延寿撮要 【参照資料:国会図書館デジタルコレクション>日本衛生文庫>第6輯>延寿撮要 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/935573/127】 ●模範解答付きコレクションは、国会図書館が公開する翻刻本を参照資料として、自分で答え合わせをしながら翻刻を進めることができるコレクションです。 ●参照する翻刻本では、かなを漢字にしたり、濁点や句読点を付加するなど、読みやすさのために原書と異なる表記をしている場合があります。入力にあたっては、「みんなで翻刻」ガイドラインの規則に従い、原書の表記を優先し、見たままに翻刻して下さい。 ●参照する翻刻本と原書の間で、版の違いなどにより文章や構成が相違する場合があります。この場合も原書の状況を優先して翻刻して下さい。 延寿撮要総目録   養生之総論  〇言行篇 一四時昼夜之動静 一導引按摩 一行立坐臥 一喜怒哀楽 一視聴笑語 一二便 一衣著 一浴沐 一抜白髪去爪甲  〇飲食篇 一飲食適中 一五味 一朝暮食法 一飲食之慎 一合食禁 一月禁 一飲酒之慎 一喫茶之慎  〇房事篇 一陰陽和合 一慾不可早 一泄精有限 一房事雑忌 一慾有所避 一交会忌日 一求子息 延寿撮要  養生之総論 黄帝問_二 ̄テ岐-伯_一 ̄ニ曰 ̄ク余聞 ̄ク上-古之人 ̄ハ春秋皆-度_二百-歳_一 ̄ニ而動 作不_レ衰 ̄ロヘ今時之人 ̄ハ年至_二 ̄テ半百_一 ̄ニ而動作皆衰 ̄ウ時-世異-耶(カ) 人-将 ̄タ失_レ ̄フ之 ̄ヲ耶岐-伯対 ̄テ曰 ̄ク上-古之人其知_レ ̄ル道 ̄ヲ者 ̄ハ法於陰 陽和-術数-食-飲有_レ節 ̄ツ起-居有_レ ̄リ常不_レ妾作_レ ̄ル労 ̄ヲ故 ̄ニ能 ̄ク形 ̄チ与 _レ神 俱(トモニ)而尽 ̄シ終 ̄ル其天-年今時之人不_レ然 ̄ンセ也以_レ ̄テ酒 ̄ヲ為_レ漿 ̄ト以 _レ妾為_レ常 ̄ト以慾謁_レ ̄シ其精_一 ̄ヲ以耗-散 ̄シ其-真 ̄ニ不_レ知 ̄ラ持-病不_レ時御 神務_レ ̄シテ快其心逆於生薬故半百衰 ̄テ也云云 右の本文をあんするに上古の人は無為無事 にして自然に養生の道に合す中古にいたり て人の智慧盛にして善悪をわかち名利を専 とし衣服をかさり酒色をこのみ形神を労 す故に天年をつくさすしてはやくほろふ黄 帝の時さへかくのことしいはんや今の世 をや道に入といひてあなかち山林に入世を 離るのみにあらす朝夕世俗にましはりても 言行さへ道にかなひぬれはすなはち道に入 人也少壮の時より常に道をきかはいかてか 道にいたらさらむしかるに養生の道いろ〳〵 云は千言万句約していへは惟これ三事のみ養 神気遠色慾節飲食也此事易簡なれとも人これ をきかすもし聞人あれとも其身に行ふこと なし少壮の時気血盛実なるゆへに酒色を 恣にし身心を労しても忽ち所に病にいたら さるによて寿算の損減するをしらす中年の 後漸おほえて命をのへん事を求む日暮て道 をいそくにことならす人の寿をいふに天元 六十地元六十人元六十三六百八十年の寿を生 れ得るといへとも摂養道にたかひぬれは日 日月々に損減して夭枉をいたす精気かたか らさる者は天元の寿減す起居時あらす喜怒 常ならさる者は地元の寿減す飲食節あらさる 者は人元の寿減す故に保養の道少より壮に いたり壮より老にいたるまてかくへから す聖人治未乱而不治巳乱治未病而不治巳病云云 既に病と成て後はよく医療すといへとも全 くいゆる事かたし未病の時治療するを養 生者といふへし孫真人云人年四十以後美薬当 不離於身云云誠に中年の後は気血をやしなふ薬 常にもちふへし但平補の薬食を用へし峻補 を用へからす又強て補薬をこのむへからす 薬は邪をせめかたふく所を平にする者也生 れつかさる気力を薬にて生する事風なきに 