立給故次第随(たてたまふうるがゆへしだいにじやう)_二 上代( だいなるに)_一吟(したがひ)_二諸事(しよじをぎんず)_一。 時(とき)に随(したが)ふと云(いふ)ハ是成(これなる)べし。昨日(きのふ)ハあとへ 戻(もど)らず。今日(けふ)ハ明日(あす)をしらず。右(みぎ)に付貴位高録(つききゐかうろく)にして。学手芸有(がくてげいある)ト(と) 雖(いへ)ども。愚心(ぐしん)ハ諸事(しよじ)を損(そんず)ル(る)。貧敷(まづしき)下賤(げせん)にして。無学無芸(むがくむげい)ト(と)雖(いへ)ども。 智人(ちじん)ハ人(ひと)を助(たすけ)ル(る)。先祖(せんぞ)より譲(ゆづり)にして。家業安楽(かぎやうあんらく)ト雖(いへ)ども。主勤(あるじつとめ) 薄(うすき)ハ。其家(そのいゑ)ヲ破(やぶ)ル(る)。難義困窮(なんぎこんきう)にして。財宝貯無(ざいほうたくはへなき)ト(と)雖(いへ)ども。陰徳(ゐんとく) 有(あれ)ハ。陽(やう)を求(もとむ)ル(る)。我宗旨専(わがしうしもつぱら)にして。信心成(しん〴〵)成(なす)ト(と)雖(いへ)ども。他宗(たしう)を 誹(そしら)ハ病難(びやうなん)を司(つかさど)ル(る)。面表服美(おもてひうふくび)にして。諸芸有(しよげいあり)ト(と)雖(いへ)ども。心持(こゝろもち) 凶敷(あしき)ハ。後(のち)の笑(わら)ひヲ(を)受(うけ)ル(る)。家業無精(かぎやうふせい)にして。神仏頼(しんぶつたのむ)ト(と)雖(いへ)ども。 行末早髪(ゆくすへはやくかみ)ヲ(を)剃(そ)ル(る)。我作(わがつく)る悪逆(あくぎやく)にして。無智(むち)に負(おいせらる)ト(と)雖(いへ)ども。 天罪(てんばつ)ハ己(おのれ)▢悪(あく)ヲ(を)語(かた)ル(る)物智自慢(ものしりじまん)にして。?(しやべり)歩行(あるき)ト(と)雖(いへ)ども。 追日(おひじつ)ハ独▢□ト(と)成(な)ル(る)。己(おの)が智薄(ちうす)き身(み)▢て尊(たつとき)を恨(うら)み。悪様(あしさま)に 云(いふ)ト(と)雖(いへ)ども後日(ごにち)ハ高名(かうめい)ヲ(を)挙(あげら)ル(る)。真実無我(しんじつむが)にして。人為(ひとだめ)に成(なる)ト(と) 雖(いへ)ども。不思儀(ふしぎ)ハ宝(たから)ヲ(を)得(ゑ)ル(る)。前(ぜん)之/通故(とをりゆへ)。何人(なにびと)にても。未(いま)だ善事(よきこと) 致(いtいた)したる覚無(おぼへなき)に。立身致(りつしんいた)さんとハ心得(こゝろへ)違(ちがひ)なり。猶又少(なをまたすこ)し善事(よきこと) いたし。過分(くはぶん)の幸(さいわ)ひ得(ゑ)んと思(おも)ふハ横道(わうどう)なり。尤貧者(もつともひんじや)の一燈(いつとう)と云事(いふこと) 有(あれ)ども。是(これ)ハ真実(しんじつ)を以(もつ)て分限一盃(ぶんげんいつぱい)の供養致(くやういた)す事也。黏餅(とりもち)で 雀(すゞめ)鳩(はと)ハ取(とれ)ども。鷲(わし)鵞(くま)鷹(たか)ハ取(とれ)ず。是自然(これしぜん)の道理(どうり)なり。既(すで)に天下(てんが)の 政道(せいとう)も。千人力(せんにんりき)ハ万人(まんにん)の多勢(たせい)を以(もつ)て討取(うちとる)。何(なに)ほど広大成悪智(かうだいなるあくち)と 雖(いへ)ども。智者集(ちしやあつま)り是(これ)を赦(ゆる)さず。刑罪(けいばつ)に合(あ)ふ。又借金返済無者(またしやくきんへんさいなきもの)ハ。 身上被召上(しんじやうめしあげられ)。貸方(かしかた)へ下(くだ)さる。都(すべ)て定法背(じやうほうそむ)く族(やから)ハ。其軽重(そのけいぢう)に応(おう)じ 咎(とがめ)有(あ)り。扨又忠孝(さてまたちうかう)の者(もの)ハ。御褒美(ごほうび)被為下置(くだしおかせらる)。皆夫々御沙汰(みなそれ〳〵ごさた) 被為有事(あらせらるゝこと)。有難(ありがた)き次第(しだい)なり。其結構(そのけつかう)なる国恩(こくおん)を。 不知者(しらざるもの)。人非人(にんぴにん)と云(いふ)て。折々(おり〳〵)公難(かうなん)。病難(びやうなん)。災難(さいなん)。有(あり)。予(よ)ハ臆病者故(おくびやうものゆへ)。 六十二/歳(さい)の今日(こんにち)まで。三難受(さんなんうけ)たる事(こと)/無御座(ござなく)候。又膽太(またきもふと)き人沢山(ひとたくさん) 成(なる)か。近年(きんねん)ハ 五番所(ごばんしよ)へ行人多(ゆくひとおほ)し。是抔(これなど)ハ恐多(おそれおゝ)き事不成哉(ことならずや)。 堪忍(かんにん)も時(とき)によりてハ宝(たから)なり。其場(そのば)と成(なら)ぬ先(さき)が勘弁(かんべん) 此儀心得有(このぎこゝろへあら)バ。御公儀様(ごかうぎさま)へ出(いで)ず。一代無難(いちだいぶなん)に暮(くら)し。心配気苦労(しんぱいきぐらう)も 無御座(ござなく)候。不然(しからず)バ。何程(なにほど)長命(てうめい)の相有(さうあり)とも。定法破(じやうほうやぶ)る時(とき)ハ一命(いちめい)を失(うしな)ふ。 譬(たと)へ晩年(ばんねん)に発達(はつたつ)の相有(さうあり)とも。若(わか)き内(うち)に心得違有(こゝろへちがひあれ)バ。首(くび)を失(うしな)ふ。 貧相(ひんさう)といふとも。出情陰徳有(しゆつせいいんとくあれ)バ。悪相(あくさう)を失(うしな)ふ。是百相(これひやくさう)より一心(いつしん)といふ 場(ば)にあらずや。都(すべ)て本(もと)を不忘(わすれざる)やう被致(いたされ)候ハゞ。何事(なにごと)も明白(めいはく)に行者(ゆくもの)也。 此儀(このぎ)よく〳〵勘弁(かんべん)し。心得違(こゝろへちがひ)なき様相守(やうあひまも)るべし。 本(もと)知(し)らバ木竹草花(きたけさうくハ)の枝葉迄(ゑだハまで)。見(み)ずして諸(しよ)事の分(わか)る尊(たうと)さ 兎角本(とかくもと)を忘(わす)れぬが吉(よし)。去人来(さるひときたり)て曰(のたまハ)く。私本(わたくしもと)ハ清和(せいわ)天皇(てんわう)九/代(だい)の後胤(こういん)。 近江源氏(おふみげんじ)の嫡流(ちやくりう)。佐々木(さゝき)四/郎(らう)高綱(たかつな)へ出入(でいり)の者(もの)に有(あり)たるが。度々(たび〳〵)密夫(まおとこ) 戦(たゝか)ひの砌(みぎり)。雪(ゆき)の朝(あさ)に足形有(あしがたある)より。浪人致(らうにんいた)し。当時紙屑拾(とうじかみくずひら)ひと相成(あひなる) 本(もと)ハ忘(わす)れねども。難儀致(なんぎいた)すハいかゞの事(こと)に候ぞや。答(こたへ)て密夫好故紙多(まおとこずきゆへかみおゝく) 入用有(いりやうあり)。依之今紙屑拾(これによつていまかみくずひらひ)と見(み)へたり。併浪人(しかしかしらうにん)ハ切取(きりどり)など致人有(いたすひとあ)れ共(ども)。 其意(そのい)なく。世(よ)に捨(すた)れる物(もの)を拾(ひろ)ひ集(あつ)め。渡世致(とせいいた)さるゝ事甚神妙(ことはなはだしんめう)也。 程(ほど)なく紙々(かみ〴〵)寄集(よりあつま)り。銭(ぜに)と替(かハ)りゐふべし。捨(すた)れる物拾(ものひろ)ひての渡世(とせい)と。 いやがる物無理(ものむり)に貰(もらハ)んとする渡世(とせい)と。出精致(しゆつせいいた)しての渡世(とせい)と。身楽(みらく)に 遊(あそ)びての渡世(とせい)と。泣々(なく〳〵)暮(くら)す渡世(とせい)と。笑(わら)ひ〳〵暮(くら)す渡世(とせい)と。修羅(しゆら)で 暮(くら)す渡世(とせい)と。表裏(へうり)で暮(くら)す渡世(とせい)と。実心(じつしん)にての渡世(とせい)と。悪心(あくしん) にての渡世(とせい)と。陰徳有(いんとくあつ)ての渡世(とせい)と。賊心有(ぞくしんあつ)ての渡世(とせい)と。右(みぎ)十二/段(だん) 之内(のうち)。其好所(そのこのむところ)を以(もつ)て渡世(とせい)するもの也。紙屑拾(かみくずひろひ)の曰(のたまはく)。私(わたくし)ハ不好(このまざる)に ケ(か)様(やう)の道(みち)に入(いり)申候。答(こたへ)て正直成計(しやうじきなるばかり)にて身持悪敷(みもちあしき)と見(み)へたり。 已後(いご)ハ朝(あさ)六ツゟ(より)半時(はんとき)の間(あいだ)。地見(ぢみ)と云(いふ)て。