のさち  地  【うみのさち?】 JAPON. 603(2) JAPONAIS   603    2 ○ もうを  稀人に  藻魚  おません  ふゆ  もとき     春望子 【右丁】   ○あかう   赤魚   秋の    来て 【左丁】   さのみ    染ねと     赤魚       かな     竹園斎         悪来 【右丁】   ○あまたい    方頭魚 黄穡魚            興津鯛 云貨   白浪を出て冴けりおきつ鯛          蘆丈   薄霜や    塩甘鯛の        奥津波   ○はゑ   芝皐   婦人の眉や   みとりの      柳       はゑ 【左丁】   ○芝ゑひ   其帳   芝鰕やす【頭】は    月みる後ろ前   ○川ゑひ   時丸   川鰕や鵜飼に     もれて涼し         けれ   ○あち 鯵            銀谷   夕暮に    生て出なん       鯵の照 【右丁】    ○ます  鱒魚 鮅魚 赤眼魚                  忍岡奴                    玉馬    初の字を付けたきものよ鱒の色               翠羽    鱒突や己か命も渕に立               湖暁    川べりや鱒も連立帆なし舩 【左丁】               市朝    山川や魚木にのほる            鱒の影               渓嵐    梅漬のゆかりや          鱒の一夜酢     孫炎云鱒好獨行尊而必者               太申    五月雨に鱒は登る歟            最上川 【右丁】   ○あいなめ   方俗あふらねとよふもの   嬰児に補あり其形   似かよひたれは            既酔  あいなめに犢の       ■【註】や薬喰   ○くじめ         二關   あふなけも夏の     くじめや薬魚   ○さつは            六器  東風吹や取るゝ    さつは無尽蔵  【左丁】   ○なまこ    海参 海男子            琴松亭              柳蝶  塩梅も生れなからのなまこ哉            古井菴              如畔  尾に鰭の世間をしらぬ海鼠            かな            朝四  北へ向くあたまも持ぬ海鼠哉 【註】腿を革偏に書いたものか 【右丁】   ○ひらめ  比目魚 鰈魚 版魚             五潮  雪■にも片身は染ぬひらめ哉【注壱】             旭扇  積交て歌の書たき       ひらめ哉       岩槻         何来  寐忘れて汐干に    残るひらめ哉 【左丁】          鷺十  引汐の砂に   うすみてひらめ哉【注弍】       楚雲  踏當て春やむかしの       不孝もの【注参】       信稲  鯛おそしひらめに     かすむ花も         かな 【注壱 二文字目、「弁」「舞」「翁」と考察いただきました。まだ確定させず、調べさせていただきます。】 【注弍 一文字目、「か」に見えますが句意から「う」では。「砂にうずみて」という意か。歴史的仮名遣いでは「うづみて」ですが。変体仮名は「か」「う」が紛らわしいですね。】 【注参 「不孝もの」と「ふせねもの」とで考察いただきました。調べてみましたら芭蕉の弟子の句に「親にらむひらめを踏まん潮干かな」とありヒラメは親を睨んでいる様な目をしている不孝者との言い伝えがあった様です。そこから考えまして、「不孝もの」としました。】 【右丁】  ○たかのは    洞什  積交てたかのは涼し          打違ひ  ○とこふし    仙橘  床臥や振分髪の       かた思ひ  ○うくひ     沖谷  人の手を  遁しうへを     鵜喰かな 【左丁】  ○笛吹たい  浪の隙に   笛ふく魚や    海寒し        聴雨亭          水路 【右丁】   ○さけ           一茂   初さけや暖簾の浪に          日の出ほと           砂十   さけ引《割書:か》は秋の花也            吉野川           春里   初さけや籠に知行の          草少し 【左丁】         《割書:女》紹茂   初さけや籠て        目見への旅姿             素猿   野分切《割書:ル》威勢やさけの            猟初穂             斧女   荒川の瀬もすれぬらん            上りさけ 【右丁】           方言 的魚 かねたゝき   ○かゝみたい       市町   桜鯛も   みかはせ   花の    鏡たい       算【筧】社   南天に    うらや露けき        かゝみ鯛 【左丁】         玉珧 生䗯 𧍧䗯  𧍧蛤 【注】   ○たいらき             田旦   たいらき、【へ】前【散】やうしろの          山桜            田東   たいらきや    海松和布の   中の   柱建 【注 この行の漢字の熟語は「たいらぎ」の漢字表記を挙げたものと思われるが、『大漢和辞典』では「玉珧」以外は「まてがい」の意。】 