恵比寿天申訳之記(ゑびすてんもふしわけのき) 我等諸神に留守居をあづかり罷居候ところ あまりよきたいをつりしゆへ一 盃(はい)をすごし たいすいにおよび候あいだをつけこみたちまち かなめいしをはねかへし大江戸へまかりいで 蔵(くら)のこしまきをうちくづしはちまきを はづし 諸家(しよけ)をつぶし 死亡(しぼう)人すくなからず 出火(しゆつくわ)いたさせはなはだぼうじやくふじんの しよぎやういたし候ゆへさつそくとりおさへ ぎんみ仕候ところ一とうのなまづは身ぶるひして 大におそれ 一言(いちこん)のこたへもなくこのときかしらだち たるとみゆるものつゝしんで申すよふ 「おそれながら仰のおもむきかしこまり候也此たび大へんの ことは一とふり御きゝ遊され下さるべし此義は申上ずとも御存の 義にしてはるなつあきふゆのうちにあついじふんにさむい日あり さむいときにあたゝかなる日ありかくのごとくきこうのくるひ 有てかんだんの順なるとしは少く候今年最ふじゆんなから ごゝくのよくみのり候は八百万神の御守り遊され候 御力による所也さて天地にかんだんの順のさだまり ありてはるなつと其きのじかうことの外くるひ候ゆへ わたくしともくにのすまひにては以の外おもしろき じせつになりたりとわきまへなきものどもちん しんのごとくくるひまはり候ゆへわたくしども いろ〳〵せいとうをいたせどもみゝにもかけず らんぼうにくるひさはぎ候よりつひに思ひよら ざる日本へひゞき御しはいの内なる ところをそんじ 候だんいかなる つみにおこなわるともいはい これなく候也され共わけて 御ねがひにはわたくしども のこりなく御かりつくし候とも そんじたるいへくらのたつにもあらねば まつしばらくのいのちを御あづけ 下されこれより日本のとちをまもる いかなるじかうちがひにてもこの たびのごときことはもうとう仕らず 天下たいへいごこくほうねんを 君が代をまもり奉り候べしと 一とうにねがひけるゆへわたくし より御わび申上候ところさつそく 御きゝすみ下されまことに もつてありがたく候 きやうこう十月のため よつて苦難(くなん)のことし   自身除之守(じしんよけのまもり) 東方 西方 南方 北方 梵字 梵字 梵字 梵字      右四方へはるべし 梵字 《割書:家の中なる|【てん上にはる】》 又守に入置【てもよし】