救民薬方 救民薬方 富士川本 キ 29 30 救民薬方 富士川本 キ 129 救民薬方  全               其小吉平凡 救民薬方    【印】富士川游寄贈  /凶年(きよふねん)の/後(のち)に/必(かならす)/時疫(じゑき)/流行(りうかふ)することは/昔(むかし)  より言伝へしなりされども山中など  /醫者(いしや)もなき/村々(むら〳〵)は/難儀(なんき)のものも/多(おゝ)  き事なれは/享保(きよふほ)年中/飢饉(ききん)の/後(のち)時(じ)  /疫(えき)/流行(りうかふ)せし時に  いつもより/簡易(かんい)の/薬方(やくほう)を/板行(はんこふ)せし  められ/其後(そののち)/天明(てんめい)の/飢饉(ききん)にも右の薬  方/写(うつし)村々へ申/触(ふれ)べしと仰(おゝせ)出されし  なり去年の凶作に/麁食(そしよく)/艱難(かんなん)して  /命(いのち)を/全(まつた)くせし/者(もの)もゆくさき/病難(びよふなん)を  /救(すくふ)へき/事(こと)を/心得(こゝろへ)すんはあるへからす  /依(よつ)而/享保中(きよふほちふ)/板行(はんこう)の/薬方(やくほう)を/本文(ほんもん)に  して/其外(そのほか)にも/簡易(かんい)の/方(ほふ)あるをした  /付録(ふろく)となし村々へ/頒(はか)ち/行(おこの)ふなり  ○/時疫(じゑき)/流行(りふこふ)の節此/薬(くすり)を/用(もちい)て/其(その)/煩(わつらい)をの   がるへし 一/時疫(じゑき)には大つふなる/黒大豆(くろおふまめ)をよくいりて  壱合/甘草(かんぞふ)一匁水ニてせんじ出し時に呑てよし          右/医渥(いあく)に出 一/時疫(じゑき)には/茗荷(めうが)の/根(ね)と/葉(は)をつきくだき  /汁(しる)を取り/多(おゝ)く/呑(のん)てよし          右/肘後備急方(ちうごびきふほふ)に出 一時疫(じゑき)には/午蒡(ごぼふ)をつきくだき汁(しる)をしぼり  /茶(ちや)わんニ/半分(はんぶん)ツヽ二/度(ど)呑て/其上(そのうへ)/桑(くわ)の/葉(は)を  一ト/握(にぎ)り/程(ほと)/火(ひ)にてあふり/黄色(きいろ)になりたる時  茶わんに水四/杯(はい)いれ二はいにせんじ一/度(ど)  のみて/汗(あせ)をかきてよし/若(もし)/葉(は)なくは/枝(ゑだ)  にてもよし          右/孫真人食忌(そんしんじんしよくき)に出 一/時疫(じゑき)にてねつ/殊(こと)の/外(ほか)つよく/気違(きちかい)のごとく  /騒(さわ)きくるしむには/芭蕉(ばしやう)の/根(ね)をつき/砕(くだ)き  汁(しる)をしぼり/呑(のん)てよし          右肘後備急方に出  ○/一切(いつせつ)/食物(しよくもつ)の毒にあたり又いろ〳〵の   /草木(くさき)の/葉(は)/魚(うを)/鳥(とり)/獣(けもの)なと/喰(くい)/煩(わつろう)に/用(もちい)て   /死(し)をのかるへき方 一/一切(いつさい)の/食物(しよくもつ)の/毒(どく)にあたり/苦(くる)しむにはいり  たる/塩(しほ)をなめ/又(また)はぬるき/湯(ゆ)にかきたて  /呑(のみ)てよし/且(かつ)/草木(くさき)の/葉(は)を/喰(くらい)て/毒(とく)にあた  りたるには/愈(いよ〳〵)よし          右/農政全書(のうせいぜんしよ)に出 一 一切(いつさい)の/食物(しよくもつ)の/毒(どく)にあたり/胸(むね)くるしく  /腹(はら)つよくいたむには/苦参(くしん)を/飯水(めしみづ)にて/能(よく)  /煎(せんじ)出しかみ/食(しよく)を/吐出(はきだ)してよし          右に/同(おなし) 一/一切(いつさい)の/食(しよく)にあたり/苦(くる)しむには/大麦(おゝむぎ)の/粉(こ)を  /香(こふ)ばしくいりて/素湯(さゆ)にて/度々(たび〳〵)/呑(のみ)てよし          右/本草綱目(ほんそうこふもく)に出 一/一切(いつさい)の/食物(しよくもつ)にあてられて/口鼻(くちはな)より/血出(ちいてゝ)も  たへくるしむには/葱(ひともぢ)をきざみて一合水に  