【右丁】   ○くらげ     水母 海䖳            石鏡 樗蒲魚            一種 水くらけと云有   夕立の    濁に 【左丁】   しまぬ   水母     かな      平汐 【右丁】   ○かます  梭魚               湖関   此角は春の日さしや大かます              《割書:女》枕絲   網を梭にぬける       かますや        秋の水   ○あなご    供十   自然    薯の   是も   化けたるあなご哉 【左丁】   ○かさこ   紅梅に    雪の   つもりし     かさこ哉           五絃   かさこ干    小嶋の海士の四月かな、           讃多   ○きち〳〵   小らぎ           湖丈   世の中やきちも    釣らるゝ霧の海 【右丁】   ○さより   鱵魚 姜公魚            三春林              嘉房   葡萄酢の曇にしまぬさより哉            環子             百義   細に子を星の数かく         さより哉   ○いしもち            喜遊   石持の   手柄や   かるき   秋の味 【左丁】   ○おこじ            柴窓             水鶏   おこし〳〵     佐保山姫を         笑せよ   ○しまあぢ            れむ索   島鯵は蓼酢を       しらぬ身也けり            蛙柳   嶋鯵のしまも     涼しき        明石潟【注】 【氵に写で潟の略字になります】 【右丁】   ○さるぼう           呂宋庵             銀車   さるぼう貝は     じうともいはす雛祭   ○ばい 枚           鯉山   はいの身も子ともに        家を譲りけり   ○みるくひ  《割書:淡菜|西施舌》《割書:海蜌|  》           桂舎   海松喰や     鴫にほいなき濱の秋 【左丁】   ○あかゝい  《割書:魁陸 蚶 瓦屋子 伏老|瓦壟子》   赤貝の赫も錦や山さくら           長寿庵             里明   ○さゝゑ   栄螺   絵合に須磨の噂や栄螺貝             春江   金沢や栄螺も左甚五郎            湖舟 【右丁】   ○むつ           五鹿   むつ提て隠家訪ん          睦み月           徳英   尉殿へ眼の鈴みせん          むつの魚           吾山   煤の夜やむつの眼        光る魚の店     【左丁】           五汲   賣初や其名のうらは          ろくの魚【注壱】           双魚   折なれや      睦月のむつに六の花【注弍】           雲和亭             其躬   宗任の梅と     見はやせろくの魚 【注壱 ろくのうお クロムツのこと】 【注弍 六の花 雪のこと】 【右丁】   ○かき  牡蠣           如皐   牡蠣よ〳〵海苔干       濱に拾ふとも   ○うしのした《割書:鞋底魚 《割書:閩書》 鰈魦魚|又 水かれい 左目明右目晦》           白抄   桃の海に踏るな      牛の舌ひらめ   ○しやこ《割書:石楠花鰕 鰕姑|青龍》           喜黄   毘沙門の     しやの字を    しやこの姿かな 【左丁】   ○うきゝ    楂魚   《割書:俗》 満方   涼しさや   波の立居の   うきゝ取      一柳舎        時雞   海原や其夜    うきゝに積る雪           俳狂人 高塵             萱國   はせを葉に     ひとしき鰭のうきゝ哉 【右丁】   ○さわら  馬鮫 閩書《割書:に》青斑魚 小《割書:を》青箭(/さご)   葛の葉はつまむ程也初さわら             万年楼                 紀輦    漁村待電光翌究    