【この資料(4322 3)は同じものが既に翻刻されている。】 めのうちのけたかさあくまてあひきやうかましく てなか〳〵に見さりせはとおほしてむねのけふり はたちまさりてそおはしける正月のくわんにち の日の事なるにてうはいおくきやう参りあい給 ひけりみかとはしゝいてんに御出ありけるかしよ きやうてんの女御の御すかたまつみ参らせんとて みすをひきあげのそき給へはひめきみ日ころは なきほれいつとなく御かほをもばれうちしくれ ておはしますにいまはけしやうはなやかにして むめのにほひ十五にこうはいのうちきにもゑきの ひとへにこきくれないの御はかまにはれらかにて みかとのそかせ給へはあふきをさしかさしうちゑ み給へはあくまてけたかくあひさやうかましく まみくちつきいかなるゑしがうつすともいかてか にてもおよふへきみかと御らんしてあふきかさ しやうはいかにとてをしいらせ給ひぬとかふた はふれさせ給ふほとにくわうきよの御出おそく ならせ給へはとく参らんとて御出ありぬ御びん のふくたみてわたらせ給へはうんかくめをつけて 見参らせけるさすかにかたはらいたくおほしめし けんいそきいらせ給ひぬたゝししよきやうてんにの みこもりいらせ給ひて大しんんくきやうまいれと も出もあはせたまはすさるほとにとうの中将お はしまさぬ御ことをいかはかりなけき給はんすら んとおもひまふけておはするにおといをめし てこれなりし人そととはせ給へはおといさめ 〳〵とうちなきて中将殿の御出のゝちあけく れ御なけきさふらひしかいつくへやらん御出さ ふらひし御こひしさのあまりにたもともかはく まもなくとなみたもせきあへす申けれはなけく 御けしきはなくてゆき所ありけるよとはかり おほせありて大しんのもとへ入せ給ひぬちゝはゝ うちゑませ給ひてかゝりけるちきりをはしめあ やにくなりつることよ何事もしゆくせにてあり けるとてよろこひ給ひけるいまたおさなきお とい心のうちにつく〳〵とおもひけるはあはれひ めきにはさこそはかりなくおほしめしゝものを 中将殿のかくおもひわすれ給へるかなしさよお そろしの心やとおもひてそでをそしほりける さてもしよきやうてんよりして御ふれいのこゝち おはしけるか二月になり給へはかうをそはしめ させ給ひけるとうの中将をはみかとのれいけいてん をはすさめ給ひていつとなくしよきやうてん にのみこもりいらせ給へはめさましくおほして 大りへも参り給はす十らくかうにめせとも参り 給はねはみかとげきりんありてとうにてはいと まなき事にてあるにいつとなくさとにのみゐ たるよとおほせありけれは参り給ひけるはるの 夜の月くまなくしてかせものとけきはなさか りおもしろかりしおりふしのどかにくるまをや られしにさしぬきのうらにこはき物そあたり ける何やらんとて六ゐのしんをめしてみせられけ るにとり出してみれはなかに五六すんはかりあ るかたしろにひをふりあけてくはしくこれをみ れはおとことをんなとうちわらひていたきあ ひたるかたちなり身に物をそかきたるおとこの 身には大将のひめきみの事をそかきたり女御 の身にはとうの中将の事をそかきたる物なり 見るに身のけよたちおそろしくそおほゆる これらのしわさにてとしころふるさとのことはわ すれけり心うきかなやとおもひなみたこほれふ るさとの人そこひしき此かたしろを見るにお そろしとて心にうちすて給ふ六ゐのしん人に みせんとてたとうかみにつゝみて人にもたせた りその夜十らくかうのありつるにこもりゐさせ 給ひて出もやり給はす中将はにはかに心に物 をおもひよろつなみたもれ出て何事もかなしか りけれは心もすみわたりふくふえもおもしろく みかとせんじあるやういつとてもさねあきらかふ くふえのおもしろからぬことはなけれともことさ らこよひこそおもしろくおほゆれ出やろくひる むとてせいりやうてんのたなにこちくのふえあり なをはをとまると申せしをめしよせてこれは なたかきふえなりうしなふへからす              とてにしきの             ふくろに入なから               給はりけり 【挿画】 めんほくかきりなしとて中将殿そのあかつきほけ 〳〵としてちゝの大しんとのへ参り給ひぬゆふへ のものとり出てひろうするにきたのかた御らん して大しん殿はよもし給はしきたのかための とのしわさにてあるらんかなはすはさてこそあら めかやうのことを仕つらんことこそほひなけれよし 〳〵おとなせそとてひそめられけり中将殿は御 世の心ちありとてわかかたにさし入さしも出さ せ給はすありし所のみすかう〳〵おろし奉るを あけ見給へはさゝがにのいとひき見たしよりく る人もなけれはちりはいのみつもりてさほに かけたる夜のふすまならへしまくらのひとつになり とりひそめたるけしきことびわもふきしふえも ひとゝころにとりそへことのかしはかたのもとに もひわのふくしゆのもとにもふえのあなの中に もうすやうにかきたる物あいとり出して見給へ はありし人之手なりよみつゝけて見給ふに なみたもさらにとゝまらすかすかにすみかな しく  こらへてうことそかなしきふえたけの  うきふし〳〵にねをのみそなく  つらからはわれもこゝろのかわれかし  なとうき人のこひしかるらん 人の御心をうらむへきにあらすたゝうき身のほと そかなしきなとかゝれたりけれはことはりせめてか なしさにふみをかほにをしあてゝなくよりほか の御ことわたらせ給はすされともいつくへかゆくへ きはつかしけれともかくてこそいつらめとおほせ ありてわたらせ給ひしを大しん殿よりわらはを 御つかひにて中将はいまはこれへはくましき人 なり御つれ〳〵におほさは中将かめのとのかすが かもとへわたらせ給へとおほせ候へはうけたまはり ぬと御返事申させ給ひてのちひめきみなきか なしみていつくをさしてたれをたのみていくへき ゆきかたもなくなりぬる事のかなしさよふちせ のそこへもいらはやとなきかなしみ給ひしかはわ らはもしゝうもなくよりほかのことさふらはさりし につきの火むかへの御くるま参りて出させ給ひし にわらはも御ともに参りさふらはんとなけき申 せしをわれもうはのそらにいつる物なりいつく にもおちつきところあらはよふへしとおほせ有 て御出さふらひしのちは何とならせ給ひて候 やらんゆくゑうけ給はらすとなく〳〵申けれは 中将殿これをきゝ給ひていとゝかなしくてきえ 入心そせられけるいかにわれをうらめしくそお もひ給ひけんおもはぬほかのことにまよはされて わかれぬるかなしさよたゝなくさむことゝてはおと いにあひてかたり給ふはかりなりさるほとにこしゝ う殿中将少将御かせのとふらひにいらせ給ひたれ共 出もあひ給はす大将殿のきたのかたおもはれさ るはあわらこのことのあらはれたるやらんとて世に はつかしくそおもはれける御めのとより                 あひては              たゝこの事をそ               なけき給ひける 【挿画】 中将殿はふししつみて大りへも参り給はすさ すかにいのちきみもうせ給はすして三月にそな りにけるさるほとに京中にさたしあひけるは しよきやうてんの御なやみはへりの御事にてはな かりけり御くわいにんにてわたらせ給ふとそあ ひけるそのとき中将殿おほすやうたうじのしよ きやうてんよにきこしておほえのいみしきはもし わりうしなひし人にてやおはすらんみてもなく さまはやとおほしてにはかに大りへ参給ふかせ の心ちすこしよくなりひさしく参らねはたい りへ参らんとて出給ふちゝはゝない〳〵いかなること かあらんとおもひつるにはりし心ちおはすれはう れしくおほしける中将殿は大りへ参りておは しけれともれいのみかとはみすのうちにこもりいら せ給ひて出もやり給はす日くらしまておはして その日もくれけれはしよきやうてんのせいりやう てんへいらせ給はんをみんとおもひてくわいりてん のほそとのゝみすのきはにさしそひて中将のそき 給ふほとにせいりやうてんへおそくのほらせたまふ とて御つかひの女はうたちゆきちがい参り給ひけ れともとみにも出給はすあまりにしきりなり けれはことのほかにおほしてしよきやうてんは女 はうたち廿よ人御ともにてしつかにあゆみ出させ 給へりさきにしそくさしたる女はうしゝうにて そありける中将むねうちさはく所に御きぬの つまとりてさらにたちそひたる女はう二人はき よみつにてひめきみをけうくんせし御めのとおや