波を起すなるへし洞神真経曰養生以不損為延 年の術云云補陽の剤を過し用れは真陰耗減して 瘡痬淋渇の疾生す補陰の剤を過し用れは胃 の気虚冷して飲食消しかたく大小便たも ちかたし又衆病積聚起於虚云云中下焦虚するに よて心腹満悶する事ありしかるに虫を殺し 積を消する薬を用て重て中気を耗損す又す こし風寒の邪に感して発散の薬を服する 事度度に及へは腠理空疎にして自汗盗汗出て 外邪いよ〳〵入やすし又おもく邪に感せ は皮膚にある時はやく薬を服して汗を発す へきに其時怠て病骨髄に入て後薬を求む十 に一も愈事なし扁鵲桓公の故事思あはす へし只邪の軽重をわかたん事を要とす是よ りさき養生の書あまた異朝よりきたるとい へとも俚俗の者たやすくわきまへかたし 故に古今の書を互見し萃を抜要を撮て倭俗の 辞にて是をのふ庶幾田父里嫗にいたるまて あまねく此道を聞て常におこなひつヽしみ  身心安楽にして寿域にいたらむことを    〇言行篇 一四時昼夜の動静 夫人の一身は天地のことし頭のまろきは天 にかたとり足の方なるは地にかたとる眼は 日月毛髪骨肉は山林土石呼吸は風血液は河海四 肢は四時五臓は五行六腑は六律かくのことく 皆天地かたとるゆへに起居動静天地にし たかふを要とす日出て動作し日入て休息 すへし又春夏は天地の気のほりうかひて草 木の花葉も武盛し虫獣も飛動す秋冬は天地 の気くたりしつみて草木も根に帰し鳥獣 も巣穴に入人も其ことく春夏は形をも動し神 気をもうかはしめ秋冬は形をも静にし神 気をもしつましむへしかくのことくなら は気血和順にして筋骨の病生すへからす然る に今の人夜は深更にいたるまていねすして 昼は巳午の時まてふす剰飲食して後又睡臥し  又春夏陽気の時室に入て昼寝し秋冬陰気の時  山野に出て鳥獣を猟て形を労し風寒をい  とはす是誠に諸病の生するはしめなり 〇春は夜臥て早くおきひろく歩して神気を生  せしむへし 〇夏夜は臥て早くおき気を散すへし怒ことな  かれ 〇秋は早く臥て早くおき神気を収歛せしむ  へし 〇冬は早く臥てをそくおき必日ののほるを  待へし志を伏せしむへし 〇夏もし甚寒く冬もし甚熱する事あるは  不正の気といひて天地の気のあしき也此時  外に出て是をあたれは時気をやむ也つゝし  むへし 〇炎暑の時日にあたる事なかれ涼しき所に坐  すへし又甚涼しく風のとをる所に居へ 〇冬寒の時外に出て寒にあたるへからす又炭  火にあたりて甚熱すへからす汗を出すへ  からす 〇冬夏によらす俄に大風震電して天地のくら  くなるは諸竜鬼神の行動する也其時外に出  て是にあたるへからす室に入て戸をとち  焼香して心をしつめ是をさくへし 一導引按摩  夜半の後或は五更或は時にかゝはらす無事  閑坐空腹の時帯をとき衣をくつろけ腹中の  濁気を微々に呵出する事九通或は五六通其後  心をしつめ目を閉て歯をたゝく事三十六遍  すへし神をあつめ牙根をかたくする也其後  大指の背にて目のまかしらましりを拭こと  九度すへし目を明にして風をさる也又鼻の  左右をおしする事七度次に両手を摩合せき  はめて熱せしめ口鼻の気を閉て面を摩すへ  し皺を去て面に光ある也又耳根耳輪を摩す  へし聾を治する也其後舌にて唇齗㬽をすり  津唾口中にみつれは呑こと三度一口を三次に  のみて三口を九次にのむへし虫を殺し虚  を補ふ也又常に唾を吐へからす唾は身のう  るほひと也腎の根源に帰る尤おしむへき  もの也又左右の手にて腰をうち又足のうら  涌泉の穴を摩すへし気血を流通し風湿を  去て腰脚の病なかるへし 一行立坐臥 〇朝起て床よりくたるには左の足を先にく  たすへし万事吉祥也 〇朝おきて口を瀬に先塩少許口中に入牙歯を  すり手の中に吐出して眼をあらひ其後温湯  にて面をあらひ口をすゝくへし常にかく  