【タイトル】 世は安政民の賑 【本文はイラストを挟んで四段構成】 【第一段】 それ人げんの五常を まもるも神仏のおしへ なるにその道をわすれ貴 せんともにおそろしきいましめの 欲のみちにいりしゆへ下はんみん をすくわんと神や仏のさうだん にて鹿嶋の神へおたのみゆへかしま 太神宮かなめ石をなまづにしばり つけ世のせいすいをなをすへしとあり ければなまづはかしこまつて安政二年 十月二日夜の四つ時おん神の おつかいなりと江戸をはじめとし 凡十里四方あれちらせば家を たをし地をわり出火すること おびたゝし 金もちども【金もちども:四角枠で囲む】 〽さあ〳〵〳〵たまらぬ〳〵 このじしんではせつかくためた 金も千両ばこがこわれて 火事でやけてたねなしに なるあゝなさけない じしんだどふしたら よかろふにげるにも にげられ ねへあゝ〳〵〳〵 【第二段】 ざとう【ざとう:四角枠で囲む】 〽さて〳〵大きなじしんだ□□や 大坂は大へんにゆつたけれども江戸は あんしんだとおもつたがこれでは たまらぬあゝあれ〳〵家がつぶ れるかべがおちて見へ□いめの中へ すながはいる何し□も金はどご へいつたつへもおれたかなしひ〳〵 めがあきたいあゝ〳〵〳〵 なまづ【なまづ:四角枠で囲む】 〽やあ〳〵金もちの ぶげんどもそのほか さとうにいたるまで よくきけわれこれ まですこしうごけば まんざひらくなどゝ おのれ〳〵が身のよふじんを するも△【△:三段目の△印以下の文に繋がる印】 【第三段】 △欲(よく)ばつているかづのことだ 世かい中その大よくが貴せんの しやべつなく○じるしにさへ なれば出きねこともできる やふになるうき世になつて からかはいやびんほう人は 年中くるしみどうしに くるしんでいつまで たつてもよくなるといふ ことがねへ金もちはうぬらが 金のあるをはなにかけ町人で ゐながらさむらいのかぶをかつて 銭を出して人につとめて もらひふちをとる 時はうぬらがつとめて ゆふに内へたはらを つみあげて大きな つらをしてゐる これみんな ろくぬす びとゝ いふ X【X:以下全て四角枠で囲む】【X:四段目のX印以下の文に繋がる印】 【第四段】 X それゆへに神仏の おいかりつよく こんどせかいた平に せよとの天からの けんめいなり おどろくななげくな 金もちどもみな じごうじとくなるぞ これぞ下こくあんおんの へいきんだあさわぐな〳〵 なくことないぞ くわた〳〵びし〳〵 めり〳〵〳〵