前夜諸人落(ぜんやしよにんおと)し置(おく) 物(もの)を拾(ひろ)ひ廻(まハ)り。而(しかし)テ(て)例(れい)の紙屑拾(かみくずひろ)ひ致(いた)し。又暮(またくれ)六ツゟ(より)四ツ時(とき) 迄雨降(まであめふり)とに。米賃(こめちん)づき。飛脚(ひきやく)。町小使致(まちこづかひいたし)。双方為善(そうほうためよき)やう孰(いづれ)も正直(しやうじき)が 吉(よし)。右(みぎ)三人/前(まへ)之/働成共(はたらきなれども)。家賃諸掛(やちんしよかゝ)り物(もの)ハ矢張替(やはりかハ)らず。左(さ) 候ハゞ。十ケ年(ねん)にハ。五/貫目(くハんめ)や。拾/貫目(くハんめ)ハ。出来(でき)るもの也。其銀(そのかね)を 以て商売致(しやうばいいた)し。古(いにし)への紙屑拾(かみくずひら)ひを忘(わす)れず。堅固(けんご)に致(いた)し候ハゝ。 天(てん)の道理(どうり)に叶(かな)ひ。三ケ処(しよ)や。五ケ処(しよ)の家(いゑ)を求(もとむ)る事(こと)。何(なん)の手間入(てまいる) 物(もの)にあらず。皆我勝手計致(みなわがかつてばかりいた)さるゝ故(ゆへ)。身上(しんしやう)も持崩(もちくず)す。左(さ)候ハゞ 諸人(しよにん)に義理抔(ぎりなど)受(うけ)。心気(しんき)を遣(つか)ふが故(ゆへ)。病身(びやうしん)と成(なる)。死物(しぶつ)ハ 格別(かくべつ)。天地(てんち)の間(あいだ)に動(うご)かずと云物(いふもの)一ツもなし。尚人(なをひと)ハ働(はたらく)が 薬(くすり)也。気血(きけつ)の廻(めぐ)りも能(よく)。節季(せつき)に心遣(こゝろづか)ひもなし。諸事面白(しよじおもしろ)く 暮(くら)すに付(つき)。自無病延命(おのづからむびやうゑんめい)と成(な)れり。我心得(わがこゝろへ)悪敷(あしき)ハ云(い)ハず。 余人(よじん)の知(し)りたる事(こと)の様(やう)に。或(あるひ)ハ目上(めうへ)を誹抔(そしりなど)する事(こと)。近眼(ちかめ)が 遠目鏡(とをめかね)の。尻(しり)から見(み)るに等(ひと)し。我(われ)より下(した)の芸(げい)ハ分(わか)れ共(ども)。目上(めうへ)の 芸(げい)ハ悉分(ことごとくわか)り難(がた)し。是(これ)を目(め)の届(とゞか)ざると云(いへ)り。其批判(そのひはん)を云(いふ)ハ。聾(つんぼ) が立聞(たちぎゝ)するに等(ひと)し。諸人(しよにん)の誤(あやまり)を云(いハ)んより。先我穴(まづわがあな)を慎(つゝしむ)が吉(よし)。是(これ)を明白(めいはく)といふ。 日月(じつげつ)にかくれる雲(くも)を思(おも)ふ身(み)ハ。己(おのれ)を磨(みが)け上(うゑ)ハ明(あきらか) 扨又世上(さてまたせじやう)に。稲荷(いなり)。又(また)ハ明神(みやうじん)。或(あるひ)ハ妙見(めうけん)。金毘羅(こんぴら)。大師(だいし)。大神宮(だいじんぐう)。 抔御下(などおさが)りと唱(とな)へ。諸人(しよにん)を惑(まどハ)す。狼藉者(らうぜきもの)あり。右様(みぎやう)の儀(ぎ)ハ。天下(てんか) 一統(いつとう)の御法度(ごはつと)にて。毎度御触流(まいどおんふれなが)し有事(あること)也。御定法(ごじやうほう)を不(もちひ) 用(ざる)ハ安房(あほう)也。凡愚成婦人(およそおろかなるふじん)歟(か)。智恵(ちゑ)の足(た)らぬ男子歟(おとこか)又是(またこれ)を 頼(たのみ)に行人(ゆくひと)も賢(かしこ)からず。其子細(そのしさい)。大切(たいせつ)の病(やまひ)と病苦(びやうく)に。狐狸(きつねたぬき)の 下知(げじ)を受(うけ)。其差図(そのさしづ)の薬(くすり)を用(もち)ひ。悪敷行時(あしくゆくとき)ハ如何(いかゞ)せん又(また) 存立抔有時(ぞんじたちなどあるとき)。東(ひがし)へ行(ゆき)て宜敷(よろしき)に西(にし)へ行(ゆく)べしと有(あつ)て。利(り)を失(うしな)ハゞ 如何(いか)ならん。何(なん)ぞ尊(とうと)き神仏(しんぶつ)の。人界(にんがい)へ詑(さがり)ゐふ所謂(いはれ)なし。乍去(さりながら) 口移(くちうつ)したり共(とも)。折(おり)にハ当(あた)る事有(ことあれ)ど。是(これ)十《割書:ヲ》に九ツ違(ちがふ)ハ利(り)の当前(とうぜん) なり。ケ(か)様成類(やうなるるい)にて。命仕廻(いのちしま)ふを非業(ひがう)と云(いふ)又利(またり)を失(うしな)ふを 災難(さいなん)と云(いふ)。祭主(さいしゆ)も。此罪天赦(このつみてんゆるさ)ざるが故(ゆへ)。一旦人挙栄(いつたんひとこぞりさかゆる)といへ共(とも)。 一ケ月/歟(か)。二ケ月。一ケ年ハ続難(つゞきがた)きもの也。仮令(たとへ)五年拾年 相続有(そうぞくあり)とも。孰(いづれ)も其家貧敷(そのいゑまづしく)。先人(まづひと)之/事(こと)ゟ(より)。我身(わがみ)の事尋(ことたづぬ)る が吉(よし)。俗(ぞく)の譬(たとへ)にも餅(もち)ハ餅屋(もちや)と云(いへ)り。然(しかれ)ども此餅屋(このもちや)にも又上(またじやう) 手下手(づへた)あり。妙徳有人(めうとくあるひと)ハ外方(ほかかた)ゟ(より)。我身(わがみ)が宜敷(よろしく)成行者(なりゆくもの)也。 是天地自然(これてんちしぜん)の道(みち)ならずや。其証拠一切元祖(そのしやうこいつさいぐハんそ)の妙徳(めうとく)。末(まつ) 世(せ)まで慕(した)ふハ是成(これなる)べし。惣(そう)じて悪(あく)ハ栄(さか)へても。早(はや)く衰(おとろ)ふ。善(ぜん)ハ 追々(おひ〳〵)永(なが)く栄(さか)へる。是(これ)にて明(あき)らむべし。惣体(そうたい)。師(し)と成歟(なるか)。先生(せんせい) と云(いハ)るゝ歟(か)。目上(めうへ)と成人歟(なるひとか)。三ツ/諸共(もろとも)。貧敷暮(まづしくくら)す歟(か)。又家(またか) 内(ない)に難儀(なんぎ)の類抔有(るいなどあれ)バ。諸人(しよにん)にハ教(おしゆ)ると雖(いへ)ども。其身(そのみ)の行(おこな)ひ 悪敷所有(あしきところある)が故(ゆへ)也。右(みぎ)に付人(つきひと)之/上(うへ)と成(なれ)バ。扨々(さて〳〵)/身持(みもち)六(むつ)ケ(か)敷者(しきもの)也。 殊更吉凶(ことさらきつきやう)考(かんがへ)る。業挺(ぎやうてい)ハ。猶以(なをもつ)て観誤(みあやまり)ハ。考者(かんじや)の罪(つみ)と成眼前(なるがんぜん) ハ勿論(もちろん)。後世(ごせ)も遁(のがれ)がたし。現世(げんぜ)を見(み)て後世(ごせ)を知(し)れとハ是(これ)なり。 故(ゆへ)に。予(よ)が考方(かんがへかた)ハ左(さ)之/通(とをり)。 人相(にんさう)ハ。晴天朝(せいてんあさ)五ツ時(とき)まで。尤(もつとも)一/日(にち)一/人(にん)に限(かぎ)る。神相(しんさう)。仏相(ぶつさう)。釼相(けんさう)。 印相(いんさう)。鏡相(きやうさう)。考(かんがへ)ハ晴天午刻(せいてんむまのこく)まで。易(ゑき)ハ昼夜(ちうや)に不(かゝ)_レ抱(ハらず)。本人(ほんにん)に三度(ど) 立(たて)させ。考遣(かんがへつかハ)す事(こと)に御座(ござ)候。墨色(すみいろ)ハ。今日持参(こんにちじさん)ハ明朝出來(みやうてうしゆつたい)す。尤(もつとも) 書様(かきやう)。一〇▢/何(なん)十/何才(なんさい)。幼名何(ようめいなに)。次(つぎ)に何(なに)。今何(いまなに)と。記(しる)し或(あるひ)ハ。願(ねがひ) 望其外新規(のぞみそのほかしんき)の存付(ぞんじつき)。且(かつ)ハ夫婦相性(ふうふあいしやう)。縁組(ゑんぐみ)。方角(ほうがく)。子縁有無(こゑんあるなし)。 都(すべ)て。普請(ふしん)。宿替(やどがへ)。修覆(しゆふく)。売買(うりかい)。質物取渡(しちもつとりわたし)。田宅共(でんたくとも)に同断(どうだん)。 惣(そう)じて。奉公人抱(ほうかうにんかゝへ)之(の)方角(ほうがく)。虚実(きよじつ)。有無(うむ)並(ならび)に相性(あひしやう)。其外入組(そのほかいりくみ) 事(こと)。縺(もつれ)之(の)類(るい)。一切(いつさい)運気(うんき)。心底(しんてい)の究(きハめ)。七/難(なん)八/苦(く)。諸事(しよじ)吉凶何事(きつきやうなにごと)に 不限(かぎらず)。其義(そのぎ)を明白(めいはく)に致(いた)さんと。思(おも)ふ品々(しな〴〵)を委(くハし)く記(しる)し。御越(おこし)被成候ハゞ。 