【撮影ターゲット】 【表紙】 【整理ラベル  596.1 / Se17 】 【整理ラベル  青山 】 【見返し】 淮南清賞 【左丁】 豆腐百珍引 叔乳者穀粒之変也物之変化也造 物為之主焉人之異物自能変化雖 則自能変化必亦惟造物使然之矣 而変化不可窮也虯竜之見潜華卉 之栄枯世態与之消息人事与之反 覆復々然聚焉謋然散焉無物不変 無気不化蓋淮南術遥矣造法因循 【右丁】 至今夫碎々之粒一旦奪胎于磑換 骨于濾水湛雲蒸忽爾白瑩々然方 璧出矣不亦奇乎何氏所著一璧而 百珍云嗟食品之瑣尾僅々適人之 口腹然其所謂亨調之術変幻百出 模描万状何尽于此乎是謂之易牙 復出献可於淮南亦不誣耳我而調 之彼而和之伝以施之世則兪変兪 【左丁】 珍兪化兪奇変之又変化之又化者 耶非邪変化終不可窮也冊成而問 弘其首于余遂戯題一絶曰淮南遺 述百珍成飽食富翁潔腹生皆是澹 然堪味道腐儒甘得一斉名 天明改元辛丑嘉年平安曹鼎子九  氏書于碧香亭中 【挿絵】 【右丁・田楽を調理している挿絵】 【左丁】 凡例 一 凡(すべ)て豆腐(とうふ)の調味(りやうり)百(ひやく)製を六 等(しな)に別(わか)ち記(しる)す 尋常品(じんじやうひん)   通品(つうひん) 佳品(かひん) 奇品(きひん) 妙(みやう)品 絶(ぜつ)品なり 一 尋常品(じんじやうひん)は戸々(いゑ〳〵)に平日(つね〳〵)もてあつかひ調味(りやう)る所(ところ)のものを   記(しる)し其間(そのうち)に粗(ほゞ)庖人家(りやうりのいゑ)の訣(くでん)あるを盡(こと〴〵)くしるす 一 通品は烹調(りやうりかた)さして訣(くでん)なし世(よ)の人(ひと)皆(みな)よくしる所(ところ)なれば   調製(しやう)を記(しる)すにおよはず其名(そのな)而巳(ばかり)を出(いだ)すものなり 一 佳品(かひん)は風味(ふうみ)尋常品に頗(やゝ)すぐれ又(また)は形容(かたち)てぎれいなる   等(など)といふの類(るい)をしるす 一 奇品(きひん)は一(ひと)きわことかわりて人々の意(き)のつかぬ所(ところ)を烹調(りやうり) 【右丁】   する者(もの)を記(しる)す 一 妙品(みやうひん)は又 頗(やゝ)奇品に勝(まさ)るものなり奇品は形容(かたち)模様(もやう)は奇(き)な   れとも美味(びみ)いまだ全(まつたく)妙(みやう)に至らぬところあるなり妙(みやう)品には   形容美味 両(ふたつ)ながら備(そなは)るものをしるす 一 絶(ぜつ)品は復(また)妙(みやう)品より優(まさ)れるものなり奇品妙品は最(もつとも)美味(びみ)と   いへども膏梁(むますぎる)に慊(きらひ)なきにあらす絶品は珍奇(めつらか)模様(もよう)にかゝ   はらずひたすら淮南(とうふ)の真味(しんみ)を覚(しる)べき絶妙(ぜつみやう)の調和(てうみ)を   しるす豆腐(とうふ)嗜好(すき)の人 是(これ)を味ふべし 一 田楽(でんがく)の切(きり)やう串(くし)にさしやうの訣(くてん)は木(き)の芽(め)でんがくの條下(ところ)   にしるす凡(すべ)て田楽(でんがく)と名(な)づくるものは皆(みな)この訣(ほう)を用ゆべし 【左丁】 一 惣(すべ)て豆腐 縷切(ほそぎり)の製(しやう)は湯餅菽乳(うどんとうふ)の條下(ところ)に記(しる)す 一 ケンチヱン醋(す) 白醯(しらす) 或は山葵未醤(わさびみそ) 西洋醬(なんばんみそ) 等(など)の豆(とう)   腐(ふ)調和(かげん)の料(かやく)は一條(ひとところ)に記(しる)して其他(そのよ)は略(りやく)す仮令(たとへ)ば引(ひき)ずり   豆腐(とうふ)の條下(ところ)に山葵(わさび)みそを用(もちゆ)るを[八十二]茶(ちや)とうふの下(ところ)に見(みへ)た   りとことわるが如(こと)し彼(あちら)を閲(み)て此(こちら)を照応(てらし)みあわすべし 一 調和(かげん)烹調(りやうり)の略(ほゞ)同(おな)じく類(にたる)のものは一 條(ところ)によせ記(しる)し其名(そのな)は   品を別(わかた)んが為(ため)にそれ〳〵の科(しなわけ)に別(べつ)に出(いだ)す是(これ)品類(るい)の紛(まきらはし)き   を分別(わかつ)なり尤(もつと)も一一(いち〳〵)其條下(そのところ)にことわる也 一 生豆油(きしやうゆ)とあるは水(みづ)まはし勺薬(かげん)せぬ其まゝの豆油(しやうゆ)なり 一 百 品(しな)の中(うち)形(かたち)の製(こしらへやう)あり調和(りやうり)あり烹調(にかげん)あり或はまた 【右丁】   未醤(みそ)のもの豆油(しやうゆ)のもの油煠(あぶらあげ)もの紛々(まち〳〵)にして一一(いち〳〵)に   其部(そのぶ)を区別(わけ)がたし観(み)る人 疎漏(そろ)をとがむることなかれ 一 ◓【注】このしるしあるは肉調(にくりやうり)なきは噄素(しやうじん)なり 一 其 製(せい)一家(いつか)の秘(ひ)にして世(よ)に伝(つた)へざるものは名(な)ばかりを   続編(ぞくへん)に出(いだ)し百 珍(ちん)のかずをたし且(かつ)博物(はくぶつ)好事(かうず)の一ツに   備(そな)ふ 紅(べに)豆腐或は 御膳物(ごぜんもの)の角(かく)おぼろの類(たぐひ)是(これ)也 【注 資料には黒丸の半円のかまぼこ型の記号が書かれているが、入力の便宜上◓とした】 【左丁】 豆腐百珍目録    尋常品 [一]木の芽田楽(めでんがく)      [二]雉子(きじ)やきでんがく [三]あらかね豆腐     [四]むすびとうふ  [五]ハンペン菽乳(とうふ)     [六]高津湯(かうづゆ)どうふ  [七]草(さう)の八杯(はちはい)豆腐    [八]草(さう)のケンチヱン  [九]霰(あられ)とうふ       [十]雷霆荳腐(かみなりとうふ)  [十一]再炙(ふたゝび)でんがく    [十二]凍(こゞり)とうふ   [十三]はやこゞり豆腐   [十四]すり流(なが)しとうふ  【一から百までの通し番号は四角い枠で囲まれた表記になっているが、入力の便宜上[ ]のカッコで表した】 【右丁】 [十五]おしとうふ     [十六]金沙菽乳(すなごとうふ) [十七]ぷつかけ温飩(うどん)    [十八]しき味曽とうふ [十九]ヒリヤウヅ     [二十]こくしやう [廿一]ふは〳〵菽乳(とうふ)    [廿二]まつ重(かさ)ね [廿三]梨子(なし)とうふ     [廿四]墨染(すみぞめ)とうふ [廿五]よせとうふ     [廿六]鶏卵様(たまごとうふ)    通品 [廿七]炙(やき)とうふ      [廿八]油煠(あげ)とうふ [廿九]軟(おぼろ)とうふ      [三十]絹(きぬ)ごし豆腐 【左丁】 [卅一]油煠(あげ)でんがく    [卅二]ちくわとうふ  [卅三]青菽乳(あをまめとうふ)       [卅四]やつこ荳腐(とうふ)  [卅五]葛田楽(くづでんがく)       [卅六]赤(あか)みそのしき味曽とうふ    佳品 [卅七]なじみ菽乳(とうふ)     [卅八]苞(つと)とうふ  [卅九]今出川(いまでかわ)       [四十]一 種(しゆ)の黄檗(わうばく)とうふ [四十一]青海(せいがい)とうふ    [四十二]浅茅(あさぢ)でんがく [四十三]海膽(うに)でんがく   [四十四]雲(くも)かけ豆腐 [四十五]線麺(せんめん)とうふ    [四十六]稭(しべ)とうふ 【一から百までの通し番号は四角い枠で囲まれた表記になっているが、入力の便宜上 [ ] のカッコで表した】 【右丁】 [四十七]いもかけ     [四十八]碎(くだき)とうふ [四十九]備後(びんご)豆腐     [五十]小竹(おさゝ)葉豆腐 [五十一]引ずりとうふ   [五十二]うづみとうふ [五十三]釈迦(しやか)とうふ    [五十四]なでしことうふ [五十五]沙金(しやきん)豆腐     [五十六]たゝき菽乳(とうふ)    奇品 [五十七]しゞみもどき   [五十八]玲瓏(こほり)とうふ [五十九]浄饌(しやうじん)の海膽(うに)でんがく[六十]繭(まゆ)でんがく [六十一]蓑(みの)田楽      [六十二]六方焦着(ろくほうやきめ)とうふ 【左丁】 [六十三]茶(さ)れいとうふ   [六十四]糟(かす)ゐり菽乳(とうふ) [六十五]賽香魚(あゆもどき)      [六十六]小倉(おぐら)とうふ [六十七]縐紗(ちりめん)とうふ    [六十八]方(かく)ヒレウス [六十九]焙(ほいろ)豆腐      [七十]鹿子菽乳(かのことうふ) [七十一]うつし斗宇布(とうふ)   [七十二]冬至夜(とうや)とうふ [七十三]味曽漬(みそづけ)      [七十四]とうふ麪(めん) [七十五]藕根菽乳(はすとうふ)    妙品 [七十六]光悦(くわうゑつ)とうふ    [七十七]真(しん)のケンチヱン 【一から百までの通し番号は四角い枠で囲まれた表記になっているが、入力の便宜上 [ ] のカッコで表した】 【右丁】 [七十八]交趾(かうち)でんかく   [七十九]阿漕(あこぎ)田楽 [八十]鶏卵(たまご)田楽      [八十一]真(しん)の八抔(はちはい)豆腐 [八十二]茶(ちゃ)とうふ     [八十三]石焼(いしやき)とうふ [八十四]犂(からすき)やき      [八十五]炒(ゐり)とうふ [八十六]煮(に)ぬき荳腐(とうふ)     [八十七]噄素(しやうじん)の煮(に)ぬきとうふ [八十八]骨董乳(ごもくとうふ)      [八十九]空蝉(うつせみ)と卯不 [九十]苗鰕(ゑび)とうふ     [九十一]加須底羅乳(かすていらとうふ) [九十二]別山焼(べつさんやき)       [九十三]包油煠菽乳(つゝみあげとうふ) 【左丁】    絶品 [九十四]油煠(あけ)ながし    [九十五]辣料豆腐(からみとうふ) [九十六]礫(つぶて)でむがく    [九十七]湯(ゆ)やつこ [九十八]雪消飯(ゆきげめし)      [九十九]鞍馬(くらま)とうふ [百]真(しん)のうどんとうふ 宋楊誠齋先生豆腐伝 豆腐異名 咏豆腐詩      豆腐集説 【左丁・文字なし】 【右丁】 豆腐百珍        浪華 醒狂道人何必醇 輯   尋常品 [一]木(き)の芽(め)田楽(でんがく) 温湯(うんたう)を大盤(おほはんぎり)に湛(たゝ)へ切るも串(くし)にさすも其     湯の中にてする也やはらかなる豆腐にても危(あやう)くおつるなど     のうれへなし湯よりひきあげすぐに火にかくる也○味曽(みそ)     に木の目 勿論(もちろん)なり醴(あまさけ)のかた入れを二分どほりみそに     すりまぜれば尤 佳(よし)也 多(おほ)く入れば甘(あま)すぎて却(かへつ)てよろしからず 【通し番号は四角い枠で囲まれた表記だが、入力の便宜上 [ ] のカッコで表した】 【右丁】    近来田楽 爐(ひはち)の 新 製(せい)あり長さ二尺あまり濶(はゞ)二寸五七 【田楽爐の挿絵】        分 深(ふか)さ二寸あまりの方(かく)の陶(やきもの)也 表(そと)へくすり        かけやきたる也 底(そこ)は        【底の形状の挿絵】かくの如く大さ六七                  分の孔(あな)を数多(あまた)ほり        木(き)の槽(ふね)に入子(いれこ)にし槽の深さ四五寸 趾(あし)はほか也        中にとまりありて爐(ひばち)は上i壱寸ほどのところに        かゝりあり炭火(すみひ)にて灰をおかず槽に水を        入れて火気(くわき)を助(たすく)る也尤も爐槽ともに二く        みこしらへをき水 温(あたゝま)れは冷(ひや)水にとりかへべし 【左丁】    水あたゝかなれはかへつて火気を助けぬなり又爐槽    ともに銅(あかゝね)にてこしらへたるもあり田楽を坐席(ざしき)にてや    く客への馳走(ちそう)也其ときなどうちわにてあふぐことを    せず火気さかんにして灰(はい)だつなどゝいふさわりなし    ○江州 目川(めかわ)京北 今宮(いまみや)の沙田楽(すなてんかく)続編に出 [二]雉子(きじ)やき田楽 きつねいろにやき猪口(ちよく)に生(き)の煮(に)かへし    醤油にすり柚(ゆ)をそへ出す也 [三]あらかね豆腐 よく水をしぼりつかみくづし油 気(け)を用 