のことくすれは老年にいたりても牙根堅眼  明也但人によるへし血のすくなき虚眼には  よろしからす又常に目を開て面をあらふ  事なかれ目渋て明を失する也又常に熱湯に  て口を瀬へからす牙を損す 〇朝起て髪をけつるに櫛数百余おほくけつる  をよしとす又不時にも梳へし風をさり気  を流通し目を明にする也 〇朝起ていかる事なかれ 〇朝起て錢財をかそふへからす 〇朝起て空腹に尸を見事なかれ臭気鼻に入て  毒となるしゐて見へきならは酒をのみて後  みるへき也 〇早朝に空腹にして路に出るには生薑を煨し  て少許口中に含へし霧露におかされす又飯  を食し酒をのめは瘴気をさる也昔早朝に  霧の中に三人同行す一人は空腹一人は粥を食  す一人は酒をのむ空腹の者は死し粥を食す  る者はやみ酒をのむ者はすくやか也酒の性  は風寒霧露をふせき邪気をさる故也但大に  酔へからす 〇暮て形を労役する事なかれ 〇暮て霧露をみる事なかれ 〇臥床は高して湿気なきをよしとす又せはき  所に臥へし広けれは坐中に風生し寝中に  おそはるゝ事おほし 〇坐臥の辺に□あらはきひしく寒へし賊風  脳にあたれは頭風をやみ寿短 〇臥て風にあたる事なかれ扇をつかふ事な  かれ 〇寝所の頭の辺に火炉を置へからす頭重く目  赤く脳癰発する也 〇凡春夏は東に枕し秋冬は西に枕すへし常  に北に枕すへからす 〇菊花の枇頭痛を治し目を明にす一説にく  しくすれは脳冷と 〇枕の内に麝香の臍一つをけは邪悪の気をさ  けて悪夢を見すをそはれす 〇臥時雄黄一塊身に帯れはをそはれす又深山に  行に雄黄一塊五両のおもさ身に帯れは悪蛇ち  かつかす一説に雄黄を焼て衣を薫すれは毒  虫ちかつかす 〇灯を照して臥へからす神魂安からす 〇虎豹の皮の上に睡へからす神魂驚也又虎豹  の毛瘡に入は毒となる也 〇夜悪夢かたるへからす鬼神の事かたるへ  からす皆神魂安からす 〇星月の下に裸にて臥へからす 〇臥て魘てものいはすは足の跟并大指の甲の  辺をいたむほとかむへし高声に急に喚へ  からす灯を照すへからす初より灯あらは  其まゝをくへし 〇雷鳴の時仰に臥へからす 〇塚墓の傍に坐臥すへからす 〇夜路を行時歌叫ことなかれ 〇常に膝をかゝめてよこさまにふせは気力  をます覚時足をのふへし仰に足をのへて  臥はをそはるゝ事おほし又冬は足を伸  て臥へし一身俱に暖也 〇臥て両足をならへされは夢泄の患なし 〇寝起て風にあたる事なかれ 〇夜ふさんとする時塩湯にて口を瀬へし牙を  かたく腎気をます 〇眼さめて水をのみて又眠へからす腹中にか  たまりを生する也 〇飽満して即臥へからす積聚と也気痞となり  腰痛となる 〇汗おほく出て裸にて臥へからす中風となる 〇数日の旅行には屋の角によりて足をかゝ  めて臥へし次の日足すくます 〇昼眠へからす元気を損す但夜中寝さる事あ  りて神気労せは昼といふともしはし臥  へし 〇臥時必口を閉へし口を開て臥は気失し邪  悪口より入也 〇常に食後に温水にて口を瀬へし歯の疾なく  口臭からす熱湯にて瀬へからす歯を損する  なり 〇常に北に向て坐すへからす 〇夏冷床に坐臥すれは疝気を発す冷物を枕に  すれは眼くらくなる 〇夏熱したる石に尻かくれは瘡を生す 〇大寒大熱大風大霧の時は室に入て是を避へし 〇夏頭面を露にして臥へからす 〇冬頭面を覆て附へからす 〇冬夜臥て厚衣を覆て太暖なる時は睡覚て必  目を開て毒気を出すへしかくのことくすれ  は目の疾なし 〇久しく立は骨をやふる久しく行は筋をや  ふる久しく坐すれは肉をやふる久しく臥は  気をやふる 〇常に坐するに日に背事なかれ 一喜怒哀楽 〇喜楽きはむへからす魄をやふりて恍惚す  れは也 〇おほく怒へからす甚いかれは気逆し血乱  