逸々(いち〳〵)利方(りかた)を考(かんがへ)/可伝(つたふべく)候。別而病気(べつしてびやうき)ハ人命(にんめい)に抱事故(かゝハることゆへ)。元来(ぐハんらい)ゟ(より) 当時(どうじ)之(の)容体(やうだい)。不残記(のこらずしる)し来(きた)られ候ハゞ。当人(とうにん)の運気(うんき)と。病根(びやうこん)と。 容体(やうだい)と。三ツ考合(かんがへあハせ)。其上薬法(そのうへやくほう)。灸法(きうほう)。養生法(やうじやうほう)。委(くハ)しく記(しる)し。 封(ふう)じ遣(つかハ)す事(こと)に御座(ござ)候。尚又(なおをまた)。飲食効毒無病延命記(いんしよくかうどくむびやうゑんめいき)と申 施本(せほん)。見安(みやす)き様(やう)。いろは分(わけ)にいたし有之(これあり)候。一人(いちにん)に一冊(いつさつ)ヅゝ施(ほどこ)し 申候。扨又地相(さてまたちそう)ハ。東西何間(とうざいなんげん)。南北何間(なんぼくなんげん)。都(すべ)て一寸(いつすん)壱/間(けん)の 積(つもり)を以(もつ)て。地面(ぢめん)の絵図(ゑづ)を引(ひき)。凡真中(およそまんなか)にて。磁石(ぢしやく)の針(はり)に随(したが)ひ。 方角(ほうがく)を記(しる)す。而(しかうし)て地(ち)の高低(たかひく)。水(みづ)の流(ながれ)。其外(そのほか)新地開(しんちひらか)んと 有歟(あるか)。又屋敷地(またやしきち)の望有(のぞみあら)バ。盛衰(せいすい)。不浄(ふじやう)。地中(ちちう)の籠物(こもりもの)。細割致(さいわりいた)し 候ハゞ。何程下(なにほどした)に何有(なにあり)と断(ことハる)。地面(ぢめん)の有様(ありさま)。委(くハし)く記(しる)され候ハゞ。悉(こと〴〵く) 相分(あひわかり)申候。其節地面(そのせつぢめん)の真中(まんなか)を取(とり)。是(これ)を中央(ちうわう)と成(な)し。諸事(しよじ) 是(これ)ゟ(より)考(かんが)ふ。尚又建相(なをまたけんさう)ハ。家建(やだて)の間口(まぐち)何間(なんげん)。奥行何間(おくゆきなんげん)。此真中(このまんまんか)を 取(とる)。建家(たちけ)の中央(ちうわう)と定(さだむ)。土蔵(どざう)。倉(くら)。納家(なや)。物置(ものおき)。離座敷(はなれざしき)。隠宅(いんたく)。 門前(もんぜん)。一切明口並(いつさいあけぐちならび)に寸法(すんぽう)。或(あるひ)ハ牛馬(ぎうば)の居処(きよしよ)。又(また)ハ折廻(おりまハ)りの様子(やうす)。 多少(たせう)の出入(でいり)。塀(へい)。垣(かき)。惣体(そうたい)。家根(やね)の高低(たかひく)。本宅(ほんたく)より土蔵(どざう) まで何間(なんけん)。門(もん)まで何程(なにほど)ト(と)。間数悉(けんすうこと〴〵)く記(しる)し。庭前(にハさき)。門(かど)ト先(さき)。 雨水(あまみづ)の流(なが)れ。其模様(そのもやう)記(しる)す事(こと)なり。扨又家相(さてまたかさう)ハ。坐敷(ざしき) 何間(なんげん)に何間(なんげん)。次(つぎ)の間(ま)。納戸(なんど)。台所(だいどころ)。孰(いづれ)も畳(たゝみ)の敷(しき)やう 板間(いたま)。掾(ゑん)の工合(ぐあひ)。戸袋(とぶくろ)。襖(ふすま)。障子(しやうじ)。上(あが)り口(くち)。床(とこ)の間(ま)。違棚(ちがひだな)。 袋棚(ふくろだな)。押入(おしいれ)。神前(しんぜん)。仏前(ぶつぜん)。置物(おきもの)。内庭不残(うちにハのこらず)。惣(そう)じて畳(たゝみ) 敷所(しくところ)の中央(ちうわう)を取(とり)。是家相(これかそう)の中央(ちうわう)。主座(しゆざ)とす。是(これ)を地(ち) 相(さう)。建相(けんさう)。家相(かさう)の三相(さんそう)と云(いへ)り。大抵(たいてい)ハ家相(かさう)の中央(ちうわう)ゟ(より)考(かんがへ)る。 吟味有(ぎんみあれ)バ。建相(けんそう)の中央(ちうわう)。兼考合(かねかんがへあハせ)。極吟味(ごくぎんみ)ハ。地相(ちさう)の 中央兼(ちうわうかね)。三ツ合(あハ)せる事(こと)也。左様(さやう)なる時(とき)ハ。起絵図(おこしゑづ)と云(いふ)て。 大工(だいく)に命(めい)じられ候ハゞ。調(とゝの)ふもの也。小家(こいゑ)ハ其儀(そのぎ)に不及(およバず)。右(みぎ) 絵図参(ゑづまい)りて三日/目(め)に出來(しゆつたい)す。尚又委敷(なをまたくハしく)ハ。施本後遍(せほんこうへん)に 出(いだ)す。右(みぎ)之/通何事(とをりなにごと)も考(かんがへ)之/上(うへ)。又其考(またそのかんがへ)を三ツ合(あハせ)。/而(しかし)テ(て)成(なら)でハ 断不申(ことハりもうさず)候。只(たゞ)一ツ之/法(ほう)を以(もつ)てハ。麁略(そりやく)に当(あた)る事有(ことあり)。予(よ)が方(かた)ハ。 一切諸考(いつさいしよかんがへ)之品々(しな〴〵)。其道行利(そのみちゆきり)に当(あた)る様(やう)。書附(かきつけ)。封印致事(ふういんいたすこと) 故(ゆへ)。麁末(そまつ)ハ無御座(ござなく)候。外方(ほかかた)の様(やうあ)に。云流(いひなが)し候ハゞ。本人(ほんにん) 聞違(きゝちが)へ。又(また)ハ失念或(しつねんあるひ)ハ唱違(となへちが)ひ有(あつ)ても悪敷(あしき)。殊更後(ことさらご) 詰(づめ)に。左様成儀(さやうなるぎ)ハ。不申(もうさず)と云(いふ)も不本意(ふほんい)なり。依之(これによつて)。初(はじめ) 其次第逸々(そのしだいいち〳〵)記(しる)させ。先其儀(まづそのぎ)を第一(だいいち)に考(かんがへ)る事(こと)に 御座候。不然(しから)バ。肝心(かんじん)の事(こと)ハ外(ほか)に成(なり)。当時入用無事兼(とうじいりやうなきことかね)候ハゞ。 便利不宜(べんりよろしからず)。向(むかひ)の大川(だいが)ゟ。眼前小川(がんぜんこがわ)の渡(わた)りに勘弁有度事(かんべんありたきこと)也。 若又一大事(もしまたいちだいじ)の儀抔(ぎなど)ハ。封書(ふうしよ)にいたし。予(よ)が名前記(なまえしる)され候ハゞ 取次開封不致(とりつぎかいふういたさず)。決(けつし)て。他見無御座(たけんござなく)候。扨又後世者(さてまたごせいしや)の考方(かんがへかた)ハ 諸人(しよにん)を誉(ほむ)る。是(これ)に泥(なづみ)み寄依(きゑ)す。其通行(そのとをりゆけ)バ宜敷(よろしき)が。不行(ゆかざる)ときハ。 下女(げぢよ)に夫(おつと)を取(とら)るゝに等(ひと)し。相性抔悪敷迚(あひしやうなどあしきとて)。縁(ゑん)を切(き)らし。家(いへ) 悪敷迚(あしきとて)。変宅抔致(へんたくなどいた)させ。或(あるひ)ハ田宅売払(でんたくうりはら)ひ。土蔵抔取去(どぞうなどとりさり)。 其外家内大(そのほかかないおゝき)に騒(さハが)す族(やから)もあり。全智(まつたくち)の薄(うす)き故(ゆへ)也。左様(さやう)に 不致(いたさず)とも。神仏祟(しんぶつのたゝ)りハ祈(いの)り詫(わび)。障(さハり)ハ追払事(おひはらふこと)を念(ねん)ず。微運(びうん) ハ是(これ)を補(おぎな)ひ。七/難(なん)。八/苦(く)。其外何事に不限(かぎらず)。夫々(それ〳〵)の軽重(けいぢう)と身(しん) 上(しやう)に応(をう)じ。御祈禱致(ごきとういたし)候ハゞ。奇妙(きめう)に利生有(りしやうある)もの也。若又(もしまた) 利益無(りゆくなき)ハ。祭主不妙徳故外方(さいしゆふめうとくゆへほうかた)にて頼(たのま)るゝ事吉(ことよし)。併綱目(しかしこうもく)に曰(いわく)ク。 命(めい)ハ食(しよく)に有(あり)ト云(いへ)り。然(しかれ)は祭主(さいしゆ)の妙徳(めうとく)と。本人(ほんにん)の信心(しんじん)と。食物(しよくもつ)と。三ツ 合ざれバ極難(ごくなん)ハ遁難(のがれがた)きと見(み)へたりに延命(ゑんめい)も食(しよく)。健弱(けんじやく)も食(しよく)。 発病(はつびやう)も食(しよく)。重病(じうびやう)も食(しよく)。諸薬効有無(しよやくこうあるなし)も食(しよく)。絶命(ぜつめい)も食(しよく)。又 貧冨(ひんぷく)も食(しよく)。左(さ)候ハゝ食物(しよくもつ)の善悪掛引(よしあしかけひき)が第一(だいいち)也。時(とき)に其食物(そのしよくもつ)の 諸書貯(しよしよたくハ)へ有人(あるひと)ハ集(あつ)め読(よむ)といへ共貧人(ともまづしきひと)ハ如何(いかゞ)せん。