大都會(おほつゑ)無事(ふじ) 〽大ちしん大さわぎそのとき あちこち火事がてゝ四方八方 きやうてんし家(いへ)〳〵つぶれてござ りませんむすびをしてくれた 用意(ようい)のにぎりめしおさきへたべませう やれ〳〵しぶといぢしんめといふ うちになんのてもなく一トつぶし いのちと金(かね)とのとりかへこでやう〳〵 たすかつた     市中庵静丸章 地震(じしん)吉凶(きつきよう)の弁(べん) 地震ハ豊年(はうねん)の基(もと)ひなり何無愁事秋ハ草木(さうもく)土(つち)に もくり冬の気より土(ち)ちうに芽(め)をふくミ天のめぐミを 地にはらミ万物(ばんもつ)を生ずるところ時のふしゆんを いへりすでに発(はつ)して地しんとなる地震ハ 地の煩(わづら)ひゆゑ野(の)人ハ不息(やま)人ハ天地を父母と して万物の長四海(しかい)ミな兄弟(けいてい)なりゆゑに 老(おひ)の若(わか)きを導(ミちび)き若(わか)きハ老を助(たす)くること 人りんの常なり然る処(ところ)近来(きんらい)からきところハ 人情(にんじやう)薄(うす)く 自他(じた)の隔(へだて)強(つよ)く美飯(びはん)を 好(この)ミ時ならざる花を楽(たの)しミ高金(かうきん)を費(つひや)すこと天理にかなハずたとへ 地震のなんをのがるゝとも教(をしへ)に背(そむ)き一身全からず恐れつゝしむ べし 夫(それ)天ハ陽なり上に位(くらゐ)して覆(おほ)ふこれ父の徳なり 地ハ陰なり下に位してのする母の道なり然して 陰陽(いんやう)交(かう)かんして五行(ごぎやう)を生ず其(その)氣(き)天にかへりて四(しい) 時(じ)行(おこなハ)れ其形(かた)ち地に布(しひ)て 人及び禽獣(きんじう)魚虫(ぎょちう) 草木(さうもく)を生ず故に天地を大父母(ふぼ)と称(しやう)す 人ハ秀(ひい)でたる五行の気をうけて生するを以(もつ)て 万物(ばんもつ)の霊(れい)といふなりされバ天地の父母に順(したが)ふ