も原書の状況を優先して翻刻して下さい。 《割書:三馬|所撰》名作廿三部ノ内 十四傾城腹之内 全 【見返し】 【左丁】       自序 腹(はら)に心(しん)肝(かん)の父母(ふぼ)あり。惣領(さうりやう)の腎六(じんろく)。水(みづ)をへらす則(ときん)ば。 肺(はい)は頤(あご)で追(をは)れ。脾(ひ)は虚空(こくう)に高(たか)ぶる。十四 傾情(けいせい)。此(この)虚(きよ)に 乗(じやう)ぜば。手(て)のある奴(やつ)に。足(あし)を付(つけ)。各(おの〳〵)算用(さんよう)算談(さんだん)有。手(て)の三年(さんねん) は年(ねん)一はい。足(あし)の算用(さんよう)三 里(り)の灸(きう)。手管(てくだ)にはめたる。大妙傾(だいめうけい)。足(あし) の小陰(せういん)。大淫婦(たいいんふ)。手(て)の能(よう)ない釘(くぎ)の折(をれ)。足(あし)の能(よう)ない。大生酔(をゝなまゑひ)。手の 小便(せうべん)病目(やみめ)にぬり足(あし)の大用(だいよう)雪隠(せつちん)壷(つぼ)どつ経(けい)さつ経(けい)。をう浮雲(あぶな)。 ヱイやらやつと追止(をつとめ)た。何(なに)を留(とめ)た筆(ふで)を留(とめ)たと尓云   癸 丑 陬           芝 全 交 【右丁】 〖真(ま)向(むきに)成(なつて)嘘(う)言(そを)吐(つく)図(づ)〗【右から左への横書】 於乎(おや) 馬鹿(ばか) 羅之(らし) 井胴(ゐどう) 真像(しんせう) 【女性の図の右側上から】 ○べつかう    ○みゝが   ○人の    ○手が  のくし      かいゝと   かたを    あると  しちに      まち     おさへ    いひなんす  おいても     人が     たら     どうしやう  五両の      きんす    なを     のう  つう用      よ      して                うれ     をく           しい     もん           のう     で                  おす ○ほんに     ○とんだ   ○もゝを      ○わつち  わつち      ところへ   大きなのみが    が  が        手を入    くつてにげて    上ざう  むねを      なんす    いきんすはな    りは  うち       はから    にくいのう     だれ  わつて      しい               とか  みせ       をよし              かわ  たい       なんし              つた  のう 【女性を前から見た図】 【女性の図の左側上から】  此かみで    ○つむり   ○此二の     ○その子を  けふで      が      うで       つらまへて  三日       かいゝと   に        くりや  もちんす     こんなに   ぬしの      用がある           いつそ    名が       よ           ふけが    ほつ           でんす    て                  あ                  りん                  す ○こゝを   ○あんまり    ○さんりは     ○らうかをある  おして    わらいん     こゝへすへん    いたらあしが  見なん    したら      すかへ       つめたく  し      はらが      をやあつ      なりんした  しやくが   いたく      からう       あつためて  こんな    なりん      のふ        おくんなんし  に      した  はりん  した 【左丁】 〖後(うしろ)向(むきの)尻(しりを)抱(だいて)者 誤(あやまる)図(づ)〗【右から左への横書】 積(しやく)我(が) 痛(いたふ)押(をす) 宇(う)志(し) 呂(ろ)尾(を) 向(みきん)娼(しやう) 【女性の図の右側上から】 ○よく人の   ○みゝへおつ    ○こちら    ○じしんの  かみへさ    つけてしん     のうで     手でかゝねは  はるこだ    ざうが       にはほ     ならぬ  きを付     なにか       りもの     ふみさ  てある     いつて       へきう  きや      ゆく        をすへ                    