甚(はなは)だ歎敷(なげかはハしき)事(こと)也。 爰(こゝ)を以(もつ)て見安(みやす)き様(よう)。いろは分(わけ)にいたし施本(せほん)とす。諸人病家抔(しよにんびやうかなど)へ 借(かし)候ハゝ。是(これ)に過(すぎ)たる陰徳(いんとく)ハ無御座(ござなく)候。扨又食物其品々多(さてまたしよくもつそのしな〴〵おゝ)しと いへども一方(いつぽう)に宜(よろ)しきと一方(いつほう)に悪敷(あしき)。又諸薬(またしよやく)に差支有(さしつかへあり)。其外覚違(そのほかおぼへちがひ) 唱違(となへちがひ)にて誤有(あやまりあり)。却(かへつ)て混雑(こんざつ)に及(およ)ぶ。故(かるがゆへ)に常人(つねびと)ハ申(もふす)に不及病人(およバずびやうにん)に而も妨(さまたげ) 障(さハり)と不成(ならず)。只人(たゞひと)の介(たすけ)と成而巳(なるのみ)を出(いだ)す。乍去浪花(さりながらなにハ)の芦(あし)も伊勢(いせ) の濱荻一貫(はまをぎいつくわん)ヲ一/〆(かん)と云(いふ)も其土地(そのとち)の唱(となへ)と五/音(いん)の工合有(ぐあいあり)。宜敷勘(よろしくかん)。 弁有(べんあり)て御撰(おんゑら)み可被成候/然共左(しかれどもさ)に記(しる)す品(しな)。其病症(そのびやうしやう)に応(おゝ)じ壱度(いちど)や 弐/度食致(どしよくいた)し平愈(へいゆ)するものにてハ無御座(ござなく)候/只其介有事(たゞそのたすけあること)をしるす い 伊保世(いぼぜ)。甘温(あまくうん)七/才(さい)までの亀背(せむし)に吉(よし) 石首魚(いしもち)。甘(あまく)平(へい)胃(い)を開(ひら)き宿食(しゆくしよく)を消(せう)ずるがゆへ腹(はら)の腸(てう)を除(のぞ)き 食(しよく)を益卒痢病(ますにはかりびやう)に吉(よし) 桑鳥(いるか)。甘温肌肉(あまくうんきにく)皮膚(ひふ)を強(つよ)くす 金絲魚(いとより)。甘(あまく)平(へい)一夜塩(ひとよしほ)にて焼肉斗(やきにくばかり)かうす味噌汁(みそしる)にて 病人(びやうにん)に用(もち)ひ苦(くる)しからず 伊須駕(いすか)。味(あじは)ひ甚(はなは)だ悪敷/癭瘤(ゑいりう)に吉(よし) 虎枝(いたどり)。甘(あまく)平(へい)経水(けいすい)を通(つう)ず産後(さんご)の瘀血(をけつ)を下(くだ)す湯火傷(やけど)に吉/懐妊(くわいにん)には無用(むよう) ろ 露水(ろすい)。甘(あまく)和花(わはな)に有露(あるつゆ)を取舌乾(とりしたかは)くに点(てん)ず顔(かほ)に点(てん)じて艶(つや)を善(よく)す 蘆葉(ろよう)。至(いたつ)て古米斗粉(こうまいばかりこ)にして練(ねり)。色(いろ)よき葉(は)に包(つゝみ)粽(ちまき)とす丸薬(ぐわんやく) 是(これ)にて丸(ぐはん)ず又食(またしよく)して髪(かみ)を長(なが)くす 蘆根(ろこん)。黒焼(くろやき)にして十匁/朝鮮人参(てうせんにんじん)壱匁/粉(こ)にして合(あは)せ胡麻(ごま)の油(あぶら) にて練毎日付(ねりまいにちつけ)候ハゝ毛(け)を生(しやう)ず は 海鰻肉糯(かいまんにくもち)。病人(びやうにん)に用(もち)ひ苦(くる)しからず気(き)を得(ゑ)る併(しかし)海鰻(はも)ハ無用(むよう) 棒(はしばみ)。酸温気(すくうんき)を益腸胃(ましてうい)を実(じつ)にす に 胡蘿蔔(にんじん)。甘(あまく)平(へい)時珍(じちん)の書(しよ)に気(き)を下(くだ)す故(かるがゆへ)に胸膈腸胃(むねてうい)ヲ利(り) し食(しよく)を進(すゝ)む然共(しかれども)便和(べんやは)らかきにハ無用(むよう) 辛螺(ふし)。甘(あまく)平(へい)眼(め)の痛胃脘胸痛疝気(いたみしもはらのいたみむねのいたみせんき)に吉併大病人(よししかしたいびやうにん)にハ無用(むよう) ほ 木瓜(ぼけ)。酸温湿気(すくうんしつけ)の痺(しびれ)脚気(かつけ)霍乱(くはくらん)の吐瀉転筋(としやてんきん)に吉(よし) 【左ページ二行目左ルビー 蘆葉 あしやは】 【左ページ十一行目左ルビー 木瓜 もくるは  転筋 こぶらかつり】 併(しかし)大病人(たいびやうにん)にハ無用(むよう) 防風(ぼうふう)。辛(からく)甘温(あまうん)一切風湿筋骨(いっさいふうしつすぢほね)の痛(いたみ)脾胃(ひい)を通(つう)じ眼(め)を明(あき)らかにす 地膚(ほうきじ)。苦(にがく)時珍(じちん)の書(しよ)に小便(せうべん)を通(つう)じ淋病悪瘡(りんびやうあくさう)に吉(よし) 海藻(ほだわら)。鹹寒腹中鳴(しほはやくかんふくちうなり)癭瘤(こぶ)あるひハ腫物(しゆもつ)に吉(よし)小便通(せうべんつう)ず 甄權(けん〳〵)の書(しよ)に疝気(せんき)に吉(よし) 杜鵑(ほとゝぎす)。甘冷痘瘡(あまくれいとうそう)の熱毒(ねつどく)或(あるひ)ハ虚邪(きよじや)を除(のぞ)き虫(むし)を殺(ころ)す 海扇(ほたてがい)。鹹寒諸毒(しほはやくかんしよどく)ヲ解(げ)し虫(むし)を殺(ころ)す然共(しかれども)腹瀉(はらくだり)又ハ無用(むよう) へ 糸瓜(へちま)。甘平熱(あまくへいねつ)を除(のぞ)き疝気(せんき)に吉乍去多(よしさりながらをゝ)くハ無用脚気(くようかつけ)を呼(よぶ) 水(みづ)ハ湯火傷(やけど)に吉顔(よしかほ)に点(てん)じて光(ひかり)を出(いだ)す と  蜀麥(とうきび)。甘少渋併内(あまくすこししぶくうち)を温(あたゝ)め腸胃(てうい)を渋(しぶ)らし霍乱(くわくらん)を止(や)む 橡(とち)。苦微温(にがくすこしうん)腸胃(てうい)ヲ厚(あつく)し下利(げり)を止(と)め人(ひと)を肥(こや)す併(しかし)/体働(たいはたらか)ざる人(ひと)にハ無用(むよう) 泥鰌(どじやう)。甘平(あまくへい)胃(い)を調(とゝの)へ消渇(しやうかつ)を止(や)め酒(さけ)の酔(ゑひ)を醒(さま)す 集簡方(しうかんほう)の書(しよ)に陽(やう)を補(おきな)ひ陽事(やうじ)を発(おこ)す 文鰩魚(とびうを)。干物(ひもの)にして甘鹹痔病(あまくしほはやくぢのやまひ)に吉婦人臨月(よしふじんりんげつ)に 食(くらへ)バ産安(さんやす)し然(しかれ)ども脾胃(ひゐ)弱(よは)き人(ひと)にハ無用(むやう) 紅鶴(とき)。甘微温(あまくすこしうん)婦人一切血病(ふじんいつさいちのやまひ)に吉(よし) 鵄(とび)。鹹平(しほはやくへい)頭風(づふう)の眩暈癇(めまいかん)の病(やまひ)に吉尤大病人(よしもつともたいびやうにん)ハ汁斗食(しるばかりしよく)す ち 萵苣若葉(ちさわかば)。微苦経脈(すこしにがくけいみやく)を通(つう)ず胸膈(むね)を開小便(ひらきせうべん)を利(り)す併眼病(しかしがんびやう)にハ不好(よろしからず) り 龍眼肉(りうがんにく)。甘酸温時珍(あまくすくうんじちん)の書(しよ)に脾胃(ひゐ)を益虚分(ましきよぶん)を補(おぎな)ふ ぬ 糠味噌湯(ぬかみそゆ)。温(あたゝ)め洗(あら)ふ時(とき)ハ都(すべ)て陰門陰嚢痒(いんもんいんのうかゆき)を治(ぢ)す る 涙竹(るいちく)。甘微寒水道(あまくびかんすいだう)を通(つう)じ消渇膈(しやうかつむね)を利(り)す熱(ねつ)を和(くは)し痰(たん)を消(け)す 併脾胃太陽(しかしひゐたいやう)の病(やまひ)と小児(せうに)にハ不好(よろしからず)本竹筍(ほんたけのこ)と孟宗にハ毒(どく)あり 【右ページ二行目左ルビー 防風 びやうぶぐた】 【右ページ四行目左ルビー 海藻 うみのも】 【左ページ七行目左ルビー 萵苣若葉 うりちさ】 【左ページ十一行目左ルビー 本竹筍 またけ】 を 膃肭臍(をつとせい)。甘(あまく)大温精冷(だいうんせいひへ)て腰(こし)の痛(いたむ)と弱(よはき)と小便頻(せうべんしげき)と陰不起(ゐんなへ)に吉(よし) わ 山葵(わさび)。辛(からく)温欝気(うんうつき)を開(ひら)き汗(あせ)を発(はつ)し風(かぜ)を追(お)ひ冷(ひへ) 気(け)を払(はら)ふ疝気(せんき)に吉(よし)魚鳥(うをとり)の毒(どく)を去(さる) 裙帯菜(わかめ)。甘鹹(あまくしほはやく)婦人帯下(ふじんこしけ)夢遺(ゆめにせいをもらす)と泄瀉吉(はらくだるによし) か 黄獨(かしう)。色白(いろしろき)ハ女(め)にして甘(あま)し黄(き)ハ男(を)にして苦(にが)く諸薬(しよやく)の 毒(どく)を消(け)す熱(ねつ)よりの咳(せき)を去(さ)り腸胃(てうい)を厚(あつく)す 獺(かはうそ)。甘鹹(あまくしほはやく)寒風水(かんふうすい)の毒(どく)をさる又(また)膽(きも)ハ労症(らうしやう)によし 牡蛎(かき)。甘温灸食(あまくうんあぶりしよく)して肌(はだへ)を細(こまか)にす煑(に)て喰(くへ)バ虚損(きよそん)を 補(おぎな)ふ又/痰獨酒後(たんどくしゆご)の熱(ねつ)を解(げ)す 鰹節(かつをぶし)。甘(あまく)微温気(びうんき)を廻(めぐ)らし腸胃(てうい)を補(おぎな)ふ筋骨(すじほね)を盛(さかん)にす 鳰(かいつぶり)。甘(あまく)平酒(へいさけ)を醒(さま)し痔(ぢ)によし 鳧(かも)。甘涼(あまくすゞしく)胃(い)を平(たいら)にして食(しよく)を消(け)す日華(につくは)に曰(いはく)臓虫(ざうちう)を殺(ころ)し 水腫年久敷瘡(すいしゆとしひさしきかさ)に吉(よし)然(しかれ)ども木耳(きくらげ)入(いれ)て喰(くらふ)べからず 烏鴉(からす)。酸渋平虫(すくしぶくへいむし)を殺(ころ)し痢疾(りしつ)によし嘉祐本草(かゆうほんざう)に有(あり) 五/労(らう)。七/傷吐血咳嗽(しやうとけつがいそう)によし よ 薏苡仁(よくいんにん)。甘(あまく)微寒風湿(びかんふうしつ)にて痺(しびれ)或(あるひ)ハ筋骨引張伸(すじほねひつはりのび)ざるに よし梅師方(ばいしほう)が曰(いはく)肺塞(はいふさ)ぎ咳嗽(がいそう)膿血(うみち)又上気(じやうき)に吉(よし) 鶏腸菜(よめな)。甘苦平(あまくにがくへい)小便(せうべん)を利(り)し五淋痢病(ごりんりびやう)によし 一切(いつさい)の腫物痰毒痒(しゆもつたんどくかゆ)く痛(いたむ)に吉(よし) た 秈米(たいとうこめ)。少甘(すこしあまく)温気(うんき)を益内(ましうち)を温(あたゝ)め脾胃(ひゐ)を和(くは)し養(やしな)ふ 湿(しつ)を去故湿(さるゆへしつ)よりの泄瀉(くだり)を止(と)む 蘿蔔(だいこん)。葉(は)ハ温(うん)にして内(うち)を和平(くはへい)を根(ね)ハ痰癖(たんへき)を去人(さりひと)を 【右ページ五行目左ルビー 黄独 いしのるい】 肥(こや)す麺毒(めんどく)を解(げ)し風熱(ふうねつ)の邪気(じやき)を去(さる)併病人多(しかしびやうにんおゝ)く喰(くへ)バ 少(すこ)し腹張平人(はらはるへいにん)ハ中気(ちうき)の不足(ふそく)を補(おぎな)ひ食(しよく)を消(け)し魚腥(なまぐさき)を 去(さる)然(しかれ)共/都(すべ)て蘿蔔(だいこん)処々(しよ〱)より七/品出(しないづ)る右冬蘿蔔(みぎふゆだいこん)の事(こと) なり乍去(さりながら)地黄(ぢわう)と蜜(みつ)を食(しよく)して前後(ぜんご)半時(はんとき)用捨(やうしや)有(あつ)て吉(よし) 扨(さて)又/生(しやう)にて口(くち)に含(ふく)む時(とき)ハ煙(けふり)にむせる難(なん)を遁(のが)る依(よつ)て出火(しゆつくは)の 砌(みぎり)ハ干蘿蔔(ほしだいこん)にても貯(たくは)へ置事吉(おくことよし)猶又生絞汁(なをまたしぼりしる)ハ物付(ものつい)たる血(ち)を落(おと)す 橙(だい〱)。酸寒士良(すくかんしりやう)に曰(いはく)風気悪心(ふうきおしん)を去(さる)瘰癧(るいれき)に吉(よし)魚蟹(うをかに)の毒(どく)を消(け)す 蒲公英(たんぽ〱)。甘少(あまくすこし)苦食毒(にがくしよくどく)を解(げ)すが故(ゆへ)滞気(たいけ)を散(さん)じ熱毒(ねつどく)を化(くは)す胃中(いちう)の 邪気(じやき)を除(のぞ)き痰膈(たんかく)を利(り)す水腫(すいしゆ)に吉然共(よししかれども)多(おゝ)く喰(しよく)する事(こと)ハ好(この)まず 黄瓜菜(たびらこ)。甘(あまく)微苦(びにがく)寒結気(かんけつき)を通(つう)じ腸胃(てうい)を利(り)す 鷹(たか)。未(いまだ)予(よ)が味不知野(あぢしらずや)狐邪魁(こじやかい)に吉(よし) 鱮魚(たなご)。甘(あまく)平脾胃(へいひゐ)に益(ゑき)あり 章魚(たこ)。甘(あまく)酸醤油(すくしやうゆ)と酒(さけ)を入(いれ)煑(に)て脾胃(ひゐ)に障(さは)らず痔疾吉(ぢのやまひよし)又/気血(きけつ)を得(ゑ)る れ 蓮根(れんこん)。甘(あまく)平皮(へいかは)ハ少(すこ)し渋(しぶ)き心有熱(こゝろありねつ)し渇血(かはきち)の滞(とゞこふり)を散(さんじ)酒毒(しゆどく)に吉(よし) そ 蠺豆(そらまめ)。甘(あまく)微寒皮(びかんかは)ハ脾胃(ひゐ)を荒(あら)す又/小児(せうに)にハ猶不好肉(なをこのまずにく)ハ痰(たん)に吉(よし) つ 白柿(つるしがき)。甘(あまく)平孟説(へいもうせつ)の書(しよ)に虚労(きよらう)の不足(ふそく)を補(おぎな)ひ脾胃(ひゐ)の気(き)に吉(よし) 落葵(つるむらさき)酸寒熱(すくかんねつ)を散(さん)じ大小腸(だいせうてう)を利(り)す ね 鼠甘(めづみあまく)。熱皷脹水腫(ねつこてうすいしゆ)雀目(とりめ)小児疳(せうにかん)の病(やまひ)によし な 刀豆(なたまめ)。干(ほし)たるハ甘(あまく)平腸胃(へいてうゐ)を利(り)す故(ゆへ)吃逆(しやくり)を止(とゞ)む 腎(じん)を益(まし)元気(げんき)を補(おぎな)ふに付(つけ)痰(たん)に吉(よし)尤生(もつともなま)ハ不好(このまづ) 薺菜(なづな)。少苦淡(すこしにがくあは)し肝(かん)を利(り)し内(うち)を和(くは)する故(ゆへ)眼(め)を明(あき)らかにす 鯰(なまづ)。甘(あまく)温蘇恭(うんそきやう)の書(しよ)に小便(せうべん)を通(つう)じ水腫(すいしよ)に吉(よし)瘧(おこり)を治(ぢ)す 【右ページ十行目左ルビー 黄瓜菜 ほとけのざ】 然(しかれ)ども此魚目(このうをめ)と髭(ひげ)と背(せな)赤(あか)きと頤(おとがい)な起ハ大毒(だいどく)あり能(よく)ゑらみて吉(よし) 鱏(なよし)。胃(い)を開(ひら)き五臓(ござう)を利(り)し肉(にく)を肥(かや)す ら 落花生(らくくはせい)。甘香少辛(あまくかうばしすこしからし)肺(はい)を潤(うるほ)し脾(ひ)を伸(のぶ)る炒(いり)て食(しよく)す 臘雪水(らうせつすい)。甘寒雪(あまくかんのゆき)其侭(そのまゝ)に壷(つぼ)に入貯(いれたくは)へ置(おけ)バ数月(すげつ)有傷寒時(ありしやうかんは) 行病熱(やりやまひねつ)にて喝(かは)くの薬水(くすりみづ)にして吉(よし)又/化粧水(けしやうみづ)にして紛毒(ふんどく)を除(のぞ)く む 無不愈(むふゆ)。苦平(にがくへい)砂糖漬(さとうづけ)にして痰(たん)を消渇(けしかはき)を止肺(とめはい)の臓(ざう)の病(やまひ)に吉(よし) う 粳米(うるのこめ)。甘平精気(あまくへいせいき)を益(まし)胃(い)を和(くは)す肌肉筋骨(きにくすじほね)を強(つよ)くす 時珍(じちん)の書(しよ)に気血(きけつ)の脈(みやく)を通(つう)じ五臓(ござう)を和(くは)すと有然(ありしかれ)ども 考(かんがふ)るに新米(しんまい)と焼米抔(やきごめなど)ハ病人(びやうにん)と小児(せうに)と脾胃(ひい)弱(よは)き人(ひと) と都(すべ)て身(み)の働(はたら)きなき人(ひと)にハ大(おゝき)に悪敷身(あしくみ)の働(はたら)きなき 人(ひと)と病人(びやうにん)とにハ越加賀米(こしかゞまい)能▢食致(しよくいた)し候ハゞ前(ぜん)の効(こう)有(あり) 毎日(まいにち)三/度(ど)の事(こと)にして人命相続(にんめいそうぞく)の第(だい)一/成(なる)もの故(ゆへ)能々(よく〱) 吟(ぎん)じ大切(たいせつ)に致事吉(いたすことよし)中国米(ちうごくまい)ハ甚(はなは)だ味吉然(あじよししかれ)ども過食(くはしよく) 有時(あるとき)ハ脾胃(ひい)に滞食(とゞこふりしよく)癪(しやく)となる無病(むびやう)にして大(おゝき)に働人(はたらくひと)ハ 不苦(くるしからず)殊更(ことさら)米(こめ)ハ三国(ごく)無双(ぶさう)の貴物(きぶつ)故/唐土天竺(からてんじく)蛮国(ばんこく)に 至(いた)るまで日本(につぽん)の米(こめ)を大(おゝき)に称美(しやうび)す猶又辺鄙抔(なをまたかたほとりなど)にハ末(まつ) 期(ご)に是(これ)を煎(せん)じ用(もち)ひ病(やまひ)平愈(へいゆ)する事あり右様(みぎやう)の意味(いみ) を知(し)らず食(しよく)に向(むか)ひ不足(ふそく)を云(いふ)冥加(みやうが)しらず有必其身(ありかならずそのみ) 繁昌(はんじょやう)にハ至(いた)らず先祖(せんぞ)より受得(うけゑ)たる身上傾(しんしやうかたふけ)る者多(ものおゝ)し 有難(ありがたく)も天照皇太神宮(てんしやうくはうだいじんぐう)の御教置(おんおしへおき)ゐふ所(ところ)の食物(しよくもつ)なり 其恩義(そのおんぎ)を受(うけ)一/命(めい)相続(そうぞく)乍有(ありながら)我勝手(わがかつて)に引付外(ひきつけほか)の 道斗(みちばかり)を願(ねが)ふ事利(ことり)に当(あた)らず筋違故(すじちがひゆへ)何程祈(なにほどいの)る共利益(ともりやく) 【右ページ三行目左ルビー 落花生 とうじんまめ】 【右ページ四行目左ルビー 臘雪水 かんのゆきのみづ】 【右ページ六行目左ルビー 無不愈 てんもんどう】 あらん神国(しんこく)の土地(とち)に住内(すむうち)ハ元(もと)を知(しつ)て枝葉(ゑだは)をつたふ事/吉(よし) 五加(うこぎ)。苦温(にがくうん)肌肉(きにく)の風湿(ふうしつ)を去(さる) 鰻(うなぎ)?魚。甘平(あまくへい)五/痔瘡瘰(ぢかさのるい)に吉諸虫(よしもろ〱のむし)を殺(ころ)す併黒斑(しかしまだら)の 魚(うを)ハ大毒有腹白(だいどくありはらしろ)く小(ちいさ)き魚(うを)ハ効(かう)なし中成青(ちうなるあを)きすゞやか 成魚(なるうを)が味(あじ)も吉効(よしかう)も有孰(ありいづれ)も銀杏(ぎんなん)と同食(どうしよく)ハ無用猶又(むやうなをまた) 八ツ目鰻(めうなぎ)?魚/小児疳(せうにかん)の病(やまひ)と雀目(とりめ)に吉又疳(よしまたかん)の虫(むし)を殺(ころ)す 鶯(うぐひす)。甘温下焦(あまくうんげしやう)を温(あたゝ)め陽道(やうどう)を盛(さか)んにす ゐ 陰陽水(いんやうすい)。和平沸湯(わへいにへゆ)と井華水(せいくはすい)と半分(はんぶん)ヅゝ合(あい)す霍乱(くはくらん) 吐瀉(としや)に吉(よし)尤(もつとも)塩(しを)を入多(いれおゝ)く用(もちゆ)る時(とき)ハ食(しよく)の滞(とゞこふり)を吐(と)す の 鶎(のがん)。甘平虚人(あまくへいきよじん)を補(おぎな)ひ風痺(ふうひ)の気(き)を去(さる) お 温泉(おんせん)。日本(につほん)に涌出(わきいづ)る所(ところ)七十余ケ所有(しよあり)併有馬(しかしありま)がよし 其外色々名湯有(そのほかいろ〱めいたうあれ)ども病人(びやうにん)に応(おゝ)じ撰(ゑらむ)が吉(よし) 嗢青(おうせい)。微温(びうん)。歯(は)を堅(かた)む生(なま)にてもみ其汁虫(そのしるむし)のさしたる所(ところ)へ塗(ぬれ)バ毒(どく)を去(さる) く 栗(くり)。甘少鹹温(あまくすこししほはやくうん)。煑(に)るか灸(やき)て食(しよく)する時(とき)はハ気(き)を塞(ふさぐ)又小児(またせうに) に悪敷干(あしくほし)て食(しよく)すれば気(き)を下(くだ)し補益有(ほゑきあり)甲州(かうしう)より打栗(うちぐり) 出(いづ)る気(き)を塞事少(ふさぐことすくなし)又/生(なま)にて摺(すり)太白砂糖(たいはくさとう)を未(こ)にして合(あは)せ 寒晒(かんざらし)の団子(だんご)の衣(ころも)にして食(しよく)する時(とき)ハ気(き)を廻(めぐ)らし腸胃(てうゐ)を厚(あつく) す思邈(しはく)の書(しよ)に生(なま)にて喰(くら)へバ腰足叶(こしあしかな)ひ難(がた)きに益有(ゑきあり) 枸杞(くこ)。甘微(あまくび)苦涼(にがくすゞし)。五/労(らう)七/傷(しやう)を補(おぎな)ひ大明(たいめい)に曰(いはく)皮膚骨節風熱(ひふほねふしふうねつ)を消(けす) 烏芋(くろぐわい)。甘冷滑(あまくれいくはつ)。汪機(わうき)の書(しよ)に宿食(しゆくしよく)を消(け)し癪(しやく)を削(けづり)血淋(けつりん)下血消渇(げけつしやうかつ)に吉(よし) 葛(くず)。甘平(あまくへい)。熱(ねつ)を除胃(のぞきい)を開(ひら)き渇(かはき)を止(と)め二/便(べん)の不正(たゞしかざる)を止(と)む酒(しゆ) 毒(どく)を消(け)す然共(しかれども)生麩葛(しやうふくず)ハ其(その)効(かう)なく却(かへつ)て脾(ひ)を燥(かはか)す 【右ページ八行目左ルビー 井華 くみたてのみつ】 【左ページ二行目左ルビー 嗢青 はこべ】 水母(くらげ)。鹹(しほはやく)温(うん)。西国(さいこく)の産吉(さんよし)婦人労損(ふじんらうそん)血癪(けつしやく)帯下(たいげ)小児(せうに)の風湿痰毒(ふうしつたんどく)に吉(よし)。 萓草(くわんざう)。甘冷(あまくれい)。小便赤(せうべんあか)く渋(しぶ)るを治(ぢ)す身(み)の熱(ねつ)を除(のぞ)き食(しよく)を消(け)す や 野薤(やがい)。少辛苦臭(すこしからくにがくくさし)天行物(はやりもの)する時少(ときすこ)しヅヽ日々(にち〱)食(しよく)して其日(そのひ)ハ受(うけ)ず 羊肉(やうにく)。甘熱(あまくねつ)。血気(けつき)を益(ま)し陽(やう)を盛(さか)んにし胃(い)を開(ひら)く ま 松蕈(まつたけ)。甘平(あまくへい)小便赤(せうべんあか)く渋(しぶ)り産後児枕痛(さんごあとはらいたみ)に吉(よし)併古(しかしふるき) 茸(たけ)ハ大(おゝき)に酔(ゑふ)もの也/其毒(そのどく)を消(けす)にハ豆腐(とうふ)が吉扨又(よしさてまた)早松(さまつ) 時不成(ときならざる)ハ無用善(むやうよ)き茸迚(たけとて)も病人(びやうにん)にハ汁斗(しるばかり)用(もち)ゆ け 蕎麦粉大便結(けうばくふんだいべんけつ)するに吉併通(よししかしつうじ)候ハヾ無用其外(むやうそのほか)痘瘡湯火傷(ほうさうやけど)に点(てん)じて吉(よし) ふ 覆盆子(ふくぼんし)。甘平(あまくへい)。虚(きよ)を補(おぎな)ひ陰(いん)を強(つよ)くし肌(はだへ)を潤(うるほ)す 葡萄(ぶどう)。甘平(あまくへい)。湿(しつ)にて筋骨痺(すじほねしび)るゝに益有(ゑきあり)又甲州(またかうしう)より干(ほし) 葡萄(ぶどう)とて出(いづ)る数月貯(すげつたくは)へ置(おけ)り至(いたつ)て甘(あま)く化粧(けしやう)の水(みづ)に致(いた)し 能延(よくの)び光沢(つや)を出(いだ)す猶又(なをまた)甄權(けん〱)の書(しよ)に腸胃(てうい)の水(みづ)を除(のぞ)き麻痺(しびれ)に吉(よし) 蕗(ふき)。苦少辛温(にがくすこしからくうん)。咳(せき)の逆上痰喘喉痺驚癇(のぼせたんぜんこうひきやうかん)の類(るい)に益(ゑき)あり 梟(ふくろ)。甘温(あまくうん)。甚(はなは)だ味(あじは)ひ微(び)にして障(さはり)なし又/効(かう)もなし 麩(ふ)。甘涼内(あまくすゞしくうち)を緩(ゆる)くし気(き)を益熱(ましねつ)を解労瘵(けしらうさい)にも益(ゑき)あり併色々(しかしいろ〱) 名麩(めいふ)より平麩(ひらふ)を土佐鰹節(とさかつをぶし)薄(うす)く掻(かき)薄醤油(うすしやうゆ)を以(もつ)て煑(に)るが吉(よし) こ 牛房(ごほう)。甘冷(あまくれい)。皮目赤(かはめあか)く膚能赤土(はだへよくあかつち)より生(しやう)ずるものを吉(よし)とす 不然(しからず)バ腹(はら)の脹事(はること)あり傷寒(しやうかん)時気(じき)風腫(ふうしゆ)の水(みづ)を追(お)ひ腫(はれ)を消(けし) 尤(もつとも)種斗(たねばかり)を呑(のん)で乳穴(ちあな)を明(あけ)る効(かう)あり 氷(こほり)。寒中(かんちう)に生(しやう)ずるが吉甘寒(よしあまくかん)。傷寒(しやうかん)陽毒厳敷(やうどくきびしき)に一/塊(かたまり)を乳(ちゝ) と乳(ちゝ)との真中(まんなか)を檀中(だんちう)と云(いへ)り其穴(そのけつ)に置(おく)が吉吞(よしのん)でハ酒毒(しゆどく)を解(げ)す 昆布(こんぶ)。鹹平水腫(しほはやくへいすいしゆ)癭瘤(ゑいりう)都(すべ)て血気癪(けつきしやく)を破(やぶ)る又(また)根気胸(こんきむね)の 【右ページ一行目左ルビー 帯下 こしけ】 【右ページ三行目左ルビー 野薤 にら】 【右ページ四行目左ルビー 羊肉 ひつじ】 【右ページ八行目左ルビー 蕎麦粉 そばこ 】 焦燥(やけ)に吉然(よししかれ)ども腹中(ふくちう)へ入(いり)て大(おゝき)に倍(ふへる)ものにて脾(ひ)に溜(たま)り 悪敷(あしき)が故(ゆへ)病人(びやうにん)小児(せうに)にハ無用(むやう) 五位鷺(ごゐさぎ) 甘鹹(あまくしほはやし)灸食(きしよく)せバ魚蟹(うをかに)の毒(どく)を解(げ)す 胡麻(ごま)。