【図書ラベル:207 56】 紙屑身上噺 【27.12.22】 【図書ラベル:207 特別 56】 【書き込み:コ-1691】 紙屑身上噺(かみくづみのうへはなし)   完 【角印:帝国図書館蔵】 【二重丸印:図/明治三一・一〇・六・購求】 夫 ̄レ一寸(いつすん)の虫(むし)に五分の魂(たましひ)ある事はさらなり艸(そう) 木(もく)其外 其情(そのせひ)なきはあらす難波(なにわ)に梅の情(せひ)あり 高砂(たかさご)のまつは祖(おぢ)父 姥(ば〳〵)とあらわれ質(しち)屋(や)の 土用 干(ほし)に小袖(こそて)のそでから細(ほそき)手の出た噺(はなし)も誠(まことに) なる哉夫 ̄レ を思ふに屑買(くづかひ)か帋(かみ)くづを押付(おしつけ)て 見るにあとからむく〳〵持(もち)上るをかんかふれは 是(これ)にも其情有らんかとふと半紙(はんし)付小 菊(きく)さま がたのお笑(わらひ)の端切(はしき)らずにもならんかと諸奉書(しよほうしよ) 人(にん)の美濃(みの)上田(うへだ)の穴(あな)を紙屑(かみくづ)どふぜんな新(しん)まい 作者(さくしや)の筆(ふで)にまかせ一巻(いつくわん)のそうしと なしぬされども買人(かいて)かなくは唐(とふ)帋(し)た 物(もの)と気(き)をいため紙(かみ)本のほうぐ同(と〳〵)前(せん)【同の送り仮名「とう」か】 紙(かみ)くづとも思召永日の御 笑(わらひ)を願(ねかふ)而(の)已(み) 安永十丑のとし初春 《割書:作者》可笑 【角印:可笑】 くずかごよりちりがみ あらわれいでほかのかみくづに いふよう われはかみのうち にていたつてきれいなきがみ なれともゑゝぶんでしわん ほうのふところ にすまい わるく すると せつちんへ二ツぎりと なつて つるされますおの〳〵ももはやあすはかみ すきのてへわたる身のうへてん〴〵にみの うへのさんげはなしをなされぬか こゝにかみくつかいの十六兵衛といふもの 日〻かみくづをかいこみしが あるよかどのうちより なにかかたちあらわれし ゆへふしぎにおもひ みゝをすまして きゝゐる 唐紙(とうし)のほぐ さてわたくしなどは ゑんほう舟【?】まはしの くるしみおさつしなされそして わたくしも一ツ本のまゝて かみやのくらにはいつて おつたらいんぐわと四五まい 小がいにされなにかいきかた【行き場なく、の意?】 なつくゑの下へおしこ まれみてゐますに ちつとばかり おいへ りうをかきおぼへたやつが いろ〳〵ときをもみほんきに なつたりさやまゝ をかいてみたり 【右頁下】   せんせいもまあ   たいがい   とうしせんさ 【右頁上段の続き】 したあげくまだ ろくにたて状もかけぬを これて ゑゝとあきらめ 此ごろからやうとおもひつき ならひもせずてまへのゑて かつてにむりばつかり をかきちらしじまんらしく しゆいんをおして人にやります をみているきのどく さそのゝちわたくしも かきそこないまるめ てうつちやられまし たがみなさまとちがい せうの ちがつたわたくしすきかへしに もなるまいと【再生紙にもなれないとの意?】 それがあんじられます 【左頁下】 一はい はい りやう し たい 奉書(ほうしよ)のくわし袋 わたくしは  なかまの 一そくのうちでもしよ かんみまい【暑寒見舞い】あかいは【あるいは?】ねんし のれい状につかはれます れば状さしへでもさゝれ てゐますにわたくしは どこへゆく 事かとぞんじましたれば くわしやへ やられなんぞかくかとおもひますれ ばふではあてずはんぎの上へのせ 竹のかわでつゝんだ物でけばの たつほどこすり まわしふくろに したてなかへせんべい たつたりんなと入られ 人のみやげにつかはれ そのさきでも こどもがあとを ねだるとてとがも ないわたくしをちやたんすの すみへもみくちやにして おしこみ あげくのはてにはから ふくろになりてよいと おもへばすゝはきに ひき出しはいりも せぬさいづちあたま【才槌頭=ひたいと後頭部が突き出た頭】へ むりにくちの さけるをも か まは す おし こみ すゝ だら け に なつ た しまい が 此 と をりに まるめ られ まし た 【挿絵内】 だいもつを いたゞきます 小 ぞう ひしやげ ぬやうに もてよ 浅草(あさくさ)の漉返(すきかへ)し わたくしはおの〳〵様の まへへむさくろしく 出ますもいかゞなれ ども御めんなされませ まつわたくしがつかはれ ますはとかくむさい事ばかり それをのがれましてやれ うれしやとぞんじました ところがうちだやのたば こみせへかはれまして わづか一きんで八十か百の