たあと                    があり                    さ ○こんやは   ○ヲヤしりに   ○とんだ所へ  ないしよへ   ほころびか    すみとり  いつてこし   きれて      をおくのう  をかゝめね   いんす      大きに  ばならぬ    はづかしい    けつま  ことが              づいた  できん  した 【女性を後から見た図】 【女性の図の左側上から】 ○此くしの    ゑりもと    ヱは此子は    ○いま  のこりの    からざう    じれつ       せなかを  かりをあす   〳〵と     てい        たゝいて  やるはづだ   水をかけ    此手で       いつたは  とうしやう   るやうだ    あたまを      だれた  の       ゆふべのき   一ツはつて     よう          やく人て    やりたい      じやう          ねないから   のう        たんを          かせを引              するのう          きさう          だ ○こしへ    ○あいわつちが       ろうかて  ちつと     おいどはおゝきいのさ   なにか  きうを     いらぬおせわ       ふみんし  すへやう                 た  ひへて                  どう  なら                   しやう  ねへ                   きみの                       わるひ 【〖 〗は隅付き四角囲み線】  【右丁】 【上段】 すべてけいせいおいらんのことばに ほんにわたしが□【むヵ】ねのうちを ぬしにわつてみせたうおつす わつちがこゝろいきはさうしや ̄ア おつせん心がみせたいのうこといつ てはらをわつてみせた所が心 といふものはしんのざうなり うはへと心はとんたちがいかくの  〽さうゆふ              ことし  心とは   〽こんなやぼなあいさつを   つゆ    するきやくはしりのけ    しらず    までぬかれる 〽ほんにわたしがこれ ほとにおもつてゐん すものをつれない ことをおつせんす 〽すかねへきやく人だ けれどために なる人だから まづかうないて をいてはつ午 でもくゝしつけ ねばならぬ ̄アヽ   おかしいアハヽ       〳〵〳〵           ハヽ 〽きくなんし となりにゐる きやくじんが おめへをきれ てしまへさう 【左丁】 【上段】 したら女ほう にしやうといゝ やしたはなどう せうのきれろも すさまじい さうしてゐなん しぢきにいつ てきんすいつそ  きがもめる    ばんだ     よう     はやく      いつて        きや 〽こんやの やうにをり     の わるいきやく      人の おちやつたことは        なひ これからてうづに  いつていせやの   きやくじんの  ほうへもかほを       ださねはならねへ   ばからしく     いそがしい 【右丁】 【中段】 〽これアノ子やてめへのう よしあやさんの ところへゐつて       のふ  わつちかもうしんす   どうぞおめへさんの    したぎをちよつ          と    かして     おくんなんし          と     いつて      かりて        きや        そつといゝやよ        ヱヽ此子は         へんじを           しやな          すかねへ           子だよ 【右丁】 【下段】 こゝろといふものはとん だきのをゝいものにて  きやくの三四人も   おちやつたはんなと   はどうもいそかしく    てこゝろかてん〳〵    してならす心か    いつそもめるから     あくる日火のし     をかけてしはを     のばすこれを     きのばしといふ     きののひると     きは手あしも     のびをして ̄アヽ     ゆふべはくたび     れんした      などゝいふ 〽しんのざうは いろあかく火に かたどるすいくは のかんばん   あんどうの     ごとし 心(しん)之(の)臓(ざう) 【左丁】 【下段】 〽しんのざうと かいておかぬと  かふと    まち     がひ    ます   〽きくうら  さん一ツのませ  ておくんなんし  きゝなんしこんやは