【表紙 題箋】 家伝寿命之薬   全 【整理ラベル】 208 特別【朱印】 642 【右ページ・白紙。右肩に書き込みあり】 天明二壬寅 【右ページ・朱印/瓢型】 花盟 【左ページ】 こゝに竹野 小庵といふいしや ありさのみ【別本にて判断】が【別本にて】くいと いふでもなけれども おびたゝしき出入ば にてしんのことくに こふみやう【功名】てがらを あらわし人に もちいられ 又らしやの はをりりんずと いふところを ぬき【抜き?】【脱ぎヵ】 くろしたて【黒仕立=黒ずくめの装い。粋な人の装い。】 にて とふせい ふうなれば やまいも こゝろより でるものなれば そのきどりにて りやうし【療治】するゆへ なをす事 きついものなり 【挿絵下せりふ】 せんせい さいしゆく【在宿】 なれば よいが 【左ページ・朱印/鳥の形ヵ】 【左ページ・朱印/円形に ■■図書館】 【左ページ・朱印/円形に 明治三七・五・三■■】 【左ページ・朱印/四角に 定ヵ】 【右丁】 こゝろやすきもの おり〳〵はなしに 来りにければ にげたといふ事は おくびにもださす このちうも【先だっても】 みんなの すてた所を わしがいちに ふくで たちまち しよくに    くいつき ふゆぼう こう人【冬奉公人 注①】も はだしと いふやつとてがらばなし いづれもいしやしゆが きどりがなくてはいけませぬ まづすこしのかぜははいどくさん【敗毒散 注②】 そのうへが正気さん【正気散 注③】 ずつう【頭痛】かするなら さいこ【柴胡 注④】せんきう【川芎 注⑤】を かみするせきが てるならそふはくひ【桑白皮 注⑥】 【左丁】 きやうにん【杏仁 注⑦】 みな四時の きにあたり たるもの なれば ふかんきん【不換金 注⑧】 いかぬ事は    なし こゝの所が りやうけんもの【料簡物=よくよく考えてみなければならない事柄】 とかくしよもつに ばかりまかせ しやうぶな もので きつかいは なけれども その人に よりて かけひきのある事これは りやうじがすこしおそふ ござるのにかいからおちぬ うちにこしのりやうじも いらぬものわしなどは おそいぶんはかまい ませぬとみそ【味噌=自慢】をぶちあげる 【右丁下部】 いりやう てびき くさと申 本を ごろふしろ【御覧じろ=御覧なさい】 けつかうな  ものじや 【左丁下部】 わし などは とんと つまるは おかげて   よいが  すこし   くすりが  なずみ    ます【離せない意か】 【注① 江戸時代、北陸・信濃地方から農閑期の冬期だけ江戸に奉公に来る人。】 【注② 近世、広く愛用された売薬。】 【注③ 粉薬の名。風邪に効く漢方の薬。解熱、発汗の作用をもつ。】 【注④ シマサイコの根を乾燥したものを慢性の体熱をとる解熱剤とし、漢方医学では呼吸器病などに使用される。】 【注⑤ 鎮痛、鎮静、駆瘀血、強壮作用あり。】 【注⑥ 漢方の薬物の一つ。クワの根皮。消炎・利尿・解熱・鎮咳剤として用いられる。】 【注⑦ アンズの核の中にある胚を乾燥したもの。薬用。】 【注⑧ 風邪薬の名。室町時代から江戸時代にかけて、全国的に知られた。】 【右頁】 小庵 きん じよ にて やくし さまの よふに おもひ 年も 山のごとくに もちたる 百ばかりのおやぢわしは もふいきた所が七十ねんか 八十ねんなにとぞ せがれにばいやくの ごでんじゆをねがいます とふぶんはうれずとも しぢうのかぶにいたさせとふ そんじますとたのみけれは いかさまそれは よいおぼし めしいろ〳〵 おはなしもふしませう そのうちて 【左頁】 おほしめしのになされ しよ【書】に曰 くすりめはもん【「めいもん(明文)ヵ】 せされば そのやまいいへずとあり かんそうは くすりを よくひく きやうにんは かみのものを 下へまわす につけいはよくめくりて やまいのいをしる わさびがいきでも そうめんにはわるし いりさけにからしも ならすいわしのぬたは とうからし大こんおろし さんしよのめもちいる 所か御座ります いてなにぞ おもしろい 事あらうて 〳〵 【右頁下】 とり〴〵 ひき ふだを いたし ませう 【左頁下】 今日はひやうか【病家】へ でかゝつて  おります ゆるりと  おまへにも  わかるよふに  おはなし    申   ませう 【右丁】 ○たむしの   くすり たむしの できたるに みなみと いふじを かけば