【右丁】    ひず酒しほと醤油にて炒(ゐり)つけすり山椒うちこむ也 [四]むすびとうふ 細く切り醋(す)に浸(つけ)ていかやうにもむすぶへし    よく結びて水へ入れ醋気(すけ)をさる也 調味(てうみ)このみしだひ [五]ハンペン豆腐 ながいもをよくすり豆腐水をしぼりて    等分(とうぶん)によくすりまぜまろくとりみの紙に包(つゝ)みて    湯烹(ゆに)す○白玉とうふともいふ [六]高津(かうづ)湯とうふ 絹(きぬ)ごしとうふを用い湯 烹(に)して熱(あつ) 【左丁】     葛(くづ)あんかけ芥子(けし)おく○又南禅寺ともいふ    ○大坂高津の庿(やしろ)の境内(けいたい)に湯(ゆ)とうふ家(や)三四 軒(けん)あり    其 料(りやう)に用ゆる豆腐家(とうふや)門前に一軒あり和国(わこく)第一    品の妙製(みやうせい)なり○京師に南禅寺とうふあり    ○江戸 浅草(あさくさ)に華蔵院(けぞうゐん)とうふあり [七]草(さう)の八 杯(はい)とうふ 太温飩(ふとうとん)にきり醤油に酒しほ    の烹調(かげん)にてかくし葛つかひおろし蘿蔔(たいこん)おく    ○真(しん)の八杯とうふは妙品[八十一]に出(いで)たり [八]草(さう)のケンチヱン [七十七]真(しん)のケンチヱンの下に出たり [九]霰(あられ)豆腐 よく水をおししぼり小 骰(さい)に切り笊籬(ゐかき)にて    ふりまはし角(かと)をとりて油にてさつと煠(あけ)る也調味好み    しだひ○少し大きなるを松露(しやうろ)とうふといふ [十]雷(かみなり)とうふ 香油(ごまのあぶら)をゐりて豆腐をつかみ碎(くづ)して打(うち)    入れ直(ぢき)に醤油をさし調和(かげん)し○葱白(ひともししろね)のざく〴〵    おろし大根おろし山葵(わさび)うちこむ○又はすり山椒(さんしやう)も    よし○南京とうふともいふ○又水気をよくしぼりて    右の如くするを黄檗(わうばく)とうふともケンポロ豆腐とも    いふ[四十]に出たる黄檗豆腐と製少しちがふなり    一説なり又 隠元(いんげん)とうふともいふ    ▲豆腐水をしぼりよくつかみくづし青菜(あをな)を微塵(みじん)に    刻(きさ)みとうふと等分(とうぶん)にして油をよく煮(に)たゝせ先(まづ)とうふ    を入れよくかきまわし次(つぎ)に青菜を入れ又よく攪(かきまは)し    醤油にて味つくる也十 挺(てう)に油二合あまりの分量(ぶんりやう)也    是を碎(くだ)きとうふといふ [十一]再炙田楽(ふたゝびでんがく) [七十九]阿漕(あこぎ)でんがくの下(ところ)に出たり [十二]凍(こゞり)とうふ 壱 挺(てう)を八ツほどに切り籃(かご)にならべ沸(にゑ)    湯(ゆ)をかけそとへ出し極寒天(ごくかんてん)に一 夜(や)さらし翌日(あくるひ)また    ゆにて烹(に)やはらげ浮(うき)あがるときとりあげ少し    壓(おし)をかけをきまたかごにならべ幾日(いくひ)も大陽(ひ)にさら    す也○瀹湯(ゆてゆ)に山梔子(くちなし)をわりて入るゝがよし後に虫(むし)は    むをふせぐため也○夜半(よなか)よりのちにさらすがよし    よひはよろしからず○又 高野(かうや)とうふともいふ    ▲右の如くして寒天に一夜さらす而已(ばかり)にて翌日(あくるひ)に    直(ぢき)に用るを速成凍(はやこゞり)といふ [十三]速成凍(はやこゞり)豆腐 右に出たり [十四]すり流(なが)し豆腐 よくすりて葛粉(くつのこ)を混(まぜ)てよくすり    味曽(みそ)汁へすりながす也 [十五]おし豆腐 布に包(つゝ)み板(いた)を斜(なゝめ)にして並(なら)べのせつぶれぬ    ほどの壓石(おもし)をかけよく水 気(け)をしぼり生(き)醤油酒しほ    等分(とうぶん)にて煮染(にしめ)小口切にす ●[十六]金砂(すなご)とうふ よく水をしぼりよくすり鶏卵(たまご)のしろみ    をつなぎに入れ板(いた)にのばし上へ煮ぬき鶏卵の黄(きみ)をはら    りとまきて砂子(すなご)の如くしよくおさへ蒸(む)す小色紙(こしきし)に切る也 ●[十七]ぷつかけ温飩(うどん)とうふ [百]真のうどん豆腐よりは太(ふと)く    ひらめにきりてうどん豆腐の烹調(にかげん)にて湯をしぼりもり    生(き)の煮かへし醤油を直(ぢき)にかけ花がつほおろし大根    葱白(しろね)のざく〴〵辣茄(とうがらし)の末(こ)をく是 草(さう)のうどん豆腐也    ▲真のうどん豆腐の如く切り奈良(なら)茶甌(ちやわん)へ入れ茶わん    蒸(むし)にして葛あんにおろし山葵(わさび)をくを縐紗(ちりめん)とうふ    といふ也 ●[十八]しき味曽とうふ 茶わんよく温(あたゝめ)をき山葵(わさび)みその温(あたゝか)    なるを下へしき花かつほをおき烹調(にかげん)よき軟(おぼろ)とうふを    あみ杓子(しやくし)にてすくひもる也○山葵みそは[八十二]茶とう    ふの下にみへたり [十九]ヒリヤウヅ 豆腐水をしぼりよくすり葛(くづ)の粉(こ)つなぎに    入れ加料(かやく)に皮牛蒡(かわごぼう)の針(はり)銀杏(ぎんあん)木耳(きくらげ)麻子(をのみ)又    小 骰(さい)ものにはやき栗子(くり)か慈姑(くわい)か一 品(しな)入るへし○加料(かやく)を    油にて炒(ゐり)つけ麻子は後(あと)に入れとうふに包(つゝ)み大小 宜(よろし)きに    随(したが)ひ又油にて煠(あぐる)也又 麪粉(うとんのこ)ころもにかくる尤よし    ○ゐり酒におろし山葵(わさび)或は白醋(しらす)に山葵(わさび)の針(はり)をくる又    は田楽にして青味曽(あをみそ)に罌粟(けし)をふる○ヒレウヅ一名を    豆腐 巻(けん)ともいふ    ▲白醋は罌粟をゐりてよくすり豆腐を少(すこ)しすり入れ    醋を入る也 甘(あま)きを好(この)むときは大白(たいはく)の沙糖(さとう)を入るべし    又豆腐のかわりに葛(くず)粉を入るゝもよし    ▲青みそはみそをよくすり青粉をすり混(まぜ)る也 ●[二十]濃醤(こくしやう) 