いつそわるくおちやつて きかもめんす此ちやわんで くつとやつていきんしやう なんぞそのさかなを一ツ     おくんなんし    〽わたし        か    きやく人は   よいに  かへり  ん した 【右丁】 【上段】 心(しん)の臓(さう)のつきは肝(かん)の臓 なりかんのざうはかた ちあをくして木に かたどるしんのざう めはらのうちのおや 玉にて惣せんせいなり そこでかんのざうは しんのざうのめし つかひにてはんし ばんたんはらの うちのことはみな かんのさうのうけなり にてはらの中のばん とうなりそこであさ ばん三どのしよくじの 出入けふはちやをなん ばいのんださけがい〱 たび小へんがなんど大 べんがいくたびくさめがい くつあいのものにはさつま いもが二本に大ころはし が三本きもがいくつつ ぶれていもをいくつくつ たはなばしらがぐはんと いつて目の中へぶよがと ひこんだといふことまで 帳につけまいんばんからたか ねると出入さん用をする からはらのうらの 手やいはみなかんの 【左丁】 【上段】 ざうがしはいにて たいていいそかしひ ことではなしこれみな しんのざうへのほう こうなればほんの  肝臓(かんさう)あつて   ぜにたらずの     ほうなり 〽ひいぶくろはゑんめい こぶくろといふき どりにてなにか金 もちのふうをして おとなしい身をし       たがる 〽しやくのむしはまつくろにてくろん ぼうのやうなりはらのむしは まつ白にてみゝずのふやけた やうなものにてねんぢうぐ なりしやなりとなまけて ゐてなんぞといふとよくゐ ぶるおとこなり 〽ゆふべはもしおやかたわしらは大きに かぶりやしただいこおろしにき ぜうゆをかけたやつをくはしつ たから大あたりさけふもちと かふりたいなどゝとかくゆすり           たがる 【右丁】 【中段】 〽それではさかなけかさつ   ばりないけふはおいらん    はしやうじん日と          みへた 【右丁】 【下段】 〽人の きもといふものは かんのざうに  ついてゐるもの        にて かんのざうが  おそはさらす       に      ゐる 【左丁】 【下段】 けふはあさめしまへにしれつ たいとてちやわんさけ が一はいすゞり ぶたにのこ つたしゝ たけが  一ツ ゆふべふたぢや わんへ入てのこし        た めしへちやをかけ これが二はい たいがなづけ とざぜん まめこれか あさめし    と みへまし     た 【右丁】 【上段】 肝(かん)の臓(ざう)のつぎは腎(じん)の臓(さう)なり じんのざうはかたちくろくして 水なりそれゆへ水ぶね そのほかいれものこばち なんでも水のはいり さうなものへはやたらに みづをくみこませからだ のうちへうるほひをつけ てゐるみづ屋なりしかも かんのざうとはぢきにと なりあはせにてべつ してねんごろしんるい どうぜんなりずい ぶんみつをへらさぬ やうにしやうばい 大せつにしてゐれ どもきつくしんらう くろうでもあるときや またとんたことできを もんだりふやうじやうな ことがあるとさんやうの ほかのみづかへるなり あるとき一夜のうちに じんのざうが所の水 よほとへりけるゆへ大 きにおどろきかんの ざうひゐぶくろ をよびさうだん     する 【左丁】 【上段】 〽かんのざうさまは御りんか と申一ツ御はらのこと なればさつそく おとゞけ申ます さくばんだんなしんの ざうさまからなん の御とゞけもござら ぬにどういたしたる 此とをり水がへり ましてござるひい ぶ〱ろさまには なんぞさくや水の へりさうなものを あがつたを帳めんに 御つけおとしかたゞし くわへのにころばしを たんとあがつたをおは すれなどゝ申こと ではござりませぬか  〽これはさう〳〵   うなぎさまご   ごぼうおゐどを   わたくしかたへ     ねかつて      うけ       とろふ 【右丁】 【下段】 〽これでもう一や此とをり            に みづがへつてごらう         じろ  わたくしなどは   ぞんじがけない    あごではいを     おはねばなり       ませぬ 水屋の たはこ   ぼん どうも火が もちかねる 【左丁】 【下段】 〽腎(じん)ざう      な ことでは  ない 〽きも玉にこた へると申せば    これ     ほど の水の へりではぜひ こたへがあるはづ         で ござるかとふも これもみづものだ  しれないもんだ 【右丁】 【上段】 ほんのことかうそのことか しらね共女の心のざう はかたち女なり男の