/小野(をのゝ)/徒/(むだ)/□(まら)【玉篇に莖の嘘字】嘘字尽(うそじづくし) 坤 /文字(もんじ)は/陰陽(いんやう)を/生(しやう)して/万象(ばんしやう)をあらはすといふいつの /頃(ころ)よりか/小野篁歌字盡(をのゝたかむらうたじづくし)といふものありて/童農(どうのう) /初学(しよがく)の/益(えき)ある事/普(あまねく)くして/日用便利(にちようべんり)の書といふ べし/爰(こゝ)に/文化(ぶんくわ)の/頃小野愚嘘字尽(ころおのゝばかむらうそじづくし)と/題(だい)せし/戯作(けさく) /大(おほい)に/世(よ)に/行(おこな)はれぬ/是(これ)によつて/其後小野酒玉莖肥尽(そのゝちおのゝさかまらおやしづくし)の /作(さく)あれども/字数少(じかづすくな)く/且其興(かつそのきやう)の/薄(うす)ければ/是(これ)に/増補(ぞうほ)し文字(もんじ) の/意(こゝろ)のさし/画(ゑ)を/加(くわ)へ/小野股庫嘘字尽(おのゝまたぐらうそじづくし)と/号先(なづけさき)に/開板(かいはん)せしける 【註】5行目「玉莖」の原字は合字で一文字 上に/好(このみ)によりて/小摺物(こすりもの)にも/画(ゑがき)し事の/有(あり)けるが/早一昔(はやひとむかし)の/㕝(こと)とは なりけり/然(しか)るに/板元喜楽堂此頃何(しよしきらくどうこのころなに)とか/思(おも)ひけん/彼股庫(かのまたぐら)の/虚字(うそじ) の二/本今絶(ほんいまたへ)て見る事なければ/新(あらた)に/是(これ)を/開板(かいはん)せんと/予(よ)が/愚筆(ぐひつ)を /需(もとむ)る事/頻(しきり)也/初(はじめ)の/時(とき)さへ/同物(どうぶつ)を/二種(ふたくさ)にして/出(いだ)さん事/如何(いかが)と/辞(じ)せし事 なるに/趣向(しゆこう)に事を/欠(かき)たが/如(ごと)く/今亦三度(いままたさんど)はあこぎならめと/固辞(いなめ)ど /屈(くつ)せず/五度七度(ごどしちど)おしての/需(もとめ)いなみがたくて/遂(つい)に/筆採(ふでとる)事とはなりぬ                淫水亭 【虚字  四文字の扁は玉+茎、旁に春・夏・秋・冬を配しすべて「おへる」と訓む 【五字目の扁は玉+茎、旁は宜+我(か?)で訓は「おへづめ」】 【本文】春おへる夏おやければ      秋もおへ冬も      おなじく昼夜      おへづめ /和歌三淫(わかさんいん) /夜(よ)やさむきゆふべや   いものはだ/好(す)のたきしめて     よりあせやかくらん /立(たち)かへりまたも   このよにおへにけん    /恋(こひ)にこゝろも     わかのうらどひ ほの〴〵とあかりは  くらき/朝(あさ)ぎりに    /閨(ねや)わかれ/行(ゆく)      /影(かげ)をしぞおもふ 【虚字 女扁に旁が客で、訓は「だきづめ」】  【 旁が客で旁も客に間に女、訓は「まはし」客四個が女を取り囲む、訓は「あやにく」】 【本文】 きゃくひとりだきづめふたり廻しなり客がたてこみあやにくざます ○/吉原(よしはら)の/遊女(ゆうぢよ)   /昼三(ちうさん)はしばらかき   /見(み)せ/女郎(ちようろ)のつと   め一/分(ぶ)なり二/朱(しゆ)   なり/雑用(ざつよう)つき   /朝(あさ)まで/抱(だき)   づめが/定(さだめ)   なれば/女(おんな)   に/客(きやく)あ   れば/是(これ)   /抱(だき)づめとよむ ○/夜なじみの   /客上(きやくあが)れば女   一人に/客二人(きやくふたり)と   なる/上色(じやうしよく)   なれば名代   といふ/所(ところ)を   /左(さ)てなくて/両方(りょうほう)へ   /行是(ゆくこれ)を/廻(まは)しとよむ也 ○又/初会(しょくわい)の客上(きやくあが)りたるあと   より/追々(おひ〳〵)なじみが二人も三人も来る   /時(とき)は女もあつちではされこつちでは   されどうけんやくしても四五ばんは   される事ゆへ/初会(しょくわい)なぞはまづ   一丁でおひはらふこれを   あいふくとよむるか 【左丁下段】ちよとてうづにいつてまいすよ 【虚字 三文字共に穴冠、「はまぐり」は穴冠の下に嫁、「あかがひ」は同じく乳母、「しゞみ」は娘の字を嵌めた合字】 【本文】はまぐりはよめにあかゞひうばなれど むすめのあなはしゞみかひなり ○/是(これ)は/開(ぼゝ)を/貝(かひ)るゐに たとへたる文/字(じ)也 げいしやはすはる /酢貝(すがひ)也/蜑(あま)は 水貝/子持(こもち) /女房(にようぼ)は/子安(こやす) /貝大年増(がひおほどしま)は さゞいから/黒(くろ) /陰戸(つび)はからす /貝川柳点(がひせんりうでん) の/狂句(きやうく)にも はまぐりは /初夜赤貝(しよやあかがひ)は/夜中(よなか)なりこれによつ て/花(はな)よめをはまぐりとよむ也 ○又/乳母(うば)のゑてものさながら/赤(あか) /貝(がひ)にちがひなければ/乳母(うば)の/穴(あな) にて/赤貝(あかゞひ)とよむすべて /文字(もじ)は/理詰(りづめ)なるものなり ○/貝(かひ)の中にてもわけてちいさき は/蜆(しゞみ)なり/舌(した)やわらかくしてま事 に/子娘(こむすめ)の/陰戸(いんこ)のごとしされど /毎夜(まいよ)わが/指(ゆび)を/入(い)れくじり きのいく事をおぼへしはおめこも すこしは大きくなるゆへ /同(おな)じ/娘(むすめ)にてもこれは なりひらとよむなり 【下段吹出】「三本いれてまだおかつたるいは たいがいなまらではすいふろ▲ おけでごぼうだらう 【虚字 女扁を裏返し旁に女を加えて訓は「たがひせん」、二文字目は丁稚の文字を二組並べて「そんとくなし」と訓ず】 【本文】さしむかひ女/抱(たき)あふたがひせんでつちどうしでそんとくはなし ○/長局(ながつぼね)の中よしどうしおひけのゝちは/抱(だき)あひて  /両方(りやうほう)にへのこの/形(かたち)ある/互形(たがいがた)といふ/張形(はりかた)を  上下/一度(いちど)に/開(ぼゝ)へつきこみ上から/腰(こし)を  つかへば下の/開(ぼゝ)へ/深(ふか)く/入(い)り下から/持上(もちあげ)  れば/上(うへ)の/開(ぼゝ)の/奧(おく)をつく/上(うへ)は/茶臼(ちゃうす)  下は/本手(ほんて)まことの男にあふ  ごとく/至(いた)つて/弁利(べんり)の/道具(だうぐ)  なりなづけて是を  たがひせんといふ ○/小(こ)ぎれいな  /丁稚(でつち)どうしせん  ずりもめづらし  からずたがひに  /云(いひ)かはして/穴(けつ)を  ほりあふ/是(これ)すな  はち/損徳(そんとく)なしなし  又此/字(じ)を/兄弟(けうだい)ぶん  ともよむなり 【虚字 玉莖を縦に描き玉字を挟む合字、「股」でおへる、「握」でなへる、「扱」でせんすりと訓す】 【本文】またぐらへわりこむまらはおへる也 にぎればなへるこくはせんずり   ○女の股ぐらはほちや〳〵やわ〳〵と  してちらりと見へてさへきの  わるきものなるにましてやこれ又  /是(これ)へわりこむときはいかなるへのこ 【左丁吹出し】「きがいくならもつとねまで入てきをやんねへそれから又おめへのけつをほつておもいれきをやらなけりやアならねへ 【虚字 扁に「常」の三文字、旁は「妻」で訓は「やきもち」、同じく常の扁に「下女」で訓は「くじる」、常扁に「丁稚」の合字で訓は「せんずり」 】にようぼうのつねはやきもち下女くじるてつちのつねはせんずりと 