たばこをつゝまれたる おはしたに かはれ女べやのすみ になげほうられまして ゐましたがそばで おはぐろをつけて ゐてほう〴〵をたづね てもなかつたがいんぐわまあ 【挿絵内】   ほんの   なで   つけ    さ 【右頁上段の続き】 そんざいな わたくしを ひつぱぎ たばこはふき とぶにもかまはず まつくろな くちをみへも せぬひんほうな かゞみをはなの ひつつくほど つらへおしつけ さつまいもほど あるゆびへ わたくしを ひんまき 大くちあいて ふかれまして かごの なかへ ほうりこまれて こゝへ まいりました 【挿絵内】 はやく しまひ なすつたの 小菊(こきく)の 鼻紙(はなかみ) なにか ぞんじ ませぬかわた くしはむまみちで 四ツでかごのなかへ かわれましたが どんふりと やらのあいだへ おしこみかごのなか からはやうやれ〳〵と いふとひととびにまい りましたが大もん口で おりてなかのてうへ あがりさけなどのむ と丁子やといふ のうれんのかゝつ たうちの二かい へあがり女郎が てるとやりてや わかいものが ざしきへきて むしやうにおだてかけられ 【中段】 みどりヤ おかんを なをしや 【下段】 だんな ちと いたゞき ませう これ は あり がた山 【右頁上段の続き】 そこでわたくしを二 さんまいだしてさかなを しやうといちまい づゝやりましたが よくかんがへますれば かねのかわりそうに ごさるやるかねも ないくらいなら あそびに ゆかぬ がよう ござるちや屋の そんになりませう そしてわかい ものめが もらつた所が かねとひきかへに でもするかと そんじまし たれば らうかへでると ちん〳〵とはな をかんてすて られました 【左頁下段】 たつさんたばこ をのみ なんし ほぐむ古手形(ふるてがた) わたく【「し」の抜けか】もしんるい がきでもかゝれますれば ゑゝにかねのしやうもんを かゝれそれも ひととをりなれば 大じかされますが五十両 壱分のてがたを かゝれそのうへ このじせつは てがたもやくに たゝぬとそまつに されざとうの かみくづかごに おりましたが おゝかたり ぶんでもと かねの三ぞう ばいもとつ たあげくと みへ ました 【右頁下段】 又あすあたり 二三人もやるが ゑゝ いつから より ませぬ これでも つまら ぬさ 【左頁上段】 のり入絵【紙か】   ばん切 わたくしもみこと にみへますが きんねんはやすく なりましたせめて しんじゆくにも かはれますれば ゑゝにおきゝ なされませ どこやら へかわれましてむしやうに 女郎のかしたがつてとんた ぶんていをかきちらし それてもしまひと ひつさいてくちべに などのついたところ のいやらしさ そしてくれ〴〵も めうごにち御かよひ くたされかしなどゝ くぎのおれのやうな てヾ明後日に めう五にちとかく あて これでしよじ ごすいりやうなされまし わたくしもあきれはてました でへふ さぶい ばんたぞ 半紙の 壱文たこ わたくしはねだん こそあらふに一もんの たこにはられて くだりをくう よりたこを かへとはなつ たらしのがきに かわれ町ぢう ひきづり まわし とろたらけ になり まして しまひの はてがこども げんくわの たねとなり さきのこが にくさにつら あてに おふくめが わたくしを これがある 【右頁下段】 おいらあしらんよ きんさんが なかせなさつた 【右頁上段の続き】 などゝ ひつさばき うちのかみ くずざるへ 入られその のちくず かいがおし つけるとて ほねでてを ひつかきいま 〳〵しいと こゞとを いひながら ほねを はなし わたくしは たす かり みな様 と御いつ しよ にこゝ へまいり ました 【左頁下段】 なんぼ こどもでも あんまりだ なくことは ない へらぼうめ わつち らがやろふ はとふもいた づらだから とくさん かんにん しな みす紙のつかい       残り みなさまわたくしが ふしあわせをきいて 下さりませ御たいけの おひめさまへ でもおかい あげになればゑゝにあげや町のきさみ たばこやへかわれましてそれから二三 でうづゝやす女郎のてにわたりきやくが あるとたいそうらしくやうたんすの しやうまへをあけまだあとに 二三そくもあるやうなかほで ありつきり二三でうだして なんのやうにたつかと おもへばうちわかあふぎ しやアあるまへし ひばちの ひをむらしやう やたらにあ をぎたて そのあげく には二三まい かさねてまる 【右頁下段】 ばからしい おいで なん し 【右頁上段の続き】 くわにして さきをひ ねり きやくに むかいこれ みなんしいつ そおもしろの ありんすと いひながら あんどんのひを ちよつとつけると ぽつともへてはいは てんじやうまであかると うぬがもしておいて いつそかみへかゝりんす なんそとさしき ぢうはたき まわし そのあげくが のこつたのをば もふこれ ぎりに しませう あとをはなし ては やぼた 【左頁下段】 まだね なんせん かへまいて くんなんし いまき いんし た は な いつそ もふぢれつ たくつて なりん せん 糊入半切(のりいりはんきり)の     てがみ わしはさるやしきの かんべんしや【勘弁者?