て/能々(よく〳〵)/煎(せん)じ/冷(さま)し/置(おい)て/幾度(いくど)も/呑(のむ)べし  /血(ち)の/出(で)やむ迄/用(もちい)てよし          右/衛生易簡(ゑいせいいかん)に出 一/一切(いつさい)の/食物(しよくもつ)の/毒(どく)にあたり/煩(わつろふ)に/大(おゝ)つぶなる/黒(くろ)  /大豆(まめ)を/水(みづ)にて/煎(せん)し/幾度(いくど)も/用(もちい)てよし/魚毒(うをのどく)  に/中(あた)りたるに/愈(いよ〳〵)よし          右/千金方(せんきんほふ)に出 一/一切(いつさい)の/食物(しよくもつ)の/毒(どく)に/中(あた)り/煩(わつろう)に/赤小豆(あづき)の/黒焼(くろやき)  を/粉(こ)にして/蛤貝(はまぐりかへ)にて一ツ/程(ほど)ツヽ/水(みづ)にて/用(もち)ゆべ  し/獣(けもの)の/毒(どく)ニあたりたるニハ愈(いよ〱)よし          右に/同(おなじ) 一/菌(くさびら)【左ルビ「きのこ」】を/食(くら)ひあてられたるには/忍冬(にんどうの)/茎葉(くきは)  /共(とも)に/生(なま)にて/噛(かみ)み/汁(しる)を/呑(のみ)てよし          右/異堅志(いけんし)に出  右/薬方(やくほう)/凶年(きよふねん)の/節(せつ)/辺土(いなか)の者(もの)/雑食毒(そふしよくのどく)に  /中(あた)り/又(また)/凶年(きよふねん)之/後(のち)/疫病(じゑき)/流行(りふこふ)之/事(こと)あり  /其為(そのため)メ【シテヵ】/簡便(かんべん)之/方(ほふ)を/可(へき)_レ/撰(ゑらむ)/旨(むね)/被(られ)_二 /仰附(おふせつけ)【一点脱ヵ】  /依(よつ)而/諸書(しよ〳〵)之/中(うち)より/致(いたし)_二/吟味(ぎんみ)_一/出也(いだすなり)  /享保(きよふほ)十八/季(ねん)/丑(うし)十二月             /望月(もちつき)/三英(さんゑい)             /丹羽(にわ)/正伯(しよふはく)  右者/享保(きよふほ)十八年/丑年(うしのとし)/飢饉(ききん)之/後(のち)時疫(じゑき)/流行(りふこふ)  /致(いたし)候処/町奉行所(まちぶきよふしよ)へ/板行(はんこふ)被(られ)_二 /仰附(おゝせつけ)_一/御料所(ごりやふしよ)  /村々(むら〳〵)へ/被(れ)_二/下置(くたしおか)_一候/写(うつし)  右ハ/当時(とふじ)/諸国(しよこく)村々(むら〳〵)疫病(じゑき)/流行(りふこふ)致(いたし)/又(また)は/軽(かろ)き/者(もの)  /共(ども)/雑食(ぞふしよく)之/毒(どく)にあたり/相煩(あいわつらい)/致(いたし)_二/難儀(なんぎ)_一候/趣(おもむき)相  /聞(きこへ)候処/前書(ぜんしよ)享保(きよふほ)十八年/被(くだ)_二 下置(しおかれ)_一候/薬方(やくほふ)/書(かき)  /附(つけ)之義/年(とし)/久敷(ひさしき)/事故(ことゆへ)村々(むら〳〵)にて致(いたし)_二/遺失(いしつ)_一【左ルビ「なくし」】候/儀(ぎ)も  可有之候ニ付/此度(このたび)/為(ため)_二/御救(おんすくい)_一/右写(みきのうつし)村々/領主(りよふし)/地(ぢ)  頭(とふ)より/相触(あいふれ)候様/可(へく)_レ/致(いたす)候【歟ヵ】  右(みき)之(の)趣(おもむき)可_レ被_二相觸_一■【歟ヵ】     五月     附録   ○時疫(じゑき)に用ゆべき方《割書:傷寒(しよふかん)熱病(ねつびよふ)疫疾(ゑきしつ)と云も同(おなし)病(やまい)|にて幾(いく)つも名付(なつけ)たると知(しる)べし》 一 時疫(じゑき)にて熱氣(ねつき)あるには蚯蚓(みゝづ)の腹(はら)の土(つち)をよく  さり水にて煎(せん)じ飲(のみ)てよしよく熱氣(ねつき)をさ  ますなり其外(そのほか)の疾(やまい)にても熱氣(ねつき)あるに用て  よし蚯蚓(みゝづ)も頭(あたま)の方に白(しろ)き筋(すじ)あるものは尚(なを)  よろしきなり 一 時疫(じゑき)にて熱(ねつ)つよく頭痛(づつう)するには鷄子(たまご)一ツ 茶碗の内