【本文】にてもおへぬといふことなし ○さて/独身男寝起(どくしんをとこねおき)なぞにむだ  まらおへて手におへ  ぬ/時(とき)はテにぎり  ぐつとにぎるべし  なへること/妙(めう)なり ○是をやわ〳〵にぎりて扱  ときはついどく〳〵ときがいく也  是せんずりとよむ ○やきもちりん  きの/異名(いみやう)にて  なべて/女房(にようぼう)の  つねとしるべし ○さているれの下女も  はたちより三十/前後(ぜんご)  いづれよがり  ざかりの/年(とし)  ごろ/一人寝(ひとりね)  のつれ〴〵  かんにんならず  /毎夜(まいよ)わが/指(ゆび)を入て  /気(き)をやる事いづくの  下女も/同(おな)じ事なれば  /是(これ)なを下女の/常(つね)としてくじるとはよむ事也 ○/丁稚(でつち)もしたがりとて/顏(かほ)ににきび  の/出来(でき)るころより/毎夜(まいよ)のせん    ずり/常(つね)の事なり 【右丁吹出し】 「どうもこのとふりへのこがおれそうだ  をがむ〳〵 「だれだとおもつたびつくりしたはな これむりなてをしなさんな 【虚字 娘+乳母の横並びで訓は「とりもち」 乳母の下に丁稚を縦に重ねて訓は「おつかぶせ」】 【本文】とりもちはむすめのわきにうばがたつでっちにうばはおつかぶせなり ○ひかげ  の/豆(まめ)も  はじけ/時(とき)  /娘(むすめ)が/恋(こひ)やみの  ぶら〳〵/煩(わづら)ひそれと  さつして/思(おも)ふ男にあはせる/首尾(しゆび)これ  /乳母(うば)のとりもちなり ○乳母も/二人(ふたり)の/嬉(うれ)しそうなる/鼻息(はないき)をきゝ  /久(ひさ)しぶりでむしやうにさざせど/見世(みせ)の/若(わか)い  ものにさせるもよいが/一番(いちばん)がくいつきとなり  /後(あと)がめんどうゆへいつそ/跡(あと)ばらのやめぬ/丁稚(でつち)に  でもさせるが/気(き)がはらいでよしとふみまた  がつてむりに/入(い)れさせる/是(これ)おつかふせといる也 【吹出し乳母】「サアこれがあるかへ 男「かういふしゆびもおめへのおかげだ ありがたい〳〵  【虚字 女扁+百は「きりみせ」、女扁+四百は「しやくば」、女扁+廿四文は「よたか」】 【本文】百はきり四百の女しやくば也廿四文はよたかなりけり ○女には大ぶん/直段(ねだん)に/高下(こうげ)ありてまづ  /上邊(じやよしよ)は一両一分よびだし三/分見(ぶみ)せの  お/職正面(しよくせうめん)一分/交(まじ)り見せは一分と  二朱/品(しな)川は/十匁金見(じうもんめかねみ)せ二朱  /銭(ぜに)見せ六百文四百文その  /余(よ)大かた/宿場(しゅくば)の女は  まづ四百文が/通例(つうれい)   なるべし ○/切(きり)とは切見せ  かほね/見(み)せの事  にして一トちんぼう  ふり/出(だ)すが百文の  /定(さだ)めなり ○/里童(りどう)の  /曰(いはく)あのあね  さんいゝ  あねさん  お/尻(しり)が  ちつとまア  がつてはりかにうけたら  /十匁(じうもんめ)よたかに/出(だ)して  廿四/文(もん)方々/一本(いつぽん)  はさむが廿四文とは  いたつて/下直(げぢき)なり  /川柳点(せんりうでん)に  /股火(またび)してねるほど   おちようりこなし 【右丁下吹出し】たばこをのみながらとぼしたらまらのさきからけむがでるだらう 【同左】おつさんなほしてくんねへヨ     ウン〳〵〳〵〳〵    【虚字 女+男四人が取り囲む字は「まわり」と訓、男+女四人は「じんきよ」と訓む】  【本文】女をば男とりまくまわり也女とりまくときはじんきょよ /悪者(わるもの)三四人/云(いひ)あはせ /此(この)ごろめつきりと/色(いろ)けづいたる /娘(むすめ)が/通(とふ)りかゝる所を/待(まち) あはせ「コウあねさんいゝことを おせへてやるから一寸(ちよつと)こつちへ きなと手を/引(ひつ)ぱられ /娘(むすめ)はびつくりして/見(み)れば あらくれなき/大(だい)の男 おやしたてゝ/取(とり)まくに おどろき「アん はなしておくん なさいましよ ト/逃(にげ)やうと するを手取(てどり) /足取(あしどり)人なき /松原(まつばら)へかつぎ こみいゝ/事(こと)とは /此(この)ことだと/大(おほ)ぜい よつて/股(また)ぐらを 引ぱたけはいらぬ やつをむりやりにつばき /物しておし/込(こ)み四人が三ばん ヅゝとぼして/廻(まは)られ/娘(むすめ)は /気(き)ぬけのやうにぼうぜんと して/腰(こし)もぶら〳〵さればたとへ にもつまらぬかほして/居(ゐ)るをかゞツ /原(はら)でまはりをとられたやうだと云也 【右下吹出し】「アゝどうもまらがはちきれるやうにおへてこてへられねへ くちでもすつてやらう 【左下吹出し】「はやくかはらねへかまらがひだるがつてすまくしている 「コレサそらあごをひつかまねへでおれのまらをつかんでみな ○/第一男(だいゝちをとこ)つきよくいきでこうとらで /程(ほど)がよく/声(こゑ)がよくツてちよいと やる/葉歌(はうた)なぞが/小(こ)いきてそのうへ /三味(さみ)せんはうまし/衣類持(いるいもち)ものは/当(たう)せ /流行(りうこう)の/魁五分(さきがけごぶ)も すかぬぢよさい なき/拵(こしら)へそこで /金がくさるほど あつて/銭金(ぜにかね)のつかひかたが きれいで/気(き)まいがよいと いふ物ゆへ/娘(むすめ)としまはいふに /及(およ)ばず/芸者遊女(げいしやゆうぢよ)かこいもの に/至(いた)るまで/一寸(ちよつと)でもつき /合(やつ)た女は/惚(ほれ)ぬといふ/事(こと)なければ /色(いろ)は/仕次第(ししだい)と いふ/身(み)の/上(うへ)こいつ はよつぽど/果報(くわほう) ものと/云(いひ)たけれど /淫水亭(いんすいてい)そうは いはずしつかい/是(これ)は/開(ぼゝ) /地獄(ぢごく)といふものにて/舌(した)はぬか れるほどすはれ/昼夜(ちうや)をわかたね /開(ぼゝ)ぜめに/忽(たちま)ち/腎虚火(じんきょくわ) /動(どう)の/症(しやう)となりへのこはおへ づめながら/目(め)の前(まへ)にある/開(ぼゝ)も /禁(きん)じられてとぼすことならぬは さながら/餓鬼道(がきだう)のくるしみアゝ いやなことだのうト/作者(さくしや)    まけをしみをいつてゐる 【右下吹出し】「そつちをしまつたらはやくわたしをしておくれいぢられてさへきがいくヨ 「アレまたいきさうだからもうちつとしておくれ 【左下吹出し】「ヲゝいく〳〵フン〳〵〳〵 【虚字 男+女+男=嬲を「まをとこ」と訓、男を両側から娘と母が挟む合字を「いもでんがく」と訓む】 【本文】まをとこは男二人の女にていもでんがくは/母娘(ははむすめ)なり ○/抑芋田楽(そもそもいもでんがく)の/由来(ゆらい)といつは/元来(がんらい) /所々(しよ〳〵)のさかりば/或(ある)ひは/通(とふ)り丁の/夜(よ) /見(み)せなどに/四文(しもん)やと/称するものにて まづさと/芋(いも)をよくあらひ /是(これ)をいまみて/串(くし)にさしせ この時/親芋子芋(おやいもこいも)の さべはなく/片(かた)はしより さして一ツ/鍋(なべ)に/入(い)れ /煮(に)もし/田楽(でんがく)も するすべて/串に さしたるをでんがく とは申也 /扨(さて)女をさして/古来(こらい) /妹(いも)といふゆへに/入婿(いりむこ) /子妹親妹(こいもおやいも)の/遠慮(えんりよ) なく/持前(もちまへ)のくしを