甘平(あまくへい)。大白(たいはく)か極黒(ごくくろ)く大(おゝき)なるが吉黄色交(よしきいろまじは)り有(あれ)バ 悪敷生(あしきなま)にて食(しよく)するも不好焙(よろしからずほう)ずるが吉気力(よしきりよく)を益肌(ましはだへ)肉を 長(てう)ず耳(みゝ)と眼(め)に益有多(ゑきありおゝ)く食(しよく)する時(とき)ハ却(かへつ)て髪(かみ)を薄(うすく)し便(べん)を結(けつ)す 江 塩梅(ゑんばい)。酸鹹塩(すくしおはやくしほ)を出(いだ)し土佐鰹節(とさかつほぶし)を入(いれ)煑(に)て病人(びやうにん)に 吉時行物(よしはやりもの)の時早朝茶(ときさうてうちや)に入茶(いれちや)を服(ふく)したる日(ひ)はハ諸(しよ) 邪(じや)を受(うけ)す不浄(ふしやう)をはらふ て 田螺(でんら)。甘少苦(あまくすこしにがく)。能湯出去(よくゆでさり)土佐鰹節(とさかつほぶし)を入醤油(いれしやうゆ)にて 煑(に)て湿(しつ)と熱(ねつ)を除(のぞ)く消渇(しやうかつ)を止酒(とめさけ)の酔(ゑひ)を醒(さま)す大小便(だいせうべん) を利(り)し脚気黄疸眼(かつけわうだんめ)の痛(いたみ)に吉生(よしなま)にて?(すり)腋臭(わきが)痔(ぢ) 瘡(さう)に点(てん)ず干末(ほしまつ)して水(みづ)の替(かは)りを助(たす)く あ 赤小豆(あづき)。甘鹹平(あまくしほはやくへい)。水腫(すいしゆ)を解(げ)し小便(せうべん)を利(り)し吐逆(とぎやく)を止(と)む消渇(しやうかつ)に吉(よし) 紫苔(あまのり)。甘寒(あまくかん)。孟説(もうぜつ)の書(しよ)に熱気(ねつき)咽塞(のんどふさが)ると。癭瘤(こぶ)に吉(よし) 蚫(あはび)。鹹平(しほはやくへい)。外障内障(うはひそこひ)の翳(かすみ)に吉精(よしせい)を益五淋(ましごりん)を通(つう)ず 尤(もつとも)よき醤油(しやうゆ)をもつて煑(に)るがよし ?(あかがい)。甘平(あまくへい)。五臓(ござう)を利(り)し胃(い)を強(つよ)くし内(うち)を温(あたゝ)め食(しよく)を消(け) す又陽(またやう)を起(おこ)す然(しかれ)ども薄味噌汁(うすみそしる)が吉(よし) 飴餹(あめ)。甘熱虚(あまくねつきよ)を補(おぎな)ひ渇(かはき)を止(と)め気力(きりよく)を補(おぎな)ひ咽(のんど)の 痛痰咳(いたみたんせき)に益(ゑき)あり併(しかし)過食(くはしよく)ハ却(かへつ)て脾(ひ)を燥(かはか)す 甘酒(あまざけ)。甘温(あまくうん)。脾胃(ひゐ)を養(やしな)ひ内(うち)を温(あたゝ)め然(しかれ)ども多(おゝ)くハ不好病人(よろしからずびやうにん)ハ 半碗(はんわん)ヅゝ常人(つねひと)ハニ/碗(わん)を越(こへ)ず食(しよく)して直(じき)に臥事(ふすこと)ハ無用(むよう)生姜絞汁(しやがしぼりしる)入(いれ)て服(ふく)するがよし 蒼鷺(あをさぎ)。甘平(あまくへい)。汗(あせ)を止(と)むもの故(ゆへ)発散(はつさん)の薬腹(くすりふく)する人(ひと)ハ無用小水(むやうせうすい)を 通(つう)ず依之(これによつて)盜汗(とうかん)又(また)ハ汗多(あせおゝ)く出(いづ)るによし 方頭魚(あまだい)。甘鹹淡(あまくしほはやくあはし)。一/夜薄塩致(やうすしをいた)し焼(や)き肉所(にくどころ)がよし 或(あるひ)ハ薄味噌汁(うすみそしる)も病人(びやうにん)に苦敷(くるし)からず 赤魚(あこ)。甘平(あまくへい)。脾胃(ひい)を調(とゝの)へ気血(きけつ)を益食(まししよく)を進(すゝ)め瀉(くだ)りを止(と)む 海糠(あみ)魚。甘温(あまくうん)婦人産門(ふじんさんもん)破(やぶ)れ或(あるひ)ハ腫(は)れ愈(いへ)ざるを治(ぢ)す余病(よびやう)にハ不好(よろしからず) さ 砂糖(さとう)。黒(くろ)きハ脾(ひ)を燥(かはか)す氷(おほり)ハ諸薬(しよやく)に禁事(いむこと)有至(ありいたり)て太白(たいはく)がよし 甘寒(あまくかん)。心腹熱(しんふくねつ)し脹(はり)。口渇(くちかは)き酒毒(しゆどく)に吉(よし)湯(ゆ)に入(いれ)てハ下焦(げしやう)を温(あたゝ)め淋(りん) 病(びやう)に吉(よし)併多(しかしおゝ)くハ却(かへつ)て脾(ひ)を燥(かはか)す少(すこ)しハ脾(ひ)を養(やしな)ひ潤(うるほひ)を生(しやう)ず 酒(さけ)。苦甘辛(にがくあまくからく)。少寒(すこしかん)にして大熱薬勢(だいねつやくせい)能廻(よくめぐ)る気血(きけつ)を廻(めぐ)らし 百邪寒気(ひやくじやかんき)風気穢愁(ふうきけがれうれひ)を防(ふせ)ぎ追(お)ふ水道(すいだう)を温(あたゝ)む五体(ごたい)に 陽気(やうき)を廻(めぐ)らし肌肉(はだへ)を順(じゆん)ず神(じん)と膽(きも)を盛(さか)んにす少(すこ)しヅゝ 用(もち)ゆれバ延命(ゑんめい)の気有多(きありおゝ)く呑(のめ)バ心神(しん〲)気血(きけつ)皮膚(ひふ)を損(そん)ず 癇立(かんたつ)て怒(いか)る故諸病(ゆへしよびやう)を生(しやう)ず又命(またいのち)を縮(ちゞ)む是至(これいたつ)て効毒(かうどく) 早(はや)きもの故(ゆへ)猶更撰事吉(なをさらゑらむことよし)上品(じやうひん)と云(いふ)ハ至(いたつ)て古(ふる)く色濃(いろこ) からずして木香灰(きがはい)の気(き)なく中品(ちうひん)ハ年(とし)を越色濃(こへいろこ)からず 効薄(かううす)し下品(げひん)ハ新酒或(しんしゆあるひ)ハ色至(いろいたつ)て薄(うす)く然(しか)も潤(うるほ)ひ少(すくな)しまた 温(あたゝめ)て淡気出(あはのきいづ)る直様頭(すぐさまかしら)へ行下(ゆきしも)へ廻(めぐ)らざる故(ゆへ)小便(せうべん)近(ちか)く毒(どく) 多(おゝ)し扨又味(さてまたあぢは)ひ辛(から)きハ気(き)を下(くだ)す甘(あま)きハ緩(ゆる)くす厚(あつ)く意(い) 地(ぢ)あるハ熱毒有和(ねつどくありやは)らかきハ小便(せうべん)を利(り)す熱酒(あつかん)ハ肺(はい)を破(やぶ) 温酒(あたゝめさけ)ハ内(うち)を和(くは)す冷酒(ひやざけ)ハ脾胃(ひい)を冷(ひや)す 酒糟(さけのかす)。甘辛(あまくからく)。冷気(れいき)を除(のぞ)き内(うち)を大(おゝき)に温食(あたゝめしよく)を消(け)し草菜(さうさい)の毒(どく)を觧(けす) 獼猴(さる)。酸平(すくへい)。然(しかれ)ども人肉(にんにく)の様(やう)に口(くち)の内(うち)にて増(ふへ)ず久瘧(きうぎやく) 瘴瘧(しやうぎやく)に吉(よし)時珍(じちん)の書(しよ)に瘴疫(しやうゑき)に吉(よし) 鷺(さぎ)。甘平(あまくへい)鹹汪潁(しほはやくゑやうゑい)の書(しよ)に虚痩脾(きよそうひ)を補(おぎな)ひ自汗盜汗(あせおこりねあせ)を止(と)む 鱵魚(さんしやううを)。甘平(あまくへい)。腸胃(てうい)の癪熱(しやくねつ)肝腎(かんじん)を補(おぎな)ひ筋骨強(すじほねつよく)し疫病(やくびやう)に吉(よし) 紅豆(さゝげ)。甘鹹平(あまくしほはやくへい)。時珍(じちん)の書(しよ)に内(うち)を利(り)し気(き)を益腎(ましじん)と 胃(い)とを調(とゝの)へ消渇(しやうかつ)吐逆(とぎやく)泄痢(くだりびやう)によし き 急流水(きうりうすい)。順汲便通(ながれにそひくむべんつう)ぜざる諸薬(しよやく)に用(もち)ひ又/嘔吐薬(しよくかへすくすり)に用(もち)ゆ 逆汲瀉(ながれさかにくむくだ)りを止(とむ)る薬(くすり)をせんじ用(もち)ゆ 金橘(きんかん)。肉(にく)ハ余(あま)り不好(よろしからず)皮(かは)が吉(よし)甘平(あまくへい)。気(き)を下(くだ)し膈(むね)を 快(こゝろよく)す渇(かは)きを止(と)め酒(さけ)の酔(ゑひ)を醒(さま)す 菊花(きくくは)。甘苦(あまくにがく)。少辛(すこしからく)。湯(ゆ)を通(とう)せバ甘(あま)く淡(あは)し。黄色(きいろ)が吉(よし)外(ほかの) 色(いろ)ハ悪敷諸風邪(あしくしよふうじや)の頭痛眼目(づづうがんもく)の痛(いた)み都(すべ)て上部(じやうぶ)の熱(ねつ)に吉(よし) ゆ 柚(ゆ)。