山谷通伏猪の床  全 【空白】 【欄外】□【安】永九 山谷通伏猪能床(さんやかよひふすいのとこ)下 【山谷通い…新吉原に通うこと。猪牙舟で通うのが粋とされた】 【右ページ 右上から】 ここに 亀三【?】と云町人有 一人のむすめを おつるといいしがいたつ てうつくしくもの やわらかなるうまれ也 【同 右下】 そのゑは北尾か【絵師の北尾派?】 つぼかへ 【同 左上】 家の てうほう【重宝?】 ふすい【伏猪】のかけ ものをしよち する 【同 掛軸の下】 これ〳〵 この かけ もの を み やれ 【同 一番下】 いの ししと いへばこ わく思へ ども ふすいと いへばかく べつ やさしく きこゆる 【右ページ 右上】 亀三ふうふ 長吉をふひん【ふびん】に 思ふ【気に入られている】 【右ページ 中ほど】 ばんとう 武兵衛【?】は 日ころ この いへを おふりやうし【横領し】 おつるを 女ぼうに せんと 思ふ 【右ページ 右下から】 手代 長 吉 は き りやう 人にす ぐれ 正しき なる うまれ なり 長吉ほうこう 大いにつとむる 【左ページ 右上から】 おつる おくへ きや おまへのひいきは はち介【下男の名前】かへ おつる 長吉を みて はづ かしがる ちと はる きやう けん【春狂言】 でも みに お出 な さりませ 【右ページ 上から】 まい日〳〵 手代 二人にて やしき かよひ する 【上左】 まづ〳〵内へはやく かへらう 【右中ほどから下へ】 うちのことはヱゝサ しよし【?】 のをこそ【?】 武平【兵衛】長吉に さと 通ひをすすむる【里通い…遊里へ行くこと】 【下】 ばん方は よしはらへ 大黒まひを みに行 かう しやあ ねへか【見に行こうじゃあねえか】 【左ページ】 武兵衛はおつるの美しきに ほれていろ〳〵うつつを ぬかす おつるはいやがる 【同 右下】 まいよ〳〵く どけどついに 一度のへんじも なさんせんそれは あん まり なさけ ない 【同 上】 ヱゝ いやらしい はな しやい の アレ おつるさん のこへが 【同 左下】 夕べ【昨夜】【?】もふん どし一ツで からかみの とをあけに 【その下】 かゝつたればふん どしのさがりをね づみがくわへて【鼠が咥えて】 天神様ア【?】 くだせへ 【右ページ右上から】 武兵衛が みている さてさて〳〵 よし〳〵 おれがしのふか有 そなたを たんとたのむ けれと【けれど?】いや〳〵と ばかりいやるが なんでも こんやはへんじ しや アレ どふぞ 〳〵 長吉 めいわく その よな ことは およし なされ ませ 【左ページ 上から】 武平衛はこいのいしゆ【意趣】 長吉をしくじらせ おつるを女ぼうにせんと思ふ ふすい【伏猪】のかけものをぬすみ長吉になする【罪をなすり付ける】 やレ いゝ物が 手に入ったわ エゝと 天 から と 出 やう 【右ページ】 モシがてんのゆかぬ長吉がたばこ入れに【が?】こざります【ござります】 まだあしなふみがおちて いるわへなア ばんとう武兵衛とうぞくのいりしとさわぎ くらのうちをきを付る□□ひろい とりし二いろ【ふたいろ?】を亀三にみせる 【左ページ】 くらない【蔵内】 手しょく【手燭】にて せんぎする 【同 下】 ぬす人は にげたか ヱゝ よわい やつだ 下人【下男】 八介 りきむ 【左上】 おふくろ きをもむ 【右ページ 上から】 武兵衛 めつたな 事をい やるな どふして そふした 事を長吉が する物だ おつる ひいき する 【左上 八介の上と右横】 にが 〳〵 しい かわ ヰ そう に 【右端 中~下~左へ】 さて ナア 【長吉】それでもみにとつて おぼへござらん あらそうな【争うな】 【右下 番頭の下】 くらの うちから 二いろながら【手紙と煙草入れの二つ】 出るうへは ぬすみては 長吉 われだ 【左ページ】 【武兵衛】いゝざま〳〵 はやく 出て 行【ゆけ】 【同 左端上】 お つる かなしがる 【同 下】 天のなせる つみはのが るゝ事も あらんかけ ものゝ出るまでは しばらく みを かく さん さはさりながら【とはいうものの…】 【右ページ 右上から】 おつる 長吉を くに【苦に?】 