茶羅毛通人 完 天明三 《割書:珍|物》茶羅毛通人(ちやらのけつうじん)上 こゝにあつ まのつう じんこく【東の通人国=日本】に ひやう とく【表徳(号)】をかう 子とてつう 人のおや だまとよば れ大つうの かしらたる ものありける かいませかい【ありけるが、今世界】 もつはら大つう □【へと?】なびきした かふ事をかんじ 大から【大唐】の大王より もつうじんにつき やいしやれてみた きとてつかいきたる このつうじんこく ねんちうちやら【出まかせ】を いつてくらすゆへ 大からにてはちや らのけつう人 とおほえている ときに唐土またいつたう それいろごという所が うるさかろふの 【この先かすれ多し】 なに大王□【印?】□□□□つきやい たいそふだらうと おもつた とうじんいまたあるひげをなてる 唐人未抔有髭【「抔」は「など」と読むが、もし「なてる」と読むなら「撫」のはずで、旁の「無」を「不」としたという素人の「ちやら」です】 つうじんかへつてなきひげをなてる 通人却抔□髭【「抔」を「なてる」と読ませているのは刷りの違う別の資料を見ると正解のようです。また一行目との対比と「却」の文字から薄れて読めない部分を補いました。これもまた素人の「ちやら」でございます】 たう□□ つう人の おしへをは 申がら せんせい にはきつ いおな □なさ れよふ だ さよふならきん〳〵おいでた まつち山【待乳山】といふは□□□ さてももろこしの 大わうつうじんを よびたきとのねがひ にて大つうじん千 人はかりらいとう するらうにやく なんによのとう人 どもさじきをかけ つう人をみにでる人 おびたゝしとふせいを さかさまにしてせい とうといふのぼりを もつ 【台詞、かすれている】 あれ□な□□を【あれみなかみを】 □び□□のよふ【とびくちのよふ】 にいつてらつ【にいつてらつ】 さる【さる】 此としに なるがつう しんははじ めてじや 大つうじんぎやう れつのしだい      〳〵 【通人たちが持っている幟】 世当 つうしんの かしらたる べきもの 二三人大わうに まみへさま〳〵大 つうの おゝきをはなし そのしやれ のめす□七里が はまのきしやこの ごとし大わうつう人の いきなる事をかんじおゝ くのたからをあたへりんごく□【へ】 かへし給ふされども大王 このくにのとう人どもを つう人にしたきとのたの みゆへよのもの【余の物】をかへし かう子【幸子】一人□□【此処】にとゞ□ まりつうがく【通学】の みちをしゆぎやう させんといふ 【台詞】 こんないた事【痛事】を しなすつちやァ きのどくだぜ をつういうもんだぜ こればつかり ではりん たがすけしと【?】 いうところたが とつていき山 〳〵 【本文・台詞ともにかすれが多い】 幸子はとう人をつうじんにせんとて まい目【日の誤りか】つうがくの□□をかうしやくして とう人をありがたがらせる エヘン 〳〵 それ なん とか かとか かういつ たる□ん ながわし □□ どんな ろに 身(み) 六(りく) 㙯(けい)【藝の異体字】 通(つう) 者(もの)七十二文りくげいとは六つのげいてさみ せんいけ花□□□□【はいかい】こはいろみぶりした かた これを おしへて つうにする□が七十二文□□【つゝ】ならとんた □すり□〳〵 なん□いつて□【は】 それなんとかかと かういふことがあつて きゝが□【き】づ【が?】し にくし ときに一はい ちよんのみ とでた いじふん たの 【貼り紙】 一六 遊子方言 二七 南閨雑話 三八 辰巳ノ園 右 九つ時より 同ヨリ 吉原細見講釈 【『遊子方言』『南閨雑話』『辰巳之園』はすべて洒落本。『吉原細見』は吉原のガイドブック。】 【全体に不明瞭な部分が多い】 せいじん【聖人】 なれば きりん【麒麟】 げこなれ ばみりん【味醂】つう人 なれはこんな もので あろうさ とう人どもかう しやくのかへりがけに にしのどばへきり とむまあわれる せいじんのよには きりんあらわれ つう人のよには きりとむまのものなり いよ〳〵かう子【幸子】がつう 人なることをとうじんども かんしんする 此よふすではきりんより【麒麟より】 さいがで【犀が出】 ませふ いまゝでうみ【かみ?】