しんのざうは男なり しんのざうはちと ないしやうにて水 をつかはねばならぬ ことありしか又ざう どもりへもいゝつけず ない〳〵にてこれほど のことをかくしてつか わるゝをよもやしれ まいとおもひのほか しんのざうがかたの 水のへりやうことろ けんにおよびければ けらいながらもあとの 四ざうともがさげ すむところ ̄ヲヽはづかしいどふ しやうのとはつとおもつて きもをつぶすとぢきにき もたまにこたへきもがひゝつ たくなつてはんぶん       つぶれる   〽おまへさまはきもが    つぶれましていもが      あかりたくはござり         ませんか 【中段】 〽かんの     ざう  らうしんな  ことを    いふ 【下段】 〽あれきもが   りう蔵が     たて      を     する    やうニ    つふれ      た     そな      た     たち      の    思ふ所    わがみ    ながら      も     おは     もじ      い      お      ひ      も      じ     いと     きゝ    ちがへ   まい      ぞ 〽さてこそ    しな  だるゝ みしヤ〳〵〳〵 【左丁】 【上段】 心のざうはあとの四さう 共がつもる所もはつかしき とて大きにしんらう してゐる所にわるひ ときにはわるひこと ばつかりくる ものにて折ふし くれのことなり しがくれのしま い正月のもん日 あときのきもの のあてまでも たれさんには これほとかれ さんにはかうと あてにした所 が一ときにへん がへの文がきた ればこんど こそはきもが ほんとうに みんなつぶれどこから くるとなしにきねや ぼうがむねより わきいだしむねの うちは八人つきを しけるゆへしんのざうが 上のほうへくつとつるしあがり てんてこまひをぞはしめける 〽これてんてこまひのはじめなり あんまりみずとよいものなり 【中段】 〽こんなくるしいしせつも 今くるほどにてん〳〵〳〵          〳〵  これからしやつ    きやうのくるひ     じや ̄アねへ▲ ▲しやつ  きんの くるひ   だ 〽むねがどき〳〵をどつて八人つきを しけるゆへかんのざうへひゞきかんのざう はぢしんのゆるやうにこはがつてうごき ゑへず 【下段】 〽とつき〳〵 ぶる〳〵   〳〵   〳〵  ̄アゝまん ざいらく 〳〵 〽まんざい はらくか しらぬが 女郎は 正月が くるし   い   ぞ 【右丁】 【上段】 きやく人からことはりのふみが きてむねが八人づきをして おどりはつとおもつてきも をつぶせしゆへじたいはんふん つぶれかゝつてゐた所へこん どはほんとうにまるてつぶ し今まできものふとい のがにはかにほそくなつて やせおとろへみしや〳〵〳〵と ひらつたくなつて つふれ大きにわつらふきも といふものはかんのざうの わきについてゐてかんの さうのやつかいものなれ ばいろ〳〵かんひやうを していたはる 〽こうつぶれきりに なつてはおとこがたゝず こしがたゝねへこれでは あたりめへのきもより ぢぎりの きもが つぶれる 〽わたしが  なりは あかがいる     を みるやう    だ 【下段】 〽それはあかかいると いふもんではないそれ はきもがでんぐり       かいる いろがあを      がいる  とうか風でも    ひきがいる         と     いふもんだ 【左丁】 【上段】 むねがどき〳〵をとつてきもをつぶすや いなやしやくのむしはつね〴〵人のわるき やつなればこゝぞさいわいとむなさき へぐつとさしこみいたのやうにつゝはつて おいらんをくるしま   せけるゆへさつ そくとらやのげどく こくぐはんしきんりうぐはん だらすけまで のみければさす がのむしもくるし がりあつちへくゞり こつちへくゞり いたませけるが 銀しん金しん のはりを四五本 うちこまれげつふ〳〵 とさがりしはめざまし かりけるしだいなり 〽なせこれがめざましゐかとふもきがしれず 〽はらのむしはをくびやうものにてしやくの むしがせつかんにあふをみてむしをころし てちいさくなりぐうのねもですにじつ          としてゐる  〽ぐわんやくのふる所はきのみじかい人が   ごをうつやうなり  〽ぐわんやくこぐすりのどの   あなよりあめあられとふり              くだる 【中段】 〽けいぷう  ぐう〳〵〳〵 ごろ〳〵〳〵 〽けいぷう    〳〵 【下段】 〽げんとくさんのはりは いたひはりだ ̄アヽ       くるしい 〽ウヽ こわい ことかな