ぬッ〳〵とさし/込(こむ)ゆへ /是(これ)をも/則(すなはち)いもでんがく と申はたへぬ ○/間男(まをとこ)は/密夫(みつふ)の事也 /図(づ)のごとく/添(そへ)ふして ゐる所へかねて/密通(みつつう)してゐる 男/亭主(ていしゆ)の/寢入(ねい)りこみたるを うかゞひ/後(うしろ)からはい/込(こみ)その/女房(にようぼう)をおかす /文字(もんじ)の/意(い)この/図(づ)にてあきらかなり 【右丁下】「むすめかしあきてあさまらのとき 入させるやうにしてそこはげんざいのむすめだもの十二さゝいかへにするものかな 【左丁下】ていしゆいびき「スウ〳〵〳〵 ムニア〳〵ゴウ〳〵 【虚字  玉+莖で「ねぼそ」と訓、皮+玉+莖と縦並びで「すぼけ」と訓ず】 【本文】玉ぐきのあたまかちならねぼそまら▲ ▲かハッかぶりはすぼけとぞよむ ○いにしへよりへのこ のうたあり あらばちとけつを するならすぼけ まら/後家(ごけ)に 女房は/根(ね) ぼそ/厂(かり)だか /此文字形(このもんじかたち)の ごとく/厂(かり)くび 大きなれば /則是(すなはちこれ)がねぼそ也 ○/皮冠(かはかふり)に玉莖と いふ文字是/皮(かは)かぶ りのすぼけまらと/知(し)るべし 【下段吹出し】「おれがまらはねぼそでかりのたかい所がじまんだ 「どうりでなかのものをかきだされるやうであつたヨ /用文集(ようぶんしふ)  /新開怪我見舞(あらばちけがみまひ)の文 /婦美(ふみ)してもふし上存候 /御娘子(おんむすめご)おあとさま御/事(こと)きのふ の夜御/日柄(ひがら)よふ御みづあげ /遊(あそば)され候とうけ給はりかず〳〵 御めで/度(たく)御/悦(よろこび)申上存候   /睦月(むつき) むつきとは男女睦月(なんによむつまじつき)也二日 の/夜(よ)ひめはじめ。ひめは/飛馬(ひめ) にて/馬(うま)の/物(もの)に/似(に)たるをいふ又 /姫(ひめ)ともいふ/此夜宝舩(このよたからぶね)を/枕(まくら)に しきのり/初(ぞめ)をいはふ   哥に /柱(はしら)より/二本(にほん)の   /指(ゆび)のいたづらを  ほゝゆれほゝと    はやす/万歳(まんざい) 【下段】 さて/又御養子助太郎(またごやうしすけたろう)様 御事/殊(こと)の/外美事成(ほかみごとなる)御/道具(だうぐ) と/承(うけたまは)りこれ/又(また)おめで/度存(たくぞん)じ存候 /乍去(さりながら)おあと様ごかんこ御/怪我(けが) /遊(あそ)ばし候との御事御/噂(うはさ)に/承(うけたまはり)り /扨々(さて〳〵)御/気(き)のどくに/存(ぞん)じ上存候 /少々(せう〳〵)の御/事(こと)に御座候や御/案事(あんじ) 申/上(あげ)存候/此品餘(このしなあま)り〳〵そまつ なる/品(しな)には候へとも/白塵一束(しろちりいつそく) /布(ふ)のり/百枚(ひやくまい)きはだの/粉一袋(こひとふくろ) 御/目(め)に/懸(かけ)存候/誠(まこと)に〳〵御みづ/上(あげ) の御/悦(よろこ)び/迄(まで)御しるしに御座候 /猶又少(なほまたすこ)しも御こゝろ/能(よく)ならせら れ候はゝごゐじかり/股(また)にても 【上段】/弥生(やよひ) やよひは/弥生(いよ〳〵おへ)るといふ/心(こゝろ) なりひなまつりは/夫婦(ふうふ)をかた どり/赤(あか)がひはまぐり又は/白酒(しろざけ) をそなふ/此白酒(このしろざけ)を/出(いだ)すも/義(ぎ) /理(り)あることなり/何(いづ)おえ/道具(どうぐ) なれば/弥生(やよひ)といふ  /紙(かみ)びなの/風(かぜ)に   /一對(いつゝゐ)ころび/寢(ね)を   /見(み)とて/舌(した)を     /出(だ)す/供御(くご)の      はまぐり 【下段】      