のそこにな めていましたあな ふしぎ〳〵 とう人ども どん〳〵つう になるにし たかいからの ことともはぞく ていかぬもの なりとしやれ そろ〳〵せう そくなども だいめうしま ひわちや【鶸茶(色)】ま すつなぎ【枡繋ぎ(模様)】 きくじゆ【菊寿(模様)】 などにする しよもつも わしよば かりかいこみ とうほんは ぞくなり とはらつて しまいてならい もからよふ【唐様】はす たりおいへ りう【御家流】ながを さやまなどを かく【書く】されどもしん なそめ【親和染】はあつち のほ□□そめと まちかふゆへに はやらず このにほんつくへ どこてかいなつ たとんだ おそろしいの 【左ページ】 さるほどに つうの みちいよ〳〵ありがたくとう しんみなほんだあたま【本多頭】に なり たきとてやろふにしてもらう ふつとう【仏道】に入てしゆつけ【出家】し たいよふなものなり これをみればぶつどう【仏道】 かじゆどう【儒道】かわから ぬところがつうとう【通道】 のおしゑなり やろうの とう じん あま たて きる【野郎の唐人数多できる】 なむきへつう なむみへぼう なむきへぶき よふととなへ給へ【よふと、唱へ給へ】 よいやろうふりかね【野郎ぶりかね】 ひげをばすり ますまい なでるときの ためじや けふのほんた はすこく できた ときに せんせい もふはけの【?】 さ□をまておい て□よふござり ます か まことにつう人の よとなりせかい ゆたかにおさ まりせん ひをつく すよの 中にて おんなまで がつうと なりかみ なともびん さしをは とうろうびん【燈籠鬢】かつやましまた【勝山島田】としまの きやんはかつくりかへしとう人のおんな つう人 の女と なる につほんた よりにまつ □□のあふらを【「まつもと」あるいは「まつもく」】 とりに やりんせふ くしは よこへま げてさ すのだ ね 【左ページ】 このくらい 女かより やつてはぜ ひ ていしゆの うわさかいゝ とふござんす がそこをつう でいゝやす まいの これから ゆへいき やせう ゆやへいく にくつを はいていくは むだでこさんす こまけたはきのゆ かこもたせさ【駒下駄はきの湯篭持たせさ】 つう人 のよには とさゝ ぬみ よ【閉ざさぬ御代】とて 人みな だい つうと なり どろ ほう かなん そぬ すみ たかろう とおもい わざと とを あけは なしに してなん でももつ ていけと いわぬ ばかりは とんだつう なりはいる 【左ページへ】 ぬす人も さるもの にて これほどつうな うちのものをぬ すむはきついや ぼなりとてとろ ぼうのほうから ぜにをおいて ゆく 【台詞】 これかゝア きたそ よろこべ 〳〵 なによたか そはかへ【夜鷹蕎麦かへ】 どろほう かへ いぬはほへたい かつうてほへ すにい てやるこふしてもやきめしまて【?】 にはきがつくまい あるとうじんみち にてとをりのも のにとりはつし あたまへたんを はきかけ けるゆへ きのどく におもひ いろ〳〵 わびけれは さきのは大つうにてはなかみを たしてわがてにふきおまへは きついおたんもちそふな とふところよりせいめい たんのたんきり一かい【晴明丹は声を良くする薬】 たしはきかけたもの にやるはとういふ つうだろふ わたくしがたんはゆたん大たん と申たんかおこりますこの たんごめん〳〵 なにおまへいくらも あかてんさ【あるてんさ?】 【左ページ】 人のあたま たんをはき かけるのみな らずたん のくすりまで くれてよこす よふなつう じんのよ なればはき かけたもの もあるにも あられず そのばで すぐにせつふくとおもへともそれでは さきの人へつらあてのよふでつうで ないと おもひ うちへ かへつてはらをき らんといふはとんだ つうなり又にやう ぼうはそのうへを ゆくつうて此よふな 事もあらんととふに けんのはをひきて ていしゆをたすけるは だいつう〳〵 それほどきがつくくらいで はらきりのさんぼうを あたらしくこしらへさせたは まだあをい〳〵 これはほん にきがつ きんしなん だなむ さんぼう 〳〵 まおとこをてい しゆがみつけうちへ はいつたならを とこがこまるだ ろふとおもいずつ とはづしててい しゆがせうじのそと でまで ついている もつうなればまおとこもみつ かつておどろくはふつうなりと うちからわさとせきば らいなどしてむだを いつているもつうの よなるなり あんまりおれがつう すぎてなれやひ だとおもはねば いゝが アゝどこへぞ はづしたい ものじや 【台詞】 ヱヘン〳〵 おつとかえりは ふさがり〳〵 人をちやに したせつちん じやアあるまいし 【左ページ】 まおとこも つうにて さきではなん ともいわねど もくび代の かねをざとう かねをかりてもや らねばつうでな いとかねをかり ればかしかたのざ とうも大つうで このよふなかね のりをとるは ふつうなりと ざとうのほう から三両一ぶのわり にしてかしたものへ りをはらつてゆくは けしからぬつうな 事なり 【台詞】 まづこんげつぶんの りばかりおいてま いりませう とうしんのざとうかね いきてはたらくのが 三両〳〵 かりたほうへりをとる とはうまいものだ かねもちにさとう つけておはらへおさ めか このごろあたまをまる めたとうじんの山いしやに せんきのきうてん【疝気の灸点】をたのみ ければ せんき のきうのすへどころをしらずしらぬと いふもふつうなりと おもい しつたつらかにてせんき にはちりけがよいとて ちりけをすへてやれば すへるものもまん八とはお もへどもこゝではぢをかゝせる はふつうとおもいあついをこ たへて十てんてもろふもつう人 すへるやつもつうじんか 廿四けいといふぐんしよ にのぼせるにはさんり をすへよそこでわし がくふうでこしの いたみにちりけ これせんき かさがら ねばなら ぬりしや【?】 