する ヱゝいけすかぬいやらしい モシ〳〵日ごろおまへのおきにいりの 長吉はぬすみしたゆへひまかでやした【暇が出やした】 わたしもおとこに かわつた 事はなし 思ひなをして みなんせ 【右下隅】 武兵衛 うぬ ほれ【うぬぼれ】 【左ページ 右から】 長吉は思ひよらぬ事にあいてよりしるべのかたをたのみいけるに主人 の事またおつるの事どもおもひ所のちんじゆへ【鎮守へ】ぐはん【願】をかける 長吉 つやを する 【長吉の左】 しんしう すわめう じんの やしろ【信州諏訪明神の社】 【上】 せんざい〳〵【善哉善哉】我はこれ すわ明神なり汝がぐはん【願】 じやうじゆ【成就】せんことはこれゟしんむ さし?ツのほりえ有此ところへ ゆきつりをたれなばなんぢが 君しんのとくによつて【?】 かけ物の行 へまたは まつだいに 名をのこす 事有へし【あるべし】 ゆめ〳〵うたかふ事なかれ〳〵 【右ページ上から】 そも〳〵 此すわめうじんと 申したてまつるは しんしうの住人むら上 義清の四天王【村上義清…戦国時代の武将】 たかなしけんもつ【高梨監物仲光】と いうものゝ あ【?】んち?【八潮市上馬場?】 しんしうすわ 明神のつけに【告げに】 【同、左中ほど】 よつて此八?りやう かみばゝむらに【上馬場村に】まい ねん正月廿七日 きしやのしんじ【騎射の神事】おこのふ 中と?名主としより 庄や百しやうに【百姓に】い たるまでそのばんに 【左ページ中ほど、右の文のすぐ横】 あたりぎやくして【?】 まとをいる なり べつとう【別当】は長光山明光【?】? この寺よりさんのごふ【産の護符?】出ん 此むら一ツとうになん ざんと【?】いふ事 なし 【右ページ下、観衆のせりふ?】 さかい丁の ま【?】ねきを みる よふ だ 【左ページ右上】 あたり〳〵 【同、中ほど】 此や【矢】に あたりいへ こと【?】一本に してかへる 也 【右ページ】 いにしへ此 大もんとなり かいびやくの ころ 今のしんよしわら 三や?なり にてふしんの うちは しやう ばい はじ むる 【左ページ、上】 これに よつて 今に三や がよひ と いふ 【同、右下から】 上だいのころはふねはなく あさくさみつけよりむま にのりてかよふ よしわらへ御いで なされたらまた むまののりよふか ちがいや しやう 【右ページ、右下】 ぼうぐみや だんなは といる?の だらふ ナア やつサ こりや ホ 〳〵 【左ページ、左端】 みな〳〵 ふかあみがさ にてかよふ 【右ページ】 此ところはいにしへ佐藤たゞのぶ【佐藤忠信】が かぶとをうめしところとかや さるによつてかぶとがふちとも いふ 【魚籠を持つ男】 ハア つゞみのよふなうを【魚】がかゝつた 【長吉】コリヤ どふ だ 【左ページ右下、長吉の横から】 長吉 明じん のつげに まかせ このところへ来り つりをたれしかば 一ツのつゝみ【鼓】をつる この ところにて つりをたれ 【同、中左】 やどへ かへらんとするに なにもの ともしれず おいて行〳〵と【おいてゆけおいてゆけと】いふこへ するゆへよつておいていけ 【同、水面の横線の下】 ぼりと いふ 【同、上】 ことに いつに なく たく さんに うを【魚】 つり あげる 【右ページ、左上から】 いの ほりの ぬし 女と へん ずる もし〳〵 おい て いか し や んせ 【長吉のせりふ】 はて?