鬢髪焦筋痿て労となる食時いかれは食胸中  に滞る 〇常に思慮すくれは気胸中に鬱滞して痰とな  り腷噎翻胃となる食時思慮すれは食消し  かたし 〇久しく優れは肺気を損して労となり背  いたむ 〇女人憂思哭泣甚しけれは気結して月水少く  体痩内熱せしむ 〇悲哀の事あれは神魂離散す久けれは脇痛筋  痿皮毛悴面の色あしくなる也 〇恐怖甚しけれは筋骨痿弱し精をのつから  漏下す或は狂乱す 〇大驚は神魂安からす 〇甚愛すへからす甚憎へからす 一視聴笑語 〇眼に悪色を見事なかれ耳に悪声を聞事なか  れ 〇目を極て物を見事なかれ 〇遠を見事なかれ 〇久しく見事なかれ 〇細字を見事なかれ 〇日光を見事なかれ 〇金色白色赤色皆眼力を損す青黒の屏風眼によ  ろし 〇端午の日血物を見事なかれ 〇虹蜆に指さすへからす 〇魚鳥獣の油灯に点すれは眼を損す 〇早旦に悪事をきかは其方に向て三度唾はく  へし 〇灯火口にて吹けすへからす 〇麝香鹿茸に細虫あり齅へからす虫鼻に入脳  に入て害をなす 〇臘月の梅花齅へからす鼻痔を生す 〇おほく笑事なかれ神気傷て恍惚し或は  腹痛す 〇多言することなかれ気を損す 〇行歩の時語へからす気を失す語へき事あら  はしはらく足をととめてかたるへし 〇夜臥て言語すへからす 〇食時言事なかれ 〇臥てうたふ事なかれ 〇朔日に笑へからす晦日に歌へからす 〇冬至の日言事なかれ人の問事あらは答へし  自言事なかれ 一二便 〇凡飽満しては立て小便し飢ては坐して小便  すへし 〇小便をいきつめは足膝冷 〇大便をいきつめは腰痛眼渋 〇小便を忍れは淋病をやむ或は腰膝冷痺す 〇大便を忍れは痔をやむ 〇大小を忍て飲食し或は行歩し或は馬に  のれは胞転の病となり小腹痛大小便通せす  甚しけれは死す 〇日月星に対して大小便すへからす 〇夜西北に向て大小便すへからす 〇神仏の堂廟にて大小便すへからす 一衣著 〇春氷いまた□さる間は衣の上を薄く下を厚  くすへし春衣を薄くすれは食消せす頭痛  する也 〇凡衣は寒にさきたちて著熱にさきたちて  ぬくへし 〇衣は甚厚をこのます皮膚甚暖なれは汗出  やすくして却て邪に感しやすし又はな  はた薄衣にして皮膚冷れは肺邪を受て清涕  出甚しけれは咳となる 〇汗大に出は衣をかふへししめりたる衣を久  しく著すれは瘡疥生し大小便利せす 〇頭を露にして風寒にあたるへからす咳痰  頭風を発す又厚綿にて厚綿にて頭をつゝむへからす  脳中熱して頭痛眩暈する也 〇酒に酔汗出て韈を脱して風にあたれは脚  気中風となる 一沐浴 〇頻に髪あらふへからす形痩体重なる也 〇頻にゆあふる事なかれ血凝気散する也 〇飽満してかみあらふ事なかれ飢てゆあふ  る事なかれ 〇沐浴しては少飲食を進へししからすして臥  は心虚して夢おほく汗出也 〇沐浴していまたかはかさるに眠へからす 〇午より後髪あらふへからす 〇目疾の人かみあらふへからす常にしけく  髪あらへは目を損す 〇女人月水の時髪あらふへからす 〇汗出て冷水にて浴する事なかれ 〇夫婦同室にて沐浴すへからす 〇酔いまた醒さるに冷水にて面を洗は面に瘡  生す 〇冷水にて頭をあらへは淋病をやむ 〇ふさんとする時温湯にて足を洗へし常にか  くのことくすれは脚気の疾なし 〇刀をときたる水にて手をあらへは瘡癬を生  す 〇遠行に熱する時冷水にて面をあらへは鳥皯  を生す 〇炎暑の時冷水にて足洗へからす 〇雪中に行歩し来て熱湯にて足を洗へからす 〇冬寒にあたりて寒いまた散せさるに熱湯  にて浴すへからす 〇毎月晦日に浴し朔日に沐すへし万事吉祥  なり 〇正月一日五木湯にて浴すへし髪黒く又疾を  去五木とは桃柳桑槐楮也一説には青木香を五  木と云と元日に小便を取て腋気をあらへは  愈也  八日沐浴すれは災難を去  