【題字】内外詣 【右下ラベル】JAPONAIS 1010 【左上朱記】JAPON 1010 【上部に書き加え欧文4行 下に】金剛又兵衛長頼■ 【中央部に書き加え欧文3行 末尾に】金剛鈴之助 【ラベル】JAPONAIS 1010    内外詣《割書:重習》 「光り長閑き日の本や。〳〵。内外の宮に 参らん」「抑是は当今に仕へ奉る臣下なり。 扨も我君伊勢太神宮を信じ給ひ。臨時の みてくらをさゝけられ候程に。急参詣仕れ との宣旨を蒙り。唯今勢州の旅に趣候」 【台詞のみ。句点以外の細字・記号は省略。切れ目に「」を挿入】 「春立つや矢走の浦の朝霞〳〵。たな びく末を湖や。影もときはに見えわたる かゞみの峰をよそに見て松の嵐も鈴鹿川。関 の戸さゝて是そ此。いせのみやゐに着きにけり〳〵」 「急候程に。伊勢の宮居に着て候。心静に神 拝申さうずるにて候」「をさまれる。御代の めぐみも神風や。伊勢のみやゐに。いづるなり」 「くもらぬ夜半の星迄も」「和光にあまる。かげ ならん」「有かたやいすゞの清き宮柱。太 しく立て秋津洲の」「神の御威光は異国に。 あふぎても猶あまりあり。いやしきしつの身にし ありとも。心をみがくに。へだてはなし」「神さぶる 伊勢の内外の宮柱 たてし誓ひに二心 〳〵。あらずは末は栄えなん皇太神の 御こゝろにかなはんとしも思ひなば 唯正直を もとゝして。あふきて仕へ申せとよ〳〵」「いかに 是なる宮人に申へきことの候」「此方の事にて 候か何事にて候ぞ」「是は当今に仕へ奉る 臣下なるが。勅使として参詣仕りてあるぞとよ」 「何と勅使にて御座候とや」「中々の事」「唯今 の御参宮返す〳〵も御めでたうこそ候へ」「急 祝詞を参らせ候へ」「畏て候 謹上。再拝 高天の原に神集りまして。天のいはとを押 ひらき。あめの八重雲をいづのちわきにちわきて きこしめせ 抑天長く地久しく。上すぐな れば下迄も。安く楽む御恵み。あふぎねがはく は秡殿の神。八百万の神たち。きこしめし うけ給へと。かしこみ〳〵まをす」「実有がたや 此神の〳〵。深き恵の道広く。万物も出 生し四海の波も静にて。けに君は船臣は水。 水よく船を浮ふなる。此日の本は有がたや〳〵」 「猶々すじめのかぐらを奏し。又獅子をも御舞候へ」 「畏て候。いかに申候。急かくらをまゐらせ候へ」「心得申て候」 「さる程に時うつり〳〵。きねか鼓もかずいた りて月も雲も白妙の。袖をかへして神かぐら」 「ちはやふる」「五日の風や十日の 雨もうるほふ。獅子の舞」「かくて明ゆく 山かぜに〳〵。波の鼓も声打そへて幾万 代と舞をさむれは。星月神灯しらみ渡るや 東の空に。五色の雲もかゝやきいづる日神の 御すかたあらはれ給へは夜も明ゆくや内外の みやゐ。〳〵の。さかゆく春こそ久しけれ」 【白紙】 【白紙】 【文字なし】 【文字なし】 【文字なし】 【文字なし】