御/咄(はなし)に/入(い)らせ有候やう /念入(ねんいり)存候かつ/今晩(こんばん)よりは /布(ふ)のりときはだの/粉(こ)御/付(つけ) 御とぼし/遊(あそ)ばさるべく候 /先(まづ)は御/水(みづ)あげの御/祝儀(しうぎ)  までにあら〳〵   めでたく候     かしく  /腎虚見舞(じんきよみまひ)の文 /貴公様今般取過(きこうさまこんぱんとりすぎ)にて御/腎虚(じんきよ) 被成候/義(ぎ)御/腎張之程被相顕(じんばりのほどあいあらはれ) /男子(なんし)は/本意与(ほんいと)奉存候/是迄(これまで)の 御/楽(たのし)み/種々(しゆ〴〵)可有之と/毎夜(まいよ) /妻倶々(さいとも〴〵)御/噂(うはさ)申/明(あか)し候/乍去(さりながら) /此節抔御内宝定而(このせつなどごないほうつさだめて)御/明穴(あきあな)之 【上段】 /皐月(さつき) さつきまた/梅雨(つゆ)のうち なれば/何所(どこ)もかもじく〳〵 としめり/気(き)ざすときなり さつきとは/早腰(はやごし)にはやく つく事也  あやめ/草(ぐさ)   /髪(かみ)に/結(むす)びて    /手弱女(たをやめ)が  よへこそねやに    何かふくらん 【下段】 /義(ぎ)御/不自由(ふじゆう)奉/察(さつし)候/且又時分(かつまたじぶん) /柄殊之外蝿多嘸々(がらことのほかはいおほくさぞ〳〵)御/腮(あご) 御/草臥(くたびれ)被成奉/察(さつし)候/麁末(そまつ) には御座候へ共/腮休之為蝿打(おとがいやすめのためはいたゝき) /壱致進上之(ひとつこれをしんしやういたし)候御/用(もちひ)にも相成 候はゝ/難有(ありがたく)奉存候/先者(まづは)御/腎(じん) /虚(きょ)御/見舞迄如是(みまひまでかくのごとくに)御座候 /恐惶謹言(きやうくわうきんげん)  同/返事(へんじ) /如仰拙者義取過(おほせのごとくせつしやぎとりすぎ)候/加減(かげん)に哉 /腎虚(じんきよ)仕/打伏罷在(うちふしまかりあり)候へ共/只々(ただ〳〵) /一物如木(いちもつきのごとく)に相成/昼夜立詰(ちうやたちづめ)にて /甚当惑(はなはだとうわく)致し候/且何寄之品(かつなによりのしな) /被黙御意忝(ぎよいにうけられかたじけなく)奉存候/早速(さつそく)相/用(もちひ) 【上段】  /文月(ふみづき) ふみ月といふはもろこしの/伯(はく) /陽夫婦(やうふうふ)が月をねんじて/二(じ) /星(せい)となり七日の/夜天(よあま)の/川(がわ にて/出合(であい)をするなり天上の /出合(であひ)なれば/雲(くも)をふみてつく なり/故(ゆへ)にふみつきといふ  /夜這星見(よばいぼしみ)て   うらやむや/天(あま)の/川(がわ)  ふんどしほどに   しろく    あとひく  【下段】 可申候/扨又医者(さてまたいしや)申/聞(きけ)候には/持(ぢ) /薬(やく)に/妻計(さいばかり)は/相用(あいもちひ)候ても/不苦趣(くるしからずおもむき)に 御座候へは/好之道故昼夜入浸(すきのみちゆへちうやいれびたし)に /致(いた)し/置内々少々宛気(おきない〳〵せう〳〵づゝき)を/遣(や)り 申候/先者右(まづは)御/礼(れい)御/返事迄(へんじまで) /早々頓首(さう〳〵とんしゆ)  /男妾請状(をとこめかけうけじやう)之事 一/此馬(このうま)次郎と申/者従肥立能(ものおへたちよりよく) /存知慥成男根(ぞんぢたしかなるまら)に御座候間 /我等玉茎請(われらまらうけ)に/相立貴殿(あいたちきでん)方江 /開奉公(ぼゝほうこう)に/差上(さしあげ)候處/実正(じつしやう)也 