壱 挺(てう)四ッ切ほどにして壱碗へ壱切入花がつほの    後(あと)入れなり初(はじめ)より入れ烹(に)るはよろしからず出(だ)しさま    にすり山椒をき其上へつんほりと花かつほをくべし ●[廿一]ふは〳〵豆腐 雞卵(たまご)ととうふ等分(とうぶん)にまぜよくすり合せ    ふは〳〵烹(に)にする也 胡椒(こせう)の末(こ)ふる○雞卵(たまご)のふは〳〵    と風味(ふうみ)かわることなし倹約(けんやく)を行ふ人 専(もつは)ら用(もち)ゆべし ●[廿二]松重(まつかさ)ねとうふ 水前寺(すいぜんし)紫菜(のり)をしきすり豆腐を雞卵(たまごの)    白(しろみ)つなぎに入れ紫菜(のり)のあつさ一 倍(ばい)にのべしき蒸(むし)てあぢ 【右丁】    をつける也切かた好(この)みしだひ [廿三]梨子(なし)とうふ 青 干菜(ほしな)を炙(あぶ)り細末(こ)にしてすり豆腐にか    きまぜよきほどにとり布(ぬの)に裹(つゝ)み 瀹(ゆでる)也調味好み随(しだひ)也    ▲昆布をよく炙(あぶ)り末(こ)にして右の製(せい)にするを墨染(すみぞめ)とうふと云 [廿四]墨染(すみぞめ)とうふ 右に出たり [廿五]豆乳(よせとうふ) 軟(おぼろ)とうふよきほとにとりみの紙に包み 瀹(ゆに)する也 【左丁】 [廿六]鶏卵様(たまごとうふ) とうふをよく水をしぼり葛粉(くず)をつなぎに入れ    よくすり少しかためにし胡蘿匐(にんじん)しんのなきよろしき    をまるむきにしいかにもよく和(やわ)らかに烹(に)て右のすり豆腐    にてまき包(つゝ)み又 竹(たけ)のかわにてまきくゝり瀹(ゆに)して小口切にす    ○胡蘿匐のかわりに甘藷(さつまいも)を用ゆるもよし   通品 [廿七]炙豆腐(やきとうふ)  [廿八]油煠(あげ)とうふ  [廿九]軟(おぼろ)とうふ  【右丁】 [三十]絹(きぬ)ごし豆腐  [卅一]油煠田楽(あげでんがく)  [卅二]玳瑁環(ちくわとうふ)   [卅三]青菽乳(あをまめとうふ)  [卅四]やつこ豆腐  [卅五]葛(くず)田楽《割書:祇園とうふ|なり》 [卅六]赤みそのしき味曽とうふ     佳品 [卅七]なじみ豆腐 上々の白味曽(しろみそ)よくすりて酒(さけ)にて中 稀(うす)に    のべとうふをよきほとにきり一時あまり浸(つけ)をき其まゝ 【左丁】    文武火《割書:つよからずよはからず|中ぐらいの火なり》にて烹(に)たつる也○葱白(しろね)のざく〳〵    青 番椒(とうがらし)おろし大根をく○器物は抽みそ皿(さら)などよし [卅八]苞(つと)とうふ とうふよく水をしぼり醴(あまさけ)をすりまぜて    棒(ぼう)の如(ごと)くとりて竹簀(たけす)に巻(ま)き蒸(む)して小口切にす [卅九]今出川(いまでがわ)とうふ 昆布(こんぶ)をしき鰹脯(かつほ)のだし汁(じる)と酒(さか)しほと    にて烹(に)ぬく也中ほどより醤油さし烹調(かげん)しかくし    葛をひき碗(わん)へよそひてみ胡桃(くるみ)の碎(くだ)きをふる也 【右丁】 [四十]一 種(しゆ)の黄檗(わうばく)とうふ 稀(うす)醤油と酒しほ合せよく沸(にへたゝ)せ     別(ほか)の鍋(なべ)に油たつふりと沸(にへたゝ)せ豆腐を平骰(ひらおほさい)に切りて     金(かね)の籠(あみかご)に入れ油へつけて二三べんふりまはし直(すぐ)に     烹(に)醤油の鍋へ入れ烹調(かけんよくに)る也○一 説(せつ)に水をよくしぼ     りて[十]雷(かみなり)とうふの如くするを亦(また)黄檗とうふといふ [四十一]青海(せいがい)とうふ 絹(きぬ)ごしのすくひ豆腐を葛湯(くずゆ)にて烹(に)     調(かげん)よくし○別(ほか)に生(き)の煮(に)かへし醤油をこしらへをき出(だ)し     さまに碗中(わんちう)へさし醤油にして青海苔(あをのり)を焙(ほいろ)にかけ     いかにもよく細末(さいまつ)しふるひにかけたるをぱつとをく也 【左丁】 [四十二]浅茅田楽(あさぢでんがく) 稀醤(うすしやうゆ)のつけ炙(やき)にして梅醤(むめみそ)をぬりて     ゐりたる罌粟(けし)を密(ぴつしり)とかける也 ●[四十三]海膽(うに)田楽 うにを酒にてよきかげんにとき用ゆ常(つね)     の田楽の如し○対馬(つしま)と肥前(ひぜん)の平戸(ひらど)より産(いづ)るうに     を最(もつとも)上品とす越前の藍川(あひかわ)はこれにつぐもの也 [四十四]雲かけ豆腐 よきほどに切て寒曝(かんさらし)の糯(もち)の粉(こ)に     糝(まふ)し蒸(むし)て山葵味曽(わさびみそ)をかくる○山葵味曽の製(せい)は[八十二] 【右丁】    茶とうふの下(ところ)に出たり [四十五]線麪(せんめん)とうふ よくすり濾(こし)て鶏卵白(たまこのしろみ)つなぎに入れて    みの紙を板の上にしき豆腐を割刀(はうてう)にてうすくむら    なきやうにのべしき湯玉のたつ沸湯(にゑゆ)をかけとほす也    さて水につけとり出(いだ)しいかにも細(ほそ)く切る也    △右の製(せい)を鏊子(くわしなべ)にて転(ころば)し焼(やく)を稭(しべ)とうふといふ也 ●[四十六]稭(しべ)とうふ 右の線麪の下に出たり 【左丁】 [四十七]薯蕷(いも)かけ豆腐 やまのいもをおろしよくすりをきか    つほの出し汁醤油少ししほからめにしくら〳〵と    沸(にえ)たゝせ大金匕(かなしやくし)にてすりいもをすくひ入れふうはりと    ふくれあがるところをよそふ也○[百]真のうどんどうふ葛(くづ)    湯にて烹調(にかげん)よきを湯をしぼりあたゝめたる小奈良(こなら)    茶甌(ちやわん)へよそひ上へ右のいもの烹調(かけん)をよそふ也 二鍋(ふたなべ)ともに    烹調(にかげん)のもち合(あひ)大事(たいじ)なり尤(もつとも)二人(ふたり)かゝるべし○胡椒の末(こ)    ふる○青海苔(あをのり)の細末(さいまつ)ふるもつともよし [四十八]碎(くだき)とうふ [十]雷(かみなり)とうふの下(ところ)に出たり 【右丁】 ●[四十九]備後(びんご)とうふ あさく焼(やき)て酒ばかりにて烹(に)て出すとき    醤油の調和(かげん)し花かつほに擦(おろ)し大根をく○これ草(そう)の    織部(おりべ)とうふ也○織部とうふは続編(ぞくへん)に出す也 ●[五十]小竹葉(おさゝ)とうふ 焼(やき)たての豆腐をつかみくづし醤    油の和調(あんばい)し鶏卵著(たまごとぢ)にしてすり秦椒(さんしやう)ふる [五十一]引ずりとうふ よきほどにきり葛湯(くづゆ)にて烹(に)てあみ杓    子(し)にてすくひ器(うつわ)へよそひ○山葵(わさび)みそを少(すこ)しかたくして 【左丁】    其うつわの蓋(ふた)にぬりつけて出すなりもししらぬ人は    ふたをとりて豆腐ばかりなりと思(おも)ふなり手とりの    一 興(けう)なるべしさてふたをかへしとうふをみそに引    ずり食(しよく)する也味曽の稠稀(こきうすき)の和調(かげん)だいじなり    ○山葵(わさび)みそは[八十二]茶(ちや)とうふの下(ところ)に見(み)へたり [五十二]うづみ豆腐 あつ灰(はい)にうづむ者(もの)と同名異様(どうめいゐやう)なり    [九十八]雪消飯(ゆきげめし)の下(ところ)に出たり [五十三]釈迦(しやか)とうふ 中 骰(さい)にきり笟籬(いかき)にてふりまはして    角(かど)とり葛(くづ)をあらりと米粒(こめつぶ)ほどに砕(くだ)き豆腐に    纏(まぶ)しつけ其まゝ油にて煠(あぐ)るなり [五十四]𧄒(なで)麦(しこ)とうふ 青味曽(あをみそ)かけ豆腐にして薯屑(しよこ)と辣(とう)    茄(がらし)とをぱらりとをくなり    ○薯屑(しよこ)の製(せい)はやまのいもをよく瀹(ゆに)してしばらく    をき水 気(け)をさり銅篩(かなすいのふ)にてこしたるものなり    ○辣(とう)茄(がらし)は心(しん)とたねをさりいかにも繊(ほそ)くはりに    剉(きざ)むなり [五十五]沙金(しやきん)とうふ 全(まる)油煠(あげ)にして一方(いつはう)をきりそぎ中(うち)を刳(くり)    ぬき内(うち)へ鳬肉(かも) 紅魚(たいの)臠(きりみ) 木耳(きくらげ) 銀杏(きんあん)の加料(かやく)入    雞卵(たまご)七分め入れくちを昆布(こんぶ)かかん瓢(ひやう)にてくゝり    酒(さか)烹(に)にしてすり秦椒(さんせう)をく [五十六]叩(たゝ)き豆腐 やき豆腐ふくさ味曽(みそ)七分三分の分量(ぶんりやう)にし    て菜刀(ながたな)にてひとつによくたゝきよきほどにとり油(あぶら)にて    さつと煠(あぐ)る也 調和(てうみ)好(この)みに随(したが)ふ   奇品 [五十七]賽蜆(しゞみもどき) 豆腐を全(まる)ながら水気(みづけ)なしに文武火(つよからぬひ)にて烹(に)る水    いづるを金匕(かなさじ)にてすくひさり又みづ出(いづ)ればすくひ幾次(いくたび)も    して烹(に)かたまりぽろ〳〵とみしゞみの如(ごと)くになるを油にて    さつと煠(あ)げみしゞみの調味(てうみ)の如く稀醤油(うすしやうゆ)にて烹(に)て青    山椒(さんしやう)をおく也 [五十八]玲瓏(こほり)とうふ 干凝菜(かんてん)を煮(に)ぬき其 湯(ゆ)にて豆腐を烹(たき)    しめさましつかふ調味(てうみ)このみ随(しだ)ひ [五十九]浄饌(しやうじん)の海膽(うに)でんがく 麹(かうじ)豆林酒(みりんしゆ)醤油三品 等分(とうぶん)に    合せ紅椒(とうがらし)の細末(こ)加(くわ)へ貯(たくは)へをきなれたるときよくするな    り是(これ)を用(もち)ひ[四十三]うに田楽の製(しよう)の如くす [六十]繭(まゆ)でんがく つきたての餈(もち)を花(はな)びらの如くいかにも薄(うす)く    のばして少し炙(あぶり)田楽の秦椒味曽(さんしやうみそ)のつけやきにした    るを右の餈(もち)にてくるりとつゝむなり ●[六十一]蓑(みの)でんがく 辣料(からみ)みあはせに味曽(みそ)へすりませ常(つね)の田楽    の如くして花かつほのよくきれいにそろひたるを味曽の上へ     密(ぴつしり)とかくる也 [六十二]六 方焦着(はうやきめ)とうふ 壱 挺(てう)四ツ切ぐらひの大きさにして角(かく)に    きり四 方(はう)上下とも鏊子(くわしなべ)にて焼(やく)也 勿論(もちろん)水 気(け)をさり    なべに油(あぶら)を少しひくべし調味(てうみ)このみしだひ也 [六十三]茶(さ)れい菽乳(とうふ) 大 平鍋(ひらなべ)の底(そこ)へ竹葉(さゝ)を密(ぴつしり)と布(しき)ならべ    其上へ豆腐壱 挺(てう)五ツ切ぐらいにしたるを亦(また)ぴつしりと    ならべ其上へふくさ味曽を厚(あつ)くしき又 竹葉(さゝ)を布(しき)    とうふをしきみそをしきかくの如(ごと)く二 遍(へん)にても三    べんにてもして半日(はんにち)あまり烹(に)る也○平茶甌(ひらちやわん)へよそひ    すり秦椒(さんしやう)ふる又竹葉(さゝ)しきながらよそふもよろし    ▲またふくさ味曽(みそ)にて終日(いちにち)烹(に)てみそをはらひ其のち    いかやうとも調味(てうみ)すべきを草(さう)の茶(さ)れいとうふといふ ●[六十四]糟(かす)ゐり豆腐 とうふをよくすりて古酒にて解(やは)らげ    加料(かやく)に味つけたるを入れ烹(に)る也○臠(きりみ)には盬紅魚(しほたい)か    口鹽(くちしほ)の夻魚(たら)か白 海鰌(くじら)かを用ひ鳥肉(とり)には雁(かん)か鳬(かも)か    見合(みあは)せに入れ焦栗子(やきぐり) 木耳(きくらげ) 油煠松露(あげしやうろ)等也 [六十五]賽香魚(あゆもどき) 豆腐を長くはしらに切りあさく油煠(あげ)て    蓼醋(たでず)をかくるなり [六十六]小倉(おぐら)とうふ 紫菜(あさくさのり)を豆腐によくすりまぜ板へのばし    小 色紙(しきし)小たんざくに切り調和(てうみ)好みしだひにす [六十七]縐紗(ちりめん)とうふ [十七]ぷつかけうどんの下(ところ)に出たり [六十八]方(かく)ヒレウヅ うすき杉のさゝばこをこしらへ大小よろ    