=倹約家】がいしや【医者】 の所へやく代【薬代】に一分 てはすぎるなん りやうてはちと ふそくなりと なんりやうに わしを一そく つけてやられ ました一年中 くすりづゝみに いるものゆへやつたは きこへましたがとう でもやぶ印とみへて 薬づゝみもおゝくはいゝ ぬかして半きりに されましたがいやもう いしやもないしやうへ入ツ てみればいろ〳〵なが ござる此いしやめはちと むつかしいひやう人【病人】へは たび〳〵みまひもせず おせわかぜくらいには ちよつ〳〵とみまひ さあゆくがさいご 【右頁下段】   これは   ごたい   き   だへぶけふは   おはやかつた 【右頁上段の続き】 しりがなかくいろ〳〵 のうさよはなし【浮世話?】 をはじめまた うちでくすりを もるときに びやうか【病家】より ようたいがきが くるとそのへんじを ろくなてゞも ないにから やう【唐様】らしくかき ちらしてやるゆへ びやうかではかん びやう人かより合 はんじものを みるやうに かんがへてももし【文字】が あくひつのからよう なればねつ からよめず ゑゝはござつた とぎきこうと いつて状さしへ さゝれていまし たがどうしてか 此なかへすて られて かわれました 【左頁中段】 びやうかがおゝい からとふでも おそくなる 【左頁下段】 けふは はん丁【番町?】 のほう かへ □つと【ちつと or もつと】 はやくお かへり なさん せ 端(はし)きらずの袋(ふくろ) わしはあんまり ゑゝ事にはなんでも つははれませぬがなかにも どうしんじや【道心者】の山ほうずの てにわたりふつしやう ぶくろにされました かむかしはぶつしやう ふくろは二合か三合 ツヽ米がはいりました に今は五合のうへ ツヽはいりまっす此ぢうも そのぼうずめか五文か 八文でさつまいもを二ツ 三ツかつてながやのばあ さまをあやなしまごの ところへみやげにやると ばあさまもかみ様も かわいゝ子やまこに やさしくされてうれし がりあのさいねん様は こぼんのうさとうれし がる所へつけこみこんど ぢぞうさまをこんりうし ますからおまへかたもどふぞ いひやわせて出てくた されとたのみさあそれ からはといつ はいとりこみ しやうこと 【右頁下段】 あゝちつと へつたはい そればあさん こちらの まどから でる 【右頁上段の続き】 なしにやすい ほとけを こしらへ 又おいとま ごいとやらか してわたくしが くちをあけて まつくろな 米ごとつめつり だいへのせほかから よつたよふにみせ かけおのれはのぼりを もつてきんしよのかみ様 ばあさまをたまして 江戸ぢうひきづりまはし しまひにはほとけさまは どこへござつたやらゆきがたも しれずあつめた 米をうりはらい ぼうずも とこへうせた やらその あとのあき だなに わた くしは のこつて おり ました 【左頁下段】 ぢぞう ほさつ こん りう もし あげませう あれ のゝさまを みや 美濃(みのがみ)紙の    たちはづれ わたくしはとしの くれにやしきへ 一でうかはれなにか うちのさむらいめが ぶきやうにつきあわせ せうじのはりかへ あんどんのはり かへにつか われその やろうがうぬ がつぎやうの わるいとせうじの ひづみをばたなへ あげておつていま〳〵しい 此かみはばんがせばいの なんのとあくたいを いひおるにくさ  はいかいのつけあいにも  〽あんどうの四方を    はつてしまひけり こういふくもござるが さて〳〵あきれ はてたぶきやうな やらう さ 【右頁下段】 こいつは とんだ ひづんた かみだ 小がたなが ねつからいもだ いま〳〵しい 【左頁上段】 よしの紙 の切くず わたくしは うるしをこすと 十月のさくらの花 になるよりほかは あんまり入用に ないみのうへ いんぐわとほつけ でらへかはれ ましてなつしよ【納所?】 