二日はなし 地震亭念魚 町々庵炎上 ●将棋ずき ●吉原やけ ●太神宮神馬 ●此あいだのぢしんずきにしやうぎの すきな人がふとゆきあいまして 「ときにかく兵へさんさてこの間は けしからぬ事でしかし御ぶぢて おめでとうござります 「いやこれはばん吉さん御けがも なくてしかしかく飛車(ひしや)〳〵と しやうぎだをしはどうでごぜへ升 「これは〳〵此そうどうの中で すきな道(みち)とてしやうぎでしやれ事とは ありがてへもしこれじやぁ会所(くわいしよ)も 出あいたゝねま事に王将(わうしやう)でごぜへ升 「なるほど往生(わうじやう)のしやれかへおもしれへ それはそふとこのあいださる ものしりにきゝましたが このくらいなさわぎは 桂馬木車(けいきやう)いらいないと ゆうことでござり升 「いやそのかはりによのなかゞ ゆりなほつて金銀(きんぎん)のゆう づうがよくなります ときに妙(めう)ななりでどこへいきなさる 「なにささるおやしきへ歩(ぶ)に やとわれてまいり升 「それじやぁ金(きん)に なり升ふ ●ときによしはらの 五丁町は大へんなさわぎだね 「さようさあすこはつぶれた上に やけだからいくぶんはねへ 「わしはこのばん五十けんにあすんで いやしたがおそろしいしんどうさ 「もしよしはらがしんどうなら むかふのくらのふるつた くらいはありやあかむろて ごぜへやせう ●ときにこんど いせの太神宮(だいじんぐう)様の しん馬(め)の毛(け)がのこら ずなくなつたそふだが 此あいだゑどのぢしんに 太神宮(だいじんぐう)様がその馬(うま)に のつてきてたいそふ 人をたすけた そふだが たすかつたものは 袂(たもと)にその神馬(じんめ)の毛(け)が 一本づゝあつたそふだ 「おや〳〵そふかへわたしのおとつさんは このぢかのぢしんでつぶされて しんでおてらへほふむつて しまつたがもしやそのとき きていたきものゝたもとに 神馬(じんめ)の毛(け)かありやあ しないかときものゝ袂(たもと)を たづねてみておや〳〵 あらそわれないものだ 毛(け)があつたよ 「どれみせなこりやあ 神馬(じんめ)の毛(け)じやぁねへ 「それじやぁなんだへ 「これかこりやぁ鯰(なまづ)のひげだ