酸寒(すくかん)。食(しよく)を消(けす)酒毒(しゆどく)を觧(げ)す懐妊(くはいにん)の不食(ふしよく)に吉(よし) め 蘘苛(めうが)。甘微温(あまくびうん)。欝(うつ)を開(ひら)き食(しよく)を進(すゝ)め邪気(じやき)の病(やまひ)を除(のぞ)く み 海松(みる)。甘鹹寒(あまくしほはやくかん)。蔵器(ざうき)の書(しよ)に水腫(すいしゆ)に吉(よし)併考(しかしかんがふ)るに脾胃(ひゐ)弱人(よはきひと)にハ不好(よろしからず) 味噌(みそ)。甘鹹(あまくしほはやく)。諸魚(しよぎよ)の毒(どく)を觧(げ)し腸胃(てうい)を和(くは)し不足(ふそく)を補(おぎな)ふ 然共至(しかれどもいたつ)て濃(こ)きハ却(かへつ)て脾胃咽(ひゐのんど)を渇(かはか)す病人(びやうにん)ハ薄味噌汁(うすみそしる)か吉(よし) 生味噌(なまみ)ハ痞(つかへ)を司(つかさど)る後藤薄味噌汁(ごとううすみそしる)ハ脾(ひ)を養(やしな)ふ 鷦鷯(みそさざい)。甘温(あまくうん)。痰膈(たんかく)に吉(よし)又陽事(またやうじ)を起(おこ)す併病人(しかしびやうにん)にハ不好(よろしからず) し 白小豆(しろあづき)。甘平(あまくへい)。内(うち)を調(とゝの)へ十二/経(けい)の脈(みやく)を介腸胃(たすけてうい)を温(あたゝ)む 紫蘇(しそ)。少辛温(すこしからくうん)。内(うち)を補(おぎな)ひ心腹脹満(しんぷくてうまん)霍乱転筋(くはくらんこぶらがへり)に吉(よし)魚毒(ぎよどく)を觧(げ)す 新汲水(しんきうすい)。繁花(はんくは)ハ早朝(そうてう)に汲(くむ)を唱(とな)ふ本来(ほんらい)ハ山(やま)の井吉(ゐよし)諸薬(しよやく)に用(もちひ)て益有(ゑきあり) 鷸(しぎ)。種類多(しゆるいおゝ)し大抵(たいてい)ハ同様(どうやう)にて甘温(あまくうん)。虚(きよ)を補(おぎな)ひ大(おゝき)に温(あたゝ)む 食塩(しほ)。辛大鹹本経(からしおゝきにしほはやくほんけい)に曰(いわく)毒(どく)を解(け)す血(ち)を涼(すゞし)く致(いた)し燥(かはき)を潤(うるほ)し又痛(またいたみ)を止(とむ)るに益有(ゑきあり) ゑ 海鶏(ゑび)。甘鹹(あまくしほはやく)。尾先(おさき)より三/寸(ずん)の内(うち)ハ毒(どく)あり腹持(はらもち)の間(あいだ) 白濁(はくだく)膏淋(かうりん)陰茎(いんきやう)渋痛(しぶりいたむ)に益有(ゑきあり)重病人(ぢうびやうにん)にハ不好(このまず) ひ 菱実(ひし)。甘平生(あまくへいなま)にて食(しよく)すれバ陰痿(ゐんなへ)の毒有(どくあり)煑(にれ)バ 内(うち)を安(やす)くし消渇酒毒(しやうかつしゆどく)を觧(げ)す又/食(しよく)の介(たすけ)として飢事(うへること) 少(すくな)し久敷(ひさしく)食(しよく)の介(たすけ)と成(なる)が故(ゆへ)也/尤冷症(もつともひへしやう)にハ不好(このまず) 醤(ひしを)。甘温内(あまくうんうち)を利(り)し気(き)を下(くだ)し食(しよく)を進(すゝ)む 告天子(ひでり)。微甘(びかん)虚(きよ)を補(おぎな)ふ も 海薀(もぞく)。甘鹹寒(あまくしほはやくかん)癭瘤(ゑいりう)血気痰(けつきたん)を觧(ほど)く併大(しかしたい) 病人(びやうにん)に用捨(やうしや)ありてよし 餅(もち)。糯米入(もちごめいる)にハあらず古(ふる)き粳米斗(こうべいばかり)を蒸上(むしあげ)其所(そのところ)へ 湯(ゆ)をかけ候ハゞ粳米(うるこめ)の餻(もち)となる甘温(あまくうん)。脾胃(ひゐ)を補(おぎな)ふに 益(ゑき)あり内(うち)を和(くは)す病人(びやうにん)に構(かまは)ず 百舌鳥(もず)。少苦平(すこしにがくへい)。小児魃病(せうにおくみじけ)に吉(よし)又舌廻(またしたまは)り兼発云(かねものいは)せざるに益有(ゑきあり) 藻魚(もうを)。甘平(あまくへい)。効(かうあ)なく毒(どく)なく病人(びやうにん)に苦(くる)しからず せ 鶺鴒(せきれい)。甘冷陽(あまくれいやう)を介精(たすけせい)を益(ます)故(ゆへ)陰事(いんじ)を起(おこ)す す 酢(す)。数品(すひん)を以(もつ)て是(これ)を造(つく)る下品(げひん)ハ悪物寄(あしきものよせ)て造(つくる)が故(ゆへ) 効(かう)なくして毒有(どくある)中品(ちうひん)ハ柚酢(ゆず)と云(いふ)て色々(いろ〱)酸(す)き実(み)を以(もつ)て 造(つく)る法(ほう)あり至(いたつ)て酸(す)く味(あぢは)ひ宜敷(よろしく)然(しかれ)ども癇気(かんき)を呼出(よびだ)す が故(ゆへ)病人(びやうにん)にハ無用上品(むやうじやうひん)ハ善(よ)き米(こめ)を以(もつ)て造(つく)り上(あげ)る其(その) 古(ふる)きを吉(よし)とす病人(びやうにん)に構(かま)ハず又諸毒(またしよどく)を消(け)し諸痛(しよつう)を治(ぢ)す。 右之通証(みぎのとをりしる)すと雖(いへども)。症分(しやうぶん)に応(おう)じ十人に壱人/違(ちが)ふ事(こと)あり。其(その) 時(とき)ハ医師(いし)に問(と)ふて吉(よし)。併(しかし)智之浅(ちのあさ)き医(い)ハ。飲食(いんしよく)に不構(かまはず)。依之(これによつて) 急難来(きうなんきた)る事有(ことあり)。又臆病(またおくびやう)なる医(い)ハ。諸物(しよぶつ)を留(とめ)る故(ゆへ)。返(かへ)ツて 元気(げんき)を失(うしな)ひ。薬力廻(やくりきまは)らず。物忘多(ものわすれおゝ)き医(い)ハ。跡(あと)にて思(おも)ひ出(だ)し 後悔仕(こうくはいす)る事(こと)あり。扨々(さて〱)身業(みわざ)にあらねど。能勘弁致(よくかんべんいた)せバ。余(あま)り 可好渡世(このむべきとせい)にあらず。乍去(さりながら)智恵(ちゑ)あらバ。人(ひと)の苦(くるしみ)を介(たすけ)る故官(ゆへくわん)にも 早(はや)く昇(のぼ)り。何程(なにほど)貴人(きにん)にても間近(まぢか)く寄(よ)り。結構成家業(けつこうなるかぎやう)なり。 故(かるがゆへ)に猶(なを)六(むつ)ヶ敷(しく)智(ち)の薄(うす)き人(ひと)ハ慎(つゝしむ)べし。人(ひと)を損(そん)するか重病(ちうびやう)と 致(いた)す事(こと)あり。扨又(さてまた)外(ほか)にも善飲食(よきいんしよく)あれ共。一方(いつほう)に悪敷事(あしきこと) 有(あり)。且又諸薬(かつまたしよやく)の妨(さまたげ)と成事有(なることあり)。惣(そう)じて食物(しよくもつ)ハ百/余品有故(よしなあるゆへ) 惣(そう)じて施本紙数五百(せほんかみごひやく)五十/枚(まいの)文句(もんく)無学無筆(むがくむひつ)の拙者(せつしや)なれ共 一字一点相談人(いちじいつてんそうだんにん)又ハ他作抔頼(たさくなどたのむ)やふ成不妙徳(なるふめうとく)にあらず只(たゞ) 愚案(ぐあん)而巳故(のみゆへ)行届(ゆきとゞき)がたし此段(このだん)御用捨(ごようしや)扨又(さてまた)施(ほどこ)す処(ところ) 一(いつ)ヶ/年(ねん)に凡五拾貫(およそごぢうくわん)目の積(つもり)なるが陰徳(ゐんとく)ハ出來(でき)がたし兎角(とかく) 陽徳(ようとく)に当(あた)る併(しか)し今日迄(こんにちまで)主家(しゆか)へ助力(ぢよりき)を不頼(たのまづ)親(おや)之/家督(かとく) 元手(もとで)銀(ぎん)を不頼(たのまづ)親類(しんるい)へ取立(とりたて)を不頼(たのまづ)他人(たにん)へ銀主(ぎんしゆ)を不頼(たのまづ) 諸人(しよにん)へ志(こゝろざし)の品(しな)を不頼(たのまづ)其外旦家(そのほかだんけ)講中(こうぢう)世話人(せわにん)一切不頼(いつさいたのまづ) たゞ一心(いつしん)自力(じりき)を以(もつて)百万人(ひやくまんにん)へ施(ほどこ)す願心(ぐわんしん)也(なり)  西三十三ヶ国陰陽道取締御用附  大坂本町橋詰町久菱垣元達方旅宿    一法師法眼菱垣元道橘義陳  予(よ)が事を    いろ〳〵云(い)ふは   まけおしみ     百分一(ひやくぶんいち)?    まねをしてみ也 右必自慢(みぎかならずじまん)にてハ無御座(ござなく)候/我心(わがこゝろ)の乱(みだ)れざるやう張(はり)を付(つけ)おゐて ▢▢気▢▢▢候ハゞ御/互(たがい)に宜敷(よろしき)かと愚案(ぐあん)の浅(あさ)き所より証(しる)す而巳(のみ)