なをると いふ事は たいがいは 人のしる 事なれと いかなる ゆゑんが そのわけを しりたる ものなし もろこしの ちゑしや しよかつ こふめいの おもひ つきてもなし日本の ものではだれであろうと 【左丁】 おもへはかわちのくにのぢうにんくすのきまさしけが はかり事なりくすのきといふじはきへんに みなみといふじたむしといふものきより いでたるものなりきにみなみくすのきゆへ みなみと いふじて いかぬ事   なし のちに みなと 川にて まきものに して むすこに わたし いまのよ までも きゝつたへ たるもの たむしを なをす   事 きみやう     なり 【右丁下部】 しつと   して    いや はゝ  あか【別本にて】 よい ものを やると いごき   な  さんな 【左丁下部】 〽ばんこ■    たんな   よ【?】んといちばん   しま■やしめん    たのしみた 【この戯れ歌の部分、別本に無し。後の書き込みか。】 【右頁】 ○酒のよいを   さます薬 さけの よいには そばの むめか よけれ とも 所に よりて なし 又すさ まじく よいて けんくわ など する ものも あり 二日 よいとて づつう などしてあたまあがらず 【左頁】 こまりてもうちなれはまつよし あそひなぞのさき【別本にて】てはおほきに こまる事はまきものなとくいにゆき なんそないか【別本にて】といへはいきなものを たしか【別本にて】けられこいつはありかたいと むらぶうにのみかけもつとなんそ 〳〵となにをたしてもこれは こめんたというよふになり二日も三日も かへり そうも なく よい たる には 壱分 とるか なんりやう【南鐐 注】 三へんかと おもふ所へ 三分でござりますといへば たちまちさめる事       きみやうなり 【右頁右中】 しらうとも こができ ては こめんだ 【右頁左中】 それではおさへるよ 【注 二朱銀の異称。二枚で一分(いちぶ)、八枚で一両に当たる。】 【右丁】 ○むしばのくすり わかきうち はのわるいは きついそんなり 正月のもちは 五月ごろ ひうち石の よふな やつをがり〳〵 いかぬといふは みなむしはの わさなり むしのくわぬ よふにする     には 四月八日に たんざく ほどに紙を きり ちはやふる 卯月八日の 吉日にかゝみ さげやらせ せいばいぞ するとかきて かほに はりておけははを むしにくわるゝ事なし 【右丁下部】 ちつと みにくゝとも むしばには ましじや 【左丁】 ○こへのくすり こへのたゝぬには むまのしりを なめるは大めうやく なれども ま事とは おもわぬ ものも   あり しばいの 太夫も 長うたも こへのよい所を 見れはかくやで なめると見へたり しやうのものさへ なめやうなら ふうこう ろゆうも そつちへゆけと いふほど たつ事しんの     ことし 【左丁下部】 次郎【馬の名前が次郎】  ぼう ちつと まちな 【右頁】 ○しやくの薬 こいはおなごの しやくのたね とぶでも しやくはおんなに おゝしなかにも つとめの身には こゝろつかい おゝくもんひ【紋日】 もの目【「日」の誤記 注①】に あたり このせつく【節句】は 文こふさんに いわふかぬしに いわふかいんきよ さんにたの まふかとこゝろ まちにして いれどもひとりも こすおもひも よらぬきやく しん【客人】かくれは さへ【ふせぐ】ねとも ひまゆへ いくたり【幾人】もあつまり なにやらたみさん【畳算 注②】 【左頁】 はかりおき そわ〳〵〳〵と すれはおめへ たちはおかしな かほつきだがどふしな すつたといへはしやくか おこりんしたと       いふ 一おいらん五両 一しんぞう弐両 一ほふばい三両 一やりて一分 つねのごとくに ざわ〳〵して もちゆれは うその よふに けろ 〳〵と【平然として】 よし 【右頁右下】 みどりや おや〳〵 ばから  しい   よ 【左頁右下】 さよ きぬ  さん はなし  ねへ 【注① 紋日物日(もんびものび)=江戸時代の遊里における特別の日。「紋日」は「物日」の変化した語とされ本来両者は同義であるが並べていうことが多い。主として官許の遊里で五節句やその他特別の日と定められた日。この日遊女は必ず客をとらねばならず、揚代もこの日は高く、その他祝儀など客も特別の出費を要した。】 【注② 婦女子などが畳で行なう占い。