ぐわん  やくが あた  まへ あたる あいた 〳〵 〳〵 【右丁】 【上段】 心のざうないしやうにて水を つかいへらしたるうへにこんどの ことにていよ〳〵しんらうし てきをへらしじんの ざうが水はこんな へつてしまひ大病 となりけるゆへ今は 心のざうもきの どくにおもい女ぼう をみるやうにけらい ながらもかいほうしてやる 〽又心のざうにちい さくついてゐかざう にあたらしきといふ新 の字をかきて新ざう といふざうありこれ 心のざうののゝ字を ぬきたるものにて としをへて心のざう となるとどのか十四けいに あれどこれはあんまり ずざんにしてとるにも たらずそれでもさう かいてあるからこゝに いだすけつしてさく しやのせつなべで くさきことには      あらず 〽うと〳〵とこんな 大きなゆめがここ からでるかいたはしい 【左丁】 【上段】 ゆめは五さうのわづらひと いへるにちかいなくしんの さううつら〳〵ときの へるやうなこわい ゆめはかりみる   大きなぬま  よりくわいの  とろほう  いでゝ   じんの  ざうを  はきて   水を  みんな   しほり    とる 〽いやじんざうに わたせヱゝ こゝろこゝ にあら されは みれともゆめなり くわへともそのわけ やいをしらすとう        たへり  何か一こう     わからぬしやれ   をいふこゝが         ゆめなり 【右丁】 【中段】 〽かんのさうひいふくろまい日みまいにくるあなたのひねのうちは            わたくしどもづよくそんしておりますたしか            あばらぼねに肴のほねが二本たつておりました 〽ひいかんの二ざう日〽なるほどこれは大きな 【下段】 〽みづからが  むねのうちなら    くわし     こふても    あかりは   なさり    なせぬ      か 【左丁】 【下段】 ゆめかのとうりてたもちつと 大きくみるとおいらはいどころが              ねへ 〽みづからか むねのうちを すいりやう     して     たも 〽ひやう人の ねている内 はあこて   はいお おはすに  ゐるから そはで  しんざう うちはで    はいを   おつてやるなり 〽《割書:それはい 〳〵|それはい〳〵》はいではないむまを           をゝよふた 【右丁】 【上段】 じんのざうは水が のこらすへりきり て日々かんしよく やせおとろへけれは 今ははらの中 にてこくうに 火かたかぶりはら ぢうをきほひ まはり五さう六 ふをあつくさせて けんくはをしかけ やけのやん八といふ わるものとなり はら中かこまりはてる 〽これ ̄へゝ おれを たれたと 思ふおら ̄ア やけのやん八 さんといつて 火のほうしや ̄ア たかい男だはら ちうておれを しらねへものは ねへうねめが はらでもてん もんはらでもひろこうぢに とをつたもんたなんのこつたへ はらしのやうな 【中段】 〽こうあらふ とおもつて 火のやうじん をしてゐた 【下段】 〽わしは これわ かいしゆ へよを わたし しんき よした もの しや そのやう に火  とく いわぬ もの じや 〽くやしくば水を  たしておれを   けしてみろ   水はあんめい  〽おぢいかあめ    なら水あん    めへもうる    八文もうる 【左丁】 【上段】 さけのすきなものゝはらの ひいぶくろのわきにさけが 五升も三升もはいるとつ くりのやうなものがあつて それへみんなはいつて しまふといふにちかひ なしおいらんのはら のうちにあめいろ のとつくりがありて ちうやのむさけがこれへ みなおさまりはらのうち のさかやのやうなものなり きも玉はつぶれてよりこの かたきもがほそくなつて わつらひけるゆへいろ〳〵 りやうぢせしがさけをのみ 〳〵すればきもがふとくなる ものときいてまい日とつくりが みせへきていさけをのみければ だん〳〵きもづふとくなり いまではさかやにかりができても とうするもんだしやくきんで くびあしはもげめへしなどゝ いけしやア〳〵ときもかふとく なつている    〽のどにぐい〳〵むしといふ     むしがあつて人のさけを     のむのをみてはぐひ〳〵と     してのみたがる              ぐう〳〵 【下段】 〽ゆふべはいつたのは   けんびしだそれ〳〵           どう            だ            〳〵 〽あたまから むまひ〳〵と のむはみす    じや ̄ア ねへがおれと うはばみ    だらう 【右丁】 【上段】 腎(じん)のさうのつぎは肺(はい)のざうなり