しきにしたがひ[十九]ひれうすの加料(かやく)をしこみてさて    湯だまのたつほどの沸湯(にへゆ)へはこながら底(そこ)ばかり浸(ひた)る    ほどにつけよく蒸(む)す也とり出しよきほどにきりて    香油(ごまのあぶら)にてさつと煠(あぐ)る也 [六十九]焙(ほいろ)とうふ [十五]おしどうふをせんにきりて稀(うす)あぢを    つけしばらく板(いた)にひろげ乾(かはか)せ焙(ほいろ)にかける也 [七十]鹿子(かのこ)菽腐(とうふ) 水 気(け)をしぼりよくすりて煮(に)すごさぬよろし    き烹調(にかげん)の小豆(あづき)をまぜ合せよきほどにとりて蒸(む)す也    其上の調和は好(この)みに任(まか)すべし 【資料には黒丸の半円のかまぼこ型の記号が書かれているが、入力の便宜上●とした】 ●[七十一]うつし 菽乳(とうふ) 紅魚(たい)の胾(おほきりみ)と大骰(おほさい)に切たる豆腐と 一鍋(いつしよ)に     瀹(ゆに)し胾(きりみ)をのけとうふばかりに 老姜(しやうが)醤油かけすり    柚(ゆ)をおく [七十二] 冬(とう)至 夜(や)とうふ 壱 挺(てう) を 羅紋(ぬのめ)をさり四方(よはう)をきりおとし     角(かく)を正(たゝし)くし復(また)角(かど)をとりて八 角(かく)にし  こぐちぎりに    五六分にきり酒しほ豆油(しやうゆ)に 勺薬(かげん)し 烹(に)て汁をしぼり     油麻(しろこま)白豆腐(しらとうふ)よくすり合(あはせ)かける也 勿論(もちろん)右(みぎ) の八 角(かく)に    つくるときの屑(おとしくず)をすりて用(もちゆ)るなり○ 紫野(むらさきの)大徳寺(だいとくじ)    の 冬夜(とうや)とうふは全(まる)やきの小口切を味曽(みそ)にてよく烹(に)て    右の品をかける也 冬至(とうじ)の夕(よ)大徳寺(だいとくじ)一山 各院(てら〳〵)こと〳〵    く此豆腐を烹(に)る節物(せつぶつ)なるよし [七十三] 味曽漬(みそつけ)とうふ [十五]おしとうふをみの紙に包み味曽    に一夜つけをくなり 和調(てうみ)好(この)みに 随(した)がふ [七十四] 菽乳麪(とうふめん)  [十]かみなり豆腐の下(ところ)に出たる砕(くだき)豆腐の如    くし 青菜(あをな)の 微塵(みじん)刻(きざみ)と豆腐と等分に油にて炒(ゐり)つけた    るを水(みづ)を入れ烹(に)て○ 索麪(そうめん)を少(すこ)しこはめに瀹(ゆでゝ)よく洗(あら)ひ    をきたるをうちこみ醤油の和調(かげん) する也 [七十五] 藕根(はす) とうふ  藕根(はすのね)を擦(おろ)し豆腐(とうふ)水をしぼりて等(とう)     分(ぶん)に混(ま)ぜ合せよきほどにとりみの紙(かみ)に包(つゝ)み瀹(ゆに)して    ○ 白味曽(しろみそ)に胡麻(こま)等分にすりまぜ沙糖(しろさとう)少(すこ)し 加(くわ)へ     温(あたゝ)めたるをしきみそにして辣料(からみ)見あわせにをき右    のはすとうふをよそふなり   妙品 [七十六] 光悦(くわうゑつ)とうふ 酒を久しく 煮(に)て酒香(さかけ)なきほどにし豆腐     羅皮(ぬのめ)をさり大田楽(おほでんがく)にし鹽(しほ)に和糝(まぶし)狐皮色(きつねいろ)に 炙(やき)右の酒    へ入れ 烹に る也 [七十七] 真(しん)のケンチヱン 壱 梃(てう)を十二ほどに切油にてさつと煠(あ)げ    壱つを二 片(へん)にわりて細(ほそ)くきり○ 栗子(くり) 皮牛蒡(かわごぼう)を針(はり)に    きり○ 木耳(きくらげ) 麪筋(ふ) 細くきり○ 芹(せり)みぢんに刻(きさ)みもし    芹なきときは青菜(あをな)を用ゆ○ 銀杏(きんあん)ふたつわりにし七 品(いろ)合(あはせ)    て大約(おほよそ)壱升ばかりのかさに油一合あまりの分量(ぶんりやう)にて油よく     沸(にたゝ)せ先(まづ)銀杏牛蒡芹を入れ炒(ゐり)つけ 次(つき)に木耳ふ豆腐 【右丁】    くりを入 復(また)うちかへし〳〵して豆油(しやうゆ)にて味つけさまし置(をく)    ○腐衣(ゆば)を水に浸(ひた)し板(いた)にひろけ七 品(いろ)の料(ぐ)をあつさ四五    分まんべんにしきならべよく巻(まき)つけ干瓢(かんひやう)にてくゝり ○    又 巻(まき)とめ口に葛粉(くずのこ)水にてかたく溲(こね)たるをぬりつくるも    よし油にてよく煠(あ)げ七八分づゝに切る尤も豆腐は油にて    三次(みたび)煠(あぐ)るなり○ケンチヱン醋(す)にて用ゆ    ▲ ケンチヱン醋の方 上々の厳醋(きぶいす) 豆油(しやうゆ)と等分(とうふん)にして    しぼり老姜(しやうが)おほく入れ絹(きぬ)ごしにして用ゆ    ▲又一 製(せい)あり右六 品(いろ)の加料(かやく)を油にてゐりつけすり豆    腐に糝(まぜ)て腐皮(ゆば)は油を用ひず生(なま)の腐皮に巻くゝりて 【左丁】    醤油と酒しほにて味つくる也是 草(さう)のケンチヱンなり [七十八]交趾(かうち)でんがく 常の如く串(くし)にさし香油(ごまのあふら)をひき辣茄(とうからし)    味曽のつけやき也 [七十九] 阿漕(あこぎ)でんがく 豆腐をよきほどにきりさつと炙(やき)すぐに    稀醤(うすしやうゆ)にて烹染(にしめ)汁 気(け)をきり香油(こまのあふら)にて煠(あ)げ復(また)味曽(みそ)    をつけて田楽にして炙(やく)なりすり柚かける    ▲油を用ひず醤油のつけ炙(やき)にして少し乾(かはか)し再(ふたゝ)び味曽    をつけて炙(やく)也 炙調(やきかけん)だいじ也 両炙(りやうはう)ともやきすごすべから 【右丁】     ずこれを再炙(ふたゝび)田楽といふ ●[八十]鶏卵(たまご)でんがく たまごを剖(わ)り豆油(しやうゆ)と酒しほ少し入れ    醋(す)を最(もつとも)少し加へよく攪(かきま)ぜ田楽にぬり炙(やき)にするなり    ふくれるを度(ほど)とす○罌粟(けし)と擦(おろし)山葵(わさび)をく [八十一]真(しん)の八 杯(はい)とうふ きぬごしのすくひ豆腐を用ひ水(みず)六杯    酒壱杯よく烹沸(にかへし)後(あと)に醤油壱杯入またよくにかへし    とうふを入る烹調(にかげん)[九十七]湯やつこの如(ごと)し擦大根をく 【左丁】 ●[八十二]茶豆乳(ちやとうふ) とうふ十/挺(てう)に上々の茶壱斤の分量(つもり)にて茶    を煮いだし沸(にへたち)たる所(ところ)へとうのふ羅皮(ぬのめ)をさりて入れよく    烹(に)て茶色に染(そま)るを別(べつ)に茶を烹(に)て出(で)ばなの所へ入れな    をすべしさて茶をしぼり○煮(に)かへしの稀(うす)醤油 花鰹脯(はなかつほ)    山葵(わさび)のはりをおく又山葵味曽よろし    ▲山葵味曽の製(せい)はみそに油麻(しろごま)胡桃(くるみ)よくすり合せ    をき用るとき擦(おろし)山葵入るゝ也    ○又 胡椒(こしやう)みそもよし [八十三]石焼(いしやき)とうふ もと石(いし)にてやくを略(りやく)して鏊子(くわしなべ)を用る也 【右丁】    炭火(すみび)を武(つよく)し鏊子(なべ)に油を少(すこ)し入れよくぬりまはし    但(たゝ)し油をひくといふよりは饒(おほ)くする也豆腐を壱寸 方(しはう)    あつさ三分あまりに切てなべにちよとをけばおどりうご    くをぢきに鶏卵匕(たまごすくひ)にてうちかへす也すぐに用いる也おろし    蘿匐(だいこん)生豆油(きじややうゆ)にて用ゆ    ▲青海苔(あをのり)を炙(あぶり)よく細末(さいまつ)し方盤(おしき)やうのものへひろげ    油をよく沸(たゝ)せ少しづゝすくひ海苔(のり)の上へおとし転(ころば)し    よく攪(かきま)ぜ文火(ぬるきひ)にしばらくかけ醤油にて味つけたるを    右の豆腐につけて用るを炒(ゐり)とうふといふ    ▲鏊子(くわしなべ)のかわりにいかにも古き犂(からすき)の鑱(さき)【挿絵】を用る是(これ) 【左丁】    をからすき炒(やき)といふなり也 [八十四]犂(からすき)やき 右に出たり [八十五]炒(ゐり)とうふ 同しく右 石焼(いしやき)の下(ところ)に出たり ●[八十六]煮熟(にぬき)とうふ 鰹脯(かつほ)のだし汁にて尤も炭火(すみびの)文武火(つよからぬひ)を    用ひ終日(いちにち)あさよりくれまで煮(に)る豆腐すだつなり也 [八十七]噄素(しやうじん)のにぬき豆乳(とうふ) 右の煮調(にかげん)に同じく昆布(こんぶ)の 【右丁】    達失汁(だしじる)に秦椒(さんしやう)を加へ終日 煮(に)る秦椒を加ふること決(くでん)也    昆布をだす先(はじめ)より入るべし ●[八十八]骨董乳(ごもくとうふ)    全(まる)ながら切目(きりめ)を十文字に入れきりはなさぬやうに半(なかば)    までにすべし葛湯(くづゆ)にて全烹(まるに)にし盂(はち)【盆ヵ】へうつし○生(き)の煮沸(にかへ)し    醤油をいけもりの如(ごと)く底(そこ)へ溜(た)めをき花がつほを其上へ    壱 面(めん)にをき○広島(ひろしま)紫菜(のり)紅椒(とうからし)のざく〴〵葱白(しろね)のざく〴〵    擦(おろ)し大根を又右の上へのせもりもち出て席上(ざしき)にて混(ごちやませ)に    し小皿子(こさら)へもり出(いだ)す也○又夏月に豆腐醤油とも生(き)にて    も右の如く調(とゝな)ふひつきやうやつこ豆腐の変調(かえりやうり)なり 【左丁】 ●[八十九]空蝉(うつせみ)とうふ [五十七]賽蜆(しゞみもどき)の製(せい)の如くして猶々(なを〳〵)水をすくひ    つくし熬(ゐり)つかせて腐滓(から)の如くになるを香油(ごまのあぶら)酒しほ醤    油を入 雪花菜(から)を熬(ゐ)る烹調(かげん)よし雞卵(たまご)ともみ紅魚(だい)肉を    入れ杓子(しやくし)にてよく煉(ね)る也○秦椒(さんしやう)麻子(松のみ)を入る○一にホロ    カベとうふと名づく [九十]苗鰕(ゑび)菽乳(とうふ) 生(なま)の苗鰕(ゑひざこ)を割刀(はうてう)にてたゝきよく細末(さいまつ)し    雷盆(すりばち)にてするはあしく別(べつ)にとうふをよくすりて右のたゝ    き苗鰕をよくまぜ合せ[十]雷(かみなり)とうふの加料(かやく)を入れて 【右丁】     油(あふら)熬(ゐり)にして味つくる也◯苗鰕なき時莭(とき)ハ海鰕(いせゑび)を㵸(ゆで)    てたゝき用ゆ [九十一]加須底羅乳(かすていらとうふ) 上々の古酒を煮沸(にかへし)酒香(さかけ)なきほどにし豆    腐を全(まる)ながらとくとひたるほど入れ文武火(つよからぬひ)にて烹(に)る一 旦(たん)は    ふくれて大きになり又 始(はしめ)よりしまりて小(ちいさ)くなるを度(ほど)とす [九十二]別山焼(べつさんやき) 温飯(うんはん)を手(て)にて少(すこ)しもむ是(これ)にて後(のち)に串(くし)にさす時(とき)    くだけぬ也さて小さくつくね胡椒(こせう)味曽(みそ)に■(つゝ)み串にさし    少し焼(やき)て温(あたゝ)めをきたる小奈良茶碗(こならちやわん)に二ツ入れ烹調(にかげん)よき 【左丁】    うどん豆腐を羅匕(あみしやくし)にてすくひざぶりとかける也    ◯別山は禅師(ぜんし)の名(な)なるよし [九十三]包油煠(つゝみあげ) 大小このみ随(しだひ)に切り美濃紙(みのかみ)にて沙金袋(しゃきんふくろ)    包みに【巾着の挿絵】つゝみ○板(いた)に乾(かはき)たる灰(はい)を厚(あつ)さ四五分に布(しき)    其上へ乾たる布(ぬの)をしき又 紙(かみ)を一 遍(へん)しき其上へ包み    たる豆腐をならべしばらくをき水気(みづけ)をさるなり水を    しぼりすごせばかたまりてよろしからずさて包(つゝ)みながら     香油(ごまのあぶら)にて煠(あ)げ紙をはらひ稀(うす)醤油かくし葛(くづ)にて烹(に)    てすり山葵(わさび)をく◯又 雪白煠(ゆきしろあげ)ともいふ 【右丁】   絶品 [九十四]油煠(あげ)ながし よきほどに切り香油(ごまのあふら)にて煠(あ)げあげ鍋(なべ)    より直(すぐ)に水へうつし入れて油 