【台詞】 これでな をればせん きめもつう だはへ やぼらし いことだが アヽあついと とかいう もん だ 【左ページ】 つうなとう じんどし【同士】みち にてでやい どふだせんせ いかのゑての事は へんちきかと といければ こちらのも のゝへん とうに いやもふ しれし【しふし?】御 事かのてん でやつてみた がそれなにか ごたつきのあ つくなるのちよん〳〵 まくだよとこたへ ければさきの とうじんそれではいかん てん〳〵とい□わかれ けりとういんかわ いんかしらねどもこれで よふがべんじればつうな ものなりからでもこれを つうじんのねごとといゝて かたい人にはわからぬげな かし のある とう人 みそか にかけを とりに きたりし が大の つうとう じんにて おふかたていしゆ がるす をつかう だろふと おもつて そと□□【から】かみ さんごていしゆは るすだあろふと いゝければかゝあもうそは ないよといわんとせしが むかふからあなをい□【わ】れて あいといふもふつう□【と】 おもいアイ マア るすの よふなもんだけれど そこはそれおまへも よしかうんといゝなよ それよしか〳〵と いゝければかけとり もおつとがつてん よしさ〳〵 といつて かへるはつうじんの みよにきわまり ぬいた 【台詞】 あんまり つうなもばから しいもんだあいつには いかい事かり□【が】ある に このかへりにこめやの とわりもいつて【?】 やろうか ぎだゆふを かたりならい のとう人かたつて 人にきかせた がれどもこへも ふしもわるいゆへ にちやめしにも ならずそれで もかたつてきか せたくてこたへ られぬゆへかたり てのほうから ちやめしをたいて 人をよんでかたる はつうなものなり またきてきく ともだちもそこ はぢよさいなく わるいじやう るりをこたへ てきいている はせつなく もあろふ が大つう 〳〵 とうじんの ぎだゆふ あまり どつとも せぬもの なり 【台詞】 ついに こんなめに あつたちや めしがない 【「ためしがない」と「茶飯がない」をかけた洒落】 きいたことは ないが どふかふで 太夫 せうの【?】 よふだ があまも だゝあも ぱあ〳〵 〳〵〳〵 かふころんでは ながくははやる まい このげたをはきこ ろんでわらはれし ゆへにいまのよに これをげた〳〵わらい という またばかげたもん だといふもこれから の事なり あんよはぞう りころぶは おげたかへ 【あんよは「上手」と「ぞうり」、転ぶは「お下手」と「お下駄」をかけた洒落。】 【左ページ】 つう人こゝでは女は三まいうら五まい うらのそうりをはきおとこははゞの ひろいひよりげたをはくと いふ事をからできゝつたへはり ほどの事をぼうほどにいふよ の中なればうらつけは廿まい かさねげたはまないたほどに してはきければなんによ【男女】と もころぶことかづしらず いかにはやりものなればとて をやのばかゞむすめにはかせて みたがるやつさしかしむすめの ころぶをおやがよろこふか こんなおやじがからにも あろか そのころ につほんに わとうない 三くわんと いへるきおい のつう人 ありけるが からにいくさ があるときゝ なんでもけ ちをつけて きおいのて なみをみせん とてあつく せつこんで きたりけるが からはつう人の よとなりいくさ の事はさて おきけん くわひ とつ ない よなれば わとう ないおふ きに てうされ ほんごく へかへる 千里がたけの とらはわとう ないをちらと みかけしがお れがでたならば けんくはになる であろうと とらもつうにて おとなしくみ ぬふりして いる 【和藤内の台詞】 此大だちもむだになつた 大山へでもおさめべい ほんのこつたかあのとらはとらのをの十四郎で いやあてこともないといふてをしているやつさ 【虎の台詞】 こゝでおれが たいへいをいつ ては竹を かつてしり をきられる といふもん だ あまねく 幸子はもろこし をつう人の御代となし かづのたからをもらいつう人こくへ かへる事こそめでたけれ 大つうといふ人は 一 ̄ニ いちやつくことがすき 二 ̄ニ 二朱ばんをちやら つかせ 三 ̄ニ さきにつかわれて 四ツよるひるうちにいず 五ツいつでももてもせず 六ツむしやうにむだをいゝ 七ツなんでもしつたふり 八ツやましをしたがりて 九ツこんとのしんはんに 十ヲでとうじんつうにした 大つうまいをみさいな よくだいつうをみさいな 芝 全交戯作