はいのざうはいろ白くして金にかた どるしかも心のざうをとりまいて まもるやくなり心のさうは此はいの ざうがうちのまん なかに大きなつら をしてすはつてゐ て人ばつかりつかふやつなり そこではいのさうかしやう ばいはばんじこへをはつする やくにて上るりても長うた でもおちやつぴいでもお しやべりでもみんなこの はいのざうからだす ことなればこれははら のうちでのけいしや也 そこでたんがおこつて もせきをせくのも此 おとこがゝりなりじん のざうが水かへりしゆへ はいのざうはむしやうに ごほり〳〵とせきをせい てちうやにたんがこらへた らいにはんぶんほどつゝ いでけるゆへしやうばい の上るり長うたも かたられずけいこもや すんでいた所へおいらん のふやうじやういしやへ かくうなといわしつた なすびのなまづけと 【左丁】 【上段】 さといもをかくしてかいに やつてくいけるゆへ大きに たんにあたりたんはおそ ろしくをこつてあばれ だしけいこしよを ぶちこはす 〽のどのあなよりさと いもとなすのなま づけばら〳〵おち てたんのあた まへあたり たんは大きに せきこんで   おこる 〽むしどもは あいだ〳〵に ぐう〳〵と うなりて みたがりはい のざうが所へ かとうぶしの けいこにきかゝりしが たんかおこつて上るりができ ないとたんをなだめる  〽これおれもしやくのむしだ   一ばんげつといつてしづまつて   下さいさういつてむしをつぶすきか    〽これはあん          まり     たんきと       いふもんだ 【右丁】 【中段】 〽いかにたんでもそんなに からんだことをいふ事は ねへそれではおれがつらは たゝないでもいゝがこへが たゝぬつふれきりだ 〽じたいせきの でる所へきさま かさうおこつて        は  たまらぬ ごほん〳〵〳〵  ごほり〳〵 うふ〳〵〳〵   けん〳〵     〳〵 〽とがもないおれになすび やらうやいもやらうが あたつたりさはつ たりするでいり はねへいき〳〵 【左丁】 【中段】 かつてん しねへ 〳〵 【右丁】 【下段】 〽これさ なすひ そんな にたん にさはら    ぬ 【左丁】 【下段】 それ たから はら を たつ 〽これさ   じやう    たん     を    いや    んな   わう   だんに   なら    ア 【右丁】 【上段】 火はだん〳〵はらの うちをたかぶり てあるきのちには おへなく人がわるく なりてつくいのこと くくわつきつよく あつくなりしゆへ きたものを一まい ぬぎ二まいぬぎ だん〳〵ぬいでいま はじゆばんのやう なもの一ツきてくはゑん のすがたになりさかどつくりが みせへきてさけをのんでぶう〳〵            をいふ 〽のどのあなのぐい〳〵 むしこれもとつくりがみせへきて あしなしのさけをのみたがり ゑこぢわるくこはりたがる     〽そのそのあたまのとつくりを一はい      いきたいひやてもいゝよかんは      おれか火でかつてにしべい      〽これおやかたわしはぐい〳〵       むしののど平といふ       もんだ一はいのま       せて下さい       ぜには此       ころに        やらう 【下段】      〽おまへは       あんまり       むしの       いゝこと         を       いひ       なさる       それ     ぐひ〳〵    むしでは ないわしかみせの あふら虫 だ  〽かんしや  はゐながら めいしゆを のむてい しゆはいな がらめいわく   する 【左丁】 【上段】 きも玉はまい 日酒をのんで とんだきもがふ とくなり火も だん〳〵たかぶり て人がわるくなり 今はいぐひ〳〵むし 三人ともにわるもの となりいゝやわせ酒屋 があたまにのせける大じのさろ とつくりをひつたくりて きたり三人さけをあばれ のみにしてはら中をあばれ あるく今まではかいらんがひや ざけがすきでとつくりの中 のさけはひやでばつかりあり しか火があたまにてかんを してのむからあたらず 〽おれもあたまでかんをして さけばつかりのんてゐても つまらぬはるからやけんほり のふどうへくはゑんほうこう にすんで一ねんくるしむとこの しやくせんはぬけらア   〽ちいさい子がさかやきをするやうた    きかつまるこのころあたまをほして    をいたからよくもへるはづた      〽しれつたいはやくあたまをもや       さつせいぢびやうのぐい〳〵がをこつた 【下段】 もちつ   と さう して ゐや  