十日亥の時沐浴すれは疾を去 〇二月六日八日沐浴斎戒すへし  八日戌の時沐浴すれは身軽し  上の丙の日髪あらへは疾愈 〇三月六日申の時頭を洗は官に利あり  六日酉の時沐浴すれは厄を禳  七日寅の時の浴酉の時の浴皆財を得る也  廿七日沐浴すへし 〇四月四日未の時沐浴すへし  七日髪あらへは大に富  九日酉の時浴すれは命をのふ 〇五月一日日中に沐浴すへし身光ありて万事  吉祥也 〇六月一日髪あらへは疾を去災を禳  六日沐浴斎戒すへし一説に六月六日沐浴すれ  は腋気生すと  七日沐浴すれは疾を去災を禳  八日廿一日廿七日右に同 〇七月二十二日髪あらへは髪白からす  二十五日浴すれは長命也又二十五日早食の時  沐浴すれは道に進へし  立秋の日浴する事なかれ皮膚あれかはく也 〇八月三日浴すへし  七日髪あらへは聡明也  廿日浴すへし  廿ニ日卯の時沐浴すれは災を去 〇九月廿日沐浴斎戒すれは万事吉祥也  廿日鷄三唱の時沐浴すへし  廿八日浴すへし 〇十月一日沐浴すへし  十八日鷄初鳴の時沐浴すれは長命也 〇十一月十一日沐浴する事なかれ  十五日夜半の後沐浴すれは憂畏の事なし  十六日休浴へし 〇十二月一日沐浴すへし  二日浴すれは災を去  八日沐浴すれは罪をのかる  十三日夜半に沐浴すへし  十五日沐浴すれは災を去  廿三日髪あらふへし 〇枸杞湯にて沐浴する日  正月一日  二月二日   三月三日  四月八日  五月一日   六月廿七日  七月十一日 八月八日   九月廿一日  十月十四日 十一月十一日 十二月三十日  毎月此日枸杞の煎湯にて沐浴すれは身光沢に  して無病無老也 一抜白髪去爪甲  正月四日早晨に白髪を抜へし  甲子の日白髪を抜て晦日に井華水をくみて  服すれは鬚髪白からす  寅の日白髪を焼へし 〇二月八日白髪を抜へし 〇三月十一日十三日右に同 〇四月十六日右に同 〇六月十九日廿四日右に同 〇七月廿八日右に同 〇八月十九日右に同 〇九月十六日右に同 〇十月十日十三日右に同  十一月十日十一日右に同  十二月七日右に同  右の日鬢髪の白をぬけはなかく生せす 〇凡寅の日手の爪をきり午の日足の爪をきる  へし   〇飲食篇 一飲食適中  扁鵲曰安身之本必資於食不知食宜者不足以存  生云云  世俗右のたくひを見て命は食にありと云て  強て食するをよしとす大なる誤也あかす飢  さる程に食すへし又食物の宜とよろしか  らさるとを弁て益なき物をはおほく食すへ  からす禍従口出病従口入云云 一五味  経曰謹和五味骨正筋柔気血以流腠理以密長有  天命  右の本文のことく五味を和して用へし一味  二味偏に濃をきらふへし  酸おほけれは脾を傷て肉䐢  鹹おほけれは心を傷て血泣色変  甘おほけれは腎を傷て骨痛歯落  苦おほけれは肺を傷て皮枯毛落  辛おほけれは肝を傷て筋急爪枯 〇時節をかんかへて味に増減すへし  春七十二日は酸を省して甘を増  夏七十二日は苦を省して辛を増  秋七十二日は辛を省して酸を増  冬七十二日は鹹を省して苦を増  四李各十八日は甘を省して鹹を増  是常食の法也もし病あらは変に応すへし 一朝暮食法 〇黒豆緊小にして円者毎日早晨に井華水にて  三七粒呑へし老にいたりても視聴をとろへ  す 〇早朝に粥を食すへし胃の気暢津液生す 〇常に食後手にて面及腹を摩すへし津液流通  せしむ 〇脕飯をひかゆれは命なかし 〇脕飯の後庭に出て静に歩すへし 一飲食の慎 〇少飢時早く食を進へし甚飢れは胃の気耗  減もし甚飢事ありて後食せは飽まて食すへ  からす胃の気よはき故に食消しかたし 〇生冷の者をおほく食すへからす 〇炙物□物煮物甚あつきをはしはらくさまし  て食すへし甚熱すれは歯を損し血脈を  やふる 〇魚鳥獣の肉を食し畢ては必口を瀬へし歯の  