淂是魚   稲妻の網をあひせり          さわら取             壺谷舎               承篁   わたつみの     太刀折紙や        さわら籠             楚雲 【左丁】             鳩居   のひ〳〵と春の      姿のさわら哉             巴鶏   同し名を    擔桶にも呼て【注】       さわらかな             疑里改   夏近き        せんか    男姿の     さわら哉   【注 擔=担 担桶(たご)】 【右丁】   ○ゑひ  海鰕 紅鰕 《割書:いせ|かまくら》           朝丸   春風にお江戸は       海老の勇哉        青庵中           蛙暁   水引は禿の髭や       かさりゑひ              浦遊   船盛の鎌倉海老や       月の興 【左丁】   ○いわし  鰛           銀波   宇和の秋     波にひたすや        いわし雲   玉葉集の神詠今猶   此魚の美名高し           無為庵            雪砂   住吉の風の和光や        うわいわし   ○いなだ   そさのおの祭に   備ふいなた哉           西丸 【右丁】   ○いぼぜ           絲玉   柚の花の下にいほせの          豐かな   ○わかさき           花見   わかさきよ吸物ならは          船のあか   ○こはた   このしろには室の八しまの   古哥もあり侍るに           《割書:女》通車   色紙鮓せめてこはたの          手から哉 【左丁】   ○とせう  《割書:泥鰌 泥鰍|鰼魚》           来久   又濁す御田の        とせうも乳の餘 ̄り           新甫亭             在雅   泥鰌かなうすめく水の           五月闇           芋秀   涼しさは泥鰌も浮む          夕へかな 【右丁】   ○わかなこ           仙呂   わかなこや波間も   青き若葉時   ○たなこ           花林   海松もうれし    並ふたなこの果報哉   ○しまたい           扇之   水底も衣配りたつ嶋小鯛 【左丁】      簳魚 載帽   ○やから           亀歳   月は弓又海中に      やから哉   ○うつわ           雷魚   初汐や岸に   うつわの   継子立   ○ひしこ   小いわしを塩になせは   ひしことよふも所によりての   よしあしの風流にや               廣國   ものゝ名も難波の秋のひしこ哉 【右丁】   ○貝つくし           待美   行春の踏分そめつ          桜貝           節花   海あけて     風に巻たり         簾貝 【左丁】   例の物くさに田井小よろきの   磯つたいもむつかしく硯の海の   本とりに古人の玉をつらね〳〵   千種の貝を拾ふ           仙菊   貝よせの風歟二三丁類柑子   【右丁】   くじら  海鰌 《割書:万葉|  》 《割書:いさな|勇魚》 数種あり   せみ鯨《割書:一 ̄ニ 背干|   》 あをさぎ   ちご鯨   ざとう鯨   つち《割書: |槌》鯨    あかぼう   まつこ鯨   のそ鯨《割書:又》のみ     いわし鯨   かつを鯨   ごと鯨《割書:瀬ごとう 大なまごとう|こすひごとう|なひさごとう》しやちほこ《割書:さかまた|たかまつ|くろとんぼ》 【左丁】               東為   七浦の人もくろみて鯨かな               塵匣   年毎に鯨に卒都婆めてた             けれ               信鳥   冬の色凝りてや魚のはたつひろ   ○緑毛龜   龜の浮く    波も   高しや    松の色 【右丁】     題海河   東海に白魚の目も要かな     存義   海原や国にちなみの一曇     平砂   乙姫のすふてみせたる汐干哉   米仲   鳥の頭枝折になるや硯とり    祇丞   海山に桜を鯛のさかりかな    買明   硯とり法紙もすなり七信の海   楼川 【左丁】   かすむ日の果や無漂の笹濁り   湖十   春なれや魚の/卵(カヒ)うむ海の水   百萬   末かけてたのみある日や御祓川  紀逸   犀川のなかれ〳〵てすゝみ川   再賀   橋はあれとかちより渡る凉哉   珠来    編集の趣によせて発句の題    得侍りしかといたつきある心にて    