とおほへたりあふきさしかさし給ひし御はづ れより御かほあさやかにそ見へけるわかいにしへ のひめきみにておはせしかはむねうちさはき身に たましゐもさたまらすあゆみいらせ給へはみかとま ちかねさせ給ひてゆきむかはせ給ひあいのしや うじを御てつからあけさせ給ひていらせ給へはよ こさまにかきいたき給ひて御ざのうへにすへ御く しをかきなてゝ何の御ようの候へはおそくはいら せ給ふそ御さしあひの御いとまこそおもひやられ 候へとうちゑみておほせのありしかはしゝうも御め のとの女はうもみな〳〵いならひてある御めてた の御さいわいやと見あけ参らするもことはりと そおほく侍る中将かくとみつるよりしてたうり のくもへものほりちいろのそこりうくうしやうへも 入たくあまりの心うさにしもゆきともたち所に きえうせはやいきて物をおもふ身はいかなるつみ のむくひそともたへこかれ給へとせんかたなくあ まりにかなしくて         夜うちふけて              なく                〳〵            大りを                出給ふ           みちすから               おもひ                つゝけ                  給ふ 【挿画】 過にし月のくわんさんのあしたみすのきはをとを りしにたき物たきてけふたきまてにあふさか けしはしたうかしわさにてありけりなさけなく あたりおひいたしたれともわれはかくある物なと ときめきたるけいきかなとおもはせけるほんふの 身こそかなしけれひめきみのさこそ見たし給ひ てつれなくの給いつらんたれか申てうちへ参り 給ひぬらん心うかりつる事かなかくしりたらは何 といまゝてなからへてかゝるうきめをみるらんつく 〳〵おもひつられはこよひは御ふすまのうちに 御へたてなくこそ御とのこもり有らんとおもひ やられてかなしさよ心うしわれこの世になから ふへしともおほらすおもひつゝけてわかくたに 入おといをめしてふしきのことこそあれこれに ありしひめきみをこそみつれとの給へはおといを きあかりあらふしきいかゝして御らんしけるそ はや御物かたりあれと申けれは中将なみたをお しとゝめてあらふしきやたう〳〵ときめき給へ るしよきやうてんは此ひめきみなりしゝうもふる さとのめのとおやこもみなそひ参らせてありつ るなり此  ろみいたしてさこそつれなくみ給 ふらめなさけなくおいいたさすはれいけいてんも なりそらにはよもならしわれも物はおもはし をといもよもなけりしあはれつらかりけるふた りのおやの心やみなやみにまよひわか身もよき 心はましまさしわかこれにあらん事もけふと あすとのほとなりわかあらんかきりはをといもめ されしわかなからんのちはしゝうをたつねてしよき やうてんへまいれなしみの事なれはおひ出したま はし六ゐのしんにもたせたりしかたしろのことを も参りてありのまゝに申すへし物のまよはかし の身と成てついにわかれ参らせこんしやうこそ かくうすくともらいせにてはひとつはちすの身と なり参らせんと申せなんちもわれにそい侍ると おもひてしよきやうてんへ参りてつかうまつるへき なりこれそわかれ成けれはこしかたゆくすへの こともかたりてはなきそてもしほるはかりなりけ れをといもあまりのかなしさにこゑをたてゝそ なきける中将なみたのそこにの給ふやうみかと より給はり候ひしこちくのふえわか身こそいて てゆくとも子といふもの有ならはなとか此ふえ ゆつりさらんつたふへき人もなけれはもとの御た なにこそおかんすらめあはれこの世になこりもな きわか身かなとてなき給ふつく〳〵おもひつゝ けておもふもくるしいまは出なんとおほしてひさ しく参らねは大りへ参らんとて参り給ひけ るこれをかきりなりけれはをとい御たもとにと りつき参らせてこゑもおしますなきかなしみ けり中将せんかたなくはおほしけれともさた有 へき事ならねは御しやうそくはなやかにてめさせ ける御くるまさつしきせんくうさふらひみすいじ んにいたるまてきよげにて出させ給ふちゝはゝを 見参らせむこともゆめならてはみ参らせしとお ほして御まへに参り給ひてゆぐさりはとくか