特に遊里で行なわれたもので、待ち人が来る、来ないなど、その他の是非・吉凶を占う。】 〇かんしやくの    くすり かんしやくの りやうじは やすく あからぬやう あそびになど ゆきてとなり ざしきは大さへ【非常に陽気に騒ぐこと】にて てまへのほふは いくらてを たゝいても へんじも    せず いま〳〵しい やつらだ どうして くりやうと きのいら〳〵 してはじめは のぼせそれより かんしやくおこる つよいのは あたけまわ【別本では「わ」】り【あだけまわり=暴れて動き廻る】 さかづきを ふみこわし 【左頁】 しやうじを けやぶりなか 〳〵うち じうのてに おへぬには 【右丁】 〇目の薬 女中には ごふくもの くしかうがいは めのどくなり おとこの めのわる きには あさくさ などの 人の おゝき 所へ まいり みづちや   屋 こしを かけて いれば おびたゝしき 女の 中にも ふじ いろの もんちりめんの 【左丁】 □【むヵ】く 三ツほど とひいろ ひろうどの    おび ひぢりめんの ほそき□くけ 又はくろ ちりめんの つまあかり【褄上り=着物の褄の、裾より上がった部分】 しろむく ばかり三ツ 四ツきんなし【金梨子地のこと】の もふる【モール】のおび もへき びろうとの こしおび いつれもすあしに うらつけぞうり【注】 いかやうに むづかしき 人のめにも きみやうに  よし 【左丁下部】 どこだか わからねへ しけさんかと   おもつた     ついそ      ねへ【終ぞねへ=まったくめずらしい。】 【注 裏付け草履=裏を付けて厚くった草履。わら製、竹の皮製などがある。裏は三枚または五枚重ねが普通。また重ね草履の間に革を入れて、水が浸み込まないようにすることもある。】 【右丁】 小菴 いろ〳〵 みやうやくを はなしけれども とかくせけんに かい【害】のなき めいほう【名方=薬の名高い調合法】が ありそふな ものとたづぬれは とうらくなやまいに としはくすり【注①】といふほう【方】もあり 人のせんきをづゝうにやむと いふによいくすりもあれど なに よりは うれそうな ものは しゅ  みやうの くすりが よかろふと ほうくみは のかけ【野懸け=野遊び】の つみくさ よし原の 【左丁】 さくら さん芝居【注②】の みかんのかわ まんくわんしても けんひし【注③】にても あたゝめさけにて もちゆさしやい きんもつは こゝろつか【別本にて判断】いと 大晦日と おしへければ いかさま【きっと】これは よさそふな くすりと しやうち    して むすこに きん【別本にて判断】〳〵と しやうかぶを こしらへてやる つもりにて よろこひ 小菴くふに おすいものにて ちそふする 【右丁下部】 おまへも ち【別本にて判断】と もち【別本にて判断】いて ごろふ   じろ いかさまな 【左丁中段】 ねむるな こく〳〵【この語別本には無し】 【注① 年は薬=年をとるに従って思慮分別ができること】 【注② 三芝居=江戸にあった中村座、市村座、森田座の三座】 【注③ 剣菱=摂津国(兵庫県)伊丹から産する上等の酒の銘柄。江戸時代最も賞味され、将軍の御膳酒にもなったもの。】 【参照 東京都立中央図書館所蔵本 https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053339/viewer/14】 【右丁】 かてんじゆみやうの くすりと ひき ふだを まわし けれは みな 〳〵 もち【別本にて】 いて みれば なんによ ともに よくあい きのふさがり たるなどは一ふくで こゝろよく ろ【別本にて】ふしやうのたぐいも けんきを【別本にて】まし くすりの目出たいといふは これかはじめてとひやうばんの 大うれにてぜんたいじやうぶな しんだいが したい〳〵に おふきくなり かねのおき所【別本にて】にばかり【別本にて】 こまりて栄け【別本にて】り 【右丁下部】 通笑作【▢で囲む】 くすり   か  こふ うれ  ては うまい   もの   じや 【左丁白紙 資料整理ラベル】 208 特別【小判型朱印】 642 【参照 東京都立中央図書館所蔵本 https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053339/viewer/15】 【裏表紙】