求に応せすたゝ当季の一句を    おくりて附すのみ   日のみなみ風さえあつき感かな  萬立   夏川や波のしらなす燈の光    超雪   □□ひや筏の蚊け水を這ふ    秀信 【右丁】   蛇籠這ふ川おそろしや五月雨     吉門   葉桜の影すくはらや川あそひ      栖鶴   月や影空にしられぬ汐曇        鐘口   大工町秋の寒さも海辺かな       柳尾   雨ちかしみしらぬ渕や秋の海      由林   あか〳〵と魚飛海やけふの月      庭台   かゝりけり鯛も赤魚も秋の海      清泉   月ふた夜洗て寒し名古の海       田社   うろくすに海も金氣のひかり哉      圖大   川中や篝火にみする秋の空       海如 【左丁】   川寒し松をともせは猿の声       露牙   冬川に梅船の夢や五十年        道院   山川やもみち水かく鴨の足       芻狗   冬木せぬ名さへ鲦さへさくら川     春堂   風かろく冬たつ川の蘆邊哉       温克   霜はしらたつや酒匂も柱橋       在轉   雪にめけぬもの一筋や川の面      祇貞   圦川に氷の魚や鷺の觜         小知   夜は雪に埋みて川の闇路かな      龜成     【右丁】     題魚   さゝ濁すひらめに狂【?】ふ汐干かな   中和   花魚や黄門様のたねおろし     沾山   影折し鲦ものほるや花の瀧     海旭   いたつらに春を寐なくす𫚦哉    環山   声極に伊達をつけてや柳鮒     岱貝   烏帽子着し松魚麗やい勢の海    石鯨   女にも踏るゝ春のひらめかな    風導   さくかへる水淺くとも海鼠哉    不言   白魚や篝のもとに月と雪      紫風 【左丁】     題貝   すみよしや寸濱にそたつ寸蛤    牛呑   いそによる涛を花とやさくら貝   葵足   吹あくるはま風ぬるしすたれ貝   長鶴   行春や岩本院に月日貝       金羅 【右丁】    歌僊   月花にあまりて深し海の幸   秀國    帆は帆はしらに当る春の日  買明   めろ共か萩入もうけに餅搗こと 存義    ねこたの出来を匍匐ふて見る 祇丞   竹の皮松無間《割書:イ|》へさかさ立《割書:チ|》   平砂    けふい国主の茶にめされん  塵匣 【左丁】  《割書:ウ|》なかめ入陀阿上人の鼠いろ   明    濱の砥石の遣ひ捨たり    國   樵溜し植木ほとけはによつと蛇 丞    手をかへ品をかへて執念   義   幾十人改宗はみな女なり    匣    わりなく隠し朝鮮の胤    砂   軍した跡しら波に松の磯    義    くたひれ馬の上に夕月    明   休む日の荷瘤の毛にも秋の風  砂    蓼鶏頭も水縄のうち     匣   【右丁】   所とて庵の小隅に糸車       國    河内の佐山金を恐るゝ      丞   俊基も遠近人にうちましり     匣    老たる狐いふことやよし     砂   くらいうち祢宜の玄関を掛立て   朋    三つのいわゐの/いと(幼)を輦    義   雪もよひ油単に趣向あまりけり   丞    おり〳〵獵も隅田の百性     國   学問は誉る側から時花やみ     明    扇たゝんてたゝく桜戸      匣 【左丁】   藤に鶏赤前垂かわるさして     義    長閑なりやこそ社地に昼寝る   國   月の句を屏風に惜や其嵐桃     丞    種持頃の茄子摺なし       砂   尼御所の蕣の垣奇麗なり      國    地震につよき水戸のあらしこ   丞   やゝ晴て幟を横に高瀬さす     匣    案に相けな川端の家       義   花に猶見倦ぬ本を留守居饗     砂    何所ともなしに三月の昼     明 【右丁】        跋   画は声なきの詩詩は形なきの画にして   俳諧も又形なきの画々は声なきの俳諧   ならんか粤に石寿観秀國勝龍水生の   写生の魚つくしを得て是に俳句を求め   海の幸と名つけ二帖となし余に跋せよと請   先輩既に序文に其言尽されたるへし亦   何をか云んと是を開きみれはこゆるきの 【左丁】   磯はしらす魚の肆に立るかことし傍なる人戯   に云絵の魚似たる事は似たれとも形のみにして   味なしと余云味は人々の句中にありて時の   景物植物なと取合せ酢を和し醤を以って   烹炙心にまかせて塩梅あらはをのつから   骨あり肉あり味あらん歟と独菴中買明   其後へに述   寶暦十二壬牛歳二月              本石町一丁目           書林  龜屋太兵衛            大傳馬町二丁目          彫刻并  關口 甚四郎          彩色摺  同  藤吉