むしはまむことを恐るれは也 〇肉物に人の汗かゝりたるをは食すへからす  疔瘡を生する也 〇自死の者の肉を食すれは疔瘡生す 〇諸の脯米の中に置たるは毒あり 〇一切の肉物に銅器を蓋へからす汗の滴かゝ  れは毒となる 〇銅器の煎湯飲へからす声を損す 〇麺を煮たる湯飲へからす麺毒湯にある也麺  を食して毒にあたらは萊菔を食して解す  へし 〇華瓶に華をたてたる水毒あり 〇吐逆の後冷水を飲へからす消渇する也 〇乱髪食物に入を食すれは瘕となる 〇茅屋の漏水脯にかゝるを食すれは瘕となる 〇簷の雨萊にかゝれは毒あり 〇鼠猫犬蜂等のけかしたる物を食すれは悪  瘡生す 〇生菓久しくなりて損したるをは食すへ  からす 〇蕈紋なく毛なく并煮て熟せさる皆毒あり 〇瓜頭の二あると帯のにあると水に沈と皆毒  あり 〇冬瓜霜かゝりて後毒あり 〇瓠子脚気に禁す 〇胡瓜脚気虚腫に甚禁す 〇熟瓜眼をくらくす老人に禁す瓤に毒あり 〇茄子甚冷にして瘡を発し目を損す虚冷の  人食すへからす 〇芹赤色なるは毒あり 〇自己の本命の者の肉并父母の本命の肉食すへ  からす魂魄飛揚する也 〇一切の脳毒あり 〇一切の魚の尾毒あり 〇下痢の人魚を食して病甚は危し 〇魚鮓の内に誤て髪入たるを食すれは人を殺  す 〇鯉の頭に毒あり又背の両筋の黒血毒也 〇鯉病後に食すへからす腹中にかたまり物あ  る人食すへからす 〇鯽脚気に禁す春鯽の頭を食すへからす 〇鮎鬚の赤と目の赤と毒あり 〇河㹠大毒あり誤て食すれは人を殺す 〇鷄子風を動し気を動す食すへからす 〇黒鶏の首の白き毒あり 〇鷄雉丙午の日食すへからす 〇鶉四月以前食すへからす 〇夏は陰気内に伏す冷物を食すへからす冷物  を食すれは霍乱する也殊に夏氷を食すへか  らす 〇五六月沢中の停水飲へからす其内に魚鼈の精  ありてのみいるれは鼈瘕となる 〇夏暑にあたり来て水を飲へからす 〇冬寒にあたり来て熱湯を飲へからす先暖な  る室入てしつかに寒を散すへしいまた散せ  さるにあはてゝ熱湯をのみ熱物を食し  及温湯に入て浴すへからす 〇日蝕月蝕の時飲食すれは牙そ損す 一合食禁 〇兎肉と白鷄と同食すれは黄病を生す 〇兎肉と生薑と同食すれは霍乱す 〇兎肉と芥子と同食すへからす 〇猪肉と生薑と同食すれは大風を発す 〇猪肉と蕎麦と同食すれは熱風を発して眉鬚  落 〇馬肉と生薑と同食すれは咳嗽を生す 〇牛肉と韮と同食すれは黄病を発す 〇鶏卵と韮と同食すれは瘡を生す 〇鶏卵と魚肉と同食すれは心中に瘕を生す 〇野鷄と鮎魚と同食すれは癩瘡を生す 〇野鷄と鯽魚と同食すれは瘡を生す 〇雉と菌と同食すれは痔を生す 〇雉と胡桃と同食すれは痔下血心痛を発す 〇雉と蕎麦と同食すれは寸白虫を生す 〇鴨と胡桃と同食すへからす 〇鶉と菌と同食すれは痔を生す 〇鯉と紫蘇と同食すれは癰疽を生す 〇鯉と小豆と同食すへからす 〇鯉と麦醬と同食すれは咽に瘡を生す 〇鯽と芥子芥葉同食すれは黄腫す 〇鯽と糖と同食すれは疳を生す 〇鮓と小豆と同食すれは消渇す 〇魚膾と蓼と同食すへからす 〇魚膾と大蒜と同食すへからす 〇小蝦と糖蜜と同食すれは暴下す 〇糖と韮と同食すへからす 〇糖と竹筍と同食すへからす 〇楊梅と生葱と同食すへからす 〇棗と生葱と同食すへからす 〇棗と蜜と同食すへからす 〇枇杷と炙肉熱麺と同食すれは黄疽を発す 〇柿と蟹と同食すへからす 〇栗と生肉と同食すへからす 〇薺菜と麺と同食すへからす 〇茶と韮と同食すれは耳聾 〇麺を食して後酒を飲へからすもし飲へくは先  山椒の粉の入たる酒一盞のめは害をなさす 〇白酒を飲ては諸の甘物をいむへし 〇白酒を飲て韮を食すれは病増す 〇白酒と生肉と同食すれは寸白虫を生す 〇酒後に紅柿を食すれは心痛を発す 〇酒後に芥子を食すれは筋骨をよはくす 〇酒後に胡桃を食すれは嘔血せしむ 