御/給金之義(きうきんのぎ)何両/為御取替(おんとりかへとして) /何程慥(なにほどたしか)に/受取(うけとり)申候/然(しか)ル/上者途(うへはと) /中(ちう)にて/草臥(くたびれ)候/歟(か)/又者萎(またはなへ)候/事(こと)御座候 【上段】  /菊月(きくつき) きく月は喜苦なり /恋(こひ)をするもの/苦(く)はつねなり 又あふ/時(とき)はうれしく/喜(き)なり あへばへのこを/入(い)れてつく ゆへ/喜苦突(きくづき)といふ  /白(しろ)きもゝ/見(み)て   たんざくの    /雲間(くもま)より  /露(つゆ)もおちなん   /仙人(せんにん)のきく 【下段】 はゝ/深夜(しんや)にても/早速罷成急度(さつそくまかりいできつと) /木之如(きのごと)く/為肥(おやさせ)可申候/万一取過(まんいちとりすぎ) /腎虚(じんきよ)致し候/節者玉茎代(せつはまらがはり)差出 /少(すこ)し/茂(も)御/開(ぼゝ)之御/間為相欠(まあいかゝせ) 申/間鋪(まじく)候 一/御開之御作法急度相(おんぼゝのごさほうきつとあいまもら) /守(せ)可申候/昼取(ひるどり)は/不及申如何(もうすにおよばずいか)  【上段】/其晩早割(そのばんはやわり)の/法(ほう)    そろばんはやわりの/地口(じぐち)なり  ▲/陰戸(いんと)の/実引(さねひく)  ▲二番が/南(なん)  ▲四五の廿なら 一どに一ど初春の床  ▲二八十六の娘 毛引て気がのこる  ▲三五十五の/新(あら) 「アレサいやだよおよしといへどもくど きかゝツて引に引れぬときは  /六(む)り/八(や)り/六(む)やみにわりこむ /法(ほう)に曰/イ(にんべん)に/(はち)かける /抱(だき)すくめてのむり/取是(とりこれ)にて/新開割(あらばちわれ)る也 【下段】 /遊成曲取(ゆうなるきよくどり)にても/決而違背(けつしていはい) /為致間鋪(いたさせまじく)候 一/宗旨(しうし)之/義(ぎ)は/代々常取宗(だい〳〵じやうどりしう)にて /寺(てら)は/廣井乳母山滑々院旦那(ひろゐおうばさんぬら〳〵ゐんだんな)に /紛(まぎれ)無御座候/則玉茎請我等方(すなはちまらうけわれらかた)に /取置(とりおき)申候御/入用之節(にゆうようのせつ)は/何時(なんどき) にても/差出(さしだし)可申候/為後日玉茎(ごにちのためまら) 【上段】/入子算(いれこざん)    思はぬ人にさせる時は入物を    かすといふ詞より出たり 【枠上下順に右より左へ】 十四五才あらばち 十六七才 十八九才 廿一二才 廿六才中どしま 三十六七才ふるばち /初(はじ)めは/新開(あらばち)よりだん〳〵/年(とし)のぼりて つひに/古(ふる)はちとなる又/一物(いちもつ)をせがれ 又/子僧(こぞう)といひちんぽこなぞいへるを あらばち/古(ふる)ばちへ入れるゆへ是を /入子(いれこ)ざんといふ 【下段】 /請證文仍如件(うけしやうもんよつてくだんのごとし)         玉茎主 馬次郎         玉茎世話人作蔵   孫兵衛/後家(ごけ)殿  /月夜(つきよ)に/釜(かま)をぬかれし人江/遣(つかは)す文 ぬる/松様(まつさま)義/昨(さく)十五日之/夜中(やちう) 御/釜被抜(かまぬかれ)被成候/由承知(よししやうち)仕候/実(じつ)に 【上段】/契悦(けいゑつ)の/割(わり)  Δ/喜悦(きえつ)のかけごゑ   スウ〳〵〳〵ハア〳〵〳〵〳〵  ○/吐瀉々々(どく〳〵)たんのう引  ○/気酒倍好(きいきばいすき)  ●/婬心(いんしん)が淫水  ●/一/深(しん)が八/浅(せん)  ○/契悦夢中早急(けいえつむちゆうさつきう)に/行(いき) /兼(かね)てたしなみの/女悦道具(ぢよえつどうぐ)の /箱(はこ)をひらけばられん/香(かう)と云 せん/香(かう)二本りんの/玉(たま)三ツりん の/輪(わ)三ツかぶと/形(がた)一ツこれが /出(で)るといつでも/契悦(けいえつ)の大 よがりをやらかす也 【下段】 /月夜(つきよ)とは/乍申全(もふしながらまつたく)御ぬるま之御/性質(しやうしつ) /被相顕(あいあらはれ)御/気之毒千万(きのどくせんばん)に奉存候御/釜(かま)を /掘(ほり)候者は/相分(あいわか)り候/哉奉伺(やうかがひたてまつり)候/併如何(しかしいか) /成大便(なるだいべん)も/無御息張(おんいきばりなく)御通(つう)じ被成候 /半(はん)と奉/察(さつし)候て御/羨敷(うらやましき)御/義(ぎ)と奉存候 /先(まづ)は/右(みぎ)御/見舞迄如此(みまひまでかくのごとく)御座候以上 /用文尻(ようぶんしり)へ/廻(まは)りて/終(おはり) 【上段】 /手(て)の/筋早見(すじはやみ) /門前(もんぜん)に/医者(いしや)と おや子がまつて ゐる一本の事で うまらねへやく まわりだ あすこの こゆびめが おれによつほど きがある 助ぼう おめへモウ ぼゝをくじツた ことがあるだろう手を出して 見せな/一度(いちど)でもくじつたものは  つめのいろがかわつて   ゐるとよ 女の尻を  つめるとき   ばかりよ 【下段右より上下順に】 つばきを/付(つけ)る手  いたくする  ことぢやア  ねへから  じつとしていな くじる手 /玉茎(へのこ)をにぎる手  いつそ  大きな  ものだのう つびせんずりの手 【最上段標題】/痕紋(こんもん)乃ぬけ/陰門図説(いんもんづせつ) 【右より左へ縦割り読み】 /玉紋(ぎよくもん)  /陰門(いんもん)の/中(うち)にてもわけて/上品(じやうひん)なるを/玉門(ぎよくもん)と  いふ/此門(このもん)ある/婦女(もの)はつれそふ/夫(をつと)に/深(ふか)く/愛(あい)  せられ/望事心(のぞみごとことこゝろ)のまゝなるべし /陰紋(いんもん)  /常(つね)てはなるをすべて/陰門(いんもん)といふこの/紋(もん)  /至(いた)つて/上(あが)りたるは/味(あじは)ひ大吉なりさがりて  あるは/味(あじは)ひ大にわるし /肛門(こうもん)  /裏紋(うらもん)とも/云或(いふある)ひは/菊座尻(きくざけつ)お/釜(かま)とも  /号(なづ)け/肛門(けつ)をほらせてお/釜(かま)をおこす事  ありお/陰(かげ)で/大用通(だいようつう)じ大に吉   /田舎紋(いなかもん)  /昔(むかし)の/流行唄(はやりうた)に/曰(いはく)なんぼ/田舎(いなか)でも/芋(いも)の/葉(は)でふか  れようのんし/拭(ふけ)ばぬらくらとろゝちやんこ/野(の)ら/出合(であい)  の/陰戸(ちやんこ)のべ/紙(がみ)の/用意(ようい)なく/芋(いも)のはでふく/是(ここ)はいなか/紋(もん)也   /困紋(こまりもん)  /誰(たれ)かれの/嫌(きら)ひなくあれにもさせ/是(これ)にもさせ  だが/口説(くどき)てもいやと/云(いふ)ことなし/身(み)よりが/異見(いけん)すれば  /心願(しんぐわん)で千人に/施(ほどこ)しますとの/返答是困者(へんとうこれこまりもん)也 /此外書房(このほかふみや)の/注紋何(ちうもんなん)でも/四紋(しもん)と/受込(うけこん)だるおいそれ/紋急案紋(もんきうあんもん)の/古(こ) /事(じ)つけ/三紋(さんもん)ほどの/智恵(ちゑ)を/出(だ)して/手紋(しゆもん)のあらましを/爰(ここ)に/記(しる)す /手(て)の/筋早見(すぢはやみ)終 會道笑林  腎張いつも町   仈尾屋粕兵衛  婦多川蜆町    薄毛屋新蔵  伊々頃かわらけ町 荒尾四太郎  阿手垣通り    千図屋理兵衛  とん田助右衛門丁 豊島奧次郞  古川かぶり町   越前屋須保助  浮世       喜楽堂開版