ぼうずどもが むだをいひ〳〵 大あぐらで きりちらかし そしてそし【祖師】様へ あげるはな をこしらへる に小べん をした てをあらい もせず よう〳〵できあがると大あくびて いま〳〵しいよう〳〵しまつた なぞとあしでけちらかしもつたいない やつばりよひまつりの とうらうやかざりものでも こしらへるきどりさ 【左頁下段】 ばか〳〵 しいた【こ?】だく さんなもうゑゝ かけんにしよふは もふちつとだ やらかして しまへ〳〵 日向(ひうが)半切の     ほうぐ さてわたくしは 江戸のまんなかのごふく だなでつかわれいやはや 一日がきとものへんじで のぼせきり ますそして いまつかはれるか 〳〵とまつて いてもさて〳〵 かうやつもうる やつもながいといつては あきはてますまあ なにかそろばんを ばち〳〵〳〵とおとばかり させてゑいやらやつと もふこれでよふござり ますかとてそれから わたくしをとりあげ て何をかくやらひげ だいもくをみるやうに むしやうにはね ちらかし外から みては一ツもよめ ませぬやう〳〵 なぐりしまい はんとりといふ こへがすると 金といつしよに 【右頁中段】 あり かたふ ぞんじます 【右頁下段】 御しんぞうさまそのこしをび をころうじまし たゞ今これが きつうはやり ます これはもふ おまへ様 しんがた で しろ と ぢ あいもよろしう ござりま すさ かい 【右頁上段の続き】 けうけのやうなはこの なかへぶちこみおくへ もつてゆくと さあそれからが またながいと いふは一ときもかゝり よふ入かとその のこりのかみて うぬかなじみの よび出しちや屋へ やる文をかくところが かのひげだいもくを かきつけたてぶし できやうことば のぶんていを いやらしくかく こつたから ひとつもろく にはでき ぬゆへひき さいてはまるめ またかいては ひきさきその はきすてられた わたくしが こうしてこゝへ きましたやら 【左頁下段】 ひわちや のもん ちりめんを みせな 漉返(すきかへ)しの半切 さてわたくしはとほうもなく たいくわんにつかれまして何か一日 ぞんざいになぶりがきにいたされ ますなんほわたくしでもほかへ まいつたならこうぞんさいにも つかわれますまいあげく のはてに何をかく かとぞんじました ところが一ツなに 〳〵としなを かきつけすへに みきのしな つききれ申候 あいだ御こと わりなくに あいながし 申候 たれさま と したゝ めいへ なも かゝず しちや 【右頁上段の続き】 と ばかり かいて さきへ やり ました さきで よんで みてにが〳〵 しいかほを してこまつ たものだ利 あげはならず しやうことが なへかつてにさつ しやれといひな がらわた くしをひき さき かん で す て ら れ まし た 【左頁下段】 二分【万?】の 入か これは ちがつた よふだ もふ一へん して み よう 丈長(たけなが)の元結(もとゆひ) わたくしも しばゐの 大入りでも かゝれますれば このやうな むさいめは いたしませぬが たちもとゆひ となり あぶらうりの てにわたり 山だしの げぢよに かわれ 御しんぞう さまのまねを してまわしもとゆひを しならうとてなにが いくたび【幾度】かけるかいくらやつても こまく□がのちには つつばしけるやら たび〳〵てにかゝるから 【右頁下段】 得 太夫は とんだ ゑゝの まださよは かみか 何を いたすやら 久しいことで ござります そして できた所が おかざり だらけた 【右頁上段の続き】 あぶらてまつくろになり うぬがてのかな わぬをわた くしがしつた やうにぶり〳〵 はらをたつて またよくじつ すてるかと おもへば うらをおりかへして つかわれあげく にはつなぎ あわせててうずを つかふとき はちまきに されゑんの したへ すてられしを 三介どのがおにわ そうじにまわつて つまんでかごへ いれられました 【左頁下段】 ゑゝもふいそげは まわるぢれつ たへ 上田(うへだ)の鼻紙(はなかみ) わたくしはぞうりわらじと いつしよにおりましたが さるやしきの下女が やどをり【宿下り】にきてしばゐ へゆくとてたつた一でう 八文でかわれ ましたがよく じつしばゐの きりおとしへ まいりたかが 八文がものだ とおもひ おつてまづ まつくろな ゑりのまわり をふきまわし べんとうのにしめや やきめしをのせ しまいにはもん ですてみかん をくらつては てをふき 【右頁下段】 つむりにきを つけなさい 【右頁上段の続き】 きやうけんか   【以降破損】                       笑作 これだからなんでもあんじるはそんさ    清長画 【図書ラベル:207 特別 56】