〇粥を食して後白湯をのめは淋病を患 一月禁 〇正月 虎 狸 生蓼 生葱 梨 〇二月 兎 狐 鶏卵 蓼子 梨 蒜  初九日魚をすへからす  庚寅日魚を食すへからす一説には三月庚寅と 〇三月鶏卵葫蓼鳥獣之五臓百草一説には三月三  日鳥獣之五臓并一切菓菜五辛芹等を食すへ  からすと 〇四月 鷄 雉 鱔 蛇 五辛  初八日百草を食すへからす 〇五月 鹿 韮 肥濃 煮餅  端午日一切の菜并鯉魚を食すへからす 〇六月 羊 雁 鴨 沢水 〇七月 雁 生蜜 蒪菜 □実 〇八月 鷄 雉 蟹 生蜜 生薑 葫 芹菜 生菓 〇九月 犬 蟹 生薑 甜瓜 〇十月 熊 猪 薤 山椒 〇十一月亀 鰕 吽一切著甲之物陳脯鴛鴦生菜薤 〇十二月 牛 猪 亀 蟹 著甲之物 鱔 薤 葵菜 一飲酒之慎  凡酒の性は熱のほる事をこのむ気を散風寒  霧露の気をふせくおほく用ひ久しく用れは  腸腐胃を燗かし髄を費し筋を弱神を傷寿  を短す素問曰酒気盛而慓悍腎気日衰云云常に酒  を過す人は経脈虚して手足力なく腎気衰也 〇神仙に酒を禁せさる事は気めくらす故也  しかれとも過し用へからす 〇卯の時の酒のむ事なかれ 〇酔て即臥ことなかれ瘡腫積聚を生する也 〇酔て食を過し気をいかる事なかれ瘡を生  する也 〇酔中に冷水をのめは手顫也 〇酔臥て風にあたれは酒風となる 〇酔たる時并汗出時人あふかるゝ事なかれ偏  枯の中風となる 〇銅器に酒を入て一夜過たるをはのむへから  す 〇葡萄の架の下にて酒のむへからす 〇晦日に大に酔ことなかれ 〇暮年に大に酔事なかれ 一喫茶之慎  茶の性は微寒気を下し頭目を清し痰熱  をさり渇をやめ食を消し小便を利し眠  をすくなくす熱飲に宜し冷飲すれは痰を  聚  少食するに宜し多飲すれは身の脂を去て  痩也下焦虚冷の人服すへからす 〇空心の茶尤禁すへし殊に塩を加れは直に腎  に透て虚冷せしむ只食後に一二盞用れは食熱  を去て脾胃にあたらす 〇精汁もりやすき人小便たもちなき人茶を禁  すへし 〇食後に茶をのまされは食消しかたく腹中か  たまりを生す 〇酒後茶をのまされは眼黒花を生すと又一説  に酒に酔ていまた醒さるに大に渇するに  よて茶をのめは酒毒引て腎に入腰脚重痺  小腹冷て痛と    〇房事篇 一陰陽和合  黄帝曰一陰一陽之謂道偏陰偏陽之謂疾   右の本文のことく夫婦は天地のことし和合  の道なけれは春夏ありて秋冬なきかこと  し弧陽独陰なれは心動して労病となる又夫  婦の交合は子孫を相続せんかため也しかる  に世俗遊興の道になして乱に精をもらし  すつる事尤おしき事なり腎精は一身の根  源たり根絶すれは茎葉かふくことく腎精虚  耗すれは形体憔悴して年にさきたちて老す  甚しけれは筋骨痿弱して諸病のはしめ  となる既に病と成て後補腎薬を用て治して  十に一二を救ことまれ也未病の時腎精をた  もつ事養生の第一也古人云服薬千朝不如一夜  独宿 一慾不可早  古の法に男子は十六にして精通すといへと  も必三十にして娶女子は十四にして月水至  といへとも必廿にして嫁すと近代は十六  十四の数にさへいたらすして嫁娶をなす  故に男子は腎の源虚耗して労瘵となり女  子は血の道破損して帯下の病となる 一泄精有限  古人の法に人年廿なる者は四日に一度もら  せ卅なる者は八日に一度もらせ四十なる者  は十六日に一度もらせ五十なる者は廿日に一  度もらせ六十以上は精を閉て泄すへからす  是大法也生つきよはき人は少壮の時も稀に  泄すへし形気盛にてよく飲食するものは六  十の後もしゐてこらふへからす久しく  もらさゝれは瘡腫を生す必年の数にかゝは  るへからす只人の衰旺にしたかふへし形気  盛実の人ありて七十の後も交合を絶せす然  して身病なく剰子を生する事あり是は天元  