れ あと  で てめへ のあた まで ちやを わかして もらひ   たい 【右丁】 【上段】 さて肺のざうのつぎは脾のざう なりこれはきいろにして大なり すなはちひいふくろのことなり されど脾のざうと胃(い)のふと 二ツあわせてひいといふ脾は一切 のしよくもつをこなすやく胃はしよくを うけとるやくにてあさばんのくいものをみん こゝへ入てこなすからはらの内 のうまいものやなり夜〳〵通り 丁へ出るやたいみせのやうなもの也 じんのざうの水がへつてより 此かたおいらんはうなぎとたまこ をまい日くひそのよちつとでも 水のましさうな ものをむしやうに くいこみけるゆへ水 はましてじんのさう はくわいきしけるが あんまりくいこんだ ゆへひいぶくろが すこしいたみや ふれかゝりしゆへ 心のざうきのとく        がる 〽あんまりやぶれの 大きくならぬ内 に心のざうひい ぶくろのやぶれを こそくつてやるじん きよがなをつたら 又ひいきにおや〳〵 【左丁】 【上段】 どうしやうのふ 〽ひいぶくろのうちのわかい もの脾蔵胃蔵の 二人まい日のしよく もつをこめをつく やうにこなして大ちやう小ちやうの けいへわたしてやる大ちやうへおつるは 大べんとなり小ちやうへおつるは小べん となりてくだるこれ下り米をつくよふなり ひ蔵い蔵ひい〳〵〳〵といつて はたらく今のよにせつないのを ひい〳〵といふのは此いわれなり 〽これからむめぼしの たねのまるのみと たこのあしを二本 こなさねば ならぬ 〽きのふのだんごは はやくこなれたが    けふのぼた もちは あがり かねる うるのま ぢつた せいか 【右丁】 【下段】 〽これかほんの ひいきよの ひきだをし やぶれ かぶれ    と  いふもんだ 〽あたまの やぶれをねつ てもらうは 心もちの いゝもの    だ ちと ねむ けが きた 【左丁】 【下段】 〽おれが名もひざう とはぜにのねへ名だ 【右丁】 【上段】 扨 心(しん)肝(かん)肺(はい)脾(ひ)命門(めいもん)と つゞくことにてめいもんと いふははらの中の大門口の やうなものにてよしはら では大門したつはらでは めいもんにて一さいのくひ ものがてたりはいつたり するなりおいらんはき もがつぶれてより 此かたいもがくひ たいとてむしやうに いもをくふ中にも さつまいもをたんと くわれければはら のむしにあたりて かぶりけるゆへはん ごんたんをのみ ければ大きにさつ まいもとたてやい めいもん口にて大 げんくわとなり てしよくたいし けるゆへ五ざう六ふ それけんくわよと うへをしたへと ひつくりかへり めいもんをうち て大きに   さわく   〽けんくわ〳〵     ぬいた〳〵    かち〳〵 【中段】 はんごんたんのむしころし でやへ〳〵さじをぬいて おれをころしたたしか にへたいしやの   もつた    さじだ 〽さきから此本を みるに丸やくさと いもなすびどもは みんなしやうでかいて あるになぜてめいと おれは人 げんに かいて あつ  て けんくはを するのだ     ノウ 〽さればさ   そこがはらの    うちのことは     しれぬもんだ 【下段】 〽イヤいもく    まいぞ  なんと  あんまり  あたらし    からふ     がや 【左丁】 【上段】 大ちやうけい小ちやうけい ははらの中にとなりやつ てゐるものにてそくにいふ 百ひろのことなりなにか さつまいもとはんこんたん とたてやつてよりむしやう にあけたりくたしだりし けるゆへのどのくり〳〵の のどほとけがだいなしに そんじまたくだるほう では大ちやう小ちやうの百 ひろが大小べんのうけ もちなればこれも あんまりくだりすき て百ひろをたいな しわるくしいまは のどぼとけと 百ひろのりやう ちさいちうなれ ば大ちやうほう小ちやうほう のどほとけ百ひろのこん       りうにあるく 〽のどの    痰(たん)へ   おさめ    たてまつる   なみだによらい    こんりう 【下段】 〽けふもあし      の ほうまて てうど 二里あるいた もう  一里の   ことだ しりへ  まいらふ 【右丁】 【上段】 大へんは大ちやうより大べんどうへをり 小べんは小ちやうよりぼうくわうけい にわたりこれよりいばりくたる此ほう くわうけいといふはぞくにいふ小へん ぶくろのことにてことにふじんの ぼうこうにはいろ〳〵ありまづ おいらんのはつとめぼうこう それから下女のかめしたき ほうこうかゝ ̄アのでるのか うばほうこうば ̄アさん なんぞはやといぼうこう むすめのてるのが めかけぼうこう そこで小へんぐみ といふこともなき にしもあらず今は うなきたまごのせい にてしんの水たく さんになりはら中 が水たらけになりし かばほうくわうけい 小やうしけくなり たかふりたる火のあたまへしたゝか 小へんをしかけければ じう〴〵じは〳〵と 火はきへてしまふ 〽又すげのくろやきにした のはしやくのむしのねを きるといふことにてかん のさうすげがさのくろ 【左丁】 【上段】 やきをもつてしやくのむ しをたいじする 〽のどのぐい〳〵むしは いくらさけをのんで も〳〵ぐびつゝやつに てのらにはめんどう がりてとつくりへくび をつゝこんでのまんと する所をとつくり の口ぐい〳〵むしが のどぶへにしつかり とくらいつきむし をくいころす   〽なむさんとつ     くりわうじやう           だ         た ̄ア引 【右丁】 【下段】 〽みづからがてうずをしかけてたれころさん  おもひしつたる       ちゝ〳〵じや〳〵〳〵        じや ̄ア〳〵〳〵 〽此所小べんむやうと いふふだをたさぬが おれがぶねんだ  ̄ハテぶねんた      ナア これは むねんのぬけ      よ 〽こいはおなごの しやくのたねと いふがわがその つらでは  おそれいる 【左丁】 【下段】 〽とつくりへ ゆひを つつこんで ぬけねへ    とは ちがう   ぞ どうだ 〳〵 【右丁】 【上段】 はらのうちにしやうじぼねといふこうらいや じまのやうなほねありすげがさのくろ やきにてしやくのむしはきへけるが とうしたかそのかさ のやくとくがのこり しやうしほねのほね がらみとなりて いくらひつはつて もこれがとれかね 大きになんぎ するこれきやく 人のをいてゆき しかたにやかた あての所にかう やくをはつた あとがある 〽かさのほねがらみ になりしゆへもの いゝがはなにひつかゝりて はなのしやうじかしたへ おちるはなのせう じは ちいさなせうし  にて 火がたかふつ たじぶん はなの あなをだい なしにす ほらせける ゆへまつくろくすゝび やふれておちる 【下段】 〽みり〳〵〳〵つよくひつぱるとほねがおれる                    ほね                    おり                    そん                     だ 〽なむさんはなの  せうじがおちる   しやうじせんばん       ふが〳〵〳〵 〽はなははいのざうがうけもち  にてあたまへせうじがおちてあながあく 【左丁】 【上段】 かさはほねがらみとなりとれかね 〽さては けるゆへ上手ないしやにかゝり   これだ ごほうたんのくだしをのみ       な けれはかさはみなこな〳〵に   めうだ なりてほねをはなれ大      〳〵 ちやう小ちやうがうけ もちのあなよりたき の水のおちるかことく くだつてしまふはな のせうじもひとり でにはなへはまり もとのごとくしやん としたいはなと なりのこらず やまいのねを きりてしまう 〽はらのうちにどての   〽私もちい やうな所ありそれより    さくなつて たきのおちるごとく       きがつ やまいくたる俗にこれ         まる をとてつはらといふ 〽きも玉はさけを のみて大きにふ とくなつて人が わるくなりしゆへ 五ざうどもに大き にしかられちいさく なつてどてつばら のわきにかたく      なつてゐる 【下段】  〽此ごろ  ふくろへ だいぶん 大ふくが  はいつた     と  おもつた     が 〽ちとかさ のんだる のを  はい けん いた さう 十四 経(けい)情(せい)その任脉(にんみやく)の人からによつて    芝全交戯作 こんにやくのでんがくでさけをのんでも 大に督脉(とくみやく)のつく事あり いはんやをまんまにおいてをや 一さいのくつたりのんだり おさまる所はひいぶくろに してまことにそくさい ゑんめいぶくろとうや まふべきはひいぶくろ也 ことにおいらんはつとめの うちのかんにんぶくろ かたついたさきでもし じうおふくろさまと あがめられ金ふくろ をたんともちて年〳〵 はる袋をおくらばいかはかり めてたしとなんの こんなへちまのかはの  だんぶくろなくさ   ざうしなれと 御子様かたの御ひいきを もつてふくろ入の本とも    ならばはんもと       つる屋が           大仕合めてたふ             一ッ打ましやう                      しやん〳〵〳〵 【破損部分は「東京大学学術資産等アーカイブポータル 十四傾城腹之内」を参考とした】 【裏表紙】