気(け)を去り◯別(べつ)に葛(くづ)湯(ゆ)を    くら〳〵沸(にゑ)たゝしをき油ぬき豆腐を入れ[九十七]湯やつこ    の烹調(にかげん)にて山葵味曽かけ也○山葵(わさび)みそは[八十二]茶豆    腐の下(ところ)に出(いで)たり ●[九十五]辣料(からみ)とうふ 鰹脯(かつほ)の達失(たし)汁 稀(うす)醤油にていかにも 【左丁】    たつぷりと鍋(なべ)にたゝへ老姜(しやうが)を擦(おろ)しいかにも饒(おほ)く入れ    終日(いちにち)烹(に)る也○凡(およ)そ豆腐壱 挺(てう)によく雋(こゑ)たる一トにぎり    ほどの老姜(しやうか)十ヲあまりの分量(つもり)にすへし [九十六]礫(つぶて)でんがく とうふを八分 方(よはう)あつさ四五分に切ひと串(くし)    に三つづゝさし[二]雉子(きじ)やき田楽の如く狐皮色(きつねいろ)に    灸(やき)串(くし)ぬきて其まゝ楽陶(らくやき)の蓋茶甌(ふたちやわん)に入れ芥子(からし)酢(す)みそ    かけ罌粟(けし)ふる也 ●[九十七]湯やつこ 八九分の大骰(おほさい)に切か又は拍子木(ひやうしき)豆腐とて五 【右丁】    七分の方(かた)長(なが)さ壱寸二三分の大きさに切をき○葛湯(くづゆ)を    至極(しごく)ゆだまのたつほど沸(にゑ)たゝし豆腐を壱人 分(まゑ)入れ蓋(ふた)    をせず見(み)てゐて少(すこし)うごきいでゝまさにうきあがらんとす    るところをすくひあげもる也 既(すで)にうきあがればはや烹調(かけん)    よろしからず其あんばい端的(たんてき)にあり尤 器(うつわ)をあたゝめ    おくべし○生(き)醤油を沸(にたゝ)し花がつほをうちこみ湯(ゆ)を    少(すこ)しばかりさし又一へん沸(にたゝ)し絹(きぬ)ごしにして別(べつ)猪口(ちよく)に    入れ葱白(しろね)のざく〳〵おろし蘿匐(だいこん)辣茄(とうがらし)の末(こ)入る    ○京都(きようと)にて是をたゞ湯(ゆ)とうふといふ浪華(おほさか)にて湯    やつこといふ菽乳(とうふ)の調和(てうわ)において最(もつとも)第(だい)一 品(ひん)たるべし 【左丁】    ○古法は泔水(しろみづ)にて烹(に)るとあれども葛湯 にはしかす [九十八]雪消飯(ゆきげめし) [百]うどん豆腐の如く切り[八十一]真(しん)の八 杯(はい)    とうふの如く烹(に)て小寧楽(こなら)茶甌(ちやわん)を温(あたゝ)めをきたるに入    れおろし大根をおき其上へ湯とり飯(めし)をよそひ出す    也 風味(ふうみ)きゆるが如し是(これ)亦(また)清味(せいみ)第二 品(ひん)にくだらず    ○湯とり飯(めし)は最(もつとも)精(しろつき)の飯(めし)をたき沸湯(にへゆ)へ入れ撩(かきまは)し    笟籬(いかき)へあげ復(また)もとの釜(かま)へ入れ火気(くわき)のある竈(かまど)へ     かけよく熟(うま)す也    ▲[十八]しき未醤(みそ)菽乳(とうふ)の上へ右の湯とり飯(めし)をよそひ 【右丁】    又は[四十九] 備後(びんご)とうふのうゑへよそひ或は木のめでんがく    の上へよそふみなすべてうづみ豆腐といふ [九十九] 鞍馬(くらま)とうふ 壱 挺(てう)ふたつ切ぐらいにして油にて煠(あ)げ    皮(かわ)をむきとりてまろく造(つく)り瀹(ゆに)して梅醤(うめみそ)かけ罌粟(けし)    にても胡麻(こま)にてもふる○又酒しほ稀醤油(うすしやゆ)にて烹(に)    てすり秦椒(さんしやう)をくもよろし ●[百] 真(しんの)うどん豆腐(とうふ) 鍋(なべ)ふたつをならべ二ケなべとも湯(ゆ)を最(もつとも)よく    湯玉(ゆたま)のつたほど沸(たぎら)しをき切たる豆腐を羅匕(あみしやくし)にて 【左丁】    すくひ一方の鍋(なべ)へ羅匕(しやくし)なからつけひたしたるまてに    て直(ぢき)にあたゝめをきたる器(うつわ)へよそひ今一方(? いつはう)のにゑ    湯をそゝぎ入れ出(いた)す也 烹(に)るにおよばすして烹調(にかげん)最(もつとも)    妙(めう)なり幾数十人(いくすじうにん)に供(もてな)すといふとも始終(しじう)烹調    少(すこ)しもかわらず○汁は豆油(しやうゆ)壱升酒三合だし    汁五合ひとつに煮(に)かへし別の中ちよくに入れ擦し    大根 辣茄(とうからし)の末(こ)葱白(しろね)の微塵刻(みぢんきざ)み陳皮(ちんぴ)の細末(さいまつ)    浅草紫菜(あさくさのり)を加料(かやく)に用ゆ○或は胡椒(こしやう)一 品(しな)にても    ○切やうは凝菜(ところてん)のつき出(た)しさきの羅(あみ)を絹絲(きぬいと)にて    造(こしら)へ温湯(うんたう)の中(なか)へむけてつき出(いた)すなり尤其つさ【きヵ】いだ 【右丁】    す手(て)もとまで湯へつかるやうにすべし幾(いく)百人に    供(もてな)すといふとも即時(そくじ)に切(きり)いだすべし    ○うす刃(ば)にて刻(きり)【剉】いだすはまづよきほどにあら切(ぎり)をし    左(ひだり)の方(はう)を左の掌(てのひら)にておさへ左の方より右(みぎ)の方へ    むけてきりゆくなりよきほどにきりて左の掌と    うす刃(ば)とにてそつとはさみうちかへして又 始(はじめ)の如く    きりゆく切る中(うち)にひたものうす刃(ば)を水につけ〳〵    してきりよゆく也是すべて荳腐(とうふ)をきるの術(しゆつ)なり    一■【法】にうす刃(ば)に酢(す)を少しひくもよし 【左丁】 【右丁】 豆腐(とうふ)百珍(ひやく▢▢)続(▢▢) 編(▢ん) 全一冊 近日出来   前編(ぜんへん)の百珍にもれたる豆腐の料理 調味(てうみ)愈(いよ〳〵)珎奇(めづらしき)を   別に百品と又 附録(ふろく)三十 余(よ)品を輯(あつ)む前編と合(あは)せて   二百三十 余品(よしな)あり       江戸通本石町十軒店 山崎金兵衛 天明壬寅  平安堀川錦小路上町 西村市郎右衛門 夏五初吉     堀川六角下町 中川藤四郎       大坂高麗橋一町目  藤屋善七 【左丁・白紙】 【裏表紙】