【表題】 伊香保温泉繁榮之圖 【本文】 皇(くわう)國(こく)の温(おん)泉(せん)ハ諸(しよ)病(びやふ)に功験(しるし)ある内(うち)にも 群(ぐん)馬(ま)縣(けん)下(か)上州 伊(い)香(か)保(ほ)の温(おん)泉(せん)ハ皇(くわう)統(とう) 十一 世(せ) 垂(すい)仁(にん)帝(てい)の御(ミ)代(よ)に発見(みいた)し 最(もつと)も勝(すぐ)れて奇(き)功(かう)を奏(そう)す近(ちか)時(ころ)東(とう)京(けい) 司(し)薬(やく)湯(しやう)にて此(この)温(おん)泉(せん)の質(しつ)を分(ぶん)析(せき)せし 上(うへ)◯飲(いん)食(しよく)のこなれぬ病◯婦(ふ)人(じん)の 諸(しよ)病(びやう)◯僂(るう)麻(ま)質(ち)私(す)の悪(あく)性(しよう)◯疝(せん)気(き) ◯神(しん)経(けい)病◯中(ちう)風(ふう)◯打(うち)損(ミ)等(とう)にハ 年(とし)久(ひさ)しく経(へ)て諸(しよ)薬(やく)の験(しるし)無(な)きも 殊(こと)に著(いちじる)しき功(かう)ありと確(くわく)定(てい)せられ つ現(げん)に枯(かれ)しぼみたる艸(くさ)木(き)の枝(えだ) を此(この)温(おん)泉(せん)に浸(ひた)せバ忽(たちまち)に蘇(そ)生(せい)し 亦(また)金(きん)魚(ぎよ)鯉(こい)鮒(ふな)の類(るい)を湯(たう)中(ちう)に畜(やしな)へ バ體(たい)肥(ぶと)り脂(あぶら)つく抔(など)他(た)の温(おん)泉(せん)の 及(およ)ぶ所(ところ)にあらず時(とき)に明治十二年 七月中  皇(くわう)太(たい)后(こう)宮(ぐう)伊香保に 行(ぎやう)啓(けい)在(あ)らせられ御(ご)帰(き)京(きよう)の後(のち)も 此(この)温泉を御(ご)所(しよ)へ召し寄(よせ)られ 平常(つね)に浴(よく)し給(たま)ふとなん   伊香保名所圖繪の記者       篠田仙果 【左側◯の中】 明治十三年五月御届 【◯の下】 上野北大門丁十一番地 画工 橋本直義 浅草茅野丁六十五番地 出板人 山村金三郎 【左下】 楊洲周延筆