【何?】ぎやわがやへかへ らんとするおりから おいてけといふこへ一ト【ひと】 ならず二トなら ず てへ を りけしは さては そのほうよな 【右下】 しさいぞあらん かた?きかん おし ぐさや 十? 【左ページ、右上から】 しさひといふはしんしうすわ明じんにてふる いのしゝ有しかば山本かん介【山本勘助】がために ころされしんげん【武田信玄】 ふびんにおもひ そのかわをとり 一つの つゞみとなし しゝねのつゞみ と申すとかや 別【?】そのつゞみの 子でござり ます 【右端から】 わたしやおやのあとを しとふて【慕うて】 はる〳〵 まいり ました 【同、中ほど、長吉のせりふ】 おまへ のね かいも じやう じゆ いたし や しやう【お前の願いも成就いたしやしょう=聞き届けて鼓を置いていきましょう】 【同、下、風呂敷包みの下から】 此つゝみし ものをあけ ますから あけてみ さしやんせ さて〳〵およばぬ事 だん〳〵のおがたつ【?】 そうは【とうは?】百ぎやうの みなもと かや 【右ページ、右中ほどから】 おいてけほりにて 女にもらいし つゝみをひら きそれはとし ふる 【同、上へ】 いのきば【猪の牙】 なりいのき ばとかいて ちよきとよむ ゆへわがやはすなは ちやなぎばし明神 のかげといゝ かよふ とはを ふねとなし やのしる でとくくふ うをなす ならば よしわら 【同、左端の縦に細長いところ】 かよひの人にもうちのしゆひ【首尾?】もよからん 【同、右下】 ヲヤ〳〵 【同、長吉の横】 これ にて ちよき ふね と いふを はじめて つく る 【左ページ、右上から】 はるはまた かくべつ日か ながい 一ふく【一服】あがれ みな〳〵 ちよき ふねの できるを めつらしかる きよふな 人だ 【同、舟の下】【※わかりません】 らと ふぞら はめ たい 【右ページ、右上から】 あれかちよき ふねといふもの だ あの舟に のつて あそひに ゆく のだ 【同、舟の上】 もう【?】 かぢ 〳〵 【左ページ】 猪の 牙 也 ならふ類 深つ の 春 は し き 【右ページ、右中ほどから 挿絵の横線をまたいで縦に】 さけに ゑひ わがやに つたはるふす いのかけ もの【伏猪の掛物】主 い ちうに 有こと を  かたる ちと あげ もふしや しやう 【同、下】 たんな【旦那】 おいたゝ き 申しや しやう 【同、左側、長吉】 ふねやど 長吉 武兵衛が ようすたち きゝするかくりに まちぶせして 手に入れぬと 思ふ 【左ページ、上から】 長吉あと より おつ かける 【同、右下から横へ】 あい〳〵 おしづかに きのふよりのい つゞけゆへこん やかへります ハテ くらいばんだ 【右ページ、右上から】 かけもの 手にいる このかけものをうぬがものにし そのうへにて おつる様にむたい をいゝかけことに いへおも一おふりやう【横領】 せんとはふと印? やつだ どつ こい 【左ページ】 亀三が いへも おふれう【横領】 せんと思ひ のほかたん ぼへなけ らるる 【同、左下隅】 やゝ つよい やつだ 【右ページ、右上から】 亀三 ふうふは おつると 長吉が こと を しり ふうふにする 【同、亀三夫婦の横】 母 よろ こぶ て がら 〳〵【手柄手柄】 【同、左上、挿絵の横線をまたいで縦に】 是と いふ もひ とへに 十八 ?のさかへ き?? かけて ??やう ばんを 松 むらは? 【同、挿絵の濡れ縁】 武兵衛 あく し あら わ れ【悪事顕れ】 つれ きたる めてたい 〳〵 【同、下】 たん〳〵の こと 武兵衛 はく じやう する 【同、左の柱】 むすめうれしかる【嬉しがる】 清長画