【表紙】 【題簽】 《題:《割書:大福長者|三穴堂》栄増眼鏡徳  上下》 【見返し】 【扉】 《題:《割書:戌|春》栄増眼鏡徳(さかゑますめかねのとく) 上《割書:西|㊉|宮》》 【右丁】 【印】大正 13.12.17 購求 【左丁】 【挿絵】   李庭亭主人     不許翻刻    恋川ゆき町作   千里必究 《題:《割書:新|改正》《割書:大福長者|三穴堂》栄増眼鏡徳(さかへますめがねのとく)》 此書は眼鏡にことよせていろ〳〵むだを書 しるしたる書なり。長閑き春のさくら木 にちりばめ。目さましの種とはなしぬ   戌孟春 【右丁】 【左下】 なんでもあんじがねへ あんじとはあんじるより うむがやすいととりあげ ばゞがいふけれどあんじるとは 気ぼねのおれたもんだ 【左丁】 【上部】 中むかしのころ□【幸】右衛門と いふて抑からいへばいせの 山田のものなりしにちと その身のりやうけん ちかいよりゆかた 一まいの身となり 江戸に出てなんそ 一ッやつてみよふと 芝の西の久保辺に うら店のいつけん 間口をかり昼夜き こんをくだいて案し けれどもなるほど四文の ぜにを三文にうるより 外の工夫もなくなんぞ 有りそなもんだとひざ共 だんかうしまくらや其外 すりばちすりこ木 ともそうだん しけれども すりばちと すりこ木は 只がら〳〵と いふあいさつ よりほかは 一切無御座 候だ 【左下】 あんまりあんじ こんだからねむけ がさしてきた ちとねころぼふか 【右丁 挿絵】 【上部】 幸右衛門 ある日 けふは きのへ ねなれば 大こく天へ まいらんと 小石川の大黒 さまへ参る道 にて小便を たれなからふと ぜに三文 おちて有を めつけければ これ天道さま のあたへ給ふ ところか たゞし 大黒 天のあたへ 給ふ所か うまれて 此かたついぞ ぜに一文ひろつた事の 【左下】 かゞみとぎとちがつて ほねはおれませぬ 【左丁 挿絵】 【上部】 ねへに今三文ひろいしは ありがた山のとんび とびたつばかりの うれしさも 三文ぜにを みつけ てとろゝと 内へかへり これをえて となしきつい あんじの三文が とうしんをかひ 眼がねの■みがきと いふをはじめける めがねとぎといふは おもしろいあんじ也 【右下】 イや わた しは いせ の国 の住 人サ 【左下】 こな さんは ■はり しなの かへ 【左中央】 こなこはいゝあん じとのそれでは はやろふス