へり候はんとそ語られけるのちにおもひあはせ てさいごの見はてなりけるすてに出給ふ時おとい をめしていとま申てみな人はつらけれともなん ちはかりは人之かたみおもへはなこりをしくこそ おほゆれしゆつけせさしんさきに人にかたるへから すちきりしこと〳〵しよきやうてんへ参れかへす 〳〵もなんちはいかならん世まてもわするましい とま申とておのかひぬおといは見をくり参らせて 人めにつゝむなみたのおそふるそてにあまるをさ らぬやうにもてなしてあやしの           ふしとにかへりてなくより             ほかのことそなし 【挿画】 中将殿大りへ参り給ひてみかとをいま一とみ参 らせんとおもひて一日ゐ給ひけれともれいのしよ きやうてんにこもりゐさせ給へはあからおよはす日 もくれけれはをとまるといふ御ふえをは御ふみ かきそへてせいりやうてんのみたなにをかれけり さてくわいりてんのほそとのゝみすのきはにたち そひて見給へはしゝうしそくさしておもふ事なく とをりけれは中将うれしくおほしめしはかま のこしをひかへたりしゝうたれなるらんしりかひに ひかふるとおもひてたちとゝまりてみれは中将殿 なりけりさも心もまとひしらせ給ひけるよとおさ れてそありけるさてもとおもひいかに候そと申 けり中将殿とうくわんでんのひかしへわたらせ給 へ大事に申へきことありとそおほせ有けれはしゝ うもちたるしそくをうちすてゝとうくわんてんの 大ゆかをひんかしへむきてあゆみゆく中将殿はな んていをひんかしへむきてあゆみ給ふせんとうの ましはりもいまはかりなんていのさくらくまなき 月のかけをみるにもいまをかきりなるへしもゝし きのうちをあゆみいさこにひゞくくつのおと〳〵こ れをいさことおもふになみたをおしとゝめてつ ゐにたふさをきられけるとうくわんてんのひんかし うらにてしゝうにゆきあひけり中将なみたもせ きあへ給はすなをしのそてをかほにあてゝさめ〳〵 となき給へは何となくあさましういかなる事な るらんとむねうちさはきてかなしきに中将ふと ころにうすやうにつゝみたる物をとりいたししゝう にそとらせけるなみたのひまにおほせありけるはち きりはくちせぬことなれはみ山のおくへまかりいり ことのふしきのありさまはをといくはしく申すへ し物のまよはかしの身となりたぐひなきわかれ のせめてしのひかたけれはうき世をいまはすては て侍るへししんしやうこそかくうすくともこしやう はかならす一つはちすの身となり参らせんたいり せんとうをまかり出ぬる身なれはなとかはおほし わすれさせ給ふへきうき身のとかはこのゝちこけ のたもとをしほりかねいつの世まてもわすれし つゆもおろかなるましまたおといもこひかなし み参らせ候事かきりなしめしよせてわかかたみと おほしめしてつかはせ給へかへす〳〵御なこりこそ申 つくしかたく候へと申させ給へはしたうこれをう ちきゝせんかたなくてたゝなくよりほかの事そな きしたうなみたをとゝめ申やうなれちかつきまい らせてはなれ参らすへしともおほしす候しに おもはぬほかにとをさかり参らせて候へともよそ にても見参らすれはたゝそひ参らせたるこゝち して候つるにこれをかぎりとおほせ候へは心う くかなしくこそ候へとてもたへこかれけれともさて 有へき事ならねはすてに月かけにしの山のはに かゝりけれは中将いとま申とてなこりをそてに つゝみてつゐに出給ふしゝうもたいけいもんまて あゆみ出侍るすてにくるまにめしけれは月かけ くるまの物みよりさし出てあはれをすゝめけれ は中将殿せいかいのよるの月いゑ〳〵のおもひ少々 ゑいしてくるまをやり出し給ふしやうもんのま へにふしまろひかなしみけりすてにくるまとをさか りけれはこゝよりやかてそぬき出しふき給ひけ れはくるまのとをさかるにしたかひてふえのをと とをくなりけるさるほとに夜もはやほの〳〵とあ けくれはしゝうもかへり侍りけり中将殿はせきさ んにゆきくるまをはみやこへかへされけり六ゐの しんとたゝふたりひえの山へのほりてよりはといふ ところにとしころしりたるひしりをたつねておは してしゆつけせんとありしかはひしりおほきに さはきてみやこへかくと申さら〳〵かなふましき よし申けれはひしりをしるといふことはかやうの ときのようにてこそあれ何のせんかあるへきと のたまへはそのときひじりけにもとてあからな くおぐしをそり侍りきそのうゑ御たふさをははや みやこにてきりてのほり給ひけれは        ひしりも          このうへは         いなと申に           およはす         かいをさつけ       御ころもをそ           参らせける 【挿画】 御とし廿二六ゐは廿三をしかるへきよはひなり はなのたもとをひきかへこきすみそめに身をやつ しをこなひすまし給ひけりさるほとにゆふへう すやうにつゝみて給はりつる物をけさひめきみに 参らせけるをひろけてみ給へはみとりのたふさ なりけりよのほとの事なれはらんしやのにほひく んしてうたをそかゝれける  かすならぬうき身のとりをおもはすは  ちきりしことをとゝなひてまし  きみゆへに身はいたつらになりぬとも  あはれをたにもおもひをこせし またしたうことのよしを申けれはひめきみしゆつけ せんといひしかけに出給ひけるかとよあさまし やとうちおもふまゝにれいのまにたもれ出てつゝ ましくおもひ給ふ所にみかと入せ給へはとりひろ けたる御たふさをしまきてふところに引入さら ぬやうにてたちのきぬみかと仰ありけるはあはれ なる事こそ出き候へさ大しんのひとり子にとう の中将さねあきらといふものみめもよく心はへ もさか〳〵しく人にすくれたるかこぞよりさ大将 のむこにてきら〳〵しくふるまひれいけいてんに はあになれはゑてふるまひつるものをきのふ 一日これに有しはなにのようそとおもへはわれを みんとおもひけりとらせたりしふえをもふみかき そへてもとのたなにおきてゆふへひえの山へのほ りしゆつけしたるとつげたりそのおもひのつゐて にれいけいてんもたゝいま出つるなりあはれよか りつる物をなに事にしゆつけしつらんいかに ちゝはゝのなけくらんとおほをなみたくませ給へは ひめきみさてはよそなからもいまはみ侍らし とうちおもふまゝにつゝむなみたをせきかねてこ しをたてゝわつとなき出給ふその時みかとおほす やうひめきみのこの日くらうなきしほれ給ひし をあやしくとおもひつるにこれにて有けりと きつとおもひあはせ給ひけるさてもなをなけき給 はんといたはしさにさねあきらかゆへともとはせ 給はすしらぬやうにてついたらせ給ひけるさ大将 のひめきみはわれをはにらむよとしりなからさて 有へきにあらされはかみをおろし給ひけるたい しんとのもたらぬおもひのかなしさに御しゆつけあ りてさてしも世をはたれにゆつらんとかなし み給ふさるほとにしよきやうてんはくわいにんのか たちにさたまり給ひけれはみことは四十にをよ はせ給へともみやもわうしもいつれの御はらに もわたらせ給はねてなのめならすよろこはせた まひけり御さんじよはいつくにてもや有へきとの 給ひけれは御めのと申やういみしからん品は三条 殿を御しつらひありて入参らせ給へかしと申けれは まことにさるへしとて三条殿を御しゆり有けり くにをよせしよりやうをよせてつくらせ給へはほと なくつくらせ給ひてさと大うちとそ申すけるさて も御さんしよの御つれ〳〵いかゝせんみことおほして しよきやうてん三条殿へ入せ給へはありつけ参 らせんとてみこともみゆきなりけるかく三条との のさかへさせ給ふ時こそ大しん殿もくきやうてん上 人もきんさねの中なこんのひめきみとはしりたり けれさてやすらかに御さんならせ給ふわうしにて そわたらせ給ひぬめてたさかきりなしさておとい をそめされけるむかしかたりにそてぬれてほしも やらぬふせいなり中将のかたみとおほしめしけれは つゆもをろかならすとてをといまちかくめされて わうしの御めのとにそめされけるまたつゝきて わうしおきさせ給ひけりそふしてこのはらに三 人ひめきみ二人出きさせ給へはかたしけなさかき りなし三人のわうしの御そくゐけんふく有けるに めのとかたりみな〳〵くわんをそ給はりける御めの なとくきやうてん上人之うらやまさるはなかりけ りかゝる事を見きくにつけてもいよ〳〵きよみつ のくわんおんを       しんすへし           〳〵