の寿過度にして腎気余ある人也常の人に  あらす然に常の人それにならひて年老て交  合をこのみ命頓に絶す悲哉 〇真陰精汁はたとへは灯盞の油のことし一度  もらさされは灯火の油を増かことし 〇精汁をもらして女人にあたふれは子を生  す我身にとむれは我命をつく子孫を生せん  ための交合さへ強て行へは虚羸して病とな  るいはんやむなしく遊興にすつる事お  しむへきかな 〇和合の道ありといふともみたりに精をもら  すへからす又既にもれんとするにいたり  ておしてたもては本へもかへらす中途に  滞て便毒瘡腫なる 一房事雑忌 〇飽食して房事すれは血気乱て便血し腹痛す 〇大に酔て房事すれは血脈みたれ男は腎水耗減  し女は月水滞て悪瘡を生す 〇怒て気いまたしつまらさるに房事すれは瘡  癤を生す 〇恐懼して房事すれは自汗盗汗出て労病となる 〇遠行労倦して房事すれは形痩つかれて労  となる 〇小便をこらへて房事すれは淋病を生す 〇灯火を照して房事すれは命を損す 〇房事して汗出風にあたれは内風となる 〇竜能麝香の入たる薬を服して房事すれは  真気耗散す 〇陰茎なゆるによて丹石の剤を服して房事  すれは腎水枯竭て消渇淋病となるみず 〇おほく葫を食して房事すれは肝気を傷て  目をやむ也 〇眼疾の人房事すれは内障となる 〇時疾いまた平愈せさるに房事すれは舌出て  死す 〇金瘡いまた全愈さるに房事すれは血乱て  瘡の口やふれ血なかる或は□となり反張と  なる 〇女人月水いまた絶せさるに房事すれは男女  ともに一身黄色にして痩或は皮膚白駁を生す 一慾有所避 〇大寒 大熱 大風 大雨 大霧 雷電 虹蜆  地動 日蝕 月蝕 以上此時房事すへからす 〇日月星の下神仏の堂廟竃厠の傍塚墓の辺にて  房事すへからすおかす者は人神を損し寿  算を減すもし胎をうけれは其子不仁不孝に  して病おほし 一交会忌日  朔日 上弦《割書:八日|》 望日《割書:十五日|》下弦《割書:二十三|日》二十八日  晦日 庚申 甲子 丙丁 本命の日 〇正月 立春 三日 十四日 十五日 十六日 〇二月 二日 春分 〇三月 九日 〇四月 立夏 四日 八日 四月は皆慎へし 〇五月 夏至 五日 六日 七日 十五日  十六日 十七日 廿五日 廿六日 廿七日  五月は斎戒して房事を絶へし 〇六月 十六日 〇七月 立秋 〇八月 秋分 〇九月 廿日 〇十月 一日《割書:一本には|十日》 立冬十月は専慎へし 〇十一月 冬至 廿五日 〇十二月 十日 二十日  以上の日房事犯へからす違反や婚姻をや 一求子息  凡子の生する事夫婦無病にして血気和順な  れはよく懐妊す男子常に乱に房労して精気  堅固ならす或は常に漏精し或は夢もり  或は精汁うすくして水のことくひえて氷  のことくなれは孕ことなし又女人気血虚  羸して月水滞子宮に閉塞て妊ことなし壮  盛無病の女に交会して子を求へし 〇月水既に止て一日より三日にいたるまで子  門ひらく此時交合すれははらむ事あり四日  を過してはましわりてもはらむ事なし  又一説に月水止て後一日三日五日に胎をうく  れは男となり二日四日六日に胎をうくれは  女となると 〇既に懐妊しては房事をとをくすへし臨  月におかせは或は横生逆産となり或は胎  死となる 〇懐妊の間は辛辣の物を食せす恚怒の心を生  せす常に善言を聞善事を見善事を行ぬへし  かくのことくなれは子生てかならす福寿  忠孝也 此書者《割書:僕|》在関左之日偏州下邑之者不知養生之道 不幸而致夭横故愛憐之心最深仍検査延寿之数供聚 枢要之語名之以延寿撮要為便見聞以倭字書之旋 洛之後此一巻沗歴 □覧何幸加焉伏希広領華夷普授士民人人長保仙 寿規祝不浅也謹以